〜200万アクセスキリリクbyしょ−りょーさん

バツイチ男の事情・2
〜卒業までのカウントダウン〜

「はぁ...」
正直言って、あれから俺は、瑠璃に快感を送り込んだあの日のことを後悔している。

あの時の、甘い声をあげて果てる瑠璃の表情や身体の動きまでもが、俺を毎夜のように誘惑するんだ。
たまんねえよな...子供だと思ってたのに、あんなにも女だったんだから...
いや、今までだって瑠璃は大人の女性だったんだ。ただ俺が、自己セーブのために子供っぽいとか、大人の男女の関係のことをわかってないとか、勝手にそう思いこんでいただけだったんだ。
朝も夜も、思い出しては、布団の中で学生時代のように元気な息子を慰める毎日。
あれ以来エッチな雑誌もビデオも要らない。瑠璃の声と表情を思い出すだけで十分だった。きつそうな瑠璃の中に自分を潜り込ませる瞬間を考えただけで果ててしまいそうだった。
だけど...こうなったらとことん、意地だ。

「真吾さん...」
身体を愛されることを覚えた瑠璃は何度か誘惑らしき物をしてくる。
たぶん、無意識なんだろうな。色っぽい声で呼ばれて、すり寄られたりするとたまったもんじゃない。
キスと、触れる程度で我慢しておきたいのに、瑠璃は感じやすいらしく、その度に身体を震わせるのだ...
だめだ、いつまでもたせればいい?
他の女で間に合うものじゃないなんてもう判っている。
瑠璃がいいんだ...瑠璃じゃなきゃ駄目なんだ。
瑠璃を...抱きたい。
俺の下で鳴かせて、女にしてしまいたい。身体の奥底にまで俺を刻みつけて、俺だけのものに...

「就職が決まって、お母さんに許可をもらえるまで、俺は瑠璃を抱かないから。」
そう宣言したからには耐えるしかないのだ。


『就職、決まったよ!小さな工場だけど、簿記取ってたのがよかったみたい。』
瑠璃がそう報告してきたのはもう12月の頭だった。ちょうど結婚退職で3月にやめる女性職員の後任を探して、遅れて申し込んできたらしかった。
「そっか、よかったな!お祝いに何かごちそうしてやろうか?何がいい?」
俺は営業で外に出ていたので、瑠璃のメールに返信する代わりに電話をかけた。営業先から車に戻った車の中で誰の目も気にせず瑠璃の声を楽しむ。
『あのね、お母さんも今日お祝いしようって...それで、あの、真吾さんも一緒にって...』
「えっ、もしかして、言ったの?俺のこと...」
『うん、会わせたい人がいるって...そしたら就職祝いに一緒にって...駄目?』
電話口から聞こえる遠慮がちな可愛い声。
...逆らえないよな?
けど、瑠璃の方が言い出すなんて...彼女も早く二人の関係を公にしたいと思ってくれているってことだろうか?そうだったら、俺としてはすごくうれしい。
「駄目じゃないよ。それじゃ、なんとか早く帰るよ...ああ、前に行った中華の店、個室予約しとくよ。それでいいか?」
『...うん、迷惑、じゃない?』
「そんなはずないだろ?けど、お母さん、俺見て驚かないかな...」
『昨日言ったの、歳上だって。お母さんも就職喜んでたから今のうちって思って...』
「そう...いいよ、約束してたから。じゃあ、今夜、7時に店でな。」
携帯を閉じて、ちょっとため息...
年上って言ってもまさか15も上のバツイチだなんて思わないだろうな...
どうやれば誤解がないだろうか?会社に戻っても、そのことが頭から離れない。
別れた妻の実家に、出来ちゃった婚の報告をしに行くのだってこんなに不安じゃなかった。あの時はとにかく聡美、別れた妻の方が結婚したがってたし、俺も自信満々だったころだから...
「中村くん、何難しい顔してるの?トラブル?」
今年から新人教育指導員になって、営業からは離れた深沢、いや今は結婚して三谷奈津美が声をかけてきた。相変わらず隙のない身のこなし、きりっとまとめられた髪を解きたいと以前何度思ったことか...それを10も下の後輩にかっさらわれた。まあ、一度は振って、他の女と結婚した俺が悪いんだけどな。
今やその差を超す年下の彼女持ちなわけだ、俺は...
「いや、今夜さ、とうとう彼女の母親と会うことになってな...」
「まあ、よかったじゃない!じゃあ、瑠璃ちゃん就職は?」
「決まったんだ。そのお祝いも兼ねて俺を紹介するらしいけど...」
「なによ、中村くんらしくないわね。いつだって何事にも自信満々なくせに、瑠璃ちゃんのことになると駄目みたいね?」
「深、三谷、瑠璃のおふくろさんって、37なんだぞ?」
「えっ、それって、あたしたちより四つ上なだけ?そ、それは...大変?」
いくらなんでもな。三谷の親はいくら何でも50は超えてただろうから。
「ああ、俺もうどう挨拶していいかわかんなくってさ、結構不安って言うか、ぐらぐら...」
「珍しいね、あなたの弱音なんて。真正面、正直な気持ちでいいんじゃないの?反対されたって瑠璃ちゃんはあなたから離れないでしょうし、お母さまだって、娘を悲しませたくないでしょう?それとも反対されたぐらいであの子を諦められるのかな?」
にっこりと営業用の笑顔でこっちを観察してやがる...まあ、今の旦那とくっつくまでにはイロイロあったが、元々は仕事の出来るしゃきっとした女だ。それが愛されてる女の自信ってやつか?堂々としたその態度に、俺は自分を見比べてしまう。確かに自信は今のところ無い...だけど瑠璃を他の男の手に渡すことなど、想像するだけでも気が狂いそうになる。
俺って、矛盾してるよな...
三谷奈津美の話によると、瑠璃のやつ時々彼女に相談して来てたらしい。まあ、こんな年上の彼氏のこと同級生には相談できないだろうから、彼女ならうってつけなんだろうけど、何もかも知られてるようで分が悪い。
「諦められないって顔だよね。」
くすっと目の前で優しく笑われた。
「真正面...そうだな、やってみるよ。」
俺は自信を取り戻すべく、顔を上げてにやっと笑い返した。


「あの、お母さん、こちらが中村真吾さん...」
「瑠璃さんとお付き合いさせて頂いてます、中村です。」
特上の笑顔を添えて名刺を差し出す。瑠璃の母親らしく、線の細い、だが気の弱そうな女性だった。今まで瑠璃を一人で育てて来るにはかなり無理もしただろう。下を向いた気弱な目線、支えが無ければ生きていけないような弱さを醸し出していた。
その女性が俺の顔を見るなり頬を赤らめて名刺を受け取ってもまだ俺の方を見ていた。
「あ、あなたが...?」
「はい、真剣に、お付き合いさせて頂いています。」
すぐさま顔つきが変わる。とがめるような視線が俺を貫く。
「あの、失礼ですが、中村さんはおいくつでいらっしゃるの?」
「...33になります。」
そう言ったとたん瑠璃の母が息をのんだのがわかった。
「あたしと変わらないじゃないですか...」
「おまけに、バツイチです...」
もうやけだった。後でばれてもしょうがないなら今のうちに言ってしまおう。
「バ、バツイチって...まさか子供さんとか...」
「一人います。別れた妻が引き取りましたが、今は再婚しているので養育していません。」
「そんな...」
黙り込んでしまった瑠璃の母は、予約していた料理が運ばれてきてもあまり食べずに下を向いていた。
小さめの丸テーブルで、三人均等な幅で座っていたので、ちらっと瑠璃の方を見ると不安そうな顔で見返してくる。
「あの、よかったら、どうぞ...」
ビールを勧めると、意外にも彼女は飲み始めた。
「まさかとは思いますが...瑠璃とはどこで知り合われたんですか?」
一番答えにくいことを聞かれてしまった。
「おかあさん、あのね、お母さんが入院したとき、あたし言わなかったけどお金無くなっちゃったの...その時、中村さんが何の見返りもなくお金かしてくれたの。そのおかげで、あたし高校やめなくても済んだし、変なことしてお金稼がなくても済んだの...進学のお金も出してくれるって言ってたけども、あたしは、早く就職して...真吾さんのお嫁さんになりたいって思ったの...」
「瑠璃っ!あなた、この人と...」
「お母さん、僕は彼女にプロポーズしました。本気です。けれどもまだ学生の彼女とは、その、まだ、きれいなままですから...」
「え?」
そう言った俺を不思議そうに見返す。
「そうなの?瑠璃。」
聞き返す母の言葉に頷く彼女はしっかりと目線を据えていた。
「でも、あたし、本気なの...」
「中村さんも...?」
「ええ、本気で、彼女と先のことを考えています。まずは就職ですし、彼女だってちゃんと外の世界をみたいでしょうから。それでも彼女がわたしでいいと言ってくれて、お母さんのお許しがもらえたら...こんなわたしですが、お嬢さんと結婚させて頂きたいと思ってます。」
しばらく黙り込んで、それから少し考えさせてくれと彼女は言った。
やっぱり、フクザツだよな?高校生の娘に自分と変わらない歳の男が...結婚すれば息子になるってわけなんだから...



数日後、瑠璃の母親から電話を貰った。名刺に携帯も載せていたから、そっちにかかってきた。
『ご相談したいことがあります。』
そう言って指示された場所に出掛けていったのは夜の8時。喫茶店でなく、カウンターのバーに腰掛けた彼女はVネックのモヘアのセーターを着て、あの時見たよりも化粧もしっかりとして見違えるほど若く...女に見えた。もう既に少し飲んでるのか、目が潤んで、目元も赤かった。
「す、すみません、お呼び立てして...あの子の前では聞けないことですので...」
口調は相変わらず弱々しげである。この人はこうやって今まで生きてきたのだろうか?だからいつも瑠璃は自分ががんばらなきゃと気を張って、身体まで張ろうとしていた...
「いえ、お話って...なんでしょうか?」
「あ、あの、失礼ですが、瑠璃は...あなたからいくらかお金をお借りしてるんでしょうか?」
「え?いえ、それは...」
ないと言えば嘘になる。最初の10万も医療控除で返ってくるとわかったときに返すと言い張る瑠璃にすぐにまたいってはいけないからと受け取らなかったのだから。
「あるんですね?...おかしいと思ってたんです。あたしが急に倒れて、うちには余裕なんか無かったはずなのに、わたしの入院費もちゃんと支払いが済んでるっていうし...退院してみても、意外なほどお金が残っていたので...あの子はバイトを増やしたからと言ってましたが、そのおかげで、わたしはあの時言い寄られていた男の人から、無理にお金を借りなくても済みました。そのことは感謝しています。でも、瑠璃はわたしが退院してからも、しょっちゅうどこかに出掛けていってるようでしたし、わたしが買ってやれないような服も出てきて...ちょっと心配してたんです。あれもすべて中村さんだったんですか?」
やはり母親だ。見えていない様でちゃんと見ていたのだ。娘のことは...
「彼女に、誕生日やクリスマスにプレゼントしました。普段彼女は家事の出来ないわたしの代わりに家のことをしてくれますので、そのお礼だったんです。最初にお渡しした10万もその家政婦代のつもりだったんです。彼女はがんとして受け取ってはくれず、いずれ返すつもりでいるようでしたけれども。」
「やはりそうでしたか...」
彼女はバックから封筒を差し出した。
「ここに10万入っています。これをお返しするので、瑠璃と...うちの娘と別れてもらえませんか?」
「.......」
まさか、そう言われるとは思わなかった。
体中の血液すべてが地面に流れ出したような虚脱感、軽い目眩さえ覚えた。
「まだ、瑠璃と、深い関係でないなら、別れてやって下さい。あの子はまだ、今からなんです。それなのに、母親と変わらない歳の男と、それも離婚経験があって、子供までいる様な人と一緒になるだなんていったら、わたしはまた親戚から白い目で見られてしまいます。わたしは今まで、うちの子をどこに出しても恥ずかしくないようにきちんと育ててきたつもりです。あたしが身体も弱いせいで負担をいっぱいかけてしまいましたけれども、いずれ、ちゃんとしたところにお嫁にやるつもりだったんです。ですから...お願いします。」
何も言い返せなかった。
深い関係ではないかもしれない。でも、もう、別れることなんか出来ないのに...
「これは、母親としてのお願いです。」
「僕は...」
「そしてこれは女としてのお願いなんです。中村さん...娘と別れるのにただでとは言いません。その...中村さんも男の人ですから...欲しいと思われるなら...わたしは...瑠璃ほど若くはないですが、女なんです。主人に死なれてから、寂しくて男の人に縋ったことがないとは言いません。でも、今まで娘のためにそんな自分をずっと押し殺してきたんです!あたしだって、幸せになりたい!瑠璃だって幸せになって欲しい、だから...瑠璃は諦めて、その代わりに、あたしを...」
彼女の手は俺の太股に置かれ、その柔らかで淫靡な動きをさせながら股間へとはい上がってくる。
何を言った?彼女は、娘を諦めろと。その代わりに自分を...?
「やめて下さい、お母さん!」
俺は立ち上がって彼女を見下ろした。
「俺は、瑠璃を愛してるから抱かなかっただけです。他の女なんか要らない...欲しくない、瑠璃だけが欲しいんです!」
びくりとその手が止まる。
「許して頂けないなら、許して頂けるまで待ちます。大の男が1年以上、惚れた女に手を出さずにいたのは、その覚悟があるからです。いつだって瑠璃をこの手に抱けた。けれども抱きたいだけじゃなくって、彼女を愛しく思うこの気持ちを守りたかった...たぶん、若い女が欲しかっただけだと、そう取られるだろうと思われることはわかってました。けれども俺は、そうじゃないことを証明したかったんだ。俺には、瑠璃の代わりはいないんです...あなたの申し出は忘れます。それは瑠璃には聞かせられないことですから...」
下を向いて震える瑠璃の母、彼女は今までどんな思いで瑠璃を育ててきたのか...若い子持ちの女が生きて行くには生やさしい世の中でないのもよくわかっている。けれども彼女が守りたかったのは瑠璃なのか?それとも...
「あの子だけが幸せになるなんて...あたしだって幸せになりたいのにっ!」
そのまま彼女はカウンターに泣き崩れた。

女って...わかんねぇ。
何で自分を代わりになんて言い出したんだ??酔ってるにしたってなぁ...判らん。
きっと一生理解なんて出来ないんだろうとそう思う。そう思うと同時に、瑠璃だけはちゃんとわかってやりたい、そう思う俺だった。

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母の心情はいかに??37ってまだまだ女ですものね。彼女が何を考えてああいったのか、ご想像にお任せします。
これを書くとめちゃくちゃ暗くどろどろになりそうだわ...要するに、そういう?女性っぽいです。
さて邪魔が入りましたが、どうなるか?
キリリクだからすんなり書けばいいんですか、某バツイチ男性が「焦らしてくれ〜」とのことだったんで(笑)