キリリク777777番〜雪さんへ〜

たぶんそう思う...
12

〜ホワイトデイ〜

お返しはクッキーかな?それとも槇乃さんの好きなケーキでも買おうか?
いくら何でも自分で焼くのは無理だろうとバイトまでの時間街をうろつく。
今年のホワイトデーは日曜だから、朝から槇乃さんを独占しよう。土曜日の朝からでもオレはいいんだけどなぁ。
さすがに金曜の夜はバイト休ませてもらえないから、時間だけ気にしながら街を歩く。夜中までバイトした次の日はどうしても昼まで寝てしまうことも多い。だから今のうちなんだけ。今夜は槇乃さんも食事いらないって言ってたし。
「よう、将志〜」
「ああ、博士か。」
「すげないなぁ。な、おいらたち今からナンパしに行くんだけどおまえもどう?」
高山博士は小学校からの腐れ縁で、高校まで同じだ。その連れの小池も中学から一緒だ。
「今からH市まで行くんだけど、おまえがいると成功率上がりるんだよ、なあ行こうぜ?」
えーっとつまり、以前対槇乃さん用に練習相手探すときの、軟派仲間だったりして...これは槇乃さんには内緒な。
「悪い、今からバイトなんだよ。それにオレ、カノジョできちゃってナンパはパスなんだわ。」
「将志ぃ、そう言わずに、なあ、頼むよ!おまえがいるといないとじゃ大違いなんだよぉ...全然いいのが引っかかってこなくてさぁ...」
この二人話してみるとおもしろいしルックスも普通なんだ。だから以前はオレと一緒においしいおもいもしてきたからなぁ。
「やだ。オレ、今はカノジョ一途だもん。それにバイトもあるし、行くまでにホワイトデイのおかえし探してるんだよ。」
「そ、それ、いい店知ってる!手作り限定品アクセサリー売っててさ、今だけ限定でクッキーやらキャンディも用意してあるんだぜ?おまけにおまえなら割引サービス間違いナシだ!な、至れり尽くせりの店だろ?」
「それって...勢津子さんの店か?」
「ピンポーン!姉貴の店だよ〜H市の方に出してるんだけど今から行かないか?安くさせるからさ、な?」
相変わらず押しの強い奴だぜ、博士は...
で、バイト無理矢理休んで勢津子さんの店まで出かけたんだ。


「将志くぅん、お久しぶりねぇ。」
ちょっぴり色っぽい勢津子さん、昔っから遊びに行くとオレ溺愛されてたなぁ。彼女はオレたちよりも5つ上、要するに槇乃さんの同級生だったりするわけで...
「ああん、相変わらず可愛いわね♪うちの博士と交代してくんない?こいつ全然可愛くなくってさぁ。」
博士は一重に利口的な顔つきにとっぽい眼鏡かけて、なかなか中身と伴わないギャップがおもしろかったりする。対する小池はスポーツマンタイプ、オレがみての通りジャニ系だからね、成功率高いのわかる?けどまあ、博士が可愛いってタイプじゃないよな。
「いいですよ〜いつでも交代しますよ。けどオレカノジョできちゃって、そのお返し探してるんですけど、勢津子さんイイの見繕ってくださいよ〜」
にっこり笑ってそう答える。勢津子さんはにやって笑いながら近づいてくる。
「あらぁ、将志くん彼女出来ちゃったの?いつも言ってるでしょ、いつでもお姉さんが相手してあげるのに。」
あははと乾いたわらいを返しておく。実は最初の相手に勢津子さんが名乗り出てくれたんだけどね、やっぱまずいでしょ?大好きな槇乃さんの同級生だなんて、いつどんな話が伝わるか判らないし...だからその時は丁重にお断りしたのさ、もったいなかったけど。もっともこれって中学生の時の話だけど。
「けどなぁ将志のカノジョって同じがっこじゃないだろ?いったいどんな女なんだよ。」
「そうよね、あたしも聞きたいわぁ、でないと見繕えないじゃない?」
勢津子さんがちょっと意地の悪そうな顔して問いつめてくる。あ、もしかしてまだあの時断ったこと根に持ってるのかな?
「えっと、年上の女性ですよ。OLやってて、きりっとしてるタイプかな?スーツもきりっとしたのが多いし、あんまり華美なアクセはつけたとこ見たことないし...」
「おおっ、OLってナンパかなんかしたのか?」
小池が嬉しそうに話しに突っ込んでくるから話を合わせておく。まさか10年以上思ってた相手だなんて言えないよな、ここじゃ。
「大人っぽい人?」
「う〜ん、どうだろ?意地っ張りでどうしようもないんですけど、中身はすっげえ可愛いんですよ。」
「ふうん、そうなんだ。じゃあどっちにしても派手なのはだめね。このあたりから選んだらどう?大人の女性ならそこらのグッズって訳にいかないけど、このへんなら将志くんのお小遣いでもなんとかなるし、ちょっとシンプルで可愛くていいでしょ?あたしや仲間達の手作りだから一品物だよ。」
彫金をやってる勢津子さんの手作り一品物は評判がいい。実は槇乃さんからちらっと聞いたことがあるんだ。
「いつも身につけていられて、目立たない物だったらやっぱりペンダントかな...」
いくつかのなかからシンプルな物を選び出す。プレートのようになってるペンダントトップが斜めに半分複雑な模様が入っていて、その半分はプレーンな物。
「あら、目が高いわね。それってシルバーだからお手入れがいるけど、そのうらにサービスでイニシャル入れたげるわよ?」
「ほんとですか?予算これだけなんですけど...」
先に万札1枚出してみせる。
「いいわよ、名前入れてクッキーも付けてあげるわ。ペアのブレスもつけてあげるわ。」
「ありがとうございます、勢津子さん!」
ふふふと笑った彼女がついっとオレにすり寄ってきた。
『なかなかイイ男に育っちゃって、ほんとにもったいないわぁ。でもしょうがないわね?イニシャルは<MtoM>でいいんでしょう?』
「ええっ?」
「槇乃泣かしたらあたしが承知しないわよ。」
「せ、勢津子さん?!」
うわぁ、知られてたの??


どうやら槇乃さんもこの店にはよく来るらしくって、たまに色々愚痴ってくらしい。聞いた訳じゃないって言ってるけど、薄々気が付いたって。
散々勢津子さんにからかわれながらも、店を出ると博士と小池ががっしりと両側から腕を掴んできた。
「おまえだけイイ思いなんてゆるさねえぞぉ!これからはしばらく付き合ってもらうからな。話が出来あがるまでにこにこ笑ってくれてればいいからさ、いざってときには帰ればいいから、な?頼むよぉ!!」
そのまま街中まで連行されてしまった。まあ、ちょっと人が溜まる繁華街の中心で、博士と小池が順番に声かけ回ってた。ほとんどが失敗に終わってるんだけどね。
「だめだぁ...将志ぃ、頼む最初だけ声かけてくれよぉ...何でも奢るからさぁ。」
「しょうがないなぁ...」
辺りを見回してちょっといけそうなお姉さん二人組をみつけて声かける。にこにこ笑って近づくと嫌な顔はされないよ。博士らも混ざってカラオケにでもと話がまとまり、最初だけ付き合うことになった。


あれ、槇乃さん?
BOXに向かう途中に人混みの中彼女を見つけ出す。オレが間違えるはずがない槇乃さん。だけど、その隣にいる男はだれ?
びしっと決めたスーツにがっちりした体格。精悍な顔つきはなかなかのスポーツマンタイプだ。そいつの槇乃さんを見る目がオレには気に入らなかった。そんな、愛おしそうな目でオレの槇乃さんを見るなよっ!槇乃さんも槇乃さんだよ、愛想笑いなんか浮かべて...愛想か?すんげえ楽しそうにも見える...くそっ!
二人はそのままカジュアルなイタリアンレストランに入っていく、結構おしゃれで女性に人気のある店だ。
「悪い、オレあの店に入る...ごめん!」
そう言い残して追いかけるようにしてその店にはいる。槇乃さんを見つけて、その背中合わせの観葉植物越しの席にそっと腰掛けた。
「急にどうしたの?」
「え?」
なんで?さっき引っかけたお姉さんが目の前にいるの?って思ったら博士も全員後ついて来やがった。
「おまえが急にこの店にはいるから、お姉さん方がカラオケ止めて食事しようって言い出したんだよ。」
「...俺の分おまえの奢りな、ここ。」
オレのつぶやきに博士が急いで財布の中身を確かめていた。


『こちら片瀬槇乃さん、僕がおつきあいしてる人なんだ。槇乃、こちら僕の上司で谷水さん。』
『初めまして、片瀬です。亮一さんがいつもお世話になってます。』
おつきあいだって??まさか...槇乃さんっ?
オレの表情がみるみる間に険しくなっていくのが判る。
「将志、どうしたんだよ...おまえ、いったい...」
「悪いちょっと放っておいてくれないか...」
ひたすら背後のテーブルの会話に聞き耳を立てる。
『ええ、亮一さんとは同じ大学のサークルで一緒でした。職種も似てるんで色々と話したりしてるうちに...すごく頼りになる人だから...』
『槇乃、照れるだろ?』
『じゃあおつきあいは大学時代から?』
女性の声...この男の上司は女性らしかった。
『いいえ、最近までは友達として食事したり飲みに行ったりしてたんですけど...』
『僕が他の男性に取られるの惜しくって告白したんですよ。』
なにいてっんだ?もしかしてこいつが前に言ってた木野?槇乃さんが惚れてったいうやつ...
『そうなの、今日は私が誘ったんだから、ゆっくり食べていってね。』
3人の談笑する声が聞こえてくる。目の前ではお姉さん方がオレの心配をしながらも博士達とカラオケの話で盛り上がってる。この後やっぱり行こうって話しになってる。
くそっ、どういうことなんだよ?オレは遊ばれてたってわけ?本命はこの男か?
ここのとこ槇乃さんは忙しそうだったけど、ちゃんと連絡もくれるしえっちだってほとんど毎日やってるじゃないか!それともオレは単なる料理役でえっちはその御礼ってだけなのか?そんなこと考えたくもないよ...
「カラオケ、行こう。」
オレは立ち上がるとみんなを促した。茶髪のお姉さんににこって微笑むとオレが機嫌なおったって喜んで腕にからみついてきた。
「よかった、機嫌よくなって、嫌われたのかっておもっちゃった。」
慣れた風情ですり寄ってくる女。もう一人の方は博士と小山二人を両腕に組んでいた。
オレたちはそのままカラオケBOXになだれ込んで騒がしく遊んだ。


「ねえ、抜けない?」
うざいほどすり寄ってくる女。けれども頭の中は槇乃さんのことでいっぱいだった。
「ねえってばぁ、あたし将志くんのことすっごく気にいっちゃったんだよ?ね、どっかホテルにでもいかない?」
「行かない...っていうか、オレ勃たないもん。」
「まさかぁ、若いのに?したくないの?」
「したくない...」
槇乃さん以外とはそんな気分にはなれない。いくら槇乃さんがあの男とそうなっても...そうなる?
嫌だっ!!それだけは絶対に嫌だっ!
槇乃さんは、槇乃はオレの、オレのなんだからなっ!気の強いとこも、意地っ張りなとこもあるけど、オレにはむちゃくちゃ可愛いい女なんだ。えっちの最中にほにゃらってなる瞬間が溜まらなく好きだ。オレの物になっていくって気がする。トシも上で、まだ学生のオレが全然叶わない彼女がえっちの時だけ白旗あげる瞬間なんてもうたまらない。先にイクまいと踏ん張って、槇乃さんがイク瞬間がすごく嬉しい。唯一対等になれたように思うから。
「悪い、帰るよ!」
おれはカラオケBOXを飛び出した。携帯をならして槇乃さんを探す。まだあの店?それとももう...
『まーくん、どうしたの?今夜はバイトじゃなかったの?』
「槇乃さん...今どこ?」
『今?食事して、ちょっと飲んだけど今から電車に乗るとこよ?』
「まって、乗らずに待って!!」
『え?まーくん?』
駅まで走った。改札を抜けるとホームのベンチで座ってる槇乃さんがいた。
「どこの駅か聞かなかったのによくわかったわね。」
「友達と、イタメシに行ってそれからカラオケしてた。」
槇乃さんの隣に腰掛けた。
「バイト休んだのね?しょうがないなぁ。」
「槇乃さん一人?」
「ええ、大学時代の友人に頼まれごとしちゃってねぇ、ちょっと食事に付き合ったんだけど...え?まさかあの店にいた?似てる子がいるなぁって思ったんだけど...」
「それオレ...」
「あちゃぁ、見られちゃった?」
なんだよ、その軽い反応は?どういうことなの?
「槇乃さん、あの男だれ?」
「大学の時の同じサークルの人だよ。」
「カレシ?」
「ぷっ、何言ってるの?あたしのカレシはまーくんでしょ?」
「だって...」
「ふりしたのよ。彼ね、職場の上司の女性に迫られて大変だったんだって。半セクハラ状態?それでね、あたしに彼女役してくれないかって。職場のことだからね、面と向かって彼女がいるから誘わないでくださいって言えないでしょう?だからあたしを見せてけん制させたってわけ。」
それだけにしてはあの男の目は本気に近かったぞ?
「信じない?食事の後もう一件誘われたけどちゃんとカレシがうちで待ってますからって帰ってきたんだけど?」
槇乃さんがオレの顔を下から覗き込む。
うう、それ弱い...オレは我慢できなくて、人のいるプラットフォームのベンチで槇乃さんを抱き寄せ口づけた。その、深いやつ...
「んんっ??」
最初は抵抗する槇乃さんもオレが舌を激しく吸い上げ、上あごに舌を這わせた頃にはすっかり大人しくなってた。
「は...ぁ、まぁくん...どうしちゃったの?」
潤んだ瞳が不安げに揺れていた。
「この場で繋がりたいほど大好きだよ、槇乃さん...」
ぎゅっと強く抱きしめる。離さない、離したくない。
「まーくん...」
「槇乃さんが他の男の物になったらって考えただけで気が狂いそうだったよ。もう二度と、振りでもやめてよね?」
「うん、わかった...」
しばらくそのままでいたんだけど...
「槇乃さん、オレ帰るまで我慢できない!」
そう耳元に告げると速攻槇乃さんの腕を掴んで駅を出た。そのまままっすぐネオンきらびやかなお城へ...
「ま、まーくん?何考えてんの??」
「いますぐしよ?ね、槇乃さん!」
引きずるようにホテルの部屋に入るとそのまま入り口で押し倒して、軽く抵抗する槇乃さんに口づけて、スーツの奥に指を滑り込ませ、そのまま繋がった。
「やあぁ、まーくん、こんなのっ、あぁ!」
「けど、槇乃さん、喜んでくれてるよ?ココ...」
「もうっ、ばかっ!!あんっ」
止まらない激情はそのまま槇乃さんを激しく責め立てる。
そのあとちゃんとベッドに入って朝まで何度も...

「すげえ...槇乃さんいつもは声押さえてたんだね。」
「ばかっ!いくら今日が土曜日で仕事がないからって...こんな、あ、朝までっ!」
「いいじゃん?だってどんなコトしたってご近所さん気にならないんだもん。槇乃さんだって...ね?」
「う、うるさいっ!」
やっぱ古い公団だからね、そこそこ声や音は控え目だったんだよね、お互いに。
照れてるのかな?真っ赤な顔した槇乃さんが可愛い。
「あっ!」
「どうしたのまーくん?」
「オレ、昨日買い物して...お金残ってない。」
「...ふ〜ん、お金もないのにこんなとこに引っ張り込んだってわけ?」
ちょっとしわになったスーツを着込んだ槇乃さん、仁王立ち。
「だってしょうがないだろ?勢津子さんの店で、槇乃さんにホワイトデーのお返し買ったらなくなっちゃったんだよ。」
「え?ホワイトデー...あ、明日?」
「そ、だから...ごめん!槇乃さんお金貸して!オレちゃんと後で返すからさ?」
「...見せて」
「え?」
「それ見せてくれたらお金だしたげる!」
「ん、ま、いっか?一日早いけどね...」
槇乃さんにその包みを差し出す。ごそごそとラッピングを開く槇乃さんの不器用な指先。
「あ...この<MtoM>って、将志から槇乃?」
「うん、槇乃さん、オレらのこと勢津子さんに言ってないよね?でもちょんばれしてたよ。」
「うげっ、お勢津に?うわぁ...最悪。」
なんちゅう嫌がりよう...手にしてるそのペンダントを槇乃さんに着けてあげる。
「この鎖で槇乃さんを繋いで置けたらいいのに...」
ぼそりとそう言うと、槇乃さんは一緒に入ってたペアのブレスをオレの手首に巻き付けた。ちょっと太めの鎖、オレがつけても変じゃない?
「あたしもこうしてまー...将志のこと繋いでおきたいよ?」
その言葉が嬉しくて思わずまた押し倒した...


「ばかばか!また延長しちゃったじゃない!!もう、しらない!」
「ごめん、槇乃さん、もうしないよ、続きはちゃんと家に帰ってからにするからね♪」
「まだする気?」
「ホワイトデーはやっぱりえっちしないとね〜」
ため息つく槇乃さんの腕を引っ張って電車に乗った。さすがにつかれててもう少しで乗り越すとこだった。
その日は夜まで二人で熟睡しましたとさ♪

       

なんと遅いホワイトデイ...丁度キリリクを当てはめてしまいました。
雪さん、キリリクありがとうございます〜「槇乃と将志でライバル出現で嫉妬トラブルでした。ちょっと違ってるかもですがお許しください〜〜
今回からキリ番を踏まれますとおめでとうございますページに行きます。そこからメールくださいね。