〜〜 おまけ 〜〜 その後〜〜

こちらは完全合作にて書かせて貰いました By kei&rinju

 

早朝、ホテルのロビーに二組の男女が偶然にも鉢合わせた。
「あ、どうも。」
工藤圭司は、昨夜このホテルに来るサプライズをくれたカクテルバーのマスターに向かって軽く会釈した。
「どうも。昨夜は、お愉しみ頂けましたか?」
 マスターは口元だけを上げて笑みの表情を作っているが、決して嫌味なものではなく、また工藤を嘲笑しているようなものも感じない、ただ場違いな鉢合わせに心の中で苦笑いでもしているような感じだ。
「ええ、もちろん。存分に楽しませていただきました。ありがとうございます。ただ、妻の方はよく酔ってたので、部屋や景色を楽しむ暇はなかったようですが。」
視線の先にぐったりとソファにもたれかかる女性が二人。互いの行為がおのずから見えた。
マスターは、くすりと笑って女性たちを横目で見ながら、工藤に小さく頷いた。
「そちらもお泊りだったのですね?もうお帰りですか、お店は遅くまでだったんじゃ…」
「いえいえ。昨夜はスタッフの意向によって、途中から抜けてココへ来たんですよ。スタッフからのクリスマスプレゼントでしてね」
くすりと妙に艶のある笑みを見せ付けてくるマスター。
「お互いにいいクリスマスだったようですね。感謝してますよ。」
向こうはどうだか判りませんがと続けて、女性たちに視線をやる工藤の口元にも笑いが含まれている。
「ところで、この後はご自宅にお帰りですか?」
「ええ、仕事なんですよ。」
「これから、ですか?ご自宅まではタクシーで?」
「はい、そのつもりです。おたくのお店のすぐ近くですよ。徒歩で行けましたので。まさかホテルに泊まれるなんて思ってみませんでしたから...」
「今から、では大変でしょう。うちから近いのでしたら、こちらは車で来ておりますし、ご一緒に如何ですか?」
「それは...いいんですか?どうやら妻は歩くのも辛いらしく助かりますが。」
工藤は優しい視線を見せた。
「ええ、こちらも同じようなモノですし、構いませんよ」
「そのようですね。」
女性たちを見遣り、労わるような視線を向けて、工藤へと視線を戻すと今度は意味深な笑みを見せ付けてきた。
「ああ、申し送れました。工藤です。」
名刺を差し出し軽く一礼し、営業マンらしいところをみせた。だがその肩書きは「東京支店長」となっており、関西系列の会社の名前が並んでいた。
「これはどうも。うちの場合は、お店のになりますが、自分は綾瀬伊吹と言います」
そう言って取り出したのは、店のロゴの入ったお洒落な名刺。
「ああ、また寄らせてもらいますよ。カクテル、美味しかったですよ。今度行ったら何を飲ませてもらえるのか楽しみだ。」
「いつでも、お待ち申し上げております」
「じゃあ、そろそろ...」
そう言って工藤は綾瀬を女性たちの方へ誘った。
 
 
 
目の前の項垂れている女性を見た深里は、ふと昨夜のお客だということに気付き、一瞬目を背けた方が良いか逡巡した。が、その後に、フロントでは伊吹と目の前の女性のお相手が話をしているのに気付いて、少しだけ声をかけようと思い直す。
「お、はよう・・・ございます。お疲れ・・・さま、ですね・・・?」
「え?あ...お、はようございます...はい。」
椎奈は目の前の女性が昨夜のバーテンダーだとようやく気づき、必死で返事を返す。
二人は互いに顔をあわせて、朱に染めて俯いた。
 
 
伊吹は、目の前の工藤という男性と一緒に、深里達の元へ行くと有無を言わさず抱きかかえた。
「あっ、い、伊吹」
「け、圭司?」
同時に悲鳴が上がる。
「そろそろ家に戻りましょう。そちらの方達も送って行くことになりましたから」
「そういうことだ。おまえ動けねーんだから、助かるだろ?」
慌てる深里、驚いている女性を無視するように、二人の男性はそのまま腰を抱いて歩き出した。
 
 
 
強引な男性たちのサポートで無事車までたどり着いた女性たちは車に押し込められるとそのまま送り届けられた。
妻を気遣うというよりもべったりの工藤は、後部座席で彼女の髪に何度もキスをしているのがバックミラーに映っていただろうことも、ちゃんと気が付いているのだろう。
普段から車の運転中は集中しろ、と深里の唯一の主張に文句が言えない伊吹は、後部座席で営まれている二人を苦笑して見るとはなく見つめていた。
そうしているうちに、車は工藤が示した住所に着いた。
「ありがとう、助かりました。そちらはこれから?」
工藤が降り際に綾瀬に聞いた。
「この後ですか?もちろん、自宅で彼女を構い倒す時間ですよ」
「あはは、それは若いな。」
工藤は苦笑いする。ニヤリと笑って返事をする伊吹は、意味深を通り越した妖艶な笑みで工藤を見つめていた。
「それじゃまた。」
互いにそう交わして、綾瀬の車は去っていく。彼はこれからさらに彼女を翻弄するために。
 
圭司は腕に抱いた椎奈を連れて家に戻る。子供たちを迎えに行くまで少しでも休ませてやるために。そして自分は仕事へと出かけていくのであった。
 
またいつか、あの店に、二人で...
 
 
 

==END==

 

==あとがき==
 
輪樹さん、お誕生日おめでとうございます。
プレゼントって言うよりもコラボなのであたしも楽しませていただきましたが…
 
いや〜楽しかったですw
最後のおまけは全部二人の合作です。どこからどこまでという区切りもありません。
文章が溶け合って夫婦同然です(笑)
 
それでは皆様、メリークリスマス♪
 
 
 
keiさん、こちらこそ、本当にありがとうございました。
とっても愉しい経験をさせて頂いて、こんな作り方も素敵だな、と実感いたしました。
完全コラボ作品というべきなのかな?
また、是非とヨロシクお願い申し上げます。
 
そして、皆さま、HAPPY MERRY CHRISTMAS!!
 

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