ドアを開けたら...

〜竜姫〜

「た、竜姫!なんなんだ、その格好は?」
「何って、美咲ご推薦のデート仕様なんだけど、どうかした?」
「なんでそんなにスカートが短いんだ?」
「ミニスカートだから。」
「なっ、どうしてそんなにしっかり化粧してるの!」
「デートの時ぐらい化粧しちゃ悪いって言うの?もういい、行かない。美咲と遊びに行くから!」
「だめだ、そんなの絶対だめ!竜姫...」
上目使い光線、これをやれって美咲に仕込まれた。
「せっかく広海とのデートだから頑張ったのに...そんな言い方ひどいよ。」
「ごめん、せっかく綺麗にしてきてくれたんだものな。わかったよ...。」
やったね!美咲の言った通りだ。すごいなぁ...なんでこう言ったとおりになるんだろう?

あたしは悩んでた。彼氏、彼女の仲になってもあたし達の関係は一部分を除いて変わることはなかった。映研では仲間として今までどおりだし、じゃれあいもまあそんなに変わらないと思う。ちょっと広海がえっちになったくらいで、時々色んなとこに手が伸びてくる程度。もっとも大学内でそんなこと絶対だめと拒否したから、だいぶましかな?ただ、広海の部屋へ行ったときだけは覚悟しないとだめだった。コーヒー飲んだり、ご飯食べてる間はいいんだけど、すぐに組み敷かれてえっちされてしまう。もう大分慣れはしたけど、最初が最初だから未だに体が緊張する。そりゃ、あたしの体がほぐれるって言うか、受け入れ態勢になるまで絶対無理強いはしないんだけれども...なんであんなにえっちなの?男の人って皆そうなの?会うとしたくなるんだろうか?えっちのためなら、あんな色んなこと(何のことかはご想像ください、とてもじゃないけど竜姫の口からは言えません!)平気でしちゃうわけ?あたしは広海しか知らないから、どう判断していいか判らなかった。だから仕方なしに親友っていうか悪友の美咲に相談した。

『...あんたそれ本気で言ってる訳?』
『え、なによぉ、おかしい?だって判んないんだよ!』
『えっちばっかりなのはどうしてって...聞くか?普通。』
『美咲、色々経験あるじゃない...だから...』
美咲は自分の机からこっちを向いてため息をよこした。いつもクールで、割り切った考え方の彼女は、癖あるけど付き合ってみればすごく誠実だった。いつだってあたしの疑問にちゃんと考えて答えをくれる。口も堅いし、ふざけたりもしない。男女関係もかなりさばけてると思う。いろんな小説とか書いてるし、それ読んでるとすごいって思う。
『ふぅ、じゃ、聞くけど竜姫は彼とするの嫌いなの?そんなに久我は下手な訳?』
『そ、そんなことわかんないよぉ!』
『竜姫がちゃんと気持ちよくなってるかどうかってこと、どう?』
すっごくストレートに聞いてくる。まぁこれが美咲なんだけれども...
『き、気持ちよくなってると思う...』
『じゃあ別に嫌がることないじゃない?何が不満なの?』
『だ、だって、あたし男の人と付き合うの初めてだけど、普通デートして、映画見たり公園散歩したり、遊園地いったりそれからでしょ?ち、違うの?』
『はぁ、予想以上にお子ちゃまな考え方だね。ま、そういう一般的なのもあるけど、身体から始まる恋だってあると思うよ。ま、最初からよかったりすると身体ばっかりになりやすいだろうけど、久我はちゃんとあんたの事を大事にしてくれてる訳でしょ?ならいいとおもうけどなぁ。どう見てもあんたにメロメロって感じだけど?』
そうかなと考え込んでるあたしに美咲が提案したのが今回のデートだ。
『とにかく、まずこっちに主導権を握る。泣く、笑う、すねる、甘えるこれをちゃんとポイント抑えてやれば言うこと聞いてくれるって。』

言うとおりにやったらほんとに聞いてくれたよ。今までミニスカートはいてたら一緒にどころか街に出してくれない。そのくせすっごく嬉しそうに部屋でえっちしてくるくせに...あぁ、もう最近恥ずかしいこと平気で考えるようになっちゃったよ!これも全部広海のせいなんだから!

車で街まで出かける。帰り遅くなってもすぐに送っていけるようにらしい。そのかわり広海はお酒飲めないけどね。
「はい、どうぞ竜姫。」
「え?」
駐車場に車入れて降りようとすると助手席に回ってドアを開けてくれる。
「どしたの?広海、これやりすぎじゃない?」
「いいの、それなりの格好した人にはそれなりのエスコートするのが俺のモットーなの。」
そういうと左の腕を差し出す。
「なに、これ?」
「馬鹿、腕組むに決まってるだろ!そんなヒールの細いのはいてちゃすぐに転ぶだろ、竜姫は。危なっかしいし、転んだら丸見えになっちまうからな!」
ほれと肘を突き出してくるので、恐る恐るその腕に手をかける。
うわー!初めて腕組んじゃったよぉ!もしかして、もしかしなくっても、周りからみたらあたし達恋人同士に見えるかな?以前なんかゲイのカップルと間違えられたことあったよな。あの時は妙に悲しくて、いつかは普通のカップルに見えるように歩きたいって思ってた。
「そ、そんなに嬉しいのか?」
あんまりあたしが嬉しそうにしてるのでそう聞いてくるから、思いっきり頷いて、その勢いでぎゅって広海の腕にしがみついた。
「ば、馬鹿、朝っぱらから、くっつきすぎ...」
なんか真っ赤になってません?うわっ、なんか嬉しいよぉ!こういうのやってみたかったんだよぉ。ね、広海だって嫌じゃないよね?
今までの態度だとほんとにあたしと街を歩くのが嫌なのかと思うくらい嫌がってたもん。
「ね、最初どこいくの?」
「そりゃ映画館でしょ?竜姫のすきそうなのしてるよ。」
「ほんと?見たい!!」
さすがにそっちは詳しい上に好みも知り尽くしてますから、お任せだよね。

「な、なに...この椅子?」
「なにってカップル専用の2人がけの椅子だけど?ここのミニシアターはこれが売りなんだよな。」
そういってニヤって笑ってみせる。何かいやらしい?あたしは健全なデートコースがやりたいんだよ?普通の椅子でいいんだってば!
それでも強引に座らされて、映画は堪能しましたよ。さすがにあたしの好きな、アクションあり、恋愛あり、子役が可愛くって泣かすのありの作品。リバイバルだったけどすっごくよかった。泣いて笑ってときめいて!ただし、広海の手がなかったらもっとよかったかも...だって、ラブシーンとかでは肩に回してた手が腰のあたりを彷徨ったり、キスシーンではあたしの首筋にキスしてくるんだもの!もうこっちがドキドキでその瞬間映画どころじゃなかったんだから!
「広海、ひどいよ、手出してくるなんて!」
「アレでも抑えたんだぜ?まわりでもっと色んなことしてたのに、気がつかなかった?」
周り?映画見てたら気がつかないわよ!じゃあ、あなたは何処を見てたわけ?もう!
ちょっとぷんぷんしながら歩き始めると急いで広海が追いかけてくる。
「待てってば、一人で行くなよ。お昼にしないか?俺、朝食ってねえからもうぺこぺこなの。」
レストラン系に入ってもいいんだけど、映画館から出てきたのがちょうどお昼時でどこも一杯だった。
「いいよ、そこのケンタッキーでも。あたしチキンフィレサンド食べたい気分なんだ。」
「そっか、いいとこ連れてってやろうと思ってたんだけど...そうだな、待つの嫌だし、待てるほど俺の腹ももたないだろうし、お前そういうとここだわらねえもんな。」
「どういうとこ?」
「女ってさ、洒落たレストランじゃなきゃ嫌だとか、イタメシやフレンチって言うんだよ、すぐに。」
「ふうん、そうなの?今まではそうだったんだ...」
なんか過去の女の人がちらりと見える。あたしがなんにもない分広海にありすぎて時々びくびくしてしまう。比べられたら、だめだもんなあたしなんか...
「俺がそんなの好きじゃないって知ってるだろ?だからそんな女もごめんだ。でもほんとにうまいとこにはまた連れてってやるよ。予約してな。そん時は思いっきり着飾ってきていいから。」
予約?何かすごいとこなんだろうか?たしか広海っていいとこの坊ちゃんていうか、お金持ちなんだよね。親も結構放任みたいだし...。
「じゃ、ここで席とって待ってて。買って来てやるよ。チキンフィレと、コールスローが好きだったよな?それと飲み物は?」
「ん、アイスコーヒーでいいよ。」
「わかった。俺が腹減ってるから、ポテトや色々買ってくるから竜姫も食えよな?」
2人でこんな風に来たことがないわけでもない。高校時代こうやってファーストフード店に寄ったこともあった。けれどもあたしは一緒にレジに並んで自分の分は払っていた。何度も奢ってやるとか言われたけど、甘えちゃいけないと思ったし...2人でいてもすぐに広海目当ての女どもに囲まれて、嫌味も言われたりした。あの時だよな、あたしが親友になろうって決心したのは。親友なら広海が誰と付き合ってても一緒にいて詮索されることも、嫌味言われることもないからって。そしたら広海も『そうだな、親友だな』って認めてくれた。

「ね、君一人?よかったら席一緒してもいい?」
「は?」
なんか軽そうな茶髪の男が寄ってきて親しげに話しかけてくる。知り合い、じゃないよな?結構綺麗な顔立ちしてる。背も結構高いな。
「さっきから見てたんだけど、すっごくいいなぁって。かっこいいよ、モデルやってるの?」
「やってないけど...」
「そこらのモデルより綺麗だよ。よかったら電話番号とか教えてくれない?」
番号?聞いてどうするんだろう?新手のキャッチセールスかなんかなのかな?
「なんで?」
「なんでって...面白いこと言うね!君が気に入ったからなんだけど?だめかな、俺じゃ。できたらお知り合いになってお付き合いしたいって言う考えなんだけど、最初はお友達からどう?」
どうって、これもしかして、ナンパってやつ?初めてだよ声掛けられたの!
「お友達って言われても、その、か...」
うわ、言おうとおもったら急に恥ずかしくなって言えないじゃない『彼氏がいるの』って!
「か、か、か、」
「か?どしたの、蚊でも飛んでる?」
「ちがう、あたし、か、か、か、彼氏と来てるからっ!」
「よく言えました。言わなかったらどうしようかと思ったけどな。」
「広海!」
「か、彼氏いたんだ...ごめんね。」
後ろに仁王立ちしてる広海の顔は口元笑ってるけど、目はマジに細まって怖い顔になってる。
去っていく茶髪君の方を一瞥するとゆっくりこっちを見た。
「な、だから嫌なんだよ。竜姫自覚ないでしょ?そんなスカートで平気で足組むし、心臓に悪い。」
「そんな...ちゃんと言ったよ。」
「かなりつっかえてたけどね。」
こっちの恥ずかしさなんてわかんないんだろうか?彼氏って人に言うのにすっごく抵抗あるっていうより恥ずかしいんだよ、まだ。広海はちいさく笑ってテーブルに買ってきたものを置いた。
「さ、食おうぜ、こんなに買ってきちまったから。」
これを2人で食べるんですか?山盛りのトレーを見て食べる前にめまいがした。

「さて、おなか一杯になったし!」
ケンタッキーを出てぶらぶらと街を歩いてると思ったら、駐車場に向かい始める。
「ん、なんか買いたいものとかあった?」
「別にないけど、どこ行くの?」
「ドライブ♪」
そういって助手席側のドアを開けてあたしを乗せると車を動かし始めた。
「デートの定番は海でしょ?」
にっこり笑った彼の顔に、何か企みの影を感じるのは私だけでしょうか?付き合いの長い分、こんな顔する広海が、なにか企んでる時の顔だと言うことをわたしは知り尽くしているから...

  

予告書いちゃおうかな?
広海が静かなのって怖いですね〜。きっと何かあるに違いない4話乞うご期待!