33333hitキリリク作品〜あかねさんへ〜

ずっと好きだから...

「お願い!紗弓!このとおり〜〜、日曜日買い物に付き合って!」
ちょっと日当たりのいい日のお昼休み、親友の芳恵ちゃんが教室に飛び込んできていきなり拝み倒してきた。
「よっし〜、どうしたの?らしくないよ?そのぐらい構わないってば!」
「ほんと?来栖の奴、怒らない?」
「あー、と、それは、何とかするよ!他ならぬ芳恵ちゃんの頼みだからね!」
普段クラブの時は皆と同じようによっしーって呼んでるけど、マジ話したりする時はやっぱり芳恵ちゃんだ。
遼哉は...何とかなるでしょう?だって、先々週アレだけやったのに、またずっと遼哉の部屋でえっちばっかり...もうえっちばっかりでおかしくなっちゃうもの。そう思ったとたんに身体が熱くなる。――だめだ、あたしも重症だわ。でも、ちょっとは間を空けてもらわないと...空けたらひどくなると思って、あれから週末だけでなく、普段の日も遼哉の部屋に何度か行ったのに...。そしたらやっぱりえっちになって、週に3回もしたのに、また週末も昼間からだよ?朝練終わって飛んでいったのに、夕方までずっとなんだもん。いくらお母さんが日勤で、夕方に帰ってくるからってそれまでずっとすることないじゃない?あたしまた立てなくなるところだったんだから!そんなのが続いたらおかしくなるでしょ?
遼哉ってあたしとえっち以外したくないんだろうか?そりゃあちゃんと遼哉の愛情も嫌って言うほど感じてますケド。真剣に悩んでしまう今日この頃だった。
「ね、何買うの?」
「えっとね、勝負パンツとブラのセット!」
「よ、芳恵ちゃん...それって?」
ニコニコとまるでTシャツでも買うみたいに...
「もうすぐ今村くんの誕生日なの。それでさ、来来週の日曜日運動部ほとんど休みになるらしいんだ。」
「なんで?」
「体育科の香山先生が結婚するでしょ?だからほとんど体育科系の先生が呼ばれて練習休みになるらしいの。もちろん野球部の監督も我がソフト部のじゅんちゃん監督も当然参加だから休みになるよ。変わりもいないからね。もち、柔道部もって言いたいけど、染谷親父がいるから判らないって。ね、だからデート1日出来るんだよぉ!これってやっぱ勝負でしょ?」
だ、大胆だわ〜芳恵ちゃん、着々と準備して...でもこれが普通なんだよね?誕生日とか、バレンタインとか、クリスマスに彼と初めて...だよね、やっぱり!それに、間違ってもぶっつづけでやったりするもんじゃないはずよぉ!芳恵ちゃん、それが王道よ!
「じゃ、日曜日練習終わったら速攻で行こうね!」
嬉しそうな顔しちゃって、これがソフト部の4番で守備の要、鬼の主将よっしーとは思えないくらい女の子してる。もともと凛々しい顔立ちで男っぽく見えるけど、中身はすっごくいい子だもん、今村くんと両思いになるまでなんて、見ててもじれったくなるくらい可愛くて、芳恵ちゃんをちゃんと選んだ今村くんてほんとに見る目あると思う。
そして2人はあたしの理想に近い進展の仕方してるんだよね。いいなぁ、このさい一杯応援しちゃおう!今村くんて超真面目、寡黙ってタイプだから想像つかないんだけど、ま、一応あたしも経験者だもんね。頑張れ芳恵ちゃん!

「遼哉ぁ?あれ、今村くん...?」
「じゃあな、来栖ありがと。また頼むよ。」
「おう、いつでもいいぜ。」
あたしを見ると少し赤い顔して俯いて去っていく芳恵ちゃんの彼氏今村くん。昼休みに遼哉のとこに来てるなんて珍しい。
「仲良かった?今村くんと?」
「最近な、ソフト部のミーティングが長引いた時に一緒に待ってるときに話しする。お互いに彼女から色々聞いてる訳だからな。」
「そっか...あのね、遼哉、日曜日芳恵ちゃんとお買い物に行ってもいい?」
「日曜?午前練習で午後から空いてるって言ってなかったっけ?」
「う、ん、そうだけど、どうしてもって、いいでしょ?ね、遼哉ぁ。」
芳恵ちゃんみたいに両手合わせてお願い、をしてみる。
「くそっ、そんな顔したらだめって言えないだろ?ったく笹野の奴...ま、いっか。ここんとこ満足させてもらってるし、紗弓もたまには女の子同士で買い物とか行きたいもんな。いいよ、いっといで...その代わり早く帰ったら電話しろよな?」
にやにやと笑ってる遼哉。やっぱりまだスル気なの?
「晩飯ぐらい食べに行けるだろ?奢ってやるよ、バイト代出るから。」
「ほんとに?それだけでいいの?」
「なんだよその言い方?」
ついっと耳元に唇が寄せられる。
『やっぱ、シテ欲しくなったの?』
遼哉は吐息とともにそんな事言ってくる。
「馬鹿!違うわよ!もう、知らない!だから学校で遼哉に話しかけるのやなのよ。」
もうあたしってば真っ赤になってない?すぐにこうやってからかわれるの。涼しい顔して笑ってる遼哉。なんだか悔しい。

「ねえ、どこに買いに行くの?」
「うんとね、アーケードの方に専門店あったでしょ?そこ行くつもりなんだけど...」
今日は2人ともちょっと大人っぽい格好で街まで来た。芳恵ちゃん家で速攻着替えて、あたしはロングフレアスカートにこの間遼哉に買ってもらったパンプス。トップはちょっぴり襟ぐりの広いカットソー。はい、決して遼哉の前じゃ着れません。その上はこの間と同じGジャン。あんまり持ってないんだもの。芳恵ちゃんは大胆にもミニスカート、ちょっと早いけどブーツはいててかっこ可愛いの。お昼は駅前のマクドでさっさと済ました。ちょっと天気悪くって、雨が少し降りだしてたけど、アーケードに入ると傘はいらないから楽ちんなの。
「その前に行くとこあるんだ。」
芳恵ちゃんがいきなり言い出す。
「どこに?」
「デパート、お化粧品もちょっと買いたいじゃない?サービスでメークしてくれるってさ。うちのお姉ちゃんの友達が化粧品コーナーにいるんだ。」
芳恵ちゃんには3つ上のお姉さんがいるの、もちろんうちのソフト部のOBでもある。
「ここだよ、ミツコさん?」
デパート一階の雑貨系の化粧品コーナーに向かっていく。
「あぁ、芳恵ちゃん、郁恵から聞いてるわよ。」
出てきたのは髪を明るい色に抜いて、パーマなんかで複雑にセットしてる感じで、メークはそんなにきついメークしてないけど、ミツコさんの子猫みたいな顔立ちを強調した感じですっごく似合ってる。こういう人をセンスいいって言うんだろうなぁ。おしゃれに興味はあってもなかなか実現できないのが現状のあたし達。部活してるからしょうがないんだけどね。
「すみません、お願いします。あの、友達もいっしょでいいですか?」
「ん?へぇ、可愛いこね。触りたいタイプだわぁじゃちょっと座って、2人とも。」
ミツコさんは次々と化粧品を並べて、まず芳恵ちゃんを変身させた。
「芳恵ちゃんはよく焼けてるし、ボーイッシュだから、ちょっと眉をシャープにして、アイラインとマスカラで印象強くして、グロスで仕上げ♪髪はショートだからワックスでふわっとさせて、前髪は上げて、この辺は後ろに流してね、出来上がり〜」
「芳恵ちゃん、綺麗...」
ほんとに綺麗だった。いきなり顔だけ垢抜けた感じですごく大人っぽくみえる。芳恵ちゃんは可愛いじゃなくて綺麗系だったんだ。一重の目がすっごく睫で深くなってうん、いい感じ〜!この人のメークって、してるって感じ少ない。もしかしてめちゃくちゃうまい?
「ほんとだ...これあたしにもできます?」
芳恵ちゃんもびっくりしてる。
「うん、これとこれとこれ買えば出来るよ。ビューラーや他の道具は郁恵に借りなさいね。」
目の前にはグロスとマスカラ、アイラインとアイブローの両方できるパレットが出された。
「次はあなたね。」
「あたしですか?」
「そうよ、地はいいのよね、いまいち地味だから、眉をアーチにして整えて、シャドウは優しいけど明るいグリーンでハイライトね。ラインは同系色で目じりに入れて、マスカラでぱっちりさせて...オレンジピンクの口紅にグロス、チークほんのりで、髪もね、前髪上げちゃおう、ううん、全部ルーズに上げよう、こうやって何箇所かくくって、他の毛をこうしてくるくる回してピンで留めてくの。ほら出来た!」
「うわぁ、紗弓可愛いけど色っぽい〜って感じ!」
「え、そっかなぁ?」
鏡に映るあたしはなんだか別人みたい...。アップにされて残った後れ毛がかかって首筋がなんだか頼りない感じ。グロスで光る口元はなんか、大人って感じがしちゃうよ!すごいあたしだけどあたしじゃない見たい...。
「色白だからね、このブライトカラーのおしろいと、マスカラとこのアイカラーセットと、これだったらグロスと口紅セットになってるよ。うちはブランド品に比べてチープが売りだからね、これだけ揃えても5000円ぐらいなんだけど?」
「そ、そんなに持ってないです...。」
こんなことならお母さんにいっておこずかい前借してくるんだった...。実はあたしも下着買っちゃおうかなと、おこずかいはたいて持ってきたんだけど、買えなくなっちゃいそうだし、どうしよう?
「マスカラとグロスはあたしと一緒に使おうよ。その目もとのアイカラーとおしろいだったら?」
「2000円位かな。買っちゃう?」
「はいっ、買います!」
2人して買い込んでしまいました。やり方教わって、二人はるんるんでデパートを出た。

「ねえねえ、君ら2人で来てるの?」
「はぁ?」
いきなり声かけられちゃったよ?いかにも大学生って感じなんだけど...
「君らすっごく可愛いね、こいつなんかアップにしてる君に一目ぼれでさぁ、よかったらそこでさ、お茶でもしませんか?」
「あたしたちとですか?」
「だってなぁ、このへんでもこんな綺麗な2人連れなんてめったっにいないよ。奢るからさ。どう?」
芳恵ちゃんと2人顔を見合わせる。いくらなんでもこんなの初めて、だけどあたしたちには彼氏いるしね。
「ごめんなさい、彼氏いるから。」
そういってさっさと歩き出す。ちぇって舌打ちする声が聞こえた。
「ねぇねぇ、あたしらってすごくない?」
「だねぇ、このままなんてもったいないよね?紗弓」
「あ、あたしこの後で遼哉と晩御飯約束してる...」
「いいなぁ。来栖にそれじゃえさぶら下げ状態だね、むちゃくちゃにされないようにしなきゃ。」
けらけらと芳恵ちゃんが笑う。笑い事じゃないよ、それって...。
「決まった?」
「これは大胆すぎるよね?」
ランジェリーショップで芳恵ちゃんがいきなり見つけたのは白スケスケのレースのセットだった。それもガーター付き。それはないでしょう?
「白でも凄すぎだよね」
「いかにもすぎるよ。やっぱりもっと可愛いのでいいんじゃないかな?」
2人して真剣に迷ってるよ。でも店員さんが見る目がいつもと違う感じ。どうぞ〜ってかんじで...大人に見られるってこういうことなのかな?
「これ可愛くない?」
あたしは白だけど、レースも優しい感じで、生地もワッフルみたいになってて、清潔そうで可愛くって、少しブルーのステッチがはいってて、こんなの着て最初がいいなぁって奴みつけた。
「ほんとだ、可愛いけど綺麗。うわっ、結構するけど、これにする!サイズは...すみませーん。」
芳恵ちゃんはせっかくだからとサイズを測ってもらうことにしたらしい。その間あたしはぶらぶらと見て回る。
(いいのないかなぁ?)
やっぱり意識するのは遼哉の目だよね。普段はチェックや無地に水玉だもんね〜それともやっぱり黒?豹柄?いかにも過ぎるよね?それとも...
(あ、これ可愛い♪)
色は黒なんだけど、ピンクのお花が順番についてるの、可愛い〜下はちょっとえっちいかな?同じパターンだけど、ひ、紐付きだぁ!でも全体の感じはいやらしいっていうより可愛いなんだよね!間違っても洗濯には出せないけど...
「あ、そんなに高くない...買っちゃおうかな?」
サイズはもう、いつものでいいや。ドキドキしながらさっさとレジを済ませた。いくらなんでも黒の下着買うとこ見られたら恥ずかしいよぉ。でも大人なあたしが買っても全然不自然じゃないから今日はすごく大胆なあたし。
でもってこれ、やっぱり遼哉のためだよね?
「かっちゃったね〜、紗弓も買ったんでしょう?みしてよ!」
「は、恥ずかしいよぉ、許して!」
「笹野?」
二人できゃいきゃいやってたら後ろから声がした。
「い、今村くん!どうしたの?」
「午後練雨で中止になって、たしか今日こっちくるって言ってただろ?俺スパイク新しいの買いに来たんだ。」
今村くんと偶然会って芳恵ちゃんちょっぴりパニック?でも真っ赤になってる芳恵ちゃんって可愛い♪今村くんは私服だけど、頭は丸刈りだから帽子目深にかぶっちゃってる。て、照れてるよ?
「そっかぁ、あたしらもう買い物済んだよ。」
「笹野、お前化粧してる?」
「え、うん、そこのデパートでおねえちゃんの友達にしてもらったの...変かな?」
「いや、変とかじゃなくて、別の人って言うか、大人っぽいね。すごく、いい...」
うわぁ、じれじれするくらい2人の世界だわぁ。呆れてみてると肩をとんとん叩かれた。
「小畠さん?だよね?」
「はい?」
「俺野球部の長野なんだけど、ピッチャーやってる。小畠さん、信じられないくらいめっちゃきれいだね。学校と全然違うじゃん?大人っぽくって、いいなぁ、俺すっごく好みのタイプなんだけど...よかったらお茶でもしない?あいつら2人っきりにさせてやろうよ。」
そういうと強引にあたしの腕を引っ張ると彼女達の前に行くと『俺たちお茶してくるからごゆっくり!』といってさっさと行ってしまう。
「ちょ、ちょっと待って、あたしまだ行くって言ってないよ?」
「大丈夫、奢るよ。こんな可愛い子とお茶できるなんて幸せだなぁ。」

結局お茶して、ケーキセット奢ってもらったの。食べにくいミルフィーユなんか頼んじゃって、悪戦苦闘しちゃった。グロス取れないようにするのに一苦労だったよ。
長野くんて面白いけどけっこう強引だよね。時々じーっと見られてるのが嫌だったけど。
何度か芳恵ちゃんが心配してメールくれてた。けどすっごく嬉しそうなのが判るから大丈夫ってメールかえしといたの。
「紗弓ちゃん?ね、俺と付き合わない?」
「はぁ?」
「急にごめん、だめかな?」
「あたし彼氏いますよ。」
「うそだろ?また断ろうと思って、ソフト部は笹野以外全員フリーって言ってたけど?」
「嘘じゃないです。」
「こんなに可愛いんだもんな、ね同じ学校のやつ?俺が知ってる男かな?」
「ん、知ってるかな?来栖くんだけど...」
「来栖だって!やめとけよ、あいつに遊ばれてるだけだから!俺にしとけよ、俺、絶対紗弓ちゃんの事大事にするから!」
「ほお、俺は紗弓と遊びで付き合ってるつもりないけど?」
え?遼哉?振り返るとサングラスかけたまんまの彼が立っていた。
「り、遼哉?」
今日は黒ずくめのすっごく渋いって言うか、大人に見える格好でこっちを睨んでる?
「紗弓行くぞ。」
世話になったといって遼哉は千円札を机の上に置くとあたしの腕を掴んでた。
「痛いよ、遼哉離して!」
何を言ってもひたすら黙ってずんずんと歩いて行く遼哉だった。