20
「やあぁ……もう、やだぁ……」
「ん?何言ってるんだよ、欲しいって言ったのは……志奈子だろ?」
「でも、もう……あっ、あっ……ひっ……ぅん」
こんなにも絶頂が何度も続くものなのだろうか?それが媚薬のせいだということに気付いたのは、いつもは同じように果てる甲斐くんが全然平気で、わたしだけが何度もイカされていたからだった。
媚薬といっても通販で手に入る無害なモノだと教えられたけれども、身体の火照りは尋常じゃなく、体中の神経が敏感になりすぎていた。イッてもイッても終わらない、頭はのぼせてもう何も考えられなくて、心拍数が上がりすぎて呼吸困難になる。指先は痺れ身体に力が入らないのに、アソコだけが別の神経が通っているように敏感に快感を生み出し続ける。
だけど、いつもみたいにわたしと同じだけ果てたりしていない甲斐くんは未だに元気で……何度もわたしを攻め続けていた。
「ひっ……も……だ、め……」
「まだだ……まだ俺は満足できない」
内側を擦り上げられ続けて、気持ちよくて逃げられないのは事実。
「あっ……」
甲斐くんが動きを止めると、力の入らない腰を自分から動かしてしまうほど自ら求めていた。
「欲しいんだ?自分から動かして、いやらしいな、志奈子は」
「やぁ……」
止まらない快感に追い討ちをかける甲斐くんの腰の動きに再び翻弄される。もう、全身が痺れて感じすぎてわけがわからない。涙と涎でぐしゃぐしゃの顔に何度も甲斐くんが口付ける。
「志奈子、志奈子……今度こそ逃げられないからな?この身体は……俺のだから!」
そういって腰を震わせわたしの最奥にこすりつける。
「うぁ……っくぅ……」
何度目かの射精を避妊用のゴム越しに放ち続ける。
無駄なのに、避妊なんて……ピルを飲んでいるわたしには無駄な行為だ。そう考えると少しだけおかしくて笑えてしまった。
「どうした?」
笑ったのが不思議だったのか、ようやくわたしの中から抜け出て顔を近づけて覗き込んでくる。
「うごけ……ないのよ」
「ああ、ヤリすぎたよな……ごめん」
え?ごめんって今謝ったの?珍しいね……その言葉に驚きながらも視線だけで甲斐くんを追う。そのまま隣に横たわってわたしを引き寄せ身体を摩る甲斐くんの手の心地よさに、ようやく終わりを告げた行為に安堵して、わたしはゆっくりと目を閉じた。
どのぐらい眠っていたかなんてわからないほど深い眠りだった気がする。
目が覚めると全身だるくて起き上がれない。そして隣にいるはずの甲斐くんがいないことに気付いた。
帰ったのかな?
そう思うのが普通なのに、隣にいてくれるものだと思っていた。高校最後の日、ホテルに泊まって朝まで抱き合って眠ったあの時の様に……
「起きたか?」
「甲斐……くん」
台所のテーブルに座っていたらしく、わたしが起きた気配を察して顔を覗かせる。煙草を咥えたままだったからか、一旦奥に戻って煙草を消してから再びこっちに戻って来た。
「風呂はいるか?沸かしたぞ。それとも腹減ってるならなんか食うか?コンビニでサンドイッチとか買ってきた」
かすかに甲斐くんから煙草に混じって喫茶店のような珈琲の匂いがした。
「うー」
身体を起こそうとしても力が入らなくて、甲斐くんが手助けしてくれてようやく身体が起こせた。
「よっ……と」
「えっ?」
いきなり抱え上げられた。
「歩けないんだろ?連れて行ってやるよ」
確かに歩けないかもしれないけれども、お姫様抱っこみたいにされるなんて思ってなかった。
「とりあえず何か食べるだろ?昨日夜から何も食べてないし」
時計を見るともうお昼前。
「あ、講義……」
今日の午前中の講義は必修じゃなかったけれども、午後からは出なきゃならない講義があった。
「何時から?」
「1時から。午後からのには出ないと……必修だし」
「ふん、じゃあ、これ食うだろ?それと、これも飲まなきゃいけないんじゃないの?」
そういってコンビニのサンドイッチの隣に置かれた病院の薬袋……
「これ……って、甲斐くんっ?」
「調べたけど、これってピルなんだろ?志奈子、こういうの飲んでるならそういってくれないと」
それはちょっと怒った口調で思わず身体がびくりと震える。
「それは……」
「他の男のため?」
テーブルに腰掛けてこっちを覗き込んでくるその目も怒気を含んでいた。どうして?わたしが何を飲もうと勝手なのに?
「いたの?他に男……生でさせるような男いたのかって聞いてるんだよ!俺から逃げたのだって他に男が出来たからなのか?どうなんだよ……答えろよっ!」
なによ……他に女がいるのはあなたのほうでしょ?映画見に行ってホテルに入るような彼女だっているじゃない!呼び出されれば出て行く彼女もいるじゃない!なのになんでわたしがそんなこと言われなきゃいけないの?
「わたしの……勝手でしょう?甲斐くんには……関係ない」
「なっ……へえ、そういうこと。だったらいいんだよな?ナカでしても」
「えっ?」
「そのために飲んでるんだろ?それと、他に男がいるんなら連れて来いよっ!おまえは一生誰とも恋愛しないって、そう言ったんだよな?アレは嘘だったわけだ……」
「何?あっ……」
腕を引かれそのままテーブルにうつぶせのまま押し倒される。
「やっ、なにするの?」
着ていたTシャツを捲り上げられ、唯一下半身に身に着けていたショーツも引き降ろされた。
「まだ媚薬の効果残ってるみたいだな」
ソコに這わされた指がニチャリと音を立てる。それはきれいにされたはずの身体の奥に残されていたわたしの愛液。座った拍子にこぼれ出ていたモノだ。
「ちが……」
「たっぷりと注いでやるよ、他の男が入る隙間ないほどになっ!」
「やぁああああ!」
ずぶりと後ろから犯され、そのまま彼が果てるまでテーブルを揺らし続けた。
「あぁっ……ん」
「はぁ、はぁ……くっ、志奈子」
嫌がっていてもソコはちゃんと甲斐くんを受け入れていた。ピルを飲み始めた時からこうされることを予測していた。
「なあ、どうなんだ……いるのか……他に男が!」
問い詰めるように攻め立てられる。その表情が怒っているようで怖くて、嬉しかった。
「やぁ……いない……そんなの……いない」
「ほんとうか?」
甲斐くんの表情が緩む。そして、彼がイキそうなのわかっていて締め付ける。
ううん、わたしも気持ちいいから勝手にカラダが締め付けてしまうのだ、甲斐くんを……
「しらない……甲斐くんしか……ああっ!」
一瞬甲斐くんがわたしのなかで大きく膨れ上がった気がした。
「もう……くうっ」
吐き出される彼の体液。脈打つ甲斐くんのモノを全部受け入れられたことに打ち震えて喜ぶわたしの淫乱なカラダ。
「やっぱいいな、志奈子のカラダは」
「あっ……」
彼が抜け出た後に内腿に伝わるのはわたしと甲斐くんのモノが混じった液体。
「すげえ、でた?」
何も言えずにいるとそのまま風呂場に連れて行かれた。シャワーで流しながら洗ってやるといいながら行為は続く。
狭いアパートのユニットバスの中でも攻め立てられた。バスルームでの行為は意外と響く音が恥ずかしくて、必死で声も抑えたけれども甲斐くんに手を捕らえられて全然声も抑えられなかった。
「午後からの講義は今からじゃ間に合わないかもだけどな。それとも行くの?」
「行くわよっ!何のために大学に通ってると思ってるの?」
「志奈子ならそう言うと思った」
力が入らなくなったわたしを脱衣所に連れて行き、バスタオルでわたしをカラダを拭きながらそう聞いた甲斐くんは、不意に笑い顔を見せた。
だからわからなくなるのよ……
優しいのか、優しくないのか。こんな風に構われたことがないわたしにとって、その手つきは優しくて心地よいものだった。無言でわたしの身体を拭き上げる甲斐くんをじっと見ていたら不意に唇に軽いキスが落とされた。
「なっ……」
「どうした?大学行くんだろ?」
「う、うん……」
「ココからだったら近いだろうけどそろそろ着替えなきゃダメだろ?」
そうだけど、どうして?どうしてどうしてそんなキスするの?
ただのせふれなのに……
急いで着替えて眼鏡をかけ髪は軽く梳かしてバレッタで止めた。化粧は滅多にしないから日焼け止めだけ軽くつける。早く出ないと本当に間に合わない。前の方に座るからいいけれども、いつものように始まる5分前には席についていたかった。
「オレ、もう少し休んでいきたいんだけど」
「あ、でももう出なきゃ」
「じゃあさ、鍵余分にないの?出るときに郵便受けにでも入れておくからさ」
「……わかった」
タンスの引き出しからスペアキーを出して彼に手渡した。
「じゃあ、もう行くけど……」
「ああ、いってらっしゃい」
にっこり笑ってそういうけど、そんなこと言われて送り出されたことのないわたしは思わず口ごもる。
「いっ……ってきます……」
だけど大学に着くまでに身体の中から流れ出すモノの存在にびくびくしてしまい、教室についてすぐにトイレに走った。
そしてアパートに帰るまで気が気じゃなくて……帰ったときに甲斐くんの姿もなく、郵便受けに落とされた鍵を見て寂しく思えたのは、何でだろう……
6/1 プロローグにあわせて志奈子の部屋の布団をベッドとシーン加筆修正しました。
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