〜10周年記念作品〜

13年目のプロポーズ・1〜まーくん
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13年目のプロポーズ

子供の頃からずっと好きだったけど、本当に好きだと気がついたのは小学4年の時だ。
男にフラレて泣く槙乃さんを前にしてプロポーズした。
その時槙乃さん言ったよね?
『大きくなって、まだあたしが泣いてたら、その時ね』って
もう今は泣いてはいない槙乃さん。だって俺が幸せにしてるもの。
高校卒業を迎えたあの日、居酒屋で出会った槙乃さんは男にフラレたらしく、したたかに酔っていた。俺の槙乃さんを振るなんて信じられなかったけど、それはチャンスだった。
酔った勢いを借りて、甘えて擦り寄って、モノにした。槙乃さんと付き合うまでに練習と称して色々とお勉強したテクニックをフル総動して、彼女のカラダごと堕としたんだ。
あれから4年、社会人と大学生で釣り合いは取れてないけど、うまくやってきた。元々隣に住んでたし、今じゃどっちの親もいないからしょっちゅう行き来して……最近じゃ一緒に住んでる半同棲も同然だった。洗濯やお風呂は自宅でするようにしてるけど、誰も邪魔するものがいない今、ずっと一緒にいられることが幸せだった。
だから、彼女が泣くのは俺とのえっちの時だけ。それも歓喜の涙と言っておこう。
ついね……いじめちゃう時もあるし、ダメって言われても若さで突っ走ったり、体力と精力のある限りヤリまくっちゃったりするからさ。休みの前の日と俺のバイトの休みが重なったりしたらもうストップはきかない。あとイベントの時ね、前もって準備して時間を合わせるからたっぷりと……やっちゃうわけ。
今年のバレンタインもかなりすごかったと思うよ。ご奉仕されまくってさ……ああ、もう思い出しただけでも下半身がヤバくなる。その分槙乃さんのカラダにはホワイトデーの時にたっぷりお返ししておいた。
だってさ、Xmasも正月も、俺は卒論やら卒業試験なんかでホント時間取れなくて、我慢に我慢を重ねた結果だったんだ。
一昨日の卒業式の後も、謝恩会のあとさっさと帰ってきた。だって槙乃さんがお祝いしてくれるって待っててくれたからね。
ようやく卒業。春から社会人になってようやく槙乃さんと肩を並べられるんだ。
そりゃまだまだ収入も何もかも追いつかないよ? だけど早くから就職活動もはじめていたし、大学ではやるつもりのなかったサッカーをまたやり始めたのも就職に有利だって考えもあった。実際部のOBに優遇してもらったりもした。試合を見に来てくれたOBが人事課にいて、結構有名な企業に就職も決まった。ただ……転勤とかあるんだよね。
『何処にでも行く覚悟はありますか?』
と聞かれ、まさか『イヤです』なんて言えないだろ?
でも、もし遠くに行くことになったら、槙乃さんと離れ離れになってしまう。
遠距離恋愛でも続ける覚悟も自信もあるけど、これまで結構ヤリまくってきたからなぁ……俺も我慢できないだろうし、槙乃さんも我慢できるだろうかって、ちょっと心配。
そのうえ……
『将志、春からそっちに帰ることになったから』
「え?マジで??」
『なによ、嬉しくないの?』
「いや、嬉しいとか嬉しくないとか、俺はもう社会人だぜ?一人暮らししたっておかしくない年齢なんだから」
『なによ、やっぱり嬉しくないのね』
まあ、今まで楽させてもらったよ。学費に家賃電気代水道代はぜんぶ親持ちだったから。食費や小遣いは自分のバイト代で賄ったし、ちゃんと親の負担にならないように一種の奨学金を貰えるよう頑張ったさ。余った奨学金を使えば、一人暮らしのアパートの敷金にもなるだろうし、車の頭金にも出来る。早めに部屋を出て車買って……槙乃さんと一緒に暮らせればいいなって。自分の力で槙乃さんと一緒に生活していければいいなって思ってた。
だけどそれはもうちょっと先だと思っていた。まだ働き始めもしていない。だけど、両親が帰って来たら……今までのようにはいかなくなる。
『取り敢えず荷物片付けたら、おかあさん先に帰るから。大掃除して、要らないもの捨てまくって引越しの荷物入れないとね』
ああもう! 入社式まで槙乃さんとべったりできると思ってたのに!

「操さん帰ってくるの?」
「……うん」
「今までみたいにはできなくなるね」
「やだなぁ……朝まで槙乃さん抱っこして眠りたい! 朝起き抜けにえっちしたりとか、休みの日は朝から晩までやり倒したりとかできなくなるじゃん!」
「それはやらなくていいから」
「何言ってんだよ、はじめたら感じまくって泣きながらイキまくっちゃうくせに」
「ま、まーくん! だったらあなただって根元縛って上に乗って腰振ったら『お願い、槙乃さんイカセて、って半泣きでおねだりしてたじゃないの!」
「あれは……槙乃さんが『今日はわたしの好きにするんだから』ってバレンタインに……ヤベ、思い出しただけでこんなんだけど?」
彼女の手を取って股間に当ててやる。さあ、責任とってもらおうか?
「ちょ、まだ晩御飯もまだなのよ?」
「先に槙乃さん食べさせて……もう、我慢できないんだ」
「やっ……だめ、まーくん……あっ……ん」
ちゅっと唇を喰んだあと、首筋に舌を這わせて腰のあたりを撫でるだけで槙乃さんは堕ちる。カクンと膝を折り、俺の腕の中へ……
「このあいだのホワイトデーみたいに槙乃さんに何度も『イカセて、入れて』って言わせてみようかな?」
「いじわるしないで……」
「そうだね、また槙乃さんいっぱい泣いちゃうもんね。そしたら朝も大変だし?」
「まーくん!」
「ごめんごめん、それだけ可愛い槙乃さんが悪いんだよ。あーもう、どうしよう……おふくろたち帰って来たら、あんまりできなくなっちゃうのかなぁ……ただでさえ俺が仕事はじめたらどれだけ時間があるかわからないのに」
「……寂しいけど、その方がいいかもしれないよ。だって仕事もなんだって最初が肝心でしょ? しっかり仕事しないとダメだから」
「わかってるよ……でも、俺我慢できなくて夜中に襲いに行きそ」
「……いいよ、だってわたしも我慢できないかもしれないから」
「ほんとに?」
「どうしてもだったらホテルとか……わたしが出すし」
それはちょっと、嫌だな。今までも大きな金額になると彼女が払ってくれた。俺は学生だし、バイト代って入る時は入るけど、入んない時は激減する。けど、男としてどうかと思うんだ。年上だからっていつも槙乃さんに甘えて対等になれる? 就職したら、社会人になったら……ようやく追いつけるんだ。小学生と中学生、高校生と大学生、同じ学生でも段違いだった。今は学生と社会人、成人しててもその差は大きい。自立してるしてないの差。自立してなければなんの責任もとれない。生活も、結婚も、子供だって……出来るようなことめちゃくちゃしてるし、避妊してるといってもたまに勢いに任せてルーズになりそうな時もある。気をつけなきゃって思うんだ。前に一度危なかったし……あの時の不安さ。けど俺のなんて知れてる、槙乃さんがどれほど不安で怖かったか考えれば無茶はできない。なのに、俺ってつい、無茶しちゃうからさ。
だけどこれからは、彼女とはフィフティ・フィフティの対等な立場でいきたい。
「とりあえず……今日はもうヤッちゃっていい? しばらく分、ヤリ溜めする」
「え、ちょっと……あたし明日仕事なんだけど?」
「今からヤレば少しは眠れるよ? まだ8時だから」
「もーっ、無茶言わないで、あっ……だめ、ソコ……うっん……」
弱いとこを攻めればすぐに槙乃さんは抵抗できなくなる。
「いっぱいイカセてあげるから……取り敢えず入らせて」
早々に彼女の中に潜り込む。
「気持ちい……槙乃さん」
「ん……わたしも、まーくんの……すき」
おかしいほど求めてしまうのは、過去の男に勝ちたいからかもしれない。槙乃さんの反応を見てたら、とっくに勝ってるんだろうけど。もちろん俺の中では槙乃さんが一番だ。だけど誰よりも感じさせて、自分が一番であると実感したい。幸せそうな笑顔をいっぱい見たいのに、泣き顔さえも独り占めしたいと思ってしまうんだ。
ああ、時間が足りない。今日明日じゃまだまだ伝えられない。
今の自分じゃまだダメなんだ……一人前になるまで。
けど、それっていつ? くそっ、もう少し時間が欲しい。
なのにおふくろが帰って来てしまう。
薄々バレてるとは思うけど、もう一日も離れられないような付き合い方してるなんて思わないよな?
だから……きちんとしたい、二人の関係を。
だから、ちゃんと稼ぎ始めて余裕が出たら言おうと思ってたんだ。

――――あの13年前の約束を、再び。

『僕が守ってあげる。だから泣かないで、僕がお嫁さんにしてあげるから!』

          

10年目かと思ったら13年目でしたというオチ(汗)ここから先はやはり連載再開でしょうか?