5000001のちょこっとリク〜拍手より〜
「今村君と芳恵ちゃんのある晩の会話orメールのやりとり」

まいったよなぁ…俺、熱出して一体芳恵になに言ったんだ?
前の日に、酔っぱらった勢いで、外に出て結構本音言った覚えはある。ただし詳細は覚えてないんだ。俺って、意外と酒に弱くって、それでたまにいらないこと言ってしまうらしいんだけど…
「可愛いよなぁ、よしえちゃんwおまえの話だと頑張り屋で、しっかり者だって言ってたけど、電話じゃすげえ不安そうな声でさ、オレ思わず大丈夫だって言う言葉に力入っちまったぜ。」
「田中、おまえまた余計なこと言ったんじゃないだろうな?芳恵から今週末こっちくるってメール来てんだけど?」
「そりゃ〜俺が気をきかしてやったからだろ?感謝しろよ。」
「けどな…」
芳恵も今も大学でソフトを続けている。女子大で教職の単位を取りながらスポーツを続けるのはキツイだろう。だからバイトだってあまりしてないし、今回もお年玉が入ったから、なんて言ってるけど、実際大学生がそうお年玉を貰えるはずもない。
無理してるんじゃないだろうか?
俺が熱出したりしたのを田中が言うから、気にしたんじゃないかと思う。実際酔っぱらって外で、調子に乗って芳恵にいろいろ言ったのが原因だと思う。はっきりと言った内容を覚えてる訳じゃないけれども、遼哉と比べる彼女に「ヤツと変わりはない」みたいなこと言ったと思う。

遼哉は…芳恵の親友の小畠さんの彼氏なんだけど、意外と気が合うんだよな。
高校時代は、見かけによらず柔道なんてやってたけど、少年、中学時代は野球やってたから俺のこともすごく応援してくれる。モデルみたいな外見に反して、意外と男っぽくって冷めてるんだけど、ことが彼女に関わってくると、まったく…熱い男になってしまう。
3年になってから幾度となく聴かされる惚気はすさまじく、けろっとした顔で「朝まで」とか「何回も」とか…時々小畠さんが可哀想になってしまう。で、俺も時々相談させてもらったりしてるんだよな、その、男の悩みとか。朝まで、なんて体力は、強行軍で帰省する俺にはないし、未だにこう、初な反応する芳恵に無茶は出来ない。それこそ、上京してきた彼女を、速攻押し倒したくても出来なくて、必死で夜まで耐えたり…
はあ、俺って淡泊に思われてるんだろうか?
付き合ってる高校時代が禁欲的なモノだったから、あまりがっつけないのが事実。そんな男だって思われたくなかったい、なにより芳恵に嫌われたくないし、自信もない。
俺、芳恵しか知らないんだぜ?自信なんかあるわけないだろう?
こっちで相談しようにも、大学の寮内でも彼女が居るのは数人で、遠距離の彼女とは終わったって話しも数聞く。経験豊富な先輩なんてそういない。みんなある意味野球馬鹿だから。
だから遼哉の存在って貴重って言うか、俺の周りにいないタイプなだけあって、意外と腹割って相談出来たりもする。しれっと「経験が違うから」って言うのはしょうがないとして、意外と真剣に聞いてくれたりもするし、教えてくれたりもする。だから初心者の割には彼女を喜ばせることも出来たし、今だって、まあまあイイせんいってるんじゃないかと思う。芳恵もそれなりに感じてくれてるみたいだし、ちゃんと先にいかせてるし…
ただね、ぐったりとなった彼女に再戦求めるのは可哀想な気がして我慢してることもあるし、一回でこっちも体力切れになる時もある。遼哉のように朝まで、なんて無理だけど、数回は出来ると思う、俺もまだ若いし、やりたい盛りだし、寮では欲求不満溜まるし…
同室の田中も開けっぴろげでイイヤツだから、平気で抜いてくる〜なんていってトイレに籠もるけど、俺だってまあ、ちゃんと抜いておかないと辛いわけで…そんなとき、雑誌のお姉さんじゃなく、やっぱり芳恵が浮かんできて、妄想の中の俺は結構酷いことを芳恵にしたりしちゃってる。すごい恰好させたりいろんなこと言わせたり、させたり。
男ってこんなもんだってこと、判っていても芳恵には知られたくない。意外と純情なんだ、彼女は。



「竜次くん!!」
駅での待ち合わせ、駆けてくる彼女の荷物を受け取ると少し申し訳なさそうにする。
甘えるの、下手なんだよなぁ…芳恵は
「もう身体は平気なの?」
「ああ、次の日から練習にもでたし、すっかり元気だよ。」
「そっか、よかった…心配したんだよ?」
ほっとした笑顔を見て、やっぱりこうやって顔を見て話すのが一番だと思えた。
いくらメールしても、いくら携帯で話しても、こうやって彼女の安心とか雰囲気までは実感出来ないから。
「なあ、あの時、俺なんていったんだ?」
「あの時?」
熱を出したときのことを、余りよく覚えていなかったら素直に聞いた。あの後いくら聞いても田中も教えてくれなかった。彼女に聞けとかいって…
「ああ、教えてくれよ。」
「えっと…」
急に真っ赤になってもじもじと俯く彼女。
「ホントに覚えてないの?」
「ごめん、酔ってるときのは朧気に覚えてるんだけど、さすがに熱出してたときのことは覚えてないんだ。」
「あのね、竜次くんね、」
ちらちらと顔を上げてはすぐに恥ずかしそうに下を向く。男にはちょっと溜まらない上目使いってやつだ。芳恵は意識してやってるタイプじゃないから、マジで恥ずかしがってるだけなんだろうけど、いったいそんな恥ずかしがるようなこと、俺は言ったのか?
「うん、教えて?」
「その、寝かさないぐらい頑張るって…そのまえも、酔ってたときも、覚悟してって言ってたから…あたし、覚悟して来たよ?」

確かに、何もしないつもりはないけど、まだ明るくて、駅前は賑やかで…
彼女が来たら美味しい食事に連れて行って、少し飲んだら、彼女が泊まるホテルに行くつもりだった。ラブホにでも泊まればって田中は言うんだけど、彼女はそう言うとこしっかりしてて、いつだってちゃんと予約を取ってくるんだ。だから、あんまり泊まれない…俺も泊まれるときは、こっちでホテルをとっとくようにしてるんだ。
「あのね、今日はホテルどこも予約してないの…急いできたのもあるけど、その、竜次くんがしたいようにって、思って…」
「俺のしたいようにって…」
ちょっと面食らってた。
こう言ったことには奥手な芳恵。俺もそんなに、あけっぴろげな方じゃないけど、それでもいつも慣れない初な反応をする彼女に、あまり無理強い出来なかった。
だから、来てすぐにホテルに連れ込んだりとか、出来ないって思ってたし、そう一直線にしたいわけでもなかった。
2年間、高校生らしい清い交際を続けてきたふたりだから、なんとなくそんな雰囲気になったら俺だって我慢はしないけど、ふたりでいるだけでも楽しかったし、芳恵とだったらキャッチボールしたりバッティングセンターに行ったりとか、男の友達と遊ぶようなデートでもOKだから、余計に色気はなかった。
けど、俺がこっちに来てから、少し変わったか…
離れてると淋しいし、逢えば欲しくなる。その感情は、かなり強くなったかもしれない。逢うたびにキレイになっていく彼女に、他に男が出来てないかどうかなんて心配してみたり…それは芳恵も同じだったみたいだけれども。
だけど、女の子が、その、男みたいに、「やりたい」とか思うんだろうか?
前に遼哉に聞いたら、『いるよ、オレしょっちゅう襲われてたもん』とかいって笑ってやがった。『けどな、紗弓はソレが出来なくてさ、もじもじしてるから、結局オレが襲っちまうんだよな…笹野もそうじゃねえの?アイツもある意味紗弓と似てるよなぁ。親友って似るのか?』似ないと思うけど、確かに恋愛に関してのスタンスっていうか、それは似てるかも知れない。男を襲ったりとか、迫ったりとか、まず出来ないだろうから。そんなに自分に自信もってないんだよな…十分可愛い女の子なのに、可愛くないって思いこんでるし。ほら、こうやって俺の返事待つまでの不安そうな表情だって、十分俺を煽ってくれるんだから。
「ホントに、いいの?」
どうするとか、言ってない。全部、俺がしたいようにしていいってコトらしいから…
したいこと全部、一瞬にして想像して身体が震えた。武者震いっていうのか、何をしてもいいなんて、男にとっちゃ天国だぞ?
「いいよ…」
小さく答える芳恵の手を取ると、俺は歩き出した。

ホテル街へと…

戻る 次へ

 Copyright(C)Kei Kuishinbo 2007 All rights reserved.