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 美雪 Side 1

 
「美雪、29日から31日までスキーに行かない?」
「え〜スキー?」
ひとり風邪でキャンセルが出たらしい。同僚の渚に誘われた。会社のスキー好きのメンバーで行くらしい。誰も一緒に過ごすイイヒトが居ないから行くそうだ。
「どうせ年末年始暇なんでしょ?」
「そりゃ、まあ…」
カレシも居ないし、実家に帰省するわけでもない。
でもね、実家で生真面目に生きてるおかげで、あたしには浮いた話もない…
というよりも、逃げてると思うんだよね。
誰かと付き合うのが怖い。男の人が怖い…
「スキーは出来るんでしょう?」
「ん、まあね。」
子供の時から親に連れられて行ってたし、女子大時代の友人の親戚がスキー場で民宿やってるのをいいことに、しょっちゅう滑りにいってたから…
「じゃあ車だから、誰が行くかわからないけど、会社の人間は間違いないからね。」
 
って聞いてたけど、どうしてこの人なの???
「冴島?荷物コレだけでいいのか?」
「は、はいっ!」
き、緊張する…
何でこの人?さらさらの前髪に綺麗に整った顔立ちに涼しげな目元、銀縁のめがね。
あたしの隣に立ってると頭ひとつ分背が高くって、トランクルームに荷物を入れるために身体を折り曲げてもその長い脚は変わらなくて…あたしの荷物を受け取る神経質そうな細い指。
思わず自分のぽちゃぽちゃの手を後ろに隠したくなる。
 
会社の中でもぴか一モテル男がなんで?
彼女が居たでしょう?秘書課の美人が!!
嫌味なほどあたし好みの容姿をしたこの男。
皮肉なことに最初の指導員だったりする…沢田さん。
まあ、あたしなんか相手にもしてもらえないだろうから、最初っから見てるだけ〜なんだけどね。
 
「音楽聴きたいのがあったら適当に選んでいいから。」
なぜ彼が迎えに来たとか、彼女はどうしたとか、聞きたいことは山ほどあったけど、何も聞かず、あたしはCDを1枚選んだ。
「へえ、おまえもコレ好きなのか?」
「CMソングとかになってますよね、車のとか、好きな曲が多くって。」
実は父親が持ってるんだけど、まさか沢田さんも持ってるなんて…
 
<HolidayDrivin’>
 
「渋いな…そう言えば、担当してる時はそんな話しなかったな。意外と趣味合うのかもな…」
彼の指先がリズムを刻んで、楽しげに響く。一気に居心地のよくなる車内。
そのままみんなの待ち合わせの場所まで着いたら、また誰かの車に乗り換えると聞いていた。
沢田さんだけうち方面だったらしく、他のメンバーは誘うことなく、高速に乗りパーキングへ向かった。
 
だけどあたしは早起きして、緊張してた割りに、飲んだ酔い止めが効きすぎて、暖房の温かさにすっかり寝入ってしまった。
 
 
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素材:FINON