2010クリスマス企画

Another Christmas

 4

12月24日
〜亮輔〜

信じられんねぇ……こんな女。
尊敬する本宮さんや羽山先輩が一目置くだけのことがある女。柳原楓は仕事は滅茶苦茶できるが、女としては不器用で、今まで言い寄ってきた女達と何もかもが違った。相手に求めるのは仕事のスキルで、持ってる財産やステイタスじゃない。だから一切頼ってこないし、下心のある男が近付くとピシャンとやるくせに、意識してる相手が近づくと平気な振りして内心ビクビク震える子猫のようになる。

「なんだよ、アレ……今までよく無事でいられたなぁ」
「ま、仕事が出来るからな。こっちではオレたちが目光らせてたし、向こうでは……ちゃんと息の掛かった奴等に気を付けてくれるよう頼んでたぜ」
羽山先輩は豪快に笑う。
「それでも、まさかあんな……単身赴任者に引っかかるとは思わなかったけどな」
「ああ、気付くのが遅かったよな……どうせなら独身じゃないと」
本宮さんは、静かに冷たい目を見せる。
二人とも、柳原を仕事の相手として認める代わりに、互いに手を出さずに仕事のサポートをしてやろうと、随分昔に誓い合ったらしい。彼女にしてみれば、本宮さんが求めてくれる方がずっと良かっただろうけど、彼としては『手を出すに忍びなかった』という。あまり恋愛に固執しなかった本宮さんは、結局見合いした相手とすぐに別れて、数年前に部下と再婚したが、確かに言われてみると奥さんは柳原に似たタイプだった。
「でもね、わたしにとって欲しくてしょうがなかったのは、やはり朱音だけでしたから。彼女の初めてが自分だと判った時は……思わず嬉しくなりましたよ」
嬉そうに惚気やがった。本宮さんがこんな顔するなんて、今の今まで知らなかった。そのくらい奥さんに夢中なんだろう。オレもそんな相手に巡り会えれば……なんて思っていたが、まさかこの年上で、恐ろしく仕事の出来る柳原楓に堕ちるなんて……
「で、本気なのか?」
「えっ?それは……」
羽山先輩に突っ込まれて、思わず口ごもる。まさか……バレてたのか?
「おまえな、それでバレてないとでも思ったか?毎回毎回パーティだの何だのに連れ回しておいて。気付いてないのは当の本人ぐらいなもんだろ?」
「……」
それは事実だ。あれだけ連れ回してもビジネスだと思い込んでいる。臆病なのか、ちょっとでも近付くと身体を硬くする……気付かれてないと思いこんでるところもまた可愛いんだけど、あれでオレより年上だぞ?信じられないけど、きっとこの二人が甘やかしたんだ、そういうとこは。
「で、どうする気だ?本気だとして、付き合うのか?その後は?まさか、あの楓を家庭に引きずり込む気か?」
なんでマジな顔して睨むんだよ、先輩。
「いや、そのつもりはない。彼女は仕事上必要な人間だからなだけど手放したくないんだ……他の男には渡したくない」
仕事の上でも申し分ない。手を出さなければ、このまま仕事だけのパートナーとしては確保出来るだろう。だけど、オレは気が付いてしまったんだ。ムキになって突っかかってくるような可愛いあいつを、抱きしめてめちゃくちゃにしてしまいたい感情に。
「けどな……あいつは恋愛については鈍感で頑固だからなぁ」
「ああ、下手なアプローチかけても撃沈するぞ?」
そんなの判ってるって……
「なあ、あんたらはそれでも励ましてるつもりか?」
「励ましてるに決まってるだろ?だけど、あいつが嫌がることは許さんぞ?」
「ああ、泣かせたら承知しない」
それぞれ愛妻がいるくせに、やたらうるさい。
「あーあ、泣かせはしないけど、鳴かせたいんだよな……」

二人はとうにオレの気持ちに気が付いていた。鈍感にも全く気が付かないのは楓だけだ。
この気持ちに気が付いてから女遊びも止めた、だから溜まってる、うん。
さりげなく言葉を向けても言い争いになるだけ。とにかくビジネスの間はまったく恋愛とかの余地はないらしい。そのくせ、恋する乙女みたいな表情で本宮さんを見詰めるんだ……
本宮さんは同じ大学の山岳部の先輩だった羽山さんの同期で、二人とも偶然にも父親の経営する会社に就職していた。他社に数年在籍していたオレは、自社に戻る前から本宮さんとは山仲間としての付き合いがあった。うるさいけど頼りになる羽山先輩と、無口だけれどもやり手の本宮さん、一目置いてる二人が、その頃からよく口にしていたのがこの柳原楓だった。
女にしておくのはもったいないほど仕事が出来ると、二人は手放しで褒めていた。自分が社長になった時に、ブレーンとして選んだのはやはりこの二人で、その協力もあって、右肩下がりの業績をなんとか元に戻すことができた。その成果で二人を部長クラスに昇格させた時、空いた課長席に是非彼女をと、二人から推薦されたのだが……逢って吃驚、ただの酔っぱらいだった。
「こいつな、オレたちの前でしか酔えねえんだよ。他は怖くてしょうがないんだ。可愛いだろ?」
最初はその可愛さの意味が分からなかった……こと仕事になると男以上に動くし、手配には抜かりがなかった。だけど女扱いされた時のその落差……仕事が出来るからこそ、女としての憂いを取り除いてやりたいという二人の気持ちもわかる。わかるが……なんだよ、この可愛さ!
仕事以外では、オレのこと意識して、きゃんきゃん吠える。そのくせ、オレだけの時は酔わないんだ。
意識されてる?そう思ってからはもう夢中だった……
仕事とプライベートを分けたい彼女相手に、いくらサインを送ってもスルーばかり。おまけにずっと本宮さん見てるみたいだし……
――――気にくわねぇ。
オレは強硬手段に出ることにした。毎年本宮さんとこでやってるというクリスマスパーティに、今年は羽山先輩も夫婦で参加するというので、オレも彼女を連れて参加することにしたんだ。
本宮の自宅に行くことを、めちゃくちゃ嫌がっていた。複雑なんだろうな、歯車があっていればもしかしたら彼女が本宮さんの横にいたかもしれないって……
でも、そうならなくて良かった。オレたち二人が出逢う為だったと思えば、この歳までお互いに一人で居た甲斐があるってもんだ。
オレも男子校出身で、大学時代は山に夢中だった。最初に女性と付き合ったのは遅くて、就職してから。相手の女の子は可愛くて大人しい子だった。このまま結婚でもするのかなと思っていたのに、オレが仕事で忙しく寂しいからといって浮気された。
それ以降も寄ってくる女は、財産狙いの玉の輿願望が強いヤツらばかりだった。女性に失望していたオレは、寄ってくる女を食いまくって遊んだ。ほいほいと気軽に身体を差し出す女は、見返りに宝石やバックを欲しがる。辟易としながらもそんな女達を利用してた。そうしてるうちに、遊びばっかりになって本気になる機会も無くなってしまって、社長に就任すると尚更忙しい上に前以上に女共がウザイほど寄ってくる。もう、女に対する夢も希望も無くなった頃、柳原楓に出逢ったんだ。オレに対して一切媚びてこない。そして逃げる……女らしくも、特別美人でもなんでもない。尊敬する先輩二人が一目置くだけあって仕事が出来る。ある意味いい女だった。だけど中身は乙女かってくらいすれてなくて……
今まで数々のアプローチは無視された。他の女と同じ様な扱いをしなかったから余計かもしれないが。こうなったら、捨て身で行かないと判って貰えそうにない。
オレはクリスマスにあわせて、ホテルのスイートを予約した。大奮発だぞ?23日から26日まで、これで連れ込めなかったら、営業で言えば大損害だ。
オレたちは、今更デートだ何だという仲でもない。食事も仕事上なんどもしてるから、なんとなく好みも判る。互いのことは本質的に判り合っているはずだ。だったら、あとは愛を確かめ合うだけだろ?
嫌われてはいない事も確認済みだから、あとは押しの一手だった。

パーティの最中、ぼーっと本宮さんを見ている楓。
珍しく酔って、先輩や瞳さんに構われてるのは可愛かった。だけど、これ以上そこに置いておきたくないほど、オレは本宮さんに嫉妬したんだ。
連れ出して、半分無理矢理部屋に連れ込んだ。だけど、そこで失敗した……
ちゃんと順序立てて、仕事のパートナーとして大切だと説明してる最中に逃げられそうになった。ちょっとでも私情が入ると拒否されると思ったから、わざわざ回りくどい手を使ったというのに……
いきなり『帰る』と言い出した彼女にムカッと来た。なんでだ?今から肝心の告白するって時に帰られちゃ困るだろ?やっぱり無理矢理連れてきたから?それとも何か用事でもあるかのかと聞くと『飲みに行く』と言われて、思わず『男でも漁りに行くのか』と言ってしまい……思いっきり引っ叩かれた。
彼女がそんなことするはず無いのに、オレは馬鹿だ。
要らないこと言って彼女を傷つけて、泣かせてどうする?告白どころじゃねえじゃんか!結局持って回った言い方は止めて、仕事の時と同じように思いっきり本音で言った。
『オレを見てくれ』と……
なのに帰ってきた返事は『無理』だった。
なんだよそれ?無理って……オレのこと嫌いじゃないだろ?意識してるだろ?
もう、あいつらに気を使って遠回りなことしてる暇はない。好きだ、欲しいと伝えて唇を塞ぐ。
この女が素直になるのを待っていたら日が暮れちまう。いや、年が明けちまうだな。
結局オレは、彼女を抱きかかえ強引にベッドルームへ連れ込んだ。

なんでこんなに甘いんだ?キスも身体も……
惚れて、欲しいと願った身体はこんなにも愛しいのか?久しぶりで戸惑う身体は敏感に反応しながらも盛大に揺れてくれる。こうなったら、持っているテクニック全てを使って、楓の身体を落としに掛かる。なんせ並大抵じゃない強情さだからな。中からぐずぐずにして欲しがらせてやる!
それは半分意地のようなもので……最初に避妊しないと宣言もした。
その意味、判ってるよな?年齢のこともあるから、子供が出来るなら早めの方がいいというのもあるけれども、逃がさないといった意味の方が強かった。
明日になったら『やっぱり仕事が……』なんて言って断られそうで怖い。ちょっと流され安いとこがあるみたいだしな。
オレはナマでやる許可を貰うと、たかぶる股間の主張を押さえ込んで、ひたすら楓の身体に奉仕した。初めてでもない……誰かに教え込まれた楓の反応に腹が立つ。まあ、この歳で最初だと気を使うが、とりあえず経験があるなら最後まで思いっきりやってもいいよな?
「りょうすけぇ……欲しいの……お願い」
そう言わせた瞬間、そのまま思いっきり突っ込んでやろうかとも思った。だけど、ちょっとだけ思い直し、口でオレのモノを奉仕させた。
「ヤバッ……」
出来ないかなと思ったが、やっぱり教えられていたんだろう、上手にしゃぶってくる。
ああ、もう!オレの楓にこんなこと教えた男に感謝していいのか憎んでいいのか……
他の女なら前の男も何にも気にならなかったのに。
「言ってくれ……楓」
オレが欲しいと言ってくれ。
「亮輔が欲しいの」
ああ、やるとも!オレを……
「全部ちょうだい」
全部やる……朝まで、オレのありったけを注いでやる!
そして、やりまくった……
文字通り、何度もだ。10年ぶりだとか言う彼女の身体を蹂躙して、熱く蕩けたナカに潜り込んだが最後、離れられなくなったのはオレの方だ。堪らなくなって、これでもかと言うほど攻め倒した。途中失神させてしまって焦ったが、それでもナカにいるオレは萎えないほど……楓も感じているしオレも気持ちよすぎるほどだって判って、止まらなくなった。
もちろん避妊なんてするもんか!明日にでも籍を入れて持ち帰りたいぐらいだ。

翌朝、腕のナカに温もりを抱いたまま目覚める。こうやって朝までやりまくって、その朝をまったり過ごすなんてことは今まで経験がない。やったらハイ終わり、だったもんな。
だけど楓は、最後の方感じまくって震えて、思わず抱きしめてイイコイイコしたくなるほど可愛いかったから。
あ、ダメだ……さわさわとその身体を触っていたら、朝の生理現象が!指でかき混ぜる楓のソコは、ぐちゅぐちゅで昨夜散々突っ込ん痕跡が残っている。これじゃ指では物足りなそうだなってことで、そっと後ろから猛った自分のモノを宛いその滑りを利用してするりと彼女のナカに入り込んだ。
たまんねぇな……朝から、気持ちいい。
昨日まで何言っても吠えまくってた相手が今日は朝からぐったりしてオレの思うままか……
悪くねぇよな?
途中目覚めた楓に謝って、朝の勢いでそのまま……腰だけで攻めて最奥でたっぷりと放出する。と言っても散々出した後だから少ないけどな。
一回ではまだちょっともの足りなかったけれども、楓が無理そうだったので抑えた。
朝食を運んで貰ったが、起きあがれないほど楓はフラフラだ。文句言っているが今日は休ませるつもりだった。そして、夕方再び戻ってきて……今度は土日、その後は年明けの仕事始めまで解放してやる気はない。いい機会だから正月の間に互いの両親に挨拶を済ませておいた方がいいし、正月はどこかに出掛けてもいいし、どちらかの部屋に籠もってもいい。
ああ、ちょっとだけ太陽が黄色いぞ?

「おいおい、やってくれるな……」
出社して、楓が欠勤だと伝えると、早速本宮さんから文句が来た。
「とりあえず楓の分、カバー頼みますよ」
「あのな……うちは富野の馬鹿も有給取って休んでるんだぞ?あいつはあれでも仕事はやるんだ。うちの朱音と組んでいたぐらいだからな。それなのに……わたしにイブの夜、残業させる気か?」
結婚記念日なのは知ってるさ。式にも呼ばれてたんだからな。だけど、今は部下の家庭よりもこっちの幸せ優先だ。そっちはもうヒビの入りようもないくらい万年幸せ全開だろ?
「すみません、お願いします」
オレが思いっきり頭を下げると、ため息つかれた。
「社長のおまえに頭下げられたら断れんだろう?その代わり……楓を泣かすなよ」
今度は真剣に睨まれた。
「判ってる……絶対、幸せにする。仕事も家庭も、あいつと作りたいから」
「ああ」
クールな本宮さんが珍しくにっこり笑ってくれた。
「それで……ホテルの部屋にあいつ置いてきてるから、早めに帰るな」
「……なんだと?」
一瞬にして顔色が変わる。
「おまえ、わたしに家に帰らせないつもりか?」
確かに、楓とオレの分を任せたら、たぶん午前様だ。
「よろしく!本宮部長」
オレはにっこり笑うと、あきれ顔の彼は肩を落として社長室を出て行く。

「あーあ、その幸せそうな顔見てたら、怒る気にもなれんな」
羽山先輩にも『締まりのねえ顔』って言われた……
仕方ないだろ?それぐらい昨夜はすばらしかったんだ。楓が可愛くて愛しくて……気持ちよくて。早く抱きたくて堪らないほど。
オレは大急ぎで仕事を済ませると、再びホテルに戻った。
それから、週が開けるまで……昼間少し出掛けたりもしたが、ほとんどずっと楓と二人ベッドの上で過ごした。


24日は男性視点でした。オレ様はやっぱ好きですね(笑)さて、ようやく明日からメインカップル(笑)
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