50000hitキリリク〜MIHOさんへ〜
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「温泉、行きたいなぁ。」
広海の部屋で雑誌をめくりながらそう呟いてしまった。
何かここの所、色々と立て込んでてあたしはゆっくりと癒されたいのだ。
(美咲を誘って行こうかな?どっかさ、ゆっくり出来るとこ。)
色々紹介されてるとこを見つけてはチェックしていく。やっぱり露天風呂ありでしょ?山より海の幸ね〜行きたいなぁ。
その時は気がつかなかったの広海がじっとこっち見てるなんて。PCで画面の編集してるとばっかり思ってたから...。
「竜姫、来週の土日バイト休めるか?」
「え、そんな急に無理だよ。撮影入ってたっけ?」
「いや...悪いけど休めよな。それと一泊できるように用意して、親には濱名さんと旅行とでもいっとけよ。」
「はぁ?なに急に...」
わたしは訳わかんなくて眉をしかめてしまう。
「広海の部屋に泊まれって事?編集の手伝いするの?」
「それはもう終わったよ。」
「じゃあ、なんで?」
「いいから、土曜日朝10時にここまで来いよな。」
もう最近横暴なんだから...もともと人の都合構わないほうだったけど、最近ほんとにそれがひどい。
またこの間と同じパターンだ。いきなり車に乗せられて、走り出す。何処に行くかなんてなんにも言ってくれない。
ただ車に流れるMDが70〜80年代のアメリカンヒットソング集みたいで、結構気に入ったので少しだけ許してあげる。やっぱり趣味はよく判ってるよね。このあたりの曲はCMにも使われてるけど、映画にもよく使われてて...
「竜姫、どこ行くか聞かないのか?」
暫くして広海がそう聞いてくる。濃いサングラスをかけた彼は結構ハードボイルドに見える。彼の声も好き。すっごく甘い声をしてるから。
「聞いても答えてくれないんでしょう?いいけどね、もう慣れたし...驚かせたいんだろうから楽しみにしとく。」
そこからまた1時間、高速を走る車から海岸線が見え始める。
「うわぁ、海だぁ!すごいよ、今日は天気がいいからむちゃくちゃ綺麗な色だよ!カメラもって来れば良かったなぁ。」
「そこ、BOXの中に入ってるけど?ハンディだけど。」
さすが、そこから取り出して海をたっぷり撮ってみた。
「うまく撮れないなぁ。」
「お前撮るの下手だもんな。あとでちゃんと撮りなおしてやるから。」
あたしは免許まだ取ってないから広海帰りも運転だよ?どうする気なのかな?
途中お昼を食べに寄って、海の幸のランチでおなか一杯になった。広海も少し休憩だって言って海岸線をゆっくり散歩する。6月の風は気持ちよくて、今にも泳げそうなほど日差しが眩しい。頑張ってミュールなんて履いてきたから、砂浜では脱いじゃう。広海と手を繋いで、なんにも話さず、ただのんびりとあたしの歩調に合わせて歩く。素足だし膝丈のスカートだからと波打ち際まで行ことすると、さすがに止められた。
「だめ?ちょっとだけ、ね?」
ため息つきながらもすっごく優しい顔の広海も靴とソックス脱いでジーンズの裾を捲り上げて一緒に歩いてくれる。
「ひゃっ、やっぱりまだ冷たいね。」
波から逃げて広海の胸に逃げ込むと腰を抱かれて逃げられなくなる。足元を何度か波がすくっていくくすぐったい感触。
「竜姫。」
名前を呼ばれて顔を上げると広海の唇が降りて来る。優しいキスだった。
会話もなくて、このキスだけで特上の幸せを手に入れた気分だった。
とろんとしたまま、あたしたちは車に戻ってまたキスをした。欲望の見え隠れするキスだったけど、あたしが眠そうなのを見るとおでこにキスして『寝てる間につくから...』そういって車を出した。
こんな旅行もいいなぁ。目と身体だけで会話する優しい時間。いつもと違ってえっちだけじゃない広海の優しさが嬉しかった。
「着いたよ、竜姫?」
そこは、すっごく落ち着いた雰囲気の宿だった。ちょっとまって、こんなとこ大学生のあたし達の来るようなとこじゃないよ?
「広海、ここって?」
「結構有名なとこなんだけどな、兄貴に無理いって抑えてもらったんだ。」
「ようこそいらっしゃいました。久我様よりお伺いしております。お部屋へどうぞ。」
案内された部屋って、嘘!はなれ?小さな家みたいだよ...
「こちらはお外に専用露天風呂もございます。呼ばれるまではお邪魔しませんのでどうぞごゆっくり。夕食は6時ごろお持ちいたしますね。」
上品な仲居さんというより女将さん?はにっこりわらって部屋に私たち二人を残して去っていった。
「ね、こんないい部屋高いんじゃないの?」
「気にするなよ、兄貴が今度の俺の誕生日何がいいって聞いてくるから温泉旅館がいいっていったらここに行けってくれたんだ。」
そっかお兄さんていってもかなり年離れてたし、会社の社長になってるて聞いたことあったなぁ。お父さんはもう会長になってるって。
「え、じゃぁ2人分だったら、あたしも一緒ってわかってるの?」
「まあ、兄貴はその辺さばけてるからな。楽しんで来いよって。」
うわ〜なんか急に恥ずかしくなってきた。目の前に現実が...
「どうかしたか?」
「ん?もしかしてあたしが温泉行きたいって言ったから?」
「来たくなかったのか?」
プルプルと首をふる。
「来たかった、すっごく来たかった!でもって、ゆっくりのんびり、何にも考えずに体休めたいの!」
そういった時広海の顔が微かに歪んだことに気がつかなかった。
「だから何でだめなんだよ?」
「温泉だよ、露天風呂だよ?ゆっくり一人で入りたいじゃないの!」
夕食が来るまでに露天風呂に入ろうとしたら、広海が一緒に入るって言ってきかないのだ。
「何もしないから、な?」
「ふーんだ、そんなの信用できない。今までの広海じゃね。」
「今日の俺は?すっごく紳士的だったと思うけど?」
「そりゃ今日はね...最後まで紳士的でいて欲しいんだけど。ね、お願いだから一人で入らせて?」
「じゃあ、そのかわり夜は俺の言う事絶対聞いてくれるか?」
なんか企んでるような目つきが気になったけど。
「はぁ?まぁいいけど...」
変なことじゃないよね?あたしはそれよりも一人でゆっくり入れたことに満足していた。貸し切りで、結構広いそのお風呂、まだ薄明るくて木々の間から気持のいい風が吹いてくる。ちょっとのぼせて岩の上に腰掛ける。浸かってたとこが桜色になってる。あたしって色だけは白いからなぁ。少し涼んでから中に入った。
「ね、広海も入っておいでよ、今なら夕焼け色で綺麗だよ。」
「そうか?」
以外にも素直にお風呂へ向かう。広海が上がってくる頃には豪華な料理が運ばれて来ていた。
「こんなに贅沢でいいのかな?」
「いいんだよ、支払いは兄貴だから。でも次はちゃんと俺の力で連れて来てやるからな。」
そういえばあんまりお家のお金使わない方なんだよね。家賃とかは別だけどそこそこ生活費は彼もバイトしたりしてるし...。
「それより、飲む?この日本酒甘口で飲みやすいぞ。」
ついついつられて飲んでしまいました...料理は凄いし、いつもよりもちょっと酔っ払いかな?
「竜姫、さっきの約束、覚えてる?何でも言う事聞くって言ったの?」
「え、うん...言ったよ。それより、これかたずけなきゃ。仲居さんがね、部屋の外に出してれば、明日の朝取りに来ますからって...お布団も、その、そっちにひいてあるからって。」
ここは贅沢にも二部屋あるのだ。けれども恥ずかしくってそっちの部屋は覗けなかった。だってお布団が2つひいてあるんだと思うの、それも並んで...。やっぱり恥ずかしいからね。
「俺がやっとくから、外にでないか?さっきみたら月が綺麗だったぜ。」
「そう?じゃあ、ちょっとだけ...あっ!」
見事に足が取られてる。だめだ酔っ払っちゃったみたい...
「あぁあ、可愛そうに竜姫。これじゃもう何されても逆らえないね。」
え、今なんて言ったの?
「ちょっと見ておいで、その間に用意するから。」
よくわかんないけど、誰もいないから這って見に行く。ほんとに綺麗なお月さま。結構明るいんだ。夜風が酔った肌に気持いい...。
這っていったために浴衣も裾はだけちゃってるけど、誰もいないっていいなぁ。開放感があるもんね。
「竜姫、さっきの覚えてる?」
真後ろに広海が来るのが判った。
「何でも言うこときくって約束したからね、さて、まずは...」
それはナンデスカ?車に積んであったハンディ?三脚なんかつけてどうするの?
「まず脱いでもらおうかな?」
「な、何言い出すのよ、変態!!」
「だめだよ、逆らう権利なし。」
「うそ、あっ、やだ、広海?」
胸の合わせから手が入り込んでくる。同時に裾の方からも...
「あ、んっ...はうっ、ん、やぁ...」
身体はすでに熱をもってる、敏感な部分を直接同時に擦られてあたしははしたないほど甘い嬌声を漏らしてしまう。誰もいないといってもここは屋外だ、こんなところで...
「いやぁ、広海、ここじゃいや...」
「わがままだなぁ、この月明かりの下でどれほどお前の身体が綺麗か、ちゃんと残しておかなきゃ、な。」
(え、残す?まさか!!)
「ハンディ回ってるの!?」
「もちろん♪」
嘘でしょ!そんな変態さんみたいなの!
「やだったら、広海!」
「逃げれるんなら逃げれば?さっき一緒に入ってくれたらこんなことしなかったのに...温泉旅行のご褒美貰わなくちゃ割りが合わないだろ?大丈夫、映像のプロに任せて、綺麗に撮るからさ。」
「そんなもん撮ってどうするのよぉ、はうん!くうっ...」
身体に与えられる愛撫は止まらない。あたしは酔って動けない体を捩るけれど逃げられる訳もない。こんなに身体が彼の思うがままに動いてるのに...
「竜姫のためだよ。記念にもなるだろ?」
「なんであたし?そんな記念いらない!もう...許して...」
身体も先ほどから小刻みに震え始めている。こんなに身体が熱いのはお酒のせい?それとも撮られてるから?浴衣は腰まで落とされ、もう腰紐に引っかかってるだけの状態。
「じゃぁ、もう一回お風呂一緒に入る?」
「入るから、ね、もう...広海ぃ...」
泣きそうになってしまう。そんなあたしにごめんといって、軽くキスをすると浴衣を解いて2人裸になって露天風呂へと沈んでいく。
「おいで、竜姫。」
彼の上にのせられて湯船の中で繋がっていく。どうしていいか判らなかったら激しく下から揺さぶられた。
「はうんっ、あぁっ、あん、あん、あぁん...」
彼の上で仰け反るあたしはもう意識なんてない。自分で動いてるのかどうかも判らない。
「はぁ、やばいな...竜姫、後ろ向けよ。」
露天の岩の上にうつぶせにされた。すぐに入ってきた彼のものが激しく突き上げてくる。
「やぁっ、はうっ、あぁ!い...ん」
「あうっ!」
いきそうな所で彼が出ていく。暫くして背中にお湯が掛けられた。
「竜姫、大丈夫?」
掠れた広海の声は凄く色っぽく聞こえた。あたしは動けるはずもなくただぐったりと横たわっていた。あとで聞いたらゴムをつけてなかったからあたしの背中に出したんだそうだ。見てなかったのでどういう事かよく判らなかったのだけど。
バスタオルでくるまれて抱き上げられた。
「だめだよ、あたし重いから...降ろして、歩くから...」
「酔って足腰立たないくせに...湯あたりもさせちまったみたいだな、大丈夫か?」
「うん...ふわふわして気持いい...」
「そっか、竜姫、愛してるよ。今夜は俺だけの竜姫だからな。何処にも逃げられないぞ。」
「ん、逃げないよ、広海?」
並べられた布団に横たえられて広海の持ってきたミネラルウォーターを流しこむ。濡れたタオルで顔を冷やして熱気を取っていく。
「昼間手も出さずに寝かせてやったろ?今晩は寝かせないからな。」
「へ?なんて?」
「愛してるから、寝かせないって言ったんだ♪ずーっと今日一日我慢してたんだからな。褒めてくれる?キスで留まっただろ?な?」
それって昼間のキスの事?
「さっきはイケなかっただろ?ゆっくり感じさせてやるからな。」
「ちょ、ちょっと待って...もう無理だよ、身体力は入らないから!」
「大丈夫、されるがまま感じてみな?」
「あ、んんっ!!」
又キスから始まる。もう自分が何処にいるか判らないまま、一晩中されるがまま、感じさせられて何度も昇り詰めていった。
空が明るくなる頃ようやく彼のものから解き放たれてふかふかのお布団に沈み込むように深く眠りについた。
「ジーーーーッ」
(何の音?)
うっすらと意識が戻って目が覚める。身体はしっかりと広海の腕の中に閉じ込められてたので頭だけ動かしてみる。
(痛ぁ、二日酔いかなぁ。あれ?ハンディ...赤いランプ点きっ放し...えっ!!)
がばっと身を起こす。けれど広海の腕は放してくれない。
「起きてるんでしょ?」
「くすくす...」
広海がまるでいたずらっ子の様に楽しそうに笑ってる。
「ひどい、撮ってたんだ...」
「だって、竜姫気がつかねぇんだもんな。誰にも見せたりしないさ、二人で見ような♪」
「馬鹿!変態!!もう、知らない!!」
「お前のためもあるんだぜ?お前自分が抱かれてる時どれだけ綺麗で色っぽいか知らないだろ?すぐに自分に自信なくして落ち込んでる竜姫のためにだな...ま、いっか。俺だけが知ってたらそれでな...」
「...ほんとに?」
「あぁ、処分しろといえばするけど?」
「....」
『それとも見てみたい?』
耳元で囁く意地悪な甘い声。
「知らない!」
彼は布団を頭からかぶったあたしをそのまま抱きしめて笑った。
数日後、見せられたその映像に愕然として三日寝込んでしまったわたしだった。
「ほら、見てみろよ、
竜姫って遠めで見ても色白でめちゃくちゃ色っぽい体してるだろ?
この喘ぐとこなんか俺いっつもたまんねえんだぜ?」
「やだぁ〜〜〜!!」
「うわっ、自分でやった事ながらすげえ格好させてるなぁ。」
「もうやめてぇ...」
画面に映るあたしはそんなに大きくは映ってなかったけれど、
喘ぎ声や、そういったえっちな音がしっかりと収まっていた。
信じられないくらい色気のあるあたし...本当にこれがあたし??
「な、綺麗だろ、俺の竜姫は♪」
嬉しそうな顔した広海があたしを後ろから羽交い絞めにする。
「あー、こんなの見てたらやりたくなるよな?しよっか、竜姫?」
「もう、変態!馬鹿!!!」
嫌がっても無駄なのは判ってる。益々彼の言いなりになって行く今日この頃。
「もう帰る〜〜〜〜!」
絶叫は外には聞こえずに、くちびるで塞がれた。
50000hitキリリクの作品。テーマは「海のある温泉に」でした。 最後はちょっと変態になってしまって...許していただけたのでこのままUPします。 |