666666キリリク〜さくらさんへ〜

ずっと、離れない...

〜番外編 2〜

〜卒業・紗弓〜
3月のはじめにうちの高校は卒業式を迎える。
受験も結果がまだ残ってたりして、微妙な時期だからみんなそれぞれなんだけど、それでも制服を着なくなるって、イコール大人になるみたいな...そんな寂しさを覚えてしまう。
もう、甘えられないんだってことだよね?
毎日当たり前のように顔を合わせる場所が無くなるって事は、それだけでも少し不安だったりする。そんな寂しさがどっと胸に押し寄せてくる卒業式の朝。

「紗弓、今日は早かったんだね。」
廊下の窓からグランドを見ていたら芳恵ちゃんが近づいてきた。
「うん、ちょっと早めに来ちゃった。もうこの校舎とも、グラウンドともお別れなんだね。」
「そうだね、もう紗弓のボール受ける事無いんだよね。寂しいなぁ...」
芳恵ちゃんは芙美先輩と同じ大学に推薦が決まっていた。大学のリーグでソフトボールを頑張るつもりらしい。
あたしも誘われてはいたけれども、地元の短大に決めていた。先日の発表ですでに合格が決まっていて、晴れやかに今日のこの日を迎えられた。
遼哉の合否ももうすぐ出るはず。芳恵ちゃんの彼氏の今村くんはもうすでに六大学の一つに決まっていた。春から離ればなれなんだ...
「よっし〜、あたしの分もソフトボール頑張ってね!あたしもチームがあったら入るかもだけど、短大は部活そんなに余裕ないみたいだから...」
「そうだね、通いだもんね、紗弓は。」
そうなんだ。あたしの行く大学はバスで通える距離なんだもん。クラブとか、サークルとか合コンとか遠い話になりそう。
「あたしの下宿は来栖とこと近いから、うちに泊まりに来るっていってしょっちゅう行っちゃいな、構わないからさ。」
「芳恵ちゃんったら...」
二人の大学は遼哉の第一志望が決まれば近い。
「アパート押さえてるんでしょう?うちと1駅のとこ。」
「うん、決まったらそこに入る予定らしいけど...」
離ればなれになってしまう芳恵ちゃんと今村くんのことを考えるとなんだか申し訳ない気がしてしまう。
「あたしもたぶんクラブ一色になりそうだし、向こうも一緒だからね。メールとかだったら忙しくてもできるから...心配しないで、紗弓。」
芳恵ちゃんの笑顔がすごく可愛かった。だって、不安なはずなのにあたしに心配かけまいとしてるんだから...
「芳恵ちゃんっ!」
「さ、紗弓?まだ泣くのはやいよぉ?」
ぎゅうって芳恵ちゃんを抱きしめたのに、反対に抱きしめられた。
「なにレズってんだよ?」
「遼哉ぁ...」
後ろから不機嫌そうな遼哉の声。
「いいでしょ、今日の紗弓はあたしの・モ・ノなの〜」
「笹野、てめえ...ま、今日だけだぞ。けど、竜次もいるけどいいのか?」
遼哉の後ろでは今村くんがくすくす笑ってる。今だけ少し伸びた髪。大学入ったらまた丸刈りなんだって。
「いいの!あたしたちは来栖みたいに人前でいちゃいちゃしたりしません。」
「あはは、そう思ってるのおまえだけだったりして?」
「え?」
今村くんを見たら、真っ赤になっていた...
「遼哉、おまえ余計なこと言うんじゃない!」
今村くんが遼哉を後ろからヘッドロックした。
「いいよな、おまえらはそうやって惚気られて...」
「染谷くん?」
いつの間にか側に来ていた染谷くんは体育大学に進学が決まってる。柔道続けるんだ。
「俺はおまえら二人を最後に畳に沈めてやりたかったよ。くそっ〜」
そう言いながらも笑ってる染谷くん。
こうして何気なく顔を合わすのも最後なんだよね。


卒業式は滞りなく終わった。
仰げば尊しで泣けてしまうのはなぜなんだろう?BGMに流れる曲の一つ一つが思い出を呼び覚ますのはなぜなんだろう?
「紗弓ぃ、元気でね!来栖と別れるんじゃないよぉ!」
「大事にしてもらうんだよぉ!」
クラスメイトであたし達のことをそれとなく知っていた友人達と、代わる代わる泣きながら抱き合った。
「うん、ありがとう!ほんとに...」
遼哉と付き合ってるのがわかってから一部の女子に睨まれたりもしたけど、芳恵ちゃんを筆頭にちゃんと守ってくれた友人達。ふーこ、まこ、しーちゃん、ありがとうね!
式の後、別れを惜しむ友人達も順々に学校を後にする。部の後輩達に送られた後、校門でまっていた遼哉の手を取る。お兄ちゃんが車で迎えに来たがったけど断った。両親も仕事を抜けて式には出てくれたけどすぐに店に戻ったし...
あたしには遼哉がいるから、寂しくなんかない。
「笹野は?」
「うん、両親と帰ったよ。」
「そっか、じゃあ、今日はゆっくり帰ろうか?」
二人自転車を並べて帰るのもこれで最後だ。柔道部に入ってからは遼哉も自転車で通っていた。制服来て二人でこの道帰るのも、もう今日で最後なんだなぁ。なんだか感慨深げだなぁ。
「あれ?遼哉ん家のおばさん来てたんじゃないの?」
「ああ、もう帰った。どうせ昼から仕事入れてるから。」
「そ、そう...」
「寄ってくだろ?俺ん家。」
「う、うん...」
そのまま帰るの寂しいなって思ってたのは事実だけど...
「な、制服来たまま、最後にえっちしようぜ。高校生の紗弓は、今日までだろ?」
「な、何言い出すのよ!」
「それに受験の間どれほど我慢したと思ってるんだよ。」
そりゃ、受験の間お互い我慢だって...でも、我慢しすぎたら集中出来ないっていってしょっちゅう手だして来てた気がするけど?
「ほんとは学校でもよかったんだけど、さすがにそのまま帰せるほど無事にすまないと思って。」
「え??」
「最近紗弓感じやすすぎ...ほら、夏だって足腰立たなくなっただろ?」
「あ、あれは、遼哉が...」
だめだよ、思い出しちゃう...
「そんなカオするなよ。ここで手出したくなるだろ?」
まってよ、まだ商店街の中じゃないの...照れてっていうよりも恥ずかしいよ...
うつむいて歩調が止まってしまった。
「あの日さ...」
「ん?」
「中間の前の日、紗弓が一人でピッチング練習してた日、あの日女に呼び出されて、別れてなかったら、俺はいつまでも気持ち引きずったままどんよりした高校生活送ってたんだろうな。」
「あ、うん...」
そう、あの日からあたし達はやり直せたんだ。
「紗弓への気持ちに気が付いて、速攻手出しちまったけど後悔はしてない。あの日から俺まともに生きてきたような気がするから...」
「遼哉...」
そんなこと今まで言ったことのないような言葉だった。
「紗弓を手に入れて、もう一回柔道初めて、全部別の人生に変わったんだ。だから、あと4年、大学行って、就職して、俺が迎えに行くまで、紗弓はどこにも行くなよ?もし二人すれ違ったら、もう一度あのグランドからやり直そう。なんどでも...」
静かな住宅街の道のど真ん中で遼哉が優しく微笑んでいた。あたしは、頷きながら流れる涙が止まらなかった。
終わりの涙じゃない、始まりの涙...
無くなる訳じゃないんだ。いつでも思い出として残ってるんだ。今までの時間。
そして新しい時間はいくらでも紡いでいける...



「あっ、やあっ...」
遼哉の部屋に強引に引きずり込まれて、ベッドじゃなくて遼哉の机の上に座らされていた。
「やあぁん、こんなのやだよぉ...」
半泣きになっちゃう。だって遼哉ったらあたしをそこにのせたまんま制服着せたままいろんな事してくるんだもん!
「紗弓、身体は嫌がってない...」
前だけはだけられたブレザーとブラウス、ずりあげられたブラの下から指と舌で胸の先をいやと言うほど刺激されていた。両足を机に乗せられたまま、閉じた脚を思わずゆらしてしまうほどしつこく...
「紗弓の身体、すっごく色っぽくなったな。最初はほんとに子供っぽかったのに...」
「りょ、遼哉がそうしたん、でしょう...あん」
ゆっくりとしゃがんだ遼哉はあたしの両膝を開いて脚の付け根に視線を移してる。
「制服の下の紗弓がいつも欲しかったよ...」
遼哉の指がつつっとなぞっていく。
「ああっ、あっぁぁぁ!」
濡れたそこに潜り込んだ遼哉にあっけなくイカされる。
「紗弓も制服の俺になんかして?」
そうなんだ、制服きた遼哉も今日で最後なんだ...ぼーっとした頭で目の前の遼哉を見つめる。
あたしは遼哉のブレザーのボタン、Yシャツのボタンをはずした。ゆっくりと遼哉の綺麗な肌の上を手のひらで感じていた。視線をあげると遼哉があたしをの目を覗き込んでいた。
「下も...紗弓」
下って、ズボンのことだよね?前にしたことあるけどはずかしいな...ゆっくりだけどベルトをはずしてそれから...

「紗弓、このままいいか?」
机の上にのせられたまま準備した遼哉が入ってくる。がたがたとゆらされ、意識が飛んでいく。
「遼哉ぁ!」
これからもずっと一緒だよね?
制服をお互いに全部脱いでベッドに戻ってまたなんども抱き合った。
卒業式の、午後。まだ日は落ちていなかった...




〜引っ越し・遼哉〜

「遼哉、ほんとに荷物これだけでいいの?」
「ああ、狭い部屋だしね。」
俺は無事第一志望の大学に合格し、押さえてたアパートに引っ越した。2階の角部屋で、アパートっていっても新築に近く、綺麗だった。まあそこそこ防音効いてそうだから、紗弓が泊まりに来ても遠慮しなくていいかなぁ、なんてね。家賃一ヶ月分前払いで押さえておいた優良物件だ。隣はどうやら新婚さんらしいし、まあ、当てられない程度にね。
マットレスと布団、ハンガーかけと、小さなテーブル以外家具はほとんど無い。いくつかの段ボールに詰められた服と荷物。
「ね、ここにクッション買おうよ!それから食器も少し買わなくっちゃね。」
「ん、紗弓が選んで?好きなの、ペアでいいよ。」
「そ、そしたら新婚さんみたいだね...」
「だからちゃんと使いに来いよな。」
「うん...」
「こいよ、こっちに...」
1LDKのこの部屋の真ん中にマットレスだけさっさと開封してあった。
「遼哉、買い物は?お隣に挨拶も行かなきゃ...」
「先にすることがあるだろ?」
「え?先に?」
「このマットレスの使い心地、悪かったら変えなきゃ...」
「りょ、遼哉っ、あん!」
紗弓を引き寄せてマットレスに押しつける。
「だめっ、まだ片づけ...買い物も...」
「そんなのあとだろ?」
紗弓の細いうなじに唇を這わせるとすぐにスイッチが入る。だめだね、もう離せない。
「遼哉っ...ううっん、だ、め....」
「紗弓、ほんと、ここで一緒に住みたいぐらいだ...」
「む、無理だよぉ...んんっ」
春の日差しの入り込む部屋で、紗弓の衣服を剥いでいく。現れたその素肌に唇を這わせる。彼女のポイントを的確に攻めて快感を引き出していく。熱く濡れ始めたそこに自分自身を埋め込む頃には紗弓の声が部屋中に漏れていた。
「あっ、ああん、遼哉ぁ...ひんっ!」
ぞくぞくするほど俺を煽るその声をもっと引き出させたくって、いっそう紗弓の身体を押し開き、深く突き上げる。
「紗弓、今までみたいに逢えなかったりしたら俺狂ってしまいそうだよ。」
受験前だって我慢できなかったほど、俺って節操ないなって思ったよ。さすがに紗弓が受験の前後は我慢したけど。
今までは学校で毎日出会って、えっちまでは出来なくったって触れあうことはいくらでも出来た。なのに今からは、それすらも週に1回あるかどうか...
俺、耐えられるだろうか?
そう思うとなおさら目の前の紗弓が愛しくなる。そこから抜け出したくなくなるほど暖かくって、俺を締め付ける紗弓。苦しそうに喘ぐその唇をふさいで紗弓の身体を起こしていく。
「ふうっん...」
俺の上にのっかった格好になった彼女は苦しそうな声を漏らしながら俺の首に腕を絡める。
「紗弓は...どうなの?寂しくないのか?」
「寂しいよ、だって、毎日逢えなくなるんだもん...はうっ、んっ」
「紗弓ぃ!!」
「あぁぁぁっ!!」
紗弓の背中が反り返る、締め付けられて爆発しそうになるのを必死でこらえて、彼女の身体が弛緩するのを待って再びマットレスに横たえ、ゆっくりと動き始める。
「あ、あっ...うっ、あぁ!」
目の焦点が合わなくなっていた紗弓にのしかかり腰を打ち付ける。
このまま狂わせてしまいたい...紗弓を狂わせて、ここに縛り付けて置きたいほど...
「あ、くっ、もう...っ!」
脳天から突き抜ける気持ちのよさが下半身へ伝わり...紗弓の中で果てた。
「はぁはぁ...」
荒い息を押さえるようにそのままマットレスに倒れ込む。
紗弓の息もかなり荒い。ゆっくりと身体を起こして後の処理を済ませて紗弓を引き寄せた。大きく息をついて、見上げるとまだ春になりかけたばかりの暖かな日差しが部屋の奥まで入り込んでいた。
「紗弓、カーテン買わなきゃな。外から丸見えかも...」
布団もまだ出してないからお互い何一つ身につけてない。
「ほ、ほんとだっ!やだ、服着る!」
急いで飛び起きる彼女を後ろから抱きしめて羽交い締めにする。
「やだ、もうちょっとこのままでいろよ。」
「で、でも...窓が、ね、カーテン...」
「何色がいい?紗弓が好きなの選んで?」
「えっと...パステルグリーンとかがいいな...」
「じゃあ、それも買いに行こう。お袋が手伝いに行けない分好きにしろって持たせてくれたぜ?どうせ紗弓が選ぶって思ってるみたいだしね。」
「うう、そうなの?」
さわさわと紗弓の身体に手を這わしてその感触を楽しむ。あんまりやりすぎるとマジでカーテン買いに行けなくなる。
「じゃあ、いこっか?」
紗弓の頬にキスをして側に脱ぎ散らかした服を集めて身につけた。


「あ、こんにちわ、いや、初めまして!」
ドアを開けたとたん隣から若い女性が出てきた。
「あら、こんにちわ、お隣に越してこられたのね?新婚さん?」
「い、いえ、学生です。来栖と言います。よろしくお願いします。あとで挨拶に伺おうと思ってたんですけど...」
「気になさらないで、佐倉です。主人は遅くにならないと帰ってこないですけど...そちらは彼女さん?」
「こ、こんにちわ。」
慌てて紗弓が頭を下げた。
「かわいいわね、今から買い物?このあたりのお店わかる?」
「それが全然わからなくって...カーテンとか買いたいんだけど、どこかあります?」
「ああ、そうねじゃあ、このまままっすぐ行って...あたしその前のスーパーに行くからご一緒するわ。お邪魔じゃないかしら?」
「そんなことありません。助かります!」
俺たちは佐倉さんとてくてく歩いていくこととなった。紗弓は優しそうなお姉さんの雰囲気のお隣の奥さんとすっかり意気投合して楽しそうだった。まったく人なつっこいんだからな...

「何話してたの?」
別れ際佐倉さんに耳打ちされていたのを紗弓が気にしてたみたいだった。
部屋にはライトグリーンのカーテンと、同じ色した二つのクッションが並んでいた。
「ああ、さっきの、少し聞こえてたらしくってさ、音楽か何かかけてるといいよって。」
「へっ?さっきのって、まさか、あたしの、声...?」
「ああ、気にするなってさ、夜はうちも声大きい方だからお互い様だってさ。夜って新婚さんだからへたすりゃ毎晩だろ?まあ、しかたないよな。」
「りょ、遼哉ぁ!」
「こっちはたまにだから、大丈夫だって、な?」
「もう、しらないっ!」
真っ赤になった紗弓が買ったばかりのマグカップをテーブルに置いて背を向けてしまった。
「だから、次からは音楽でもかけるから、な?何なら今からかけようか?」
「え?何言ってるのよぉ!帰れなくなっちゃうでしょ!?」
「嘘だよ、俺も今日は紗弓送りついでに家に帰るよ。」
「...いいの?」
「入学式までまだ日あるしね、今日は帰るよ...」
本当はもう少し紗弓と一緒にいたいからなんだけどね。
「じゃあ、もう少しだけ...ここに一緒にいようよ。」
紗弓が俺の側に来る。
「ああ、こうしていようか?」
買ったばかりのクッションにもたれて、二人寄り添う。少し開けた窓にライトグリーンのカーテンが新緑のように柔らかく揺れていた。

いつか、こんな風に、二人で暮らせたら...
そっと彼女の肩を抱き寄せて優しいキスを落とした。

FIN

         

さくらさん出演のキリリクでした〜いかがでしたでしょうか?
卒業、そして新たな生活への旅立ち。まあ、今村ほども遠くないですからしょっちゅうあうはずの二人なんだけどね。だって、でないと遼哉狂うらしいですから(笑)