2014サイト開設記念作品

番外編 1 同窓会〜史仁〜

「ただいま……っと、寝てるか」
 今日は会社で飲み会があり、少し遅くなってしまった。明日が休みだからと皆、羽目外し過ぎなんだよな。といっても、親父の店を手伝うほうがもっと遅くなるというか、明け方になるからまだ早い方なんだけど。
「可愛い寝顔して」
 大きなダブルベッドの上で、志奈子は母親の指を握りしめて眠る娘の愛梨と、顔を突き合わせて眠っていた。
 愛梨はどちらかというとオレに似ていると言われる。だけど、寝顔のあどけなさは志奈子とそっくりだ。オレはふたりの頬に軽くキスしてからシャワーをあびるためにバスルームへ向かった。

「さてと、どうしたものかな」
 風呂あがりにミネラルウォーターを飲みながら、幸せそうに眠る母子の姿にしばし見とれて幸せを実感していた。妻が娘を可愛がれば可愛がるほど嬉しくなる。それを見ていると、母のぬくもりを覚えていない自分でもその存在が信じられる気がしていた。自分が得られなかった愛情……実母が出て行くまではちゃんと愛されていたらしいが、幼すぎて覚えているはずもない。だがなんとなく思い出せるような気がして嬉しくなる。しかし、さすがにこのままじゃ自分の寝る場所がない。
 しかたなく、娘を抱き上げてダブルベッドの横に並べて置いたベビーベッドへ寝かせた。
「重くなったなぁ」
 もうすぐ2歳になる愛梨は起きていると動きまわって目が離せない。一緒に買物に出かけるときはベビーカーを使うけど、じっとしていないから、すぐにそこから脱走してしまう。結局ずっと抱っこして歩くことが多いこの頃。それでも、この間出かけた時より重くなってる気がする。週末も忙しくて、家族で出かけたのは3月以上も前のことだが。
 それでも幸せな日々。家には待っていてくれる人がいて、守りたい家族がいる。幼子の寝顔を見て癒やされる毎日。そして……愛しい女を毎夜この腕の中に抱いて眠れるのだから幸せこの上ない。ふたりで約束したのはただひとつ、可愛い娘には自分たちのように寂しい思いをさせずに育てること。愛しあう二人の姿をずっと見せてやれるように。
 それは今のところ全く問題がない。たとえ娘が横で眠っていても、毎晩でも妻を抱いて愛しあう日々。たまにベビーベッドをリビングに運んで眠るのを待って、愛する妻を防音のきいたこの寝室で果てしなく泣かせることもある。休みの前日はもちろん、店を手伝って帰った次の日は、志奈子もヤキモチを焼いているのかやたらと積極的でうれしいほどだ。ピルはもう飲んでいないので普段は避妊のゴムをつけている。だが安全日で休みが重なろうものなら――――翌日の朝、志奈子が起き上がれないほど抱き潰してしまうのが常だ。
 本当に幸せだった。平凡な生活を知らずに育ったふたりにとって、あたりまえの生活がとても幸せだった。
「まさかあんなところで出会うなんてな……」
 今日行った店はダイエットメニューがあると言って女性に人気の店らしく今夜も女性客でいっぱいだった。職場の歓送迎会で、女性に幹事をさせるとそういった店に連れて行かれることは多々ある。どうせなら自分が食べたいものをとか、思いっきり食べられるローカロリーで美味しいものがいいらしい。だが、そこはなんと高校時代の友人が家族でやっている居酒屋だった。彼の奥さんも昔の女友達で、ちょっとびっくりしてしまったそのふたりから、今度仲が良かった皆で集まるので来ないかと誘われた。その時に志奈子の話が出て……一緒に誘われたのだ。
「同窓会、か……おまえはどうしたい?」
 眠る志奈子に訪ねてみるが、返事はない。きっとオレが行こうと言えば行くだろうし、行かないといえば行かないだろう。高校時代はいい思い出がなかったという。オレとのことは後悔していないと言ってはくれたが、当時はつらい思い出だったに違いない。どうしたいか、志奈子の考えを聞いてみたかったが……今は起こすまでもない。明日聞けばいいことだった。

 それにしても懐かしかった。時間が経てばこんなものなのか? 以前はそういった集まりには興味がなかった。皆が普通に会話しているのが白々しく感じていたから。どんなに取り繕っても、幸せじゃない奴はそんな顔している。もちろんオレ自身もそうだったから。そんな自分が嫌になり始めていたあの頃、志奈子に出会ったんだ。かなり自分が変わったと思う。色んな気付きを彼女がくれた。生活が充実していると余裕が出てくるんだな……そういう意味でも、声をかけられても驚きはしたものの、嫌ではなかった。
『やだ、甲斐くんじゃない?』
 今夜の飲み会でいきなりそう声をかけてきたのは、注文した品を運んできた店員だった。久しぶりと声をかけられて驚いてはいたが、よく見るとたしか高校2年まで同じクラスの女で名前は……なんだっけ? ずいぶんとあの頃より化粧が薄くなってはいたのですぐにわからなかった。
『ちょっと亮平、甲斐くんだよ!』
『え? 芽実、甲斐って史仁か? マジで??』
 板場から顔を出したのは中学時代から仲の良かった亮平だった。髪を短く刈り上げて、居酒屋のおやじらしく見える。そういえば高校の時から店を手伝ってるって言ってたっけな。以前親がやってた店はこの場所じゃなかったから、ここがやつの店だとはわからなかった。
 昔から、派手に遊ぶオレのことを心配してくれた友人のひとりだった。だが高校卒業前から疎遠になって長い。原因はオレが亮平の言うことに耳を貸さなかったからだ。今となっては苦い思い出。こいつの言ってたコト全部が正論で、そんなオレは志奈子を深く傷つけた。いや、他の女達も……たぶん。
『何やってんだよ、亮平』
 そっちこそと板場から出てきた亮平におもいっきり首をホールドされた。
『今どこにいんの? 今度高校時代の見知った奴ばかりで同窓会やろうって話があってさ。うちを貸し切りにして集まるってことになったんだけど、おまえの住所誰も知らなくて。高校の名簿にあった実家に同窓会の案内送ったけど、宛先不明で帰って来ちまったぞ』
『ああ、実家は引っ越したから』
 子供ができるまえに親父はあのマンションを手放して新しくマイホームを購入した。妻の実家にそこそこ近く、店からはかなり離れた郊外に、それこそセレブかってほどの大邸宅だ。オーナーとして稼いだ金もあったし、なんといっても天下の氷室家のお嬢様をマンションに住まわせたままでは忍びなかったのだろう。たいそう立派な庭付きの一戸建てで、デザインも有名な建築家が請け負って大手の建設会社に特注だ。前を通るだけで目を引くほどすごい家。昔の女のこともあるから、郵便物の転送は一切やらなかったはずだ。
『で、来月なんだけど。来られるか?』
『ああ。たぶん、な』
 オレの知ってる奴らばかりだろうか? 高校の同学年は全部で10クラスはあったので、全員が集まるって話じゃないはずだ。
『どんな奴らが来るんだ?』
『そうだな、中心になってるのはおまえと仲の良かった香川や溝畑だよ。あとうちのと仲の良かった春菜たちだな。他にも連絡取れるやつには声かけてるみたいだから、もっと増えるかもだな。特におまえが来るとなれば……結構増えるんじゃねえ?』
『それはないだろ』
『おまえに会いたいって女ども相変わらず多いんだぜ。あ、けど食い散らかし禁止な。もう学生じゃないんだからさ』
 オレの女癖の悪い印象はそのままか。だろうな、あれからほとんど連絡取ってないから。
『あたりまえだろ。こっちも真面目な社会人やってるんだ。それに……結婚もな』
 左手の結婚指輪を見せて、社名の載った名刺を渡すと驚いていた。
『HIMUROコーポレーションって、すげえとこに勤めてんのな』
『それよりも、結婚って……ホントなの?』
 横から亮平の嫁が口を挟んでくる。そんなに驚くことか?
『嘘、甲斐くんが……やだ、みんなショック受けるじゃない! 会えるのを楽しみにしてる子、多いのよ。みんなの王子様が……まさか、できちゃったとかで?』
 うーん、確かにできちゃった結婚なのは間違いない。
『ああ、もうすぐ2歳になる娘がいるよ』
『へえ、おまえが……父親ねぇ。なんか時の流れ感じるわ』
 うちはまだなんだとちょっと寂しい顔を見せた。忙しくて子供どころではないらしい。弟夫婦と一緒にやっていたが、去年新店舗を出してそっちに行ってしまったので、ますます忙しくなったという。
『オレ以外にも連絡取れなかった奴っているの?』
『そうだな、おまえ3年の時同じクラスだった委員長に勉強見てもらってたよな? あの子がいなかったらいくらおまえでもH大は無理だったろ』
『ああ、感謝してるよ……』
 ホント、志奈子のおかげだった。それだけの関係じゃなかったことはバレてないみたいだけどな。
『あの委員長もな、どうしてるかと思って、うちのが当時の名簿見て連絡取ろうとしたんだよ。だけど引っ越してるみたいでさ、連絡先がわからなくて……彼女の場合一人暮らししてたらしくって、実家の連絡先は残してなかったみたいだな。大学時代引っ越した先は連絡あったのにさ。まさか委員長が行方不明になるなんて驚きだよ』
 行方不明って……うちにいるけどな。
『あんな真面目で堅い子がさ……世の中わかんねえよなぁ。おまえみたいなのがサラリーマンやって、結婚してパパやってんだもんな』
『わるかったな。オレみたいなのがリーマンで』
『いや、芸能方面に行くかおやじさんの店手伝うのかなって思ってたんだよ。俺だって成績良かったからあの学校行ったけど、結局ウチ継いでるしさ』
『まあ、な。その選択肢がいちばん有力だったけど、今のオレになって守ってやりたい奴ができたからさ』
『史仁……』
『ちなみに委員長、うちにいるけど?』
『『えっ??』』
 ふたりの声が重なる。
『オレの奥さんだから』
 その後はふたりの叫び声が店内に響いて、大変だった。

 ぜひ連れてくるようにと言われたが、志奈子を連れて行くのはどうだろう? もちろん、自分のものになった志奈子を自慢したい気持ちもある。だけど……志奈子は相変わらず自分に自信はない。お互いを思う気持ちの強さで夫婦としてうまくやってはいるが、並んで歩くときは気後れしているようだ。義母でもある朱理にメイクやコーディネートを教えてもらってるらしく、最近では一緒に出歩いていてもドキッとするほど綺麗になっているのが自分ではわからないのだろうか? 見た目だけじゃない、にじみ出る色香もそうだが聖母のような母性あふれる優しい美しさは皆にだってわかるはずだ。だが、オレが選んだ奥さんを見せたい気持ちと同時に、高校時代、自分の気持ちにも気づかずセフレとして過ごしていたふたりの爛れた時間は重い。今更やり直せないこともわかっているし、皆と再会して思い出させるのはどうかと躊躇してしまう。だからといって自分だけ出席する気はない。誤解は山ほどされるだろうからな。中には元カノもいるわけだし……それでも連れて行かないと、嘘ついてるとか仲悪いとか、二人のことを信じてくれないかもしれない。 
「どうする? 同窓会」
 翌日、目覚めた志奈子をたっぷり可愛がったあと、腕の中に抱き込んだまま昨日亮平たちに出会ったことと、同窓会の話をしてみた。
「甲斐くんは、行きたいの?」
 高校時代の話をしたからか、また呼び方が甲斐くんに戻ってる。普段は愛梨に呼びかけるときはパパで、親父や朱理の前では史仁さんなのにな。
「オレはどっちでもいい。志奈子が行きたかったら行くし、行きたくなければ行かない」
「…………」
 何悩んでるんだ? やっぱり高校時代はあまりいい思い出じゃないから行きたくないか? ふたりがセフレ関係にあったことなど誰も知らなかっただろうけど、3年の半ばからは皆の目を盗んでヤッてばかりいたしな。一緒にいるところを見られても『勉強教えてもらってる』で通したし、実際オレが成績上げてランク上の大学に合格できたのだって彼女のおかげだったから、周りもみなそう信じていたはずだ。恥ずかしいなら二人のことは大学時代に再会してからとでも言っておけばいい。今思えばあれだって……付き合ってるって言えないこともなかったと思うけど。オレは間違いなく志奈子に惚れてたし、そのことに気が付かなかっただけで。だからカウントに入れてもいいかなと思うんだけど。あの時抱いてた気持ちに嘘はなかった。抱きたくて、離したくなくて、夢中でオレは……志奈子を愛してたんだ。
「恥ずかしく、ない?」
「え?」
「だって、わたしと……その、結婚してるってみんなに知られたら」
 何言ってんだ? そんなことあるはずないだろ? オレは……自慢したいぐらいだし、亮平たちにはもうすでに言ってる。
 考えても見ろ。オレみたいな男が一丁前に親やれてるのも、愛する女を幸せにすることができているのも、全部志奈子のお蔭じゃないか。酷いこといっぱいしたオレを許し、愛し、求めてくれた。それでどれだけオレが救われたか。あんな親父でも理解することが出来たし、親父から聞いた母親の話で、記憶のある頃はちゃんとオレのことを愛してくれていたんだと知ることも出来たのだから。
「もう言ってるよ。それに、オレは自慢したい。志奈子を奥さんにできて、愛梨って可愛い娘がいることを。あの、身体を重ねていただけの高校時代も、おまえに執着していた大学時代も、付き合ってたって言ってもいいならそう言いたい。あとで惚れてたってことに気がついただけで、オレがおまえに惚れまくってて、逃げられても追いかけて、今ようやくこうして手に入れて、これ以上ないってぐらい幸せだってことを……」
 当時それを認めるのが怖くて他で遊んでたのは大目に見てもらわないとしかたがないけどな。いまさらやり直せないんだから。だけど、オレはみんなの前でそう言うつもりだった。ずっと付き合ってて、途中別れたりもしたけどそれは全部オレが悪くて、今ではもう奥さんと子供一筋の馬鹿な亭主でいい。
「オレ達の過去は変えられないけど、あいつらの前で言いたいんだ。オレが一方的に惚れて無理やり付き合いはじめたけど、オレが馬鹿でいっぱい寄り道して、真面目なおまえに逃げられもしたけど、ずっとおまえにぞっこんで追いかけて、孕まして自分のモノにしたんだって。あいつらの中では、ずっとオレがおまえに惚れてて追いかけてたって思わせたいんだ」
「そんな、無理だよ……わたしなんかじゃ釣り合い取れないもの」
「なんで? 今の志奈子を見て文句言う奴がいたらオレはそいつをただでおかない。オレが夢中で、いまでも他に目が入らないぐらい志奈子を愛してるって見せつけてやるさ」
 オレがそんなこと言うなんて信じられないって顔してるな。たしかに、オレは同窓会とかそういうのは面倒くさいほうだ今では学生時代の友人とはほとんど連絡を取ってない。ユウさんとリュウさん、それからあの先生夫婦とか、翔平とかそれぐらいだ。高校大学時代のオレの悪かった時代を知ってる同級生とはまったく付き合いがない。女誘うための餌にされるのも嫌だし、遊んでると思われるのはもっと嫌だったから。志奈子にいっぱい嫌な思いをさせたから、もうそんなことはなしにしたい。態度で示すしかないからな。それに……そいつらの口から昔の所業が伝わるのは極力避けたかった。昔のことだと言っても、志奈子を傷つけるのは間違いないことだ。
「だから、志奈子が嫌なら行かない。行くんならおまえは堂々とオレに愛されて幸せだって顔して行かせたい」
 しばらく考えた志奈子は、オレにきゅっと抱きついてきたあと、小さく『行きたい』と口にした。オレは嬉しくなって、たったそれだけのことを口にするのに泣きそうな顔してる彼女が愛しくて……頬を両手で包み唇を寄せる。軽いキスのつもりがどんどん甘くなり、可愛い喘ぎ声を漏らすのがまたたまらない。首筋を滑り降りた手が彼女の身体の稜線をなぞりビクビクと震えるのを確認して覆いかぶさる。スイッチは入ってしまった。今日は休みだし、愛梨もまだ起きそうにないから……いいよな?
「オレにいい顔みせて」
 先ほどまで繋がっていたそこはまだ名残で濡れたままだ。すでに堅く勃ちあがった自身に素早くゴムをつけるとそのまま彼女の中へ押し入る。
「んっ……あっ」
 少し軋んでかわいそうだけど、奥まで貫いたあとゆっくりと引き戻す頃にはもうスムーズに動くほど濡れている。
「気持ち、いい? すげえ、いい顔してるよ、志奈子」
「やぁ……ひっ」
「ここ、好きだよな?」
 腰で志奈子のイイトコを擦り上げると甘い声を上げてオレを夢中にさせる。真面目な委員長がすげえエロくて可愛いかったことに、最初に気づけたのはオレだった。そのことには最大に感謝したい。こんな顔、誰にも見せたくないからな。
 全部オレのもの。だから、いくら見せても減らないはずなんだ。
「甲斐くん、甲斐くん!」
 まだ甲斐くんに戻ったままだ。皆の前では呼ぶなよな? おまえももう、甲斐なんだから。
「志奈子、志奈子っ……もっと感じて。もっとオレを受け入れて」
 互いに求めあう激しい腰使い。抱き起こして向かい合う形になると、志奈子も負けじと締め付けてくる。思わず果ててしまいそうになるのを我慢する。ゴムを付けてなかったらアウトだな、今のは。
「ああっ……ダメ、また……あああっん!!」
 我慢して擦り続けていたら彼女のほうが先に飛んだ。快感に膣を痙攣させ、全身を震わせている。また酸欠にでもなったのかもしれない。はあはあと息を荒らす志奈子の身体を抱きしめると背中を擦って落ち着かせてやった。
 だがこっちはまだなんだ。ごめんな、志奈子。
「ひぃっっ!!!!」
 背中からベッドに落とすと片足を抱き込んで開脚させる。これは角度が変わって深くなるからと志奈子がいつも怖がる体位だ。かまわずゴリッと上壁に擦りつけた。
「ひっ」
 愛梨が寝返りを打ったのを見て、彼女は一瞬ビクリとした。このままじゃ母親の顔に戻ってしまう。
「つかまって」
 繋がったまま抱き上げると、その不安定さに志奈子がしがみつく。これはこれでいいな。ただし油断すると下に落としそうになるが。
 そのまま廊下に出るとドアを閉め、彼女の片足を持ち上げたまま壁に押し付けた。
「やあっ……だめ!!」
 震えわななく内腿が彼女の限界を告げている。たまに擦りすぎると潮を吹くようになったんだよな、出産後。だけどオレはそのまま突き上げる。
「ああっ……」
 ビクビクと震える志奈子は、何度も痙攣を繰り返し、そのあと……生暖かいものが互いの股間を這って床に水たまりを作ってしまった。
「セーフだね。ベッド濡らすより掃除が楽だよ」
「馬鹿っ……」
 今度は彼女を後ろ向けて壁に押し付け、つきだした形のソコを一気に貫いた。
「やっ……!!」
「うしろ、きらいじゃないだろ?」
「でも、んんっ」
 まだ声をこらえようとしている。
「声、だしていいよ……愛梨には聞こえない」
「でも、外に聞こえちゃう……ああっん!」
 腕を引いて身体を起こさせて後ろから激しく突き上げると、もう声が抑えられないようだ。立ったままこれをやると角度的にいいらしく、志奈子はすごい勢いでオレを締め付けてくる。空いた手で前を触ってやると志奈子は限界のその上を迎えた。
「やっ、今、ダメっ……やぁああああ!!」
 ヤバイ、オレももうだめだ――――喰われる……そんな志奈子のナカの動きに翻弄されて、オレは射精をこらえきれなかった。
「くっ、出る……もう!」
 回数的にはもうそんなに出ないはずなのに、こみ上げてくる残滓を志奈子は最後まで絞りとってくれた。

「ごめんな、無理させて。だけどおまえが素直になるのはオレに抱かれてる時だけだから」
 すぐになんでも飲み込んで我慢してしまうのは、志奈子のいいところでもあり悪いところでもある。だからこそこんな欠点だらけの自分とでも、こうやってずっと一緒にいてくれるのだと思う。ホント、今までも志奈子以外の女とは誰とも長続きしなかったのだから……
 バスルームから取ってきたバスタオルで体液を拭ったあと、ぐったりとした志奈子を抱えてベッドルームに戻る。素肌のまま横たえてシーツをかけた。幸せそうに放心する志奈子の顔を見てようやくホッとする。
「難しく考えるなよ。おまえは愛されてるんだから、自信を持てよ」
 だけどいくら抱いてもおそらく……志奈子はまた悩むんだろうな。
 オレはしばらくぼーっと彼女の寝顔を見ていたが、愛梨が目を覚ましそうだったので急いで衣服を身につけた。
「まんま……?」
「おはよう、愛梨」
 オレは目を覚ました娘を抱き上げる。
「悪いな、ママはもうしばらく起きられないみたいだから。むこうでパパと遊んでいような?」
「あぅ」
 当分起き上がれそうない妻を寝室に残し、娘とふたりリビングへ向かった。

2014.10.11
11周年Thank you!
あと2話続きます
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