2012バレンタイン企画
その後・4〜新婚編〜「甘い時間はいかがなもの?」
子供が出来て、式をあげて、これでようやく普通の夫婦らしくなれたと思った。
だけど、オレ達はたくさんの忘れ物をしてきた……クリスマスも、正月も、何度も一緒に過ごしたはずだけど、志奈子がずいぶんと遠慮していたということに後で気付かされた。もっとも、普通の家庭がどんなクリスマスや正月を過ごすのか知らないオレ達は、ただその日もずっと身体を繋げていただけだったんだ。
家族で過ごす初めてのクリスマスがやってきたが……さあ、どうする?だ。
オレは結構マジに考えた。放っておけばまた親父が自分の家庭を優先して、店をオレに任せて休もうとするだろう。だけど、今年のクリスマスは見事に週末だ。稼ぎ時だぞ?わかってんのかよ、親父。
「オレ、クリスマスは志奈子とデートするから」
「なんだと、その日は家族そろってだな……」
「オレ、店無理だからな。ホテルも全部予約取ってるし、愛梨は向こうの義母さんが見てくれるって言ってるから。志奈子がランドのパレードとか見たことないって言ってるの、一度連れて行ってやろうと思ってるんだ」
実はこれ、店のナンバーワンホストのユウさんから回ってきたものだった。早くからお客さんと店外デートのために予約していたのに、その人が海外出張で行けなくなってしまったらしい。
「そんなぁ、俺だって愛する妻と、娘と、クリスマスを楽しむ予定だったんだぞ??」
何言ってんだ、今まで散々クリスマスはオレに店を任せて朱里とよろしくやってたくせに。今回はオレ達にとって初めてのデートというか泊まりがけの旅行みたいなもんだ。新婚旅行も結局は行ってないんだからな?親父たちはしっかり海外にふたりで旅行してただろ?そん時もオレに店まかせてさ。
「くそ、しかたない……ユウと、リュウを呼ぶか」
うわぁ、水嶋さん呼んじゃうの?知らないよ、あの人最近なんだか付き合いが悪いっていうか、飲みにも誘って来ないんだよね。まあ、オレも仕事終わったら即帰宅するから行かないけどさ。もしかして、イイヒト出来たのかなぁなんて思ってる。
「まあ、頑張って」
そう言い捨てて店を出た。今日はそのことを言うために顔をだしただけだったから。
「あらカイくん、もうかえっちゃうの?」
裏口から出たとこをお得意様に見つかって、店に戻ってほしいと言われた。
「すみません、立川さま。この後急ぎの仕事が入ってまして……」
にっこり笑って丁重にお断りしておいた。今日は親父がいるから彼女もご機嫌だろう。もともと親父のお得意様だからな。オレは……早く帰って志奈子と愛梨と一緒に晩御飯だ!
というわけで、クリスマスは志奈子とオレにとっても最高の思い出になった。
そりゃあもう、もう思い出すだけでにやけてしまう程の、な?
こんな大きなテーマパークはあまり来たことがなかった志奈子は、始終子供みたいにはしゃぎっぱなしで、すんげえ可愛かった。だけど母親らしく、『愛梨も大きくなったら連れて来てあげたいね!』と、言い続けてた。
オレも彼女もこうやって家族でレジャーなんて行ったことなかったんだよな。だからこそ、自分達の娘にはいっぱい経験させてやりたいと思うんだ。
だけど……
「史仁さん、ここ来たことあるの?ずいぶんと詳しいのね」
なんて言われて思わず焦った。確かに他の女とのデートで何度か付き合わされてたから。
「ほ、本でみたんだ。ガイドブック買っただろ?ほら、あっちでショーやってるの、行こうか?」
他の女たちのようにあれこれ乗りたがるわけではないので、ゆっくりと回ってショーを見たりするだけで時間が過ぎるけど、待ち時間も久しぶりにふたりでたくさん話したりしていた。オレは本当に志奈子といると飽きないんだよな。ただどこでも欲しくなるのには自分でも困ったものだ。
「ダメ……っ」
物陰に隠れて何度キスしたか。ちょっかいだして、しばらくはふらふらの彼女を支えて列に並んだりもした。
夜は夜で最高のお楽しみタイムだった。パレードを最後まで見てると寒いので、早々に部屋へ戻りそこから花火を見て、その後は……たっぷりと志奈子のカラダを味わった。子供がいるといないとではここまで違うのか? 気にする相手がいないのと、昼間色々手を出してその気にさせてたのが功を奏したようだった。
「あっ……ん、やっ……」
「どうして欲しいんだ?志奈子」
「や、やめないで……お願い、もっと……して」
焦らしまくって声を出させると、久しぶりに彼女のおねだりが聞けたりもした。
翌朝起き上がれないくらい攻めまくって、ぐったりした志奈子を介抱するのがまた楽しかったりする。久しぶりに焦らす為にローションや道具を少し使ったから、オレの方はかなり持続したわけだから……
しばらくは、その時の志奈子の媚態を思い出すだけで抜けるほどだった。確かに子供を産んでから前以上に感度が良くなったと思う。以前よりももっとだから、オレの我慢が効くはずもない。おまけに甘えて来るし、おねだりだって……させてるんだけどさ。
だけど、あれ? 結局クリスマスはホテルで過ごして……プレゼントはお互いになかったのか?
「あけましておめでとうございます!」
「おめでとう!屠蘇をどうだい、史仁くん」
「はい、いただきます」
正月の過ごし方も、はじめて教わった気がした。
志奈子の実家は少し田舎にあるので、干し柿や勝ち栗を取ったりする。雑煮は今まで志奈子が作ってくれたのを食べてたけど、買ったものではないおせち料理とか、あまり経験したことのないものばかりだった。志奈子の母親もこの家に来るまではやったことがなかったが、必死で覚えたそうだ。志奈子も愛梨を連れて、年末から実家に戻り、一緒におせちを作ったりして過ごしていた。オレは仕事納めの後、例にもれず店に引っ張り出されて、大晦日の夜中にようやく船橋の家にたどり着いた。
だ・か・ら……
年越しえっちとか、姫はじめとか、なかなか出来なかったわけで。ただこれが家族で過ごす正月なのだと実感しつつも、少々欲求不満気味だった。
とにかく孫がかわいくてしょうがない義父母たちは愛梨を離してくれなくて、正月休みのほとんどを船橋の家で過ごしたオレ達は、3が日過ぎてようやく家族3人の生活に戻ることができた。
1月はあっという間、そして2月になってふと気が付く。
そう、バレンタインだ。
まあ、うちの課の女性たちが騒いでるわけだけど、いままでってどうだった??オレは……バレンタインを志奈子と過ごしたことがあっただろうか?いや、バレンタインだけでなくクリスマスとか……なかったはずだから。
今まで、バレンタインは店のイベントで夜通し出てることが多かった。バレンタインも……初めてだよな?チョコとかもらったことも……なかったか?
それって……微妙にヤバくないか??別にそんなもので志奈子の気持ちを疑うわけじゃないけれどもさ。彼女は相変わらず家の事はきちんとしてくれるし、オレに目いっぱい尽くしてくれる。だけど、イベント事にはあまり反応しないというか……それも今までのオレが悪かったせいだろうか?まあ、クリスマスはふたりで楽しく過ごせたし、正月も家族そろって、だった。じゃあ、バレンタインは??チョコとか用意してくれたりしないだろうか。というか、志奈子から何か貰ったことってあったっけ?ああ、卒業して別れる時に、就職祝い代わりにネクタイピンをもらったっけ。あれは、再会するまでずっと着けてたんだよな、オレ……
だけど、チョコはもらったことないぞ?いや欲しいんじゃなくて、その……まあ気持ちとしてだな、志奈子に何かしてもらえるのがオレは嬉しいんだけど、してもらってばかりじゃダメだよな?そうだ、オレから何かしてやればいいんだ!チョコがあまり好きじゃないオレがもらうより、チョコが好きな志奈子にあげるほうになればいいんだよな??
なのに当日しっかりと店のイベントが入っていた。親父の奴が逃げやがったからだ。
「ごめん、志奈子……帰り遅くなる」
「仕方ないよ。クリスマスはわたし達自由にさせてもらったんだから。バレンタインぐらいゆっくりさせてあげようよ」
相変わらず志奈子は優しい。朱里とも話してたんだろうな、その辺り……
「先に寝てていいからな?何時になるかわからないから」
今回のバレンタインイベントは、ナンバーワンのユウさんが前日にメインで仕切ってくれる分、当日は休むことが前から決まっていたから、オレが出るしかないんだよな。水嶋さんは最近ほんとに付き合い悪いし。
日中愛梨の面倒見て疲れてる志奈子に無理強いはできなくて、そうは言ったものの帰って来て本当に寝てるのをみるとちょっと寂しかった。
「志奈子、遅くなってごめんな?」
愛梨と一緒に眠る志奈子の額に口づけた時、スーツがチョコレートくさいのに気が付く。
今年は流行りのチョコレートフォンデュの噴水みたいなのを用意して、それをお菓子やら果物に付けて客に食べさせたりしてたからなぁ……袖口とか見ると結構ついていた。
「はぁ……」
志奈子からのチョコレート、もしかしてたらと少しだけ期待していた。
「やっぱ、今さらだよなぁ……」
シャワー浴びた後、その日はひとり寂しくベッドにもぐりこんだ。
「うわっ!!遅刻する!!」
「もう、何度も起こしたんだよ?」
「悪い、すぐに出るな」
急いでスーツを着て洗顔して髪をセットすると、渡された鞄を持って部屋を飛び出る。
いつもより軽くタイムオーバーだ。今年のバレンタインは平日だから困るんだ。今日だって本当は有給取りたかったのに、先に水嶋さんが取ってるしさ。休むわけにもいかなくて大急ぎで駅までダッシュだ。
「だぁー」
愛梨の可愛らしい声が行ってらっしゃいと言ってる。ああ、今朝は抱っこもしてやってない……志奈子にだってキスすらしてない。くそっ、せめて朝可愛がってやるつもりだったのに……
「よし、今夜帰ったら……」
そう決意して、オレは会社へ向かった。
「すみません、予約していた甲斐ですが」
「あ、はい。こちらのショコラ・ド・ムース、ワンホールをご予約いただいた甲斐さまですね」
ケーキのことをユウさんに相談したら、親父がしゃしゃり出てきたらしく、『代わりに注文しておいてやったから取りに行けよ』と言われた。気を使ってくれてるのか?なんかいやな気がするけれども、そこは善意に取っておいてやろう。とにかくすっごく美味しいチョコレートケーキらしい。洋酒が効いてあまり甘くないし、下半分の層がムースでその上がクリームタイプなのだそうだ。お腹にもかさばらなくて、男でも結構食べられるって聞いたんだけど……1日過ぎたとはいえ、バレンタインのこの時期に女性ばかりのこの店で男一人ケーキを買い求めるのがこれほどにも目立つとは思わなかった。だけど、コレも全部志奈子のためだ!甘いものも結構好きな彼女が喜ぶ顔が目に浮かぶ。だったら、バレンタインも男からで構わないじゃないか!
「ただいま」
帰宅してすぐに出迎えてくれる妻を引き寄せ軽くキスをする。愛梨を抱っこしてたら先にそっちにしちゃうけど、今日はもう寝たのかな?珍しくジーンズじゃなくてスカートだし。子供がいるとスカートは履けないって言ってたからな。たしかにああも立ったり座ったりするにはスカートは機能的じゃない。でも、今日のひざ丈のスカートはなかなかいいな。動くとふわってなるし。
「これ、食後のデザートに食べようと思って買ってきたんだ」
「あ、ありがとう」
ケーキの箱を渡すと、嬉しそうに受け取ってくれるはずの表情が一瞬曇ったように見えた。
「チョコレート……ケーキ?」
「ああ、嫌いだった?」
「ううん、好き」
すぐに笑顔になったけど、どうしたんだろう?遠慮してるんだろうか?だけどオレ達はもう遠慮したりしないって約束したはずだ。お互い思ったこと、感じたことは言葉にしようって……なかなか難しいけどね。
「晩御飯できてるけど、お風呂先にする?」
「ああ。それで、愛梨は?」
「……今日、母が義父と遊びに来てて、連れて帰っちゃったの」
志奈子は車の運転とかできないから、そう簡単に自分から実家に行かないせいか、ちょくちょく義父の運転で遊びに来る。だけど、志奈子の調子が悪い時以外は連れて帰ったりしないのになぁ……こんな偶然ありか?可愛い娘の顔を見られないのは寂しいけど、今夜はこれで志奈子をたっぷりと可愛がれるってわけだ。
「そっか、じゃあ先に風呂入ってくるな」
オレはいそいそとバスルームに向い、すばやく済ませて戻ってくると……あれ?
「なんかすげえ……」
テーブルに並べられたのは、すごい御馳走に見えるんだけど??
「あの、一応バレンタインだから……史仁さん、チョコとか甘いものあまり好きじゃないと思って」
だから御馳走作ってみましたなんて、かわいいじゃないか!もしかして……愛梨もたまたまではなく、頼んで預かってもらったのだろうか?
だとしたら、その気持ちにこたえないとな?
「ありがとうな。それじゃ、これ食べ終わったら、リビングでゆっくり買ってきたケーキ食べようか?」
「うん!」
さて、どうやって食べよう?ケーキじゃなくて志奈子をね。
「史仁さん、ケーキどのくらい食べられるの?あんまりたくさん食べられないでしょ?」
ソファに腰かけて待ってると、ケーキの箱を持った彼女がテーブルの横に膝まづいて聞いてくる。
「ああ、オレの分はいいんだ。それ全部志奈子の分だから」
「全部って……わたしこんなに食べられないわよ?」
「そう言わずに。ほら、オレが食べさせてあげるから」
箱から出されたケーキをそのままテーブルの上に置いて、オレはお皿と一緒に出してあったフォークを手にした。いきなりワンホールの一角に突き刺して思いっきりこそげとる。きっと志奈子の口には一口では入らないかもだな。いや、オレのが入るんだから……ま、大丈夫かな。
「ほら、あーんして」
愛梨はまだ離乳食を始めていないが、親父のとこの莉里はそろそろ10カ月になるので離乳食が始まっている。親父がこうやって食べさせてるのを見て、オレも愛梨にしてやるんだろうなって思ってたけど、先に志奈子にしてやるのも悪くないな。
「え……でも」
「ほら、こぼれるぞ?」
「うん……あ、おいしい」
急いで口を開けてほおばる。何口か運んでやると本当にうれしそうだ。
「あんまり甘くないし、軽いからいくらでも食べれそう……」
「だろ?評判いいって聞いて買ってきたんだ」
悪いけど、親父さんからだっていうのは内緒にさせてもらおう。今更あいつにいい顔させなくてもいいだろ?
「ねえ、史仁さんも一口食べてみる?」
甘くないなら平気だと思ったんだろう。もちろんそれは予測して買ってきてるんだからな。
「そうだな……じゃあ、オレはこっちで」
志奈子の手首をつかむと、その指先をケーキにぶすりと突き刺した。
「なっ、甲斐くん?」
焦るとすぐに昔の呼び方に戻る。シテる最中も時々戻ってること、気が付いてないんだと思う。
「あーん」
声を出して口を開けると仕方なくその指先をオレの中へ……
「んっ」
舌を這わせてその指先からチョコのクリーム部分を舐めとる。そしてしばらく離さないでいるだけで志奈子の頬は赤らみ、目元はとろんとしてきていた。
実は結構洋酒が効いているらしいんだ。コアントローと言ってホワイトキュラソーの一種らしい。オレンジの香りがするから、チョコムースに隠し味が入っていると勘違いするかもしれない。
「もっと食べさせてあげるよ」
今度はオレの指ですくって彼女の口もとへ……
「……ん」
わざとその指先で口中をかき回し、無意識に吸いつくその口もとから引き抜く。
ちゅぷっといやらしい音を立ててオレの指先を見詰めている。
そう、足りないんだよな?
またすくって、今度は志奈子の唇の外側にすりつけた。
「やだっ……」
拭き取ろうとした手首を抑えたので、自分の舌を這わせて必死に舐めとろうとするけれども届かない位置だ。
「オレがとってやるよ」
そう言って舌先でゆっくりとすくい取り舐めとるふりをしてそのまま首筋へ……
「ひゃっん!」
ぴちゃぴちゃと音を立てて首筋を舐めるようにして舌を這わせた。
「ふ、史仁さん??」
「ああ、ここにも付いてるな」
そういって、つかんだ手首の裏側にも吸いつく。
「やっ……もう、汚れちゃう」
「何が?ああ、服ね。それじゃ脱げばいい」
「えっ?」
驚く志奈子の腕を引き上げて自分の膝の上に横抱きにする。そして着ていたセーターをいきなりまくりあげて首から抜いた。
「やっ……甲斐くん??」
「あ、これもね」
相変わらず色気のないアンダーシャツも一緒に引き抜く。そうすればスカートだけ残してブラ姿の志奈子が恥ずかしそうに胸元を隠した。
「志奈子を食べていいだろ?」
そう言って再びチョコクリームを志奈子の胸元になすりつけては舐めとりそのまま彼女の口もとに運ぶ。
「あっ……やぁ」
繰り返しながらブラをはずしてそのまま胸の先に……母乳はあまり出なかったので、すでに市販のミルクだから、胸の形はほとんど崩れていない。だからこの胸は今でもオレのモノだ……
「んっ……おいしいよ。志奈子」
しつこく舐めまわして吸いつき、そして意地悪く歯を立てる。
「ひっ……ん」
ビクンとカラダを跳ねさせて、しがみついてくるのがかわいい……その腰の稜線を何度も往復させているとぶるぶると震えだす。ほんとに感じやすいのは相変わらずなんだ。
「ここも……食べていいだろ?」
スカートをまくりあげ、下着の上から指を這わすと、すでに濡れているような気配。
「だ……」
「ダメだなんて言わせない。なあ、愛梨は最初から預けるつもりだったの?」
「違う……でも、今日来るってお母さんが……甲斐くんにバレンタインのチョコ渡すんだって。だからわたしも義父に……」
「あげたの?」
いきなり声のトーンを落としたので、志奈子はびくりとした目でオレを見た。
「オレにはくれないのに……義父さんにはあげたんだ」
「だって……」
「だったらいっぱいもらわないと気がすまないな」
「きゃあっ!!」
ソファに背中から落として腰だけ持ち上げた体勢。珍しく履いていた面積の小さなパンティに手をかける。
「こんな、いやらしい下着持ってたか?」
「違っ……」
別にいやらしくはないけど、志奈子にしてはって意味。最近少しづつこういう大人の女性っぽい下着を買うようになったんだよな。まあ、影響してるのは朱里だろうけど。あいつ、オレの好み知ってるのか?っていうほどオレのツボを突いたものを志奈子に勧めてやがる。まあ、脱がせれば何でも一緒だけど、志奈子がそういうのを付けてるだけで恥ずかしがるから、それを指摘するのが楽しいというかなんというか……
「ほら、すごくおいしいよ?」
たっぷりとそこに塗りつけて舐めまくった何度も、何度も繰り返して。
「ああっ……っ、ひっん」
ビクビクとソコを収縮させて欲しがる彼女。欲しいと言ってくれればすぐにでも突っ込むのに……己の猛りは準備万端、いつでもOKな状態だ。いやむしろ興奮しすぎてる?
「ああ、こんなに濡れて欲しがって……もうぐちょぐちょだよ?志奈子のと、チョコとで……ねえ、期待してた?オレにこうしてもらえるって……チョコもないのに?」
「あ、あるもの……」
「え?」
おもわず埋めていた顔をあげて聞き返した。
「甲斐くんの分もあるもの……だって、今までバレンタインとかできなかったから」
「どこ?」
「え?」
「どこにあるの?」
「あの……食器棚の奥……」
オレはダッシュしてそれを取りに行った。真ん中の開き戸の奥にその包みはあった。それを手に再び志奈子の元に戻る。
「これ?」
「う、うん……」
恥ずかしそうにスカートを降ろし、途中まで降ろされた下着を押さえて起き上がろうとするのを、もう一度膝の上に乗せた。
「開けていい?」
「ん……」
箱の中にはハートの幾何学模様の入ったチョコレート色のネクタイ。そして、小さな包みのなかには生チョコか?
「そのぐらいだったらいいかなって……だって甲斐くんいつもバレンタインに持って帰ってきたチョコ食べなかったから……」
「あれは……お前からもらったものじゃなかったからだ。それに志奈子はチョコ好きだと言ってただろ?だから持って帰ったら食べるかなって。あの当時、志奈子が本当はオレのことを思ってくれてるって、知らなかったから……ごめん、無神経なことして」
「ううん、わたしも、まさかバレンタインにチョコとか欲しいって思ってくれてるなんて……考えてもみなかったから。ごめんなさい。お店も忙しそうだったし……」
そうだ、店があったから余計だ。
「違うよ、志奈子からだから欲しいんだ。志奈子がくれるものは何だって嬉しい。それから、オレからももっと志奈子にあげたい……もっと、いっぱい」
――――オレを。
「わたしも……甲斐くんにいっぱいあげたい。さみしかったの、昨日の夜もいなくて……わかってたけど、でも」
ああもう、そういうことは言ってくれよ!こんなかわいいこと言ってくれる奥さんを一人にしたりしなかったのに!!
「なあ、続き……部屋に行っていいか?今夜は思いっきり志奈子を鳴かせたい。止まらないから……もう」
声が上ずる。なんか……変なもの入ってないか?これ……
自分の息が荒くなってるのがわかる。脈がジンジンと脳内で鼓動しているようだった。
「うん、……して……お願い!」
ここまで焦らされまくっていた志奈子は半泣きでしがみついてくる。オレは志奈子の身体を抱き上げると、二人の寝室に飛び込んだ。ここなら、どんな声をあげても誰にも聞かれないとわかっているから。子供がいるとさすがに遠慮勝ちになるけれども、今夜は容赦しない……ああ、こういうのはクリスマス以来か?
だけど、やっぱおかしい……志奈子もオレも。
「志奈子……」
ベッドの上で彼女に残されたスカートとパンティを引き抜く、自分の衣服も剥ぎ取るように脱いだ。まあ部屋着だからすぐだけど。どっちにしてもチョコのにおいが充満している。彼女の体からも、オレからも……
「欲しい?」
志奈子のソコにこすりつけると、いつもと違うにちゃりとした感触……ああ、まだチョコが残っていたか?
「ごめん、タオルか何か取ってくるよ。このままじゃ志奈子のナカにチョコが入ってしまう」
「待って、きれいにする……」
そう言って志奈子はオレの怒張しまくったモノに舌を這わせ始めた。
「し、志奈子?」
「だから、お願い……早く……」
きれいに舐めとった後、彼女はオレをまたいで上に乗って……
「あっ……ん」
自らオレ自身を迎え入れた。
「甲斐くん……甲斐くん」
昔みたいにオレの名を呼ぶ彼女を、愛しいという以外になんと言えばいい?
「志奈子!」
ただただ、突きあげることでしか伝えられない己の熱情。志奈子の体はくねりオレを求めて締め付けてくる。
「んっ……あぁっ……やっ、きちゃう、ダメ……やぁああ!!」
「志奈子、志奈子!」
「やあっ、ダメぇ……やっ、いい……んっ、そんな……きつくしないで!」
「止まるかっ!もう……全部、おまえにっ……くっ」
もう少し志奈子を鳴かせたくて、必死で射精感を堪える。
「やああああっ……ひいっんっ!!」
仰け反ったその瞬間すごい締め付けとうねりがオレを襲う。
「うあぁ……くっ……あぁっ……ん」
思わず女のような甘い声が漏れてしまうほど、脳天がしびれて、下半身が持っていかれそうになる快感が脳髄から腰へと走り、頭が真っ白になるほど思いっきり……吐き出していた。
パタリと、志奈子が身体を預けるようにして倒れ落ちてくる。だけど、受け止めてやろうにもオレは志奈子の腰をつかんだ手もだらりと落として痙攣するような感覚に耐えていた。志奈子自身も未だに無意識にオレ自身をヒクヒクと味わい続けている様だった。
「し……なこ?」
「あっ……ん」
身じろぎしただけで、まだ快感が続いている彼女のカラダは甘く反応する。
「萎えない……」
「んっ……まだ、すごい……」
おかしい、まだこんなにも元気だなんて。あれほどの快感を伴って放出したのに、すぐさま復活するなんて。
「夜は長いから……ゆっくり楽しもうか?」
そういって腰を動かすだけで彼女はひくんと悶える。
「あっん、やぁ……」
その言葉の甘さで、それがダメでなくもっとだというのがわかる。
「ああ、わかってるよ」
腰に手をやり回すようにして突きあげる。
「ああっん……ダメ、甲斐くん!」
だけど、もうほとんど自力で動けない彼女は、もう自分でもどうしようもないほど感じてしまうソコを持て余して泣きそうな顔をする。
「わかってる、もっとだよね?」
回復してきた体力で、もたれたままの志奈子を抱えたまま身体を起こすと、身体の重みで彼女の最奥まで届いた。
「ああっ……」
「我慢できる?」
軽くゆするように持ち上げるけど、腰が抜けたように動けない彼女はふるふると首を振る。
「しかたない」
そのまま体勢を入れ替えて、彼女を仰向けに寝かせると、その脚を抱えあげて思いっきり腰を突きあげた。
「ひっ!!!」
声にならない声をあげて彼女が動かない体を跳ねさせる。
「限界まで、擦っていかせてあげるよ」
そう、オレの限界までね。明日は水嶋さんが出てくるのを見越して有給取っておいたから。昨日だってろくに寝てないんだ。今夜はほぼ寝ない予定だ。だからたっぷり朝までヤリまくってもお昼までゆっくり休んだら、明日の午後には愛梨を迎えに行こう。そしてお義母さんにチョコのお礼でもいうかな?
『おかげでいいバレンタインでした』と……
「んっ……甲斐くん、甲斐くん……好き、もっと……」
手を伸ばして求めてくる彼女の手をとりその掌に口づける。
「愛してるよ、志奈子」
「わたしも、愛してるの……」
こうやっておかしくなるほど攻め立てた時だけ、素直に本音を漏らす志奈子。だからいつもこうやって無茶苦茶に抱いてしまう。
「ばかばか!史仁さんのばかっ!」
「言い忘れてたんだって。悪かったってば」
翌日有給を取っていたことを志奈子に言ってなかったために、始業時間をはるかに過ぎた時間に目を覚ました志奈子が焦って起き上がってベットから落ちてしまったのだ。
「もう、どうしようかと思ったのに……」
「ごめん、な?それよりも一緒にふろでも入ろう。チョコレートの匂い取れてないだろ?」
甘い言葉で言いくるめて、バスルームに連れ込んで朝の営みを楽しんだのは言うまでもない。甘い甘い朝のらぶタイムだった。
「なあ、親父……あのチョコレートケーキって、まさか」
数日後、店に立ち寄ったときに親父を捕まえて聞き出した。
「ああ、良かっただろ?志奈子ちゃんみたいな子にはてきめんだと思うんだよなぁ。ああいうため込めこんじゃう子は、たまには解放してあげないとだな」
「やっぱり何か入ってたんだ……」
「ガラナだよ。ちょっと熱くなる程度だと思うぞ?知り合いのケーキ屋さんだったから、ちょっと頼んでおいてやったぞ」
にんまりとしてやったりという顔だ。たしかに……よかったさ。だけど不意打ちは困る。
「おかげさまで。オレもおかしくなるくらいね……」
ただでさえお酒に弱い彼女はカラダに塗りまくった分もあって、すごすぎるぐらいだったから。
「あ、史仁も食べたのか?」
「あいつのカラダに付けたのをね」
「それは……ますますよかっただろ?まあ、害のないものだから安心しろ、うちも朱里に食わせたら、もうおねだりされちゃっておじさん困っちゃった」
あほか、この親父は……!!
「一遍死んでこい!このくそ親父!」
楽しい思いをさせてもらえたことには感謝しよう。だが、その不意打ち狙う子供みたいな性格、何とかしないとそのうち朱里にも呆れられるぞ?
とはいえ、この年になっても現役でがんばってる親父にはちょっと負けてるような気がしないでもないが……
「来年はバレンタインは絶対出ないからな!というか、自分の仕事だろ?いい加減にしないと、志奈子を朱里にけしかけるからな」
「え?そ、それは……おい、史仁、それだけは勘弁だ」
朱里も志奈子のお願いにはすこぶる弱い。めったに人に頼まない彼女だからこそ、たまにお願いされると何でも聞いてやりたくなるそうだ。朱里にしろあの先生にしろ……
「しらね、とりあえず……バレンタインの特別給与もらってくからな」
たまにこうやって手にするバイト代は、結構重宝するんだ。普段はしがないサラリーマンだからな。貯蓄は意外としてるほうだけど、やっぱり将来に向けて取っておかないとな?愛梨や次の子のためにもな。
親父のすがる声を振り切って店を出た。
さて、来年こそは……今年よりも甘いバレンタインを過ごしてやる!!
Happy Valentine!
素材