HOMETOP

先生とあたし

8.進展
「んっ、ん...」
数学教官室の本棚の死角で、壁際に追いつめて依里子の唇を求める。
校内ではそれが精一杯、それも我慢出来なくなった時。まだココではやめようと思えばやめれるからいい。校内にいる限り自分は教師なのだから。
これが、自室だとやめるのに多大な力を使う。だから、車の中や出先など、人目がつかないようで、不安な場所でようやくやめることが出来る。

それでも、キスすることだけはやめられない。

まさか自分がこれほどキスが好きだとも思わなかった。
それほど依里子の唇は美味しい。小さくて柔らかくて、いくら味わっても味わい尽くせないほどだ。それはたぶん、身体を繋げないと決めた反動だって事もよくわかってる。
1年以上、よく我慢出来てるモノだ。夜な夜な夢の中で彼女がオールヌードで誘ってきたりもする。淫靡に肢体を開き、自ら懇願する大人の女の身体に依里子の顔がすり替わる。泣きそうな、それでもキスの後の濡れた瞳と唇が、男を誘うのだ。実際の依里子はもっと青くて幼い体つきをしている。みずみずしい肌は吸い付くようだけれども、どこもかしこもまだ開かぬ蕾だった。
そう、だった...最初に押し開いたあの時は。だが今はどうだろう?抱きしめるたびに柔らかく溶けかかって熟しはじめている。
10代20代前半の盛りの着いた年頃だったら、間違いなく目の前にいる自分の彼女に襲いかかっていただろう。身体はセックスの快感を知ってるがために、疼くような欲望はなかなか納まらないのを必死で押さえ込む。
そう知ってるのだ。
キスをして、とろけた身体が何を求めているのか。
本能。
女の身体も、ちゃんと準備が出来るように出来ている。たとえそれが初めての行為であっても、依里子の、彼女の身体は私を受け入れてくれるだろう事もわかっている。
だが、一度犯してしまった間違いを二度と繰り返したくなくて、自分を押し殺す。
あの、何とも言えない罪悪感。
未成年相手の淫行は条例でも禁止されているが、それ以上に教師が手を出すということは、最大のモラルを犯したように感じてしまうのは私だけだろうか?
いくら相手が望んだ行為だからと言って、現場を見られたり、言及されたときに申し開きのしようがない。何よりも、依里子を守れない...
私自身は結衣子の件以来、いつ教師を首になっても構わないといった決心は付いている。意外かも知れないが、あれ以来、以前よりも教師らしくあろうと、私情を捨てた態度で挑んできたのもそれが理由だ。

依里子が未経験なのは、調べればいつでもわかるだろう。そして何よりやましくないと言い張れる事実があれば、最低限彼女だけでも守れる、そう考えていた。
そのためならば、我慢するぐらい、なんともない、と思っていた。

だが、さすがに全く手を出さずには居られなかった。

最初に自分の昔の愚行を知られたと勘違いして、パニックを起こして襲いかかった。それがいつの間にか信用して、かわいいとすら思っていた生徒だったので、頭に血が上ったのだ。それほど自分の中で、結衣子のことがトラウマになっているとは思わなかった。自分でもそこまで抑圧されてるなど思わなかった。だが、その傷が知らぬ間に、依里子で癒されていた事に驚いた。
だから、よけいに悔恨の意味を込めて、手を出さないと決めた。
しかし1年以上側にいて、潤んだ目で見られると理性の鎖もキレそうになる。
不安がる彼女を安心させるため、少しでも触れたい欲求を満たすためのキスを繰り返す。
何度も何度も。
応える彼女もだんだんと上手くなって、いくらでも続けていたくなるから、困ってしまう。

だが、依里子は悩んでいたんだ。
姉に知られてしまったことも、その不安を倍増させていた。あの後、何も言ってこない姉に、依里子は知らず知らず脅えていたのだろう。まさか自分の愚行まで晒すことはないだろうと思ってはいる。依里子の話だと、結婚の約束をした彼がいるらしいが、最近あまり順調ではないようなことを言っているそうだ。
それと姉の結衣子は抱いたのに自分は抱いてくれない、ということも...
考えまいとしてるのだろう。だが時々、無意識に比較するようなことを聞いてくる。比較出来るようなものではないのに、いくら大事だからと言い聞かせても、キスを繰り返しても、いつの間にかまた不安の螺旋に入り込む。それでも行為を知らない分だけ、不安で踏み込んで来れないことに安心していたのに...

加瀬め、依里子に何を吹き込んだんだ??
私も男だから、溜まるモノは溜まるさ。吐き出さずに居られない夜も、朝もある。人並みの性欲を持っていればそれは当たり前のことだ。思う相手が居なければどこかに処理しにいく手もあるが、職業柄そんなところに出入りするつもりもないし、一夜の相手を探して遊ぶ真似も自分には出来ない。誘われたこともあるが、どうも頭が固いらしい。
必然と、自分の手で処理するのだが、そんなときに思い浮かべるのはやはり依里子だった。AVの女優を見ながらでもいいんだが、何を見ても依里子になってしまう。キスの時小さく喘ぐあの声、時々触れる吸い付く素肌、誰にもまだ許していないあの狭い場所のキツさを指先が覚えている。
あそこに自分を埋めたら、どれほど気持ちいいだろうか...あの指にすら吸い付いてきた粘膜は、どれほどの快感を自分にもたらせてくれるだろうか?
最初は痛いだろうからたっぷり愛撫を加えて、とろとろに溶かしてからゆっくりと自身を埋める喜びは想像しただけで果てそうになる。激しく攻め立てれば依里子は壊れるだろうか?それともあのしなやかな心のように受け止めてくれるだろうか?
何度も昇らせて、快感を教え込んで、自分の思うがままに蹂躙したい。
男の身勝手な欲望の妄想。
汚したくない癖に...
矛盾した己の感情に反吐がでそうになるときもある。
そろそろ限界だった。なぜなら私が我慢するだけですまなくなってきたからだ。

依里子も女だった。
彼女の中の女が目覚めつつあることは気がついていた。この1年の間に女として花開きはじめた彼女は、少女から女の顔に成りつつあった。既に「恋」の感情から一歩も二歩進んでしまったお互いの思い。互いを知り、思いやり、理解して受け入れていく。その中で私の大人の世界を知って、少しずつ成長してきたのだ。
彼女に自慰をしてるかどうかなどと言うとんでもない質問をされたあと、しばらくは自宅に呼ぶこともできなくて、外で会うことを重ねた。
そして、聞いていいものかどうか迷った挙げ句、こちらも同じ事を聞こうと決めた。
二人で交わした約束、お互いにわからないことがあったらすぐに聞いて話し合うこと。コレがなければ先日のような質問もあり得なかったが、私も知りたい気持ちは同じなんだ。
彼女の不安を拭ってやる、キス以外の方法のために。
「依里子はこの間私が自分でスルかどうか聞いたよね?」
「え?う、うん...」
山の上の展望台の片隅に停めた車の中、助手席の彼女に覆い被さるようなキスをしたあと。
「依里子は、どう...するの、自分で...?」
「せ、せんせい??な、なにを...」
「聞きたいんだ。」
聞いて、答えを出すつもりだった。
「自分でって...わかんない。でも、触ってみたことはある。なんだかむずむずしたときとか...でも怖くて、すぐにやめてしまうけど。」
「何で怖くなった?」
「そ、それは...変な感じがして、怖くなったの。」
感じることはわかってるんだろう。ただ、自分でそれを確認するのが恥ずかしくて怖いんだ。少女ならではの羞恥心。男と女の差だろう。男同士では比較適性の話はよくする。先輩から教わったり、経験した同級生から教わったり。自慰行為の「オカズ」と称してアダルトな雑誌や映像を貸し借りしたりもするのだ。実際学校でも時々没収したりもする。だが、女子の場合は受け身であったり、羞恥心も邪魔をするのか、知らない子は全く知らないと言った格差を感じる。結衣子はそこそこ経験と知識があったように思うから。
「依里子、自分で触って気持ち、よかった?」
「え...ん、少し...」
真っ赤な顔をして俯く。
「セックスの前には、それを男に色々されるんだけど、依里子には無理かな?もし、依里子が自分でシテるのなら、それを気持ちいいと怖がらずにいてくれるなら私はソコまでおまえにしたいと思っている。」
依里子が驚いた顔をして顔を上げた。
「それって...」
「キスより一歩先、進んでもいいかなと思ってる。依里子は不安だったんだろう?キスしかしないから。だけどセックスしなくても、私が依里子を欲しがってることは伝える事が出来る。そのためには、依里子がエッチなことを許せないと出来ないだろう?」
自分的にはおそらく拷問に近いだろう。このままあと半年を過ごすか、依里子の身体に教え込んでしまうか。それによってこの夏休みの過ごし方は大きく変わる。
「触ったら、キモチイイの知ってるの...ずっと触ってるとおかしくなっちゃうから胸とか、少しだけ触ることもあるわ。先生に触って欲しいなって思ったり、先生がすごいキスしてきたときとか、ずっと身体を撫でてくれてたときとか、すごく...」
「私に触れて欲しいかい?」
依里子が頷く。私は再びキスをはじめながらその胸に服の上からそっと触れた。
以前に押し倒したときも触れたはずのその胸を柔らかく揉みし抱きながら、何度もキスの角度を変える。

ゆっくり、ゆっくり、手に入れていくことに決めた。
つまんだ指先の間に衣服越しでもわかる胸の先の尖り。こりこりところがして再びつまみ上げる。
「やっ、やだ...せんせぃ?」
ゆっくりとキャミソールの裾から手を差し込み、下着の上からまた触る。背中に手を差し込んでブラのホックを外す。まあ、そのぐらいは出来る。見えないまま自分の胸の先に触れられてビクビクと震える。あまり脱がせてしまうと外から見えてしまうからその辺を考慮して見た目変わらぬまま愛撫を続ける。
「ふぁ、やぁ...んっ」
固く閉じた目で必死にその違和感と闘っている。次第に快感になってきたのか、声が変化しはじめると、このんどは空いた手で依里子の腰の辺りをさすり、ゆっくりと太股に落としていき、側部からスカートの中に手を忍び込ませる。
「ひゃっ!」
上に昇っていき臀部を撫で、下着のラインに沿って何度も指先を往復させるとその度に彼女の身体が小刻みに震えた。
「怖い?やめようか?」
いやいやと首を振って私の首にしがみついてくる彼女。
愛しい。本当は早く一つになりたい。だけど...
「脚、少しだけ開いてごらん。」
膝の内側に手を這わせ、そっと押し広げる。緊張してるものの嫌がりはしていない。またゆっくりと内腿をさすらい、付け根にたどり着いては戻ることを繰り返す。
「せ、せんせ、やぁ、おかしいの、まだ、触れられてないのに...」
「触って欲しくなった?」
そう聞くと今度はコクコクと素直に頷く。
「力抜いて、」
行け根の縦の筋にゆっくりと触れて、布越しに何度も擦りあげる。
「あっん、やぁん」
上の蕾の辺りで指を止めてすこし強めに押さえると、ビクンと大きく跳ねた。
感じてるのがわかる。欲しがってるのがわかる。自分だってもうはち切れんばかりの大きさだ。
「キモチイイか?」
「いいのぉ...先生、あたし...」


「これ以上はココじゃ出来ないから、かえろうか?」
「はい。」
軽く衣服を整えてやり、私も運転席に戻った。長い間この姿勢は辛い。
「私の部屋に、だからね。続きはどうする?依里子」
少しだけ意地悪な自分の声。彼女を欲しがらせたいのもある。だがそれ以上に...
「続き、シテ...先生。」

私はアクセルを踏み込んで駐車場をでた。
高速を飛ばし、自分のアパートに戻るために...
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