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10
『帰るなよ?』

終業式の後、甲斐くんに耳打ちされた。体育館から教室に戻るすれ違いざまのことだった。
「なんで……」
若尾さんと付き合うならもういらないだろうに。わざわざそのことを告げるつもりなのだろうか?そんな面倒な手順を踏まなくても、しつこくしたりしないのに。
わたしにとって、資料室での行為が最初で最後でよかった。それとも一度手にした女は捨てる前に最後にもう一回ってやつ?まさかね、甲斐くんはそんなのもこだわりそうにないのに。
半分諦めて、皆が帰っていく中、適当に先生の用事をしたりして時間を潰して、カバンを抱えてあの資料室へ向かっていた。あそこに行ってももう鍵が開いてないのは判っているけれども、どこだとも指定されてないし、教室じゃ誰かに見られそうで、他に思いつかなかったから。

「委員長、こっち」
資料室の前で待ってた甲斐くんは、わたしの手を引くとやっぱりその階にある男子トイレの個室にわたしを連れ込んだ。こんな離れた棟のトイレなんて誰も使わないだろうけど、またこんな場所かと思うとテンションは下がる。一応、抱かれるつもりで準備してる自分がいたから……

「ねえ、ココは嫌だって前に言わなかった?」
「他に場所がないんだ、文句言うなよ」
甲斐くんの手は性急にわたしの制服の中に潜り込んでくる。冷たいトイレの壁のタイルに押しつけられてブラウスのボタンを全部外した。それから開いた胸に手を這わせ、首筋にキスを落としながらそう言う。
やっぱり……続けたかったから優しくしてただけ?最後はこんなものなの??
なんかまた惨めになってきた。
「甲斐くんは、ヤレればどこでもいいんだ……ねえ、だったら相手もだれでもいいでしょ?わたしじゃなくても若尾さんがいるんじゃないの?」
「へえ、それってヤキモチ?」
手の動きが止まってわたしの顔を覗き込んでくる。その表情が、妙に嬉しそうと言うか面白そうに見える。
「違うわ、あの時そう聞こえたから……それだったら彼女の方がいいんじゃないの?」
「気にしてたんだ?けど、あいつはダメだよ。たぶん、一回抱いたらそれこそ一生付きまとわれそうだからな。それに寛也のヤツが春菜にマジだし。いくらオレでもダチの好きな子に手を出すつもりもないからな。同じガッコの女にはできるだけ手を出さないようにしてるんだ。後々やっかいだろ?ダチだとみんなで集まる時に気使うしさ」
わたしは違うと言うのだろうか?一応同じ学校なのに。
「委員長だったら、卒業した後他の仲間と一緒に会うこともないだろうし、同窓会とか関係なく来そうだからさ」
「そう……思ってくれるのは有り難いけど。じゃあ、いい加減やめようよ。わたしたち受験だよ?予備校とか行ける身分じゃないから学校の補習使ってたけど、冬休みは本気でやらなきゃヤバいもの」
「オレだってそうだよ?自力で勉強するって親に啖呵きっちまったしな」
「だったら……」
「けど溜まるんだよ。思いっきり抱きたい。もっと続けたいんだ!彼女居なくなったからな、続けてもらわないと身体が持たねえんだよ!」
「そんな……」
行為が再開する。始まれば抵抗出来なくなることは判っていた。いくら心でブレーキをかけても、一度火がつくとカラダの熱は収まらなくなる。甲斐くんが与えてくれる快感を求めて自分からカラダを開いてしまうのだから……
「悪いけど、今日だって溜まってるんだ」
押しつけられた甲斐くんの下半身が熱い。
「嘘、だって……最後だって、言ったじゃない!」
残った意志の力で彼の胸を押し返して底から抜け出そうと藻掻いた。
「仕方ないだろ?まさかカノジョと別れるなんて思ってなかったからな。それに、委員長だって止められるの?こうやって触れるだけで感じてしまうような、淫乱なカラダしてるのに?」
びくりとからだが震えた。抵抗を止めたのをOKと取ったのか、キスが始まる。反論する術を塞がれて、甲斐くんの舌先に翻弄されてカラダはどんどん抵抗を忘れて彼に縋り付く。その指先は的確にわたしの感じる部分を刺激しはじめて、いつものようにカラダから力が抜けていく。
「ほら、もうトロトロに濡れてる。前みたいに濡らしてなかったら許してやるのに……」
前みたいに?そう前は濡れなかった……だけど、カラダはもう覚えてしまってるのだ。何をどうされたら気持ちいいのか、期待して待ち望んですらいるのだから。
「やぁ……あ……んっ」
「オレの指、美味しそうに2本も根本までくわえ込んで、こんな身体で最後に出来るのかよ?」
下着は取り払われ、制服のブレザーの下はブラウスも全開で、ずり上がった下着から胸の先がこぼれていた。空いた手で揉みし抱き、指先で弾かれたり舌先で舐めあげられると堪らなかった。
「ふっ……う……んんっ」
快感が背中を走り、子宮が疼くような錯覚を覚える。意志とは無関係に下肢はもう濡れて甲斐くんのモノを待ちわびているのだ。
「オレしかいないだろ?委員長の感じやすいトコ知ってるのも、こうやって淫乱になっちゃうコト知ってるのも。こうやっておまえのこと抱くのも、オレだけだ。こんなにおまえのこと喜ばせてやれるのもなっ!」
「ああぁあ!!」
トイレの壁に押しつけられたまま、片足を持ち上げられて深々と一気に突き上げられた。
「ほら、喜んでる、ここも、ここも!」
擦りつけられた甲斐くんの腰に刺激されて、敏感な蕾がまた快感を産み出してしまう。胸の先も酷く抓まれるほどカラダが痺れて、感じるたびに彼のモノを締め付ける自分がいた。
「んっあぁ」
「なあ、わかる?今日つけてないんだ」
「え?」
一瞬なんのことかわからなかった。
「ゴム、つけてない……直に入ってる、志奈子の中に、オレの、そのまま入ってる……」
「や、やめて!!」
安易な避妊がどれほど不確実なものかは聴き知っていた。もしも、を考えると怖くなる。結構不順な自分の月経の周期なんて今まで気にしたこともなかった。来なければ来ないだけ楽かなと思うほど酷い生理痛に毎度苦痛を味あわされていたから。
「大丈夫、外に出すから、志奈子のイヤらしいところに、いっぱいかけてやる!」
「や、やだっ!」
ダメ、ダメだよ!甲斐くんのモノがいつになく大きく膨れあがってるような気がした。ごつごつと硬く勃ちあがったソレがわたしの中を大きく掻き回して引き抜かれ、そして押し込まれる。ダメだと思うほど自分の中が収縮し、そのせいで余計に敏感になった自分の快感に、一瞬意識が飛びそうになるほどだった。
「気持ちいい、志奈子の中……あったかくて、うねってる。おまえもいいんだろ?こんなに濡らして……」
じゅぷじゅぷ音が跳ね上がる。
「だめ、抜いて……甲斐くん」
「なんで、こんなに気持ちいいのに?」
甘い、声だった。喉に絡み付くような声で、耳元に囁かれる。この声は彼の武器かも知れない。吐息混じりのその声に堕とされかける。
「だって、もしできたら……」
「なあ、本当に今日で最後にするつもりだったのか?」
「えっ?」
聞いたことと全く違う問いかけをされて戸惑う。でもわたしの答えを待つでも無しに、甲斐くんは突き上げ続けてくる。
「離れられるの?こんなに感じてるクセに!」
「あぁ……っ!」
もう意識は飛びかけてる。ほとんど前戯も無しで突っ込まれたのに、あたしのそこは喜んでる。
忘れられないかもしれない……こんなの覚えちゃったら。
でも、春になれば甲斐くんにまた彼女が出来るだろう。またそれを見せつけられたり、聞かされながら抱かれるなんて……あたしにはきっと耐えられない。
それに……
高校を卒業したらこうやって学校で必然的に会うことも無くなる。逢おうとしなければ逢うこともない。互いの連絡先すら知らないのだから。
「誰にも知られたくないんだろ?こんなイヤらしいカラダしてるってコト。だったら、オレが飽きるまで抱かせろよ。言っただろ?おまえのカラダ抱くの好きだって。この肌……たまんねぇんだ」
そういって首筋に舌を這わせ、胸の膨らみに頬ずりしていた。
資料室でも、全部脱ぐってことは無かったけれども、甲斐くんは必ずといっていいほど胸を露わにして愛撫した。最中も何度も快感を与えるため以外に触ったり、頬を寄せたりを繰り返していた。
「ほら、どうする、志奈子の中に出てしまったら?」
返事をしないわたしに業を煮やしたのか、脅すように腰を上下させる。
「やっ、やめて!もう、抜いてぇ」
甲斐くんがいつも以上に昂奮してるのが判る。そんな無責任な事するはずないと思っていたのに、なぜ?
「出そうなの判るだろ?ほら、志奈子、おまえだって、こんなに……」
「だめっ!!おねがい抜いてぇ……言う通りにするから……」
「本当だな?じゃあ、後一つ……気持ちイイか?オレの、コレが好きか?志奈子」
「ん……いい、すき!だから……」
抜いてと懇願した。本当は甲斐くんが好き、そう言ってみたかったけどそれはやめた。
「うっ、もう……」
激しく突き上げる甲斐くんの腰の動きに恐怖した後、一気に引き抜かれたソコに、なま暖かいモノが大量に浴びせられた。


「はぁはぁ」
苦しげに荒い呼吸を繰り返しながら引き寄せられて重ねられる唇。甲斐くんはこうやって恋人同士のような行為も平気でしてくる。カラダだけならキスが無くてもおかしくないのに……ヤッテすぐ離れてもおかしくないのに、いつだって甘い余韻を残した後戯があるからわたしは……錯覚して、勘違いして、思いを募らせてしまうのだ。
カラダだけの関係のはずの彼に。
「ん……っ」
「今日は、震えないんだ……そうだよな、最後までイカセてやってないもんな」
それでもしばらく力の入らないわたしの体を抱きしめて支えてくれてるようだった。落ち着いたのを見計らって、わたしの体にかかった彼の体液を、トイレットペーパーで拭き取った後、甲斐くんは自分のバックからタオルを出して綺麗に拭いてくれた。


「委員長、携帯は?」
下着を着けて制服を直していると、不意に背中から聞かれた。
「持ってるけど……」
そう答えはしたけれども、そのまま動かずにいたら甲斐くんが勝手にカバンを開けてわたしの携帯を取りだしていた。
「オレのメアドとナンバー登録しといたから」
自分の携帯を手渡されて呆然としていた。それで?どうするつもりなんだろう?
「冬休みの間、受験勉強頼んだからな、委員長」
「ええ??」
「約束しただろ?続けるって」
休み中、呼び出された時は甲斐くんと一緒に勉強することを約束をさせられた。
もちろんセックス込みで……
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