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「あっ……んっ」
甲斐くんが腰を使い始めると、ぎしぎしとベッドが軋む。
「くっ……志奈子、すげえ、いい」
わたしの脚を持ち上げて、甲斐くんのたくましいもので感じるトコロを何度も擦り上げてくる。
「はぁ……ん、いい、あっん、も……だめ」
「みたいだな、締め付けてきてるぞ……志奈子のいやらしいトコ」
掻き回される水音、甲斐くんもすごく堅くなってる。たぶんもうすぐ……
「そろそろ出すぞ、志奈子のナカに……その前に、イケよな!」
「やぁあっ!!」
まただ……突起をグリグリと押しつぶされながら腰を使われて、最奥と膣の上壁を擦られたら全てが弾けてしまう。理性も、感情も、意識も……
「だめ、イク、いっちゃうのぉ!やだ、止まんない、だめ、甲斐くんだめぇ!!」
「うあぁ……志奈子っ、俺も、イクっ!」
ドクドクと体内に熱く弾ける彼の熱情。隔たりのないそれは直接わたしのナカに流し込まれ、その瞬間わたしは甲斐くんの昂ぶりに身も心も感じてしまう。放出しながらも腰を使う甲斐くんに揺さ振られ、わたしは狂ったように喘ぎ続けるだけ。
「あぁぁん、はぁん、あん、甲斐くん、甲斐くん……」
自分でも信じられないくらい甘い声で彼を呼ぶ。手を伸ばせばカラダを寄せてくれる。
「はぁ……志奈子、可愛い声で鳴きやがって……くっ」
繋がったままカラダを合わせてキスが始まる。
甲斐くんのキスが好き。
突然行為が始まる時もあるけれども、大抵その気のないわたしにキスを仕掛けてきてセックスに持ち込む。それほど彼のキスはわたしをその気にもさせるし安心もさせる。こうやってキスしてる瞬間は恋人同士のような錯覚を持てるし……
「はぁ、はぁ……もう一回、な」
わたしのナカはキスの間に回復した甲斐くんのモノで一杯になっている。
再びわたしの上で腰を振り始める彼。こうやって離れることなく何度も行為を繰り返すようになったのはやっぱり媚薬を使われたあの日から……
わたし自身も逃げなくなった。求められれば受け入れるし、カラダの欲求に素直に答える。
乗れと言われれば甲斐くんの上に乗って腰を振る。わたしの動き次第で我慢したり射精を堪えてるのを見ると少し嬉しかった。
甲斐くんがわたしを抱いてる間、他の女の人が立ち入ってくることはない。ここはわたしの部屋で、誰も邪魔しないのだったら……この部屋の中にいる甲斐くんは、わたしだけの甲斐くんだから。


「志奈子、こっち……」
ぐったりと、横たえた身体を甲斐くんが引き寄せる。さすがに2回3回と立て続けにされるとカラダが持たない。甲斐くんの倍はイカされてるはずだし、息切れして指先まで痺れて動けないのはいつものことだ。
「んっ……」
流れ出るモノもそのままに抱き寄せられてカラダをさすられる。ゆっくり息を整えて甲斐くんの腕の中に収まって目を閉じると睡魔が襲ってくる。彼の側は温かくて、人肌を知らずに育ったわたしにこれほどまで安心出来る場所があると教えてくれたのは甲斐くんだ。彼も同じなんだろうか?だから女の人を抱いた後抱き寄せて眠るのだろうか?
────愛情不足。
親の温もりを欠いたまま育ったわたしたち。甲斐くんが代わりに女の人を抱くのもわかる気がした。満たされるというのはこんな感覚のことを言うのだろう。極限まで求め合って、力が入らなくなるまで交わりあった後肌を寄せて眠る。それが凄く心地よかった。コレが相思相愛の相手ならどれほど幸せか……世間の誰もがパートナーを見つけたがるはずだ。わたしは早くにそのことを放棄してしまったけれども、こうやって身体で覚えてしまうと無くしたあとが辛いだろうと思う。


甲斐くんがわたしを抱いた後、泊まっていくのも当たり前になった。
何度もその繰り返し……その間、甲斐くんのカノジョは何人変わっただろうか?彼女が出来ると週末は来ないし泊まるコトも少なくなる。そしてまたカノジョが居なくなると頻繁に寄ってくるし、週末でも朝までゆっくりしてくれる。
嬉しかった。朝目覚めた時に甲斐くんの腕の中にいられるときはやっぱりいいなって思えた。
勿論そんなことは顔には出さないけれども……たぶん、わたしが素直なのって抱かれてる間だけだから。
わかっている。今更素直になっても何も得られない。うざがられて離れていくだけだ。だって、都合のいい相手だから重宝がられているだけなのだから。
彼には他にもいくらでも女の人がいる。欲しければ何時だって相手に不自由はしないだろう。
だけど……わたしは甲斐くんが居なくなったらどうなるんだろう?抱かれることを覚えてしまったこの身体が、彼を忘れるまでどのくらいかかるのだろう?こんな風に朝まで一緒に眠ることを知ってしまったら……一人の夜と朝をどう過ごせばいいのだろう?


「今日、バイトは?」
「ない。明日の昼からスタジオ撮影があるだけ」
「そう……」
「面倒だからココから行く。いいだろ?」
「いいけど……」
じゃあ、やっぱり晩御飯と明日の朝ごはんいるよね?作り置きあるからなんとかなるかなと考える。一緒にご飯を食べるとかも今までなかった。だけど当然のように泊まった日はわたしの作った煮物なんかを美味しそうに食べてくれる。まるで家族のように当たり前に出して当たり前に食べる。甲斐くんは和食が好きみたいで煮物を好んで食べた。わたしも彼の為に作ったようには見せず、煮物なんかは一度にたくさん作ったほうが美味しいからと言ってるんだけど、気付かれてないかな?でも週末に来てるってコトはまた彼女と別れたんだろうか?先週も、その前も週末は来なかった。平日遅くに来て朝早く帰って行った。

「デートはないの?」
「ああ、別れたから」
「また?」
「ったくうるさいんだよ、携帯の電源切ってたぐらいで」
あ、携帯……そういえば、最近って言うかココに来始めてから鳴ってるの聞いたことがない。もしかして、電源切ってくれているの?この部屋に居る間だけ……まさかね、もしそうだとしてもセックスに集中したいだけかも知れない。だって始まると長いし、お互いに止まらなくなってる気がするから……
「ねえ、そんなに簡単に別れたりするもんなの?」
珍しく聞いてみた。今までは『ふうん』で終わっていたから。
「え?ああ、そうだな……志奈子は付き合ったりとかしたこと無かったんだよな」
お茶飲んだり映画見に行ったことを『付き合ってる』と認定しないのならそうだろう。
「まあ、文句言われてまで付き合う必要ないだろ?それに、付き合うって言っても別に深い意味はないだろ?」
「そ、そうなの?」
「いちいち断るの面倒だから付き合うけどさ。女ってさ、結構ずうずうしいんだ。断ると『なんで?』って煩いし。理由を言えって、納得出来ないと怒り出すしさ。別に付き合わなくったって一緒に遊んだり寝たりするの、別に変わらないと思うけどな。女が別れようっていうから、それで終わり」
「ふうん……」

付き合うってもっと真剣なものだと思っていた。もしかしたら甲斐くんも母のように付き合う=寝ることだったんだろうか?母は気軽にカラダを開く人だったから、男の人と付き合うなら真剣なのがいいと思っていたけれども、結局はこうやってセフレで収まっているということはあまり変わりはないのかもしれない。一方的に思っていても、それは恋愛としては成立しないだろうし、間違っても付き合ってる部類には入らないだろうから。
そういえば、今までわたしもあまり彼の話を聞こうとしてなかったな。質問すらしたこと無かったんじゃないだろうか?だって聞くのが辛かったから。けれども甲斐くんがこの部屋に来るようになってから、ココにいる限りはそんな心配しなくてもいいんだって思えはじめた。わたしの存在が必要なければここには来ないのだから……

「けど女って何でもないことでメールしてくるし煩いよな。それになんであんなにイベント好きなんだ?やれ誕生日だ、バレンタインだクリスマスだとか言ってプレゼント強請って来るしさ。付き合わされるこっちはいい迷惑だよ」
わたしが見てても甲斐くんはマメな方じゃない。だから女の子達はすぐに怒り出すんだ。
彼の部屋にいた時、よく平気で話してたから……

『どうしてメールくれないの?』
『どうして携帯にでなかったの?』
『なんでデートに誘ってくれないの?』
『なんで好きって言ってくれないの?』

わたしにとって当たり前のことでも彼女達にとっては耐えられないことらしい。誘われれば出掛けるだろうし、逢えばセックスするだろうに、それだけでは満足出来ないと……そんな愚痴めいたものを聞いていれば同じコトは口には出来なくなる。
だから、わたしだけ何故か長続きしているのかも知れない。
何も望まないから、だから……

「自分の誕生日なんて何が嬉しいのかな……」
「俺も誕生日とか親に祝って貰ったこともないしさ、クリスマスなんて稼ぎ時にあの男が家に居るわけないだろ?客の女とよろしくやってるだけだしな」
再会してから……こうやってたまに父親の話がでていた。たぶん直接見て知っていたから言いやすかったのかも知れない。
わたしも、誕生日のケーキとか記憶にない。たまに男から貰ったクリスマスのケーキを翌日に出されたぐらいで……そういえば丸いケーキなんて切り分けて食べたこと、なかった?
「志奈子はそういうの言わないから楽だな」
「だってわたしは甲斐くんのカノジョでも何でもないもの」
カノジョが望むようなことは何も口にしない。甲斐くんだってカノジョにするような気遣いも見せない。


「そうだ、ダチに映画のDVD借りたんだけど、観るか?明後日には返さなきゃダメだから観ておきたいんだけど……」
題名を聞くとテレビでよく見かけたハリウッドの超大作ってやつだ。
「いいけど……」
いままでこんなことしたことなかった。甲斐くんの部屋に行ってた時はすぐに帰ってきてしまっていたし……時間が出来るとこうやって一緒に過ごす時間、いろんなことが一緒に出来るんだろうか?まるで彼氏と彼女のように……
そっか、今彼女がいないから、その代わりなんだ?
「まさか明日の朝までずーっとヤッてるわけにもいかないだろ?そりゃ、俺は志奈子のカラダが気に入ってるよ。志奈子にはわからないだろうけど、カラダの相性はめちゃいいと思う」
他の男なんて知らないから、わたしには甲斐くんだけだから相性の良さなんて比べようがない。それに、よっぽどの物好きじゃなければわたしみたいなのを相手にするわけないんだから。そうするとその物好きが甲斐くんになっちゃうけど、たまたまあの資料室で抱いたわたしのカラダが気に入っただけだから……あんなことでもなかったら一生抱くはずがなかったカラダだもの。
でも、毎回間違いなく狂わされるほどわたしのカラダは甲斐くんに感じさせられている。
たぶん、相性……いいんだと思う。

「おまけにピル飲んでるから面倒な避妊もしなくていいしな」
「…………」
妊娠の不安から逃げるために貰いはじめた薬だった。それなのに、その薬が理由でまた甲斐くんから離れられなくなるなんて……まるで自分で自分の首を絞めたようなものだ。おまけに媚薬を使われた時に乱れすぎて……自分から欲しいみたいな事を何度も口にしてしまってからは余計に歩が悪い。
甲斐くんからすればわたしは避妊せずにナマでセックスできる淫乱なカラダの持ち主なんだ……唯一自慢出来る白い肌もお気に入りみたいだし。でも……
「そのぐらい……他にもいるでしょ?」
「そりゃ他にピル飲んでる女も居るよ。けど、遊んでる女とはピル飲んでてもあんまり生でヤル気にはなれないな……昔、ビョーキ移されたことあったしな。それもあの男の客の女でさ」
ちょっとまって?
それって……避妊具を付けずにセックスしてるのはわたしだけってコト?
だから余計にこの身体に固執するってわけなの?
「志奈子は俺しか知らないって言ったよな?」
薬袋を見つけられたときに散々問い詰められた。限界までカラダを攻められながら何度も言わされた。甲斐くんしかしらないと……

もう、逃げられないの?
このまま彼が飽きるまで抱かれ続けるしかないんだろうか?
どうせいつか離れていく……そんな日が来るだろう。
そのことを割り切って、わたしも楽しめばいいのだろうか?
彼女のいないときの甲斐くんを独り占めすることが出来るなら……
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