2010クリスマス企画
3
12月23日後編
〜楓〜
「しゃ、社長??」
「おまえ、よっぽどお仕置きでもされたいのか?」
「あ……亮輔、さん」
さすが優男に見えても元山男、結構身長もあるわたしを軽々と抱き上げて隣のベッドルームに運び込まれると、そこには天蓋付きのキングサイズベッド。その肌触りのいいシルクシーツの上にわたしは放り投げられた。
「ちょっと、優しくないわね!」
優しくして貰えると思ってたので、思わずまたいつもの反抗的な調子で返してしまった。
「おまえも、可愛くないな」
「だから、わたしは可愛くないって言ってるでしょ?」
可愛いと言ったりそうじゃないと言ったり、何なのよ!
「素直に返事すりゃイイだろ?仕事は死ぬまでさせてやる。その代わり……子供が出来たら、産んでくれるか?」
「はぁ……?」
ちょっとまって……確かに好きだと言われた。一生側にとか、全部オレのものにするとか言ってたのは……もしかしなくてもプロポーズだったわけ?まさか、子供だけ産めって話しじゃないわよね?
というか、出来るかどうかなんてわかんないじゃない?
「ダメなのか?仕事、出来なくなるから……家でも、病院でも仕事していいから!子育てだってベビーシッターを雇ってだな」
「ちょっと、何先走ってるのよ?世の中には子供産んで育てながら仕事してる人なんて幾らでもいるのよ?家族の……旦那の協力さえあればね」
「あ、ああ……それじゃ」
ぱあっと表情が明るくなる。ほんとに、もう……こういうところ子供みたいな人だ。普段仕事してる時はそうでもないのに。
「で、今から子供作る気?」
「避妊する気はない」
はっきりと真顔で言ってきた……周期的にそれはちょっと無理だと思うんだけどね。
「あのね……そりゃこの歳だし、作るなら早い方がいいとは思うわよ?でもね、だからこそ出来ちゃった結婚なんて嫌よ」
「あ、そうか……」
「でも、ちゃんと責任取ってくれるなら……その、してもいいわよ」
こうなれば賭だ。出来るか出来ないかなんて……どうせこの人のことだから、仕事は早いだろうし。
「本当か……?任せろ、ちゃんと満足させてやる」
ニヤッと笑うその笑顔が怖い……確かに普段から商談してても、屈託のない笑顔に騙されるけれども、ちゃんと二重三重に手を打ってるのよね。底知れない部分は確かにあったけど……
「ちょっと……こっちは、その初めてじゃないけど、久しぶりなんだから……」
「判ってる。とろとろにして……自分からおねだりスルほどよがらせてやるよ」
その言葉に、ぞくりと身体が震えた。
「伊達にこの歳まで遊んできたわけじゃないぞ。色々とやり尽くしてきたけど、おまえほど欲しいと思った事はないし、ここまで間が空いたこともないんだ」
なによ、遊んでたのは知ってるわよ……最初はよく同行したパーティで、女性をお持ち帰りしてるのを目の前で見てたもの。だけど、最近は女性と遊んでなかったってこと?
「最初は軽蔑した様な目で見てたよなぁ?けど、近付いたり触れるか触れないかの距離でビクビクしてるおまえを見てたら、堪らなくなってきたんだ。それを自覚してからは女と遊んでないぞ」
ちょっと怖くなってきた……言っとくけどこっちは間空くどころか、もう忘れるぐらい随分と昔よ?
「あ、あの……わたし、明日仕事なんだけど……」
「悪いな、手加減はしてやれねえわ。仕事は本宮さんに任せておけば何とかなるだろ?まずは、前の男の存在消さないとな」
「えっ?」
「逃げるなよ」
その言葉と共に、長い夜が始まった。
「やぁ……も……やめ……て」
掠れた声が上がる……もう何度も、イかされて、おかしくなってしまいそうなほど、意識も身体も乱れていた。
前の男……単身赴任の不倫男は、たしかにそこそこ精力は強かった。浮気するほどパワーを持て余していたし出世欲も強く強引だった……セックスも初めてだったわたしに快楽を教え込み、溺れさせるぐらいのテクニックはあったと思う。女慣れしてたしね……不倫という背徳的な関係は余計に彼を燃え立たせていたし、普段は取り澄ましたわたしを翻弄するのが楽しいと言っていた。たけど……こんなの知らない。
「だったら、いい加減に言えよ……」
酔っていたのもある……最初から息切れするようなキス。身体を重ね合わせたまま服の上から全身撫で回されるのは酷くもどかしかった。嫌って言うほどキスされて……もう、それだけで天国にでも逝きそうなほど。
でもソレはまだまだ序の口だった。
焦れるわたしの身体を、服を脱がさずはだけるだけで下着の上から舐めたり、隆起した突起を激しく攻めてきた。自分で慰める時よりも焦れったくて、そしてそれ以上にコントロール出来ないほど高められる。ようやく下着の中に入り込んだ指がソコに触れた時は思わず歓喜の声を上げてしまったほど……それでも、自分から欲しいだなんて言えなかった。
「強情だな。いい加減ココだって溢れてきてるぞ?ナカ、掻き混ぜて欲しいんじゃないのか?」
「んっ……ひゃぁっん!」
舌先で剥き出しの突起をべろりと舐められる。それだけで軽くイク……だけどそんなの際限ない。もう何も身に付けては居ない。身体には彼が付けた紅い痕が増え続けていくだけ。
もう、限界かも……
男が与えてくれる快楽なんて忘れていた。仕事で忙しければ身体が寂しいのも我慢出来た。身体の手入れをする時だけは、いつかこの身体に誰か触れる時が来るのだろうかと想像しながら自分で触れて高める……だけど、もうそんなもの比べモノにならないほど、何度も、何度も、彼の手で昇らされた。
「反応、良過ぎだな……よく今まで男なしで居られたな、この身体で」
「なに……言ってる……んんっ!」
「可哀想だから、ナカも良くしてやるよ」
自分の内側がヒクヒクと求めているのがわかる。ナカに欲しくて、求めていたところに、ようやく社長の長い指がずぷりと潜り込んだ。
「ああぁっ……ん」
探るように動くそれが、わたしの中側のざらつきに気付いて擦り上げてくる。
「ひっぃ……」
勝手にソコはひくついて彼の指を締め付ける。下半身がガクガクするほど気持ちいい……もう、と思った瞬間引き抜かれた。
「やぁ……」
「何がやなんだ?」
「んっ……お願い……」
思わずそう口にしていた。外側を攻められている時はもうやめてと言うほど強い一瞬の刺激だった。それには慣れているから、そこそこ予測は付いて身構えられる。だけど、このナカの気持ちよさは……以前気付きかけてそのままになっていた知らない快感……燻った高ぶりは身体を狂わせる。中と外では、違う……
「お願い?なんでもきいてやるよ。楓の言うことならな」
「りょうすけぇ……」
自分でも甘えた声を出しているのがわかる。わたしは、完全に堕ちていた……彼の与える快感と、ひたすらわたしを待つその強さに。
「欲しいの……お願い」
「それじゃ、コレ、どうしたらいいか知ってるだろ?」
そう言って彼は自分のボクサーパンツの隆起した部分を指さす。
何度か口でさせられたことはあったけど、あまり好きじゃなかった。だけど、今は……欲しくて欲しくて、縋り付くようにしてそれを取り出すと、両手で包んで軽く扱いた。
「くっ……オレもな、結構ヤバいんだ」
見上げると社長が苦笑いしながらわたしの頬をゆっくり撫でてくる。
「んっ……んぐっ……んっ……んっ」
丁寧に先から根本まで舐めた後、口に含んで何度も出し入れする。相手を高めたい気持ち……今なら判る。もっと、もっと、欲しいんだ。自分のモノにするために。
快楽を得る為だけじゃない。これは、相手を自分のモノにする儀式。離れないように、自分に取り込む為に……
「もう……いい。オレがヤバくなる」
「気持ち、いい?」
「ああ……楓が一生懸命やってくれてるのが嬉しいな。そのやり方を教えた男には腹が立つけど」
思わず笑ってしまった。
「じゃあ、わたしは誰に腹を立てればいいの?もう、欲しくて欲しくてしょうがなくなってるのに……」
口にしてる間も下半身が濡れるほど欲しかった……コレを、自分のナカに……そう思うだけで、もう気が狂いそうになる。
「言ってくれ……楓」
「亮輔が欲しいの。入れて、これを……滅茶苦茶にしていいから……全部ちょうだい、あなたの全部……」
「やるよ、全部……ありったけな」
「ひいっ……!」
一気に根本まで押し込まれて、息が止まるほど全身が痺れた。
「イッたのか?」
返事なんて出来ない……息苦しくて、足の指先まで震えているのだから。
「これからだからな……」
初めて聴く掠れて上擦った彼の声……色っぽくて、切なくて、また身体が震えた。
「おい、こら……締めるなって。たまんないな、コレ……抑制きかなくなりそうだ」
「う、ごいて……もう、ダメぇ……」
身体が戦慄く、こんな中途半端にいかされて、震える身体を持て余して、わたしは狂いそうだった。
「ああ、もう……くそっ!」
ズンと奥に与えられた刺激。すぐに引き抜かれ、何度も擦られはじめる。
「ああっん……いいっ、はぁん……もう……」
イクと声に出す瞬間、身体を抱き起こされ、密着させられた。
「あっん!!」
瞬間深くなる繋がり、そして密着する肌。
「もう……ダメだ……我慢出来ない。出して、いいか?楓のナカに、オレの、全部……」
「ひっ……ん」
その言葉で膣内を引き絞って、わたしは果てた……彼の出すもの全てを欲しいと、わたしのナカが絡みついて絞り取ろうとしているのが判る。
「ああっ……楓っ!」
わたしを抱きかかえたまま、激しく上下する。押しつけられて激しく擦れる外側の刺激と、突き当たる奥の刺激で、わたしは……昇ったまま何度も何度もひくついて、イキ続けていた。ソコに熱い迸りを受けて、今までにない快感と満足感で完全に意識を飛ばしてしまった。
「おい、楓?おい……」
ちょっと、叩かないでよ……
「んっ……」
「大丈夫か?」
覗き込んでくるのは社長……すごく心配そうな、辛そうな表情だ。
「……だ、大丈夫……んんっ?」
違和感が……下腹部に。まさか……繋がったまま?おまけに、また大きくなってない?この人……
「よかった……目開けないしどうしようかと思ってたんだ。って、おい……」
意識した途端ソコをヒクつかせてしまった。
「まったく、たまんねえな……おまえは」
「そうなるまで意地悪したのは誰よ」
「……オレだな」
嬉しそうに笑いながら、そっとシーツに寝かせてくれた。もちろんまだ下半身は繋がっている。
「今度はゆっくりするから……このまま、やるぞ?」
「ちょっと、まって……体力が」
若くないのよ?こっちは……ジムには行ってたけど、こんなハードなの続いたら身体が持たない。
「仕方ないだろ?離れられないんだから……」
そう言って腰を動かしてくる。ぐちゅぐちゅと彼の出したモノとわたしのとで凄い音が出る。
「ひゃっ……やだ、そんな、ああっ」
片足を高く持ち上げられ、角度を変えられる度にわたしは悶える。
「まだまだ……」
そう言いながら、延々夜中近くまで攻められ……最後には指一本も動かせないほど疲労しきって、何も考えずに朝まで死んだように眠った。
「ちょっと、なにしてるの?」
「悪いな……朝の生理現象だ」
「だからといって……やっ」
「あと一回だけ、な?」
朝から盛るな!だけど、昨夜からぐずぐずになったソコが簡単に受け入れてしまう。
「つい、な……逃がしたくないと思ったら、止まらないんだ」
気持ちのいいところを突かれてすぐに高まる。
「もう……仕事行けないじゃない」
「ごめん……」
そう言って足をかけたまま、彼が果てるまで激しく腰で攻め続けられた。
「こんなの……どうしろっていうのよ」
朝の欲望を満たした彼は、さっさと用意して出社した。食事は運ばれてきていたけど、そこまでいけそうになかったから、社長が適当にお皿に乗せて持ってきてくれたのを摘んだ。彼も詰め込んで急いで出掛けたみたいだ。
身体はだるくて、筋肉痛。だけど、ナカが甘く疼いたままだ……
「若くないんだから、もう」
なのに、身体は凄い勢いで細胞変換してるみたいに生まれ変わっている様な感覚だ。
触れてみてもわずかに敏感で、肌は信じられないほどしっとりと湿っている。
「なのにあの男は……」
若いのか元気なのか、慣れてるのか……そうだとしたらちょっと悔しい。
十年ぶりに男性を受け入れた身体は、限界まで抱かれて動けなくなっている。
「鍛え直すかな?」
でも今は……仕事は本宮に任せると伝言したし、かといって何も出来ないほど怠い。
一日ぐらい、いいよね?
今までそんな風に自分にも人にも甘えたことはなかった。
「ねむ……」
引き込まれるようにしてベッドに潜り込む。
明日は……ううん、今日はクリスマスイブだ。明日は休みでクリスマス。
もしかしたら、初めて一人じゃないクリスマスを過ごすことが出来るのだろうか?
「んふふ……クリスマスかぁ」
一人じゃないなら……うん、嫌いじゃないぞ、クリスマス。
「早く帰ってこないかなぁ……」
まだ昼前なのに、そう思ってしまう。
「メリークリスマスって、言える……かな……」
目を閉じて、薄明るい部屋の空気に揺らされながら、わたしは夢の中で彼に抱きついていた。
ようやく……クリスマスのメインが終わりました〜〜