〜月がほほえむから番外編〜
郁太郎のジレンマ4

オレはホテルのソファに深く腰掛けると大きなため息をついて煙草に火を付けようとした。
「あ…」
どうやら部屋にライターを落としてきたらしい。
「ちっ…」
オレが煙草をくわえたまま舌打ちすると隣からライターが差し出された。
「どうぞ」
女の声がそう言うのでオレはその手慣れた火の付け方に、、水商売の女かと隣を見た。

「サチ…」

そこにいたのは元妻のサチ、今は旧姓に戻ってるので木梨早智だ。
どう見ても、華やかなスーツと引き出物は結婚式の帰りってとこか?
「郁太郎…」
開いた胸元、スカートから垣間見える肉感的な脚。オレ好みの華奢なタイプじゃないけれども、この脚が淫靡にオレに絡みつき、快感と共に打ち震える美しさをオレは知っている。
「久しぶりね、そっちも結婚式?…じゃなさそうね。」
手ぶらのオレを見てサチは少し笑ってすぐに表情を固めた。
元々は良く笑う女だった。大きな声で、大きく口を開けてあっけらかんと笑う。そのくせオレを誘うときは、色気のある艶っぽい視線を送ってくるんだ。
「ああ、まあな…元気だったか?」
結婚して、1年も立たないうちに、何度も大きな喧嘩をした。そのすべてはオレが自分の妻の誕生日よりも、菜々子の入院や、急変に駆けつけたがためで、その説明すら知ってるからとしなかったことにあった。
サチは、オレが菜々子に惚れてることも、未だに引きずってることも知ってたはずだった。
それでもサチの身体の誘惑に負けて、何度もサチを抱いて…

いや、相性は無茶苦茶良かったんだ。
オレもそこそこ経験があったし、あいつだって…
セックスの最中のあいつは淫乱そのもので、自分から腰を振ってオレを求めてくる。
オレが耳元で意地悪く囁くと、身体を震わせて反応するのだ。
「サチはそんなにセックスが好きなのか?それともオレのがそんなにいいのか??こんなに濡らして、いやらしい女だ。もっと?どうして欲しいんだ?」
「あっ…郁太郎の…もっと、もっと欲しいの…いやっそんな目で見ないで…駄目なの、すごくイイトコに当たってて…もっと…もっと突いてぇ!!」
「しょうがねえな、ほれ、どうだ?気持ちいいんだろう?すっげえ、締め付けてやがる…おまえの中って、くったまんねぇな…」
「いいのっ、気持ちいい…郁太郎のが、すごくいい…こんなにいいなんて…ああぁん!!」
オレの上で白い身体をくねらせ、大きな胸をたぷんと揺らす。その姿に欲情しない男なんて居るのかな?オレは、本当に抱きたいのは菜々子だと思ってたから、結構余裕で責めまくっていた。溜まっていた分何度も出させてもらった。
要するに付き合ってる間は遊びだったんだ。

宗佑が菜々子と結婚して、オレの行き場のない思いは宙に浮いて、どうすることも出来ずにいたときに、この女は自分の身体を差し出してきたんだ。
きっかけは飲みに行った先で意気投合して、気がついたらあいつの身体を舐め回していた。サチもオレのをくわえ込んで、激しくフェラしてた。オレの我慢できなくなった濁液を飲み干し、婬らにオレを何度も求めて来た女。
「あんたにはあたしがついてないとからっきし駄目なんだからね!ったくもう、だらしないし、身の回りのことだって全然出来ないじゃない?それに…もう、あんたもあたしの身体なしじゃ夜が過ごせないでしょう?あたしも、あんたなしじゃ居られないのよ。」
そう言ってオレんちに押しかけて来て、オヤジと結託して婚姻届まで出しちまいやがった。
強気で、プライドが高く、淫乱で、けど心根は優しい女だった。

その女が出て行くときもオレは止められなかった…

「元気、よ。あんたは?って、相変わらずなの?」
相変わらず…宗佑の女に熱を上げて、追いかけ回して、あまつさえ強引に襲っちまった。
菜々子は心臓が弱かったからそんなまねできなかったけどよ…
「ああ、相変わらずだよ。おまえはどうしてるんだ?」
「今日は友人の結婚式よ。自分の結婚式はやってないのに皮肉よね、これで何度目か…」
「この後の…予定はないのか?」
オレは珍しく自分から女を誘ってるのに気がついた。
「いや、何もないなら、久しぶりに飲まないかなと思ってさ。オレもそろそろ心入れ替えねえと明るい未来がないじゃんか?昔のオレへの不満、文句、何でも聞くよ。サチの気が済むまで…今日はとことん落ち込まなきゃ気が済まねえんだ。もちろん、おまえに用がなければ何だが…こんな機会ないだろ?オレがなんでも聞くってよ。」
「ほんとね、言いたいこといっぱいあったわ。でも全部蓋して、あの家を出たの。それから…色々あったけど、あたしは自分が不幸だなんて思ってない。あんたみたいにどうしようもない男に惚れたあたしが悪いんですもの。そうね、いいかもしれないわね。思いっきり文句言わせて貰うのも。びんたしても構わないの?」
「ああ、全部OKだ。それじゃ、その荷物どうする?」
「部屋取ってあるから、そこに持って行くわ。ラウンジでまってて。」

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