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１５

「あっ……んっ」
腕を捕らえたまま、唇と舌だけでの愛撫がはじまった。
キスから始まって、耳朶、首筋も丹念に舐めあげられた。それだけで腰砕けになるわたしもわたしだけれども、それ以降反撃出来やしない。
されるがまま、胸の周りを舐められ、なかなか中心には吸い付いて貰えず、声を抑えて耐えていた。
「なんだよ、どこ吸って欲しいか言えよ……」
「やっ……」
「じゃあ、いつまでもこのままだぜ？時間はいくらでもあるんだ」
「うくっ……」
ふって吹きかけられる熱い吐息。何もされなくても立ち上がって、彼に含んで貰える時を待ちわびているわたしの赤い蕾。
「おね、がい……甲斐、くん」
半泣きになってお願いしてようやく近づいてきて……
「んっぐっう……」
痛いほど噛まれた。
ビクビクとその痛みに耐えるために身体を反らす。
「すげ、もう震えてんの？」
違うと言いたかったけれども、手を放して空いた手で先を両方強く摘まれて、また仰け反る。
「やぁあ！！！」
「たまんね……志奈子、可愛いよ、」
「や、もう……」
「１０倍っていっただろう？」
そんな……最初からこんなにされたら、わたしはどうすればいいの？
「こっちも１０倍な？」
ショーツの上から撫でられたソコは、もうじっとりと濡れている。胸の刺激だけで感じたのか、それとも今からされる事を期待してなのか……
「しっかり濡らして……いやらしい身体になったんだよな？志奈子は……オレに、何度も抱かれて、イキまくるようになった……なあ、ここに欲しいか？」
特別お洒落な下着でもない。シンプルな白い下着は今日のために履きおろしてきたものだけど、やっぱりじっと見られると恥ずかしい。その布越しに何往復もする指先に突起が引っかかり、その度に身体が震えてしまう。
「んっ、んんっ！」
「これだけで感じるのか？じゃあ、こうすれば、どうだ？」
甲斐くんは下着の上からソコを舐めはじめた。
「やっ、やだ……！」
濡れて張り付いて、透けてしまってるはずのソコを想像すると恥ずかしくて堪らなかった。
まだこんなに明るいのに……ホテルの部屋の照明は明るすぎて、全て見られてしまうことに躊躇していた。
「判った、脱がせてやるよ」
シンプルな白いわたしの下着を引き抜くと、わたしの膝を大きく割り、舌で刺激しはじめた。
「ここだよな？我慢出来る？」
突起を剥かれて、歯で軽く挟まれ、舌先で刺激されて昇りそうになると止めてしまう。
「も、やだ、お願い……」
イカセテ欲しい。でなければすぐに甲斐くんのたくましいもので貫いて欲しい。
そんなことも口に出来ないわたしはただ喘ぐだけ。
「まだ、ダメ、イカせない……それとも早く入れて欲しい？」
観念して頷くのに、くれたのは指一本だけだった。それでも……
「はぁ……んっ……あっ、あっん」
折り曲げて上の壁を擦られて堪らなくなってしまう。
「２本にしてやるよ」
「ひっ、あんっ」
指を増やされ、擦られ、堪らなくなる。奥から何かが漏れるような感覚……
「潮まで吹いて、もうそろそろ我慢出来ないか？」
信じられないほど丁寧な愛撫で、寸止めの状態……胸も、ソコもトロトロにされていた。


「あっ……か、い、くん……も、やだ……」
声はかれてまともにでない。
「もっと、だ。もっと、欲しがって……」
「欲しいの、ね、イカセて……許して……」
指と突起が同時にわたしを昇らせた。
「ああああああ！！やぁ、もう、イクぅ……ああっ」
それでも終わらない、いつもとちがって、遠慮とか手加減とかのない、容赦ない攻め立てにわたしは狂いかけていた。
「だ、だめ……ね、イッタの、イッタんだから、もう……許して、お願い、やめてぇ……やぁあ！！」
半狂乱になって叫んでた。顔中涙でぐしゃぐしゃで、もう恥ずかしいとかそんな段階じゃなくて。
「欲しい？欲しくてしょうがないんだろ？なあ、言えよ、欲しがれよ！」
身体だけだから、こんなにも遠慮なしにされてしまうんだろうか？最後だから？こんな場所だから？
「ひっ、あっ……あっ」
ひゅーひゅーと喉が鳴って声が出せない。
「志奈子、ほら」
甲斐くんが口に含んだミネラルウォーターを分けてくれたのでようやく息が整いはじめる。
「んっ……くふっ」
喉を鳴らして何口にも分けて飲まされて、わたしはゆっくり口をひらく。
「ほ、し……の、甲斐、くんの……ほし……い」
猛々しく勃ち上がった甲斐くんのモノに触れる。もう、恥ずかしいとか、そんな理性はどこかに行ってしまった。
「今日もつけないぞ、それでよかったら、自分で入れろよ」
酷いことを平気で言う甲斐くんを睨み付けたかったけど、そんな気力も残っていない。わたしは身体を起こして、這うように甲斐くんにまたがると、その中央に腰をあわせて自ら一気に落とし込んだ。
「んっくぅ……」
根本まで全部飲み込んで、わたしはスパークする視界を閉じてゆっくり腰を上下させる。
いつの間にかこんなはしたないやり方を覚えてしまった。身体が欲しがって止まらない。甲斐くんに見られるのが怖くて、ずっと目を閉じていた。
「志奈子……」
頬に彼の指が触れ、ゆっくりと目を開ける。
目の前に切ないほど優しい甲斐くんの瞳。そう、甲斐くんはこんな切なげな表情で女を抱くんだ。コレは抱かれた者の特権。ご褒美だ……
「志奈子の中、いいな、すごく」
「あっん」
突き上げられて跳ねる。
「あぁああ、はぁ……ん」
最後だから、思いっきり淫らに、今まで押し殺してた声も感情も快感も、すべて吐き出してしまおう。
「志奈子、ヤラしい腰つき、誰に教わったの？」
「か、い、くん……」
「きゅうきゅうヤラシイとこ締めて、誰の締めてんの？」
「甲斐、くん……の」
「出そうなんだけど、生で出していい？？」
「だ、め……」
「じゃあ、どこにだして欲しい？」
「そ、そと、」
「ゆっくり？それとも、激しくして欲しい？」
「して、激しく……」
「激しくしたら、中に出ちゃうぞ？」
「やぁ……」
「判った」
体勢を入れ替えて、しばらくは腰をグラインドさせて楽しんだ後、ゆっくりとわたしの中から猛ったソレを引き抜いた。ベッドボードにあったコンドームに手を伸ばし、素早くつけて再びわたしの中へ、一気に、来た。
「はうっん……」
「ココだろ、志奈子がいいとこ、ほら、どうだ？」
上の壁に丁寧に擦りつけて、わたしはその上のお腹を軽く押さえられた。
「だめ、おさえちゃ……」
「やめないよ、志奈子。ほら、まだ我慢出来る？」
「うぁ、やぁ……」
又攻められる。突起も一緒なのですぐに弾けてしまいそうになる。
「ああ、やぁ、甲斐、くん……」
手を伸ばす。いつもみたいに、一緒にイク時はぎゅって抱きしめて欲しかった。
「志奈子っ、ああ、もう、おれも……うあぁ！」
甲斐くんの空いた方の手がわたしの手を掴んで引き寄せる。そして、もう片方の手できゅっと突起をひねられて、身体が硬直して震えてしまった。ああ、きちゃった、また、アレだ……
「あぁぁぁあああっ！！」
もうダメ、限界……
「ひんっ、いく、いっちゃう、もう！！」
「ああ、出る、搾り取って、志奈子が、オレの……」
「あああああ……」
ひくひくいってる、わたしのそこが、ドクドクと吐き出す甲斐くんのを締め付けて、それがまた気持ちよくてまた昇って……
復活した甲斐くんがすぐさままた腰を動かしはじめて、もう、ぐちゃぐちゃだった。
続けざまに、甲斐くんのにイカされて、身体に力はいらなくなって、ぐったりしてるわたしを、まだ甲斐くんは突き上げ続けていた。


時間の制限はなく、コレが最後だと思うから余計に貪欲になったのか、ひたすら揺すられていた……
明け方近くまで繰り返された行為に、お互いのに体力は限界を迎えた。
わたしはとうに意識が薄れ、身体も動かなくなっていたけれども、甲斐くんはまだわたしの上で動いていた。
最後、つけずにされたのは知っている。もう勃たなくなってしまった彼は、ゴムをつけずにわたしのナカに入り込んだ。
「志奈子っ！」
そして最後にわたしの名前を呼びながら、もうさほど残っていない精を絞り出してわたしの中で、果てた……


抱き上げてそのままバスタブに連れて行かれたようだった。彼がわたしのナカを洗っていたけれどもわたしはされるがままだった。
洗い終えて力の入らないわたしの濡れた身体を丁寧に拭きあげてベッドに戻る。
相変わらず終わったあとは優しい。まあ、わたしがこんなだから、置いては帰れないだろうけど。ぐったりとしたわたしの身体を優しくさするように抱きしめてくれるのはいつものことで、それは嬉しかった。
でも、置いて帰らないのは中でしちゃったことに責任感じてるからかな？何処までが安全日かはわからないけれども、一応危険日ではないと思う。こんな曖昧なことよくないんだろうけれども……

「志奈子……生きてる？」
「ん……」
「良かった、本当に壊したかと思った」
「壊れたわよ……」
「そのまま壊れてればいいのに……飼ってやるよ、オレが」
「な、に……それ」
「手放せない……こんな、いいの、オレ知らない」
「甲斐くん……？」
「志奈子の身体、声も反応も、肌も、あそこの具合も、全部」
「最後って……いったじゃない」
「なあ、これからも、身体だけでも、だめか？オレたち……」
やっぱり甲斐くんには身体だけなんだ……
「無理だよ……これ以上続けられないよ」
その前に心が壊れてしまう。
もし、身体だけじゃなかったら……そんなことあり得ないのに。
身体だけじゃない関係からはじめられたらよかったのに。でもこの身体以外、彼が興味を持つようなものあっただろうか？勉強を教えてくれる委員長からはじめていれば？それだけで終わっただろう。そんな現実はありえない。
もう、この辺にしておかないと、ずっと辛いだけだから。

「じゃあ、本当に最後なんだな？」
わたしは頷いて目を閉じた。彼の手がゆっくりとわたしの身体をさすっていた。
もう痺れてないのに……
はじめて、彼の腕の中で眠りについた。
目が覚めたとき、彼が居なくても泣かないように……
その温もりをずっと覚えていられますようにと、祈りながら。



ホテルで目覚めた朝、ううん、もうお昼前だったかもしれない。
隣にはまだ甲斐くんが眠っていた。
「ん、起きたのか……船橋、身体は？」
「大丈夫、寝たら少し楽になったから」
わたしはもう身支度を終えて、直ぐに帰れる準備は出来ていた。
「待って、一緒に出よう。送るよ、家まで……」
「え、いいよ、そんな……」
「最後なんだろ？送らせろよ」
甲斐くんが目の前でジーンズを履き始める。シャツを着てもまだだらしなく空いたそこから彼の素肌が見えていた。朝まであの胸の中にいた……その思い出だけで十分にしなきゃだね。
髪もくしゃくしゃのまま上着を羽織って、甲斐くんがぼーっとした顔で立ち上がった。
もしかして甲斐くんは朝が弱いんだろうか？そんなことも初めて知った。今日で最後なのにそのことが少しだけ嬉しかった。寝起きの猫みたいに頭を振って軽く髪を掻き上げて身繕いする姿は物憂げで、きっとこれからも女性の目を惹き付けるだろう。
じっと見ていたら気づかれたのか、わたしの方に向き直って降ろしたままの髪に触れてきた。
「髪……このまま帰るのか？」
もう三つ編みにはしていなかった。今さらだし、校則もないからする必要もない。ただ、今回外で待ち合わせた時に、三つ編みじゃないと気付いて貰えないかも知れない、そう思って編んで来ただけ。実は、めがねもセルのフレームはやめようかなって考えていた。
「いけない？」
「いや、綺麗な髪だから、悪くはないけど……」
わたしの髪を掬ってじっと見ていた。どうしたんだろう？やたら髪を触るのは好きみたいだけど。
「な、なに？」
「いや、帰ろうか。けど、腹すいてないか？」
そりゃ空いている。
何も食べずに、ただ水分だけ補給しながら延々明け方近くまで交わっていたのだから。
我ながらすごい体力だと思った。甲斐くんもさすがに消耗しているっぽかったけど、ラブホじゃまともな食べ物はなかったから、夜に少し頼んだ食事では甲斐くんは満足してなかっただろう。
「ハンバーガーぐらい付き合えよな」
そういわれて、ついのこのことついって行ってしまった。最後を引き延ばそうとしてるのはわたし。彼は単にお腹が空いてるだけなんだから……
平日の朝の１０時前のマ○ドナルドで朝のセットを注文した。甲斐くんはソーセージエッグマフィン、わたしはホットケーキセット。彼はブラックのコーヒーで、わたしはミルクティ。食べるものの好みも知らなかったけど、こうして一緒に出掛けるだけでわかるコトってあるんだな……身体を重ねるだけじゃ絶対に知り得ないこと。結局、わたしはそういう対象だったってこと。お互いのこと、知りたいとも知って欲しいとも思わない関係。気楽に寝て快感を与えあうだけの…、セフレにこんな付き合いは必要なかったんだ。
二人向き合って座って無言で食べていた。だって何を話していいかも分からなかった。受験勉強が終わった今、その共通の話題もない。
本当に今まで身体を重ねる以外何もしてこなかったって証拠だ。まともなデートしたこと無かったけど、一度ぐらいしてみたかったなぁ……映画に行ったり、一緒に見た映画の感想言いながらご飯食べたりとか。

「大学……入ったら何かバイトとかするのか？」
ふと甲斐くんの方から聞いてきた。
「そうね、小遣いぐらいは自分で稼がないと……家庭教師ぐらいならわたしにも出来るかなって」
「ああ、船橋なら向いてるかもな。教えるのうまいし」
わたしが合格したのは理学部数学科、将来は数学の教師が希望だ。教師ならば、問題を起こさない限り、リストラも首もないし、老後の保障もしっかりしている、わたしにとっては理想的な職業だった。
「甲斐くんは？」
「たぶん、イロイロやるだろうな。水商売向いてるって言われるけど親のこともあるからな……ちょっとでも将来役に立つようなバイト探すよ。あいつみたいになりたくはないし」
そうだった。彼は父親みたいになりたくなくて大学に行くのだ。わたしにまで勉強をみてもらってまで。
「学部は？」
ようやく話しが弾みだしたころ、どやどやと若い女の子たちの集団が店内に入ってきて、席取りに数人こちらにやってきた。
向こうの席から聞こえる。ひそひそ話
『何あの連れの女……最悪〜』
『いい男なのにね、それだけで幻滅』
『っていうか、わたしらのほうがマシ？』
『違わない〜〜〜』
笑い声が突き刺さる。
わかってるから、とどめ刺さないでよ。もう、今日でお終いなんだから……
「ね、出ようか？」
「あ、ああ……」
食べ終わっていたし、誰かに見られるのも嫌でわたしはトレーを持って席を立った。甲斐くんもそれに続いて席を立った。

「家、どこ？」
「もう、いいって……」
「けどおまえ微妙にふらついてるぞ？」
コレは筋肉痛ですと、大声で言いたい。無理な体位を繰り返したり、こっちが動けなくなってるのにやめてくれなかったのはどこの誰かと言いたい。
仕方なく最後まで送らせた。どうせ、今日の夕方までに引き払うアパートだ。引っ越し屋が来るまでにあと二時間ほどあるし。
「ここよ、ここの二階」
「へえ、上がっていい？」
「……なんで？」
「なんでって……」
上げたら荷物まとめてるの見られちゃうじゃない？お茶を出すのだって大変なのに。
「ごめん、もうすぐ人が来るの。送ってくれてありがとうね……さよなら」
今度こそ本当にさよなら。
わたしは背を向けて階段を上がっていった。
もう、会うこともないだろう。わたしの初めての男、そして＜せふれ＞だった人。
全部忘れるまで時間はかかるかもしれないけれど、さようなら……

高校編〜終〜

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