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Flexible

名前が付きました。三澤香澄と風見凌です。
欲しい方申し出てくださいねw
著作権は放棄してません(笑)          by kei

続編「More Time」香澄side

「社長、予定のプログラミング終わりました。残りの数値はいま西野さんに打ち込んでもらってます。」
「そう、こっちもそろそろ終わるわ。」
先月まで派遣だった我が社唯一の男性社員、プログラマー兼秘書を兼ねるのは風見凌。
今月の頭に正式に我が社の社員として契約した。半分脅されて、だけど。
社員にしなきゃ派遣会社側にセクハラされたとか言うって...ホントはそんな気ないくせに意地悪く、ええ、ベッドの上で縛られて言われた日にはハイというしかないじゃない!!色恋沙汰は仕事には持ち込まない主義なのに...
でも今じゃすっかり秘書、ううん、片腕といえるほどあたしの仕事を熟知してくれている。プログラマーの資格は自分で取ったらしいけど、意外にも彼はホストやりながらお金稼いで大学も自力で卒業したらしい。卒業後ホストを辞めて、就職せずに派遣会社を使ってうちに入り込んできた...
よく聞けばその派遣会社の社長も昔のお得意様でコネだったていうじゃない?ったく、抜け目がないというか、要領いいというか、あたしはずっとあれからヤラレッ放し。
言葉の意味通りに取ってもらっていいわよっ、もうヤケクソよ...

「じゃあ、待たせてもらいますね。」
そう言って社長室のソファに腰掛けてアンニュイなポーズを取って書類をめくっているその姿...
「なんです、今更オレに見惚れたりして?」
「違うわよ、馬鹿っ!」
くすくすと笑う姿まで余裕綽々で思わずムカッと来る。
今目の前にいるのは眼鏡をかけて真面目な表情の、以前の派遣社員とは違う。あたしの目の前だけで本性をさらけ出す、高級ホストクラブ「Darling」の元人気ホスト戒<カイ>。ううん、もっとも本性をさらけ出すのは...
今朝だって、イヤだって言ってるのに起き抜けに襲われて、足腰立たないわよ、もう...泊めるんじゃなかったわっ!
こっちはそう若くないのに、なんだってこんなトウの立った女相手にするんだろう?ずっと想ってたって言われても、いまいち納得がいかない。だから余計にムキになられてるような気がするんだけど...て、言うよりも最近ずっと居ついてる気がする。社員に顔が立たないって言いたいところだけれども、今のところ誰にも気付かれてないと思うんだけど。

「社長、今夜の予定はSプリンスホテルでC社の新作発表を兼ねた催し物でしたよね?」
「ええ、そうだけど?」
あたしは必死で残りの書類と格闘していた。社長と言ってもそうたくさん社員のいる会社ではない。仕事は現場並み、ソレがモットー。
「そろそろ出ましょう。」
「なによ、まだ早いでしょう?」
「いえ、準備のためにサロンを予約しておきました。」
「はぁ?サロン?」
「ええ、ドレスコードでてますから、それに合わせて。社長はいつも髪をまとめてらっしゃるだけですし、今日もスーツで行かれるつもりでしたか?」
「...悪い?あたしなんか着飾ってもしょうがないでしょう?いいのよ、あたしが綺麗にしたってしょうがないし、ってちょっと!!」
あたしが持ってた書類を奪うとダダダと打ち込んでパソコンの電源を落とした。
「さあ、行きましょうか。」
荷物も全て手に持って有無を言わさない。後のことを現場の責任者を兼ねてる親友の佐野敦子に伝えるとにやっと笑った?
え?なによ、『頑張ってね』って何?気がついてるの?
焦るあたしを尻目に凌は出て行く。あたしはニヤつく敦子を残して彼の後を追った。


「サロンて、どこ?」
行きつけの美容院はサロンなんて名前は付いてない。第一スーツ着てくだけなのになんで髪の毛までセットしなきゃいけないの?
「もうすぐ着きますよ。」
彼の車は意外にBMWの黒。年式とかは知らない、そんなに好きじゃないけどエンブレムぐらいは知ってるわよ。高いんでしょうね?この車。凌は何にも言わないけれど、お客さんからもらったものらしい。それって、そう言う付き合いしてたってコトでしょう?なんだか納得いかなけど、物に罪はないって思うようにしてる。

ずっと一緒にいてわかったこと。
凌は意外とお金持をもってる。そして使い方も知っている。
倹約至上主義のあたしとは全く違うのよね。それはきっと以前の仕事でセレブな女性達に色々教わったか、彼女たちを楽しませられるように覚えたことだったんだろう。食事にしたってすごくいい店に連れて行ってくれるし、予約や紹介がないところだってそう。先日も相手の女社長の希望の接待に使う店が、一見さんでは難しい場所だったんだけど、さっさと手配したのが凌だったもの。これだけ動けて、使える男って、案外お買い得だったかもしれない。アレだけを除いては...
その代償の全てはあたしの身体で払わされるらしい。
そんな価値、どこにあるって言うの?そう簡単にはさせまいとこっちも最初粘るけどいつだって途中からは白旗上げてしまってる。
経験値が全然違うんだもの、悔しいっ!


連れて行かれたのは有名な総合美容サロン。いきなり部屋に通されて有無を言わさず磨かれて、髪をセットされて、メイクされて、最後に出てきたのが...
「何これ?」
「今夜あなたが着るドレスですよ。」
そう言う凌はフォーマルなスーツに着替えてる。それがまた細身の身体によく似合ってる。でも相変わらず眼鏡かけて、髪も撫でつけたまま。降ろしてる方が好きなのになぁ、あたしの上で動いてる時、柔らかな前髪が揺れて、その間から覗く瞳がすごくセクシーで...って、思い出してちゃダメ!!
いきなりドキドキと脈打つ心臓を押さえつけて深呼吸する。
「この、胸元の開いたエレガンスなドレスがあたしに似合うとでも?」
「似合いますよ、香澄さんは意外と胸もあるし、メリハリのある身体してますからね、いつもの眼鏡さえ外して頂ければOK何ですけど?」
そうなのよ、磨かれてる最中眼鏡を奪われてからよく見えないのよね。
「コンタクトなんか持ってないわよ?」
「今度作りに行きましょう。今日は無しで。」
「無理よっ!」
「とにかく着替えて、でないとそちらのおねーさま方が困られてますよ?」
最初から付き添ってくれてるサロンの女性がニッコリと笑ってドレスを差し出したのであたしは着るしかなかった。
ドレスに合わせて下着まで用意してあったってことは、これ全部...まさか?
「これって、あなたの?」
着替え終わって凌に聞いてみた。
「僕のじゃないですけど、あなたのために用意しました。よかった、よく似合う。」
驚いたのは鏡の中の自分。あたしじゃないほどあか抜けて、若々しく見えて、凌が側にいてもいつものような違和感はなかった。
そう、凌の若さや綺麗すぎる肌や顔立ちに対する引け目がすこしだけ薄れた気がする。
あれ?もしかして、気付いてたの?
あたしが外で並ぶことや、馴れ馴れしく関係があることを示唆するように振る舞うのを嫌がることを。秘書と社長としてだと何とか取れてる均衡も、ただの男と女だとしたら、あたしは年上で気の強そうな、いかにも凌をお金で買ってそうな雰囲気にしかならないもの。それが、少しイヤだった。それならビジネスの関係だけに見えればよかった。
「お似合いですわ、風見様は三澤様の魅了を引き出すアイテムをよく理解してらっしゃいますね。当方ではココまでご用意出来ませんでしたわ。ああ、風見様、社長からよろしくといいつかっております。本日はこちらに顔出し出来ないことを残念がっておられました。どんな方を連れてこられたか、後で報告しろって言われてるんですよ。」
「やだなぁ、美穂子さん。ナイショにして下さいって言ったでしょう?」
「ごめんなさい。あの電話受けたとき社長が側にいらっしゃったのよ。」
少しだけ甘い視線、少しだけ甘い声...今はホストの<カイ>だわ。
こうやって見ればよくわかる。
あの頃の<カイ>は媚びないけれども魅力的なホストだった。上品で、誰でも上手く接客していた。あたしが通っていた「Darling」のbRで、人気だけはすごかったけれども、あまり営業しないんだって自分でも言ってたけ。初来店の時に、誰でもいいって言ったら最初についてくれて、何回か通ったあとAfterに連れていってくれって頼まれて、二人っきりが恥ずかしくて、サポートについてくれた子もみんな連れていったあの夜、酔っぱらって正体なくして<カイ>に抱かれたんだっけ。なき晒した顔で朝目を覚まして、誰が横にいるかなんて怖くて確認出来なくてその部屋を飛び出した。あそこは<カイ>の部屋だったんだ。この間荷物を取りに行くとか言って連れて行かれて再確認した。
『この部屋はホスト時代に買ってもらった部屋なんだ。だから出たいんだ。』
ってそれはあたしの部屋に来るってことだったんだよね...
どこがいいの?こんなやり手婆のような性格してる、仕事しか取り柄のないあたしのどこが凌を繋ぎ止めて置けるというの?それとも<カイ>はそんな女性を手玉に取ってきたからあたしなんて扱いやすいだけの女なのかしら?
でもなぜあたし?昔の顧客にはとてつもなくいい筋のお客さんがいるみたいだし、いくら昔助けたって言っても...
「香澄、なに考えてるの?」
「な、なんでも...」
耳元で囁かれ、一瞬びくりと肌が跳ねた。名前で呼ぶとき、それは行為の最中だけだから、一瞬身体が反応してしまった。ヤバイ...
凌が果てを迎えるときに何度も繰り返される。甘いその囁きだけであたしはイキそうになるのよ?
「行きましょう、ちょうどいい時間ですよ。」



新作の発表が終わった後は立食パーティが用意されていた。いつもは仕事然としていることが出来る恰好なのに、今夜は違う。眼鏡は取られて近くに来た人しか見えないし、うろうろ出来ないからずっとコイツの横に居るしかなくて...
「何拗ねてるんですか?アナタらしくない。」
「だったら眼鏡返してよ!こんなヒールじゃ歩けないじゃない。」
「とても綺麗ですよ。アナタは意志の強い顔をしてるから遠目にもすごく目立つんだ。ほら、あっちの男も見てますよ。やだなぁ、僕の香澄をじろじろ見て。」
ぶつくさと言ってるけど、誰のだって??
「胸元開けすぎたな。次は詰まったヤツにしよう。」
そう言いながらも腰を抱いてエスコートしてるのは誰?
一通り挨拶もすませて、その間はちゃんと秘書の振りしてくれる器用なヤツ。マナーもエスコート術もどこの誰にもひけをとらない。そして今日のあたしは少しだけ自信が持てるほど、凌の側に居て恥ずかしくない程度の見かけになってるはず...


「香澄?」
凌とは反対側から自分の名前を呼ばれて振り向いた。聞き覚えのある低い声。
「裕人...」
笹垣裕人、昔の男。
そう、随分昔のオトコ。一緒に夢を語って、一緒に仕事して、あたしの初めてを全部持って行ったオトコ。それから、自分の出世のためにあたしを捨てて、あたしから女としての夢も希望も奪っていったオトコ。残ったのは仕事に生きるだけのあたし...
「見違えたよ、元気だったかい?会社興したんだってね、佐野から聞いたよ。」
敦子、あんた何言ったの???あの子も前の会社からあたしが連れてきた子だから、誰かと連絡とってるとは思ったけれども。
「香澄、こちらは?」
あたしの腰をしっかりと抱いた凌が視線を定めて裕人を睨んでる?
「えっと、笹垣裕人、以前同じ会社に勤めていたの。今はソコの重役の娘さんと結婚して未来の重役候補。そうよね?」
「ああ...香澄は綺麗になったね。見違えたよ。俺は...」
「あなた?」
側に女性が寄ってくる。若くて綺麗な妻、重役の娘と言うだけでなく、その容姿でもあたしと比べれば当時の彼にとって選ぶまでもなく美味しい物件だったはず。あたしは無惨にも7年付き合って捨てられた惨めな女。そうなりたくなくて一念発起して会社を興したのよ!ええ、彼が女の甘い夢に縋り付くあたしをばっさり切ってくれたおかげで今のあたしが居るのよ。そう言う意味では感謝しなくちゃだわ。
「ああ、妻の詩織だ。うちの会社に居た同期の三澤さんだ。」
「三澤、香織さん?」
フルネーム、ってことは知ってるのね。自分が原因であたし達が別れて、その後あたしが会社辞めたってことも。だったら嫉妬するより自慢げにしてもらいたいもんだわ。裕人の事に関しては貴女の方が方が勝者なのだから。
「はい、そちらの会社に居りました頃は大変お世話になりました。私今は起業して会社を経営しております。」
名刺を差し出し二人に渡す。
「まあ、社長、さん。ではそちらの方は?」
ちらりと視線が凌に移る。いつの間にか眼鏡を外してその微笑みは<カイ>モード??
「三澤がお世話になっております。秘書をやっております風見と申します。」
ニッコリ笑うその笑顔が怖いわよ、凌。彼女ぽーっとしちゃってるじゃないの?
「秘書と言っても、仕事のサポートもお願いしてるのよ。」
「いえ、社長の手腕に惚れて押しかけて仕事させてもらってるんです。僕の尊敬する女性なんですよ。」
あたしが加えた一言に、婉然と微笑みながらあたしの腰を引き寄せて言ってのける。
しばらくは誰がどうしてるって懐かしい名前を並べ立てて上滑りな会話を繰り返していた。
それにしても、この奥さん、ちらちらと凌ばかり見てる...裕人も気がつけばいいのに奥さんほったらかして必死であたしに話しかけてるし。こんな面前で昔の話なんか蒸し返したりしないのに。
「社長、飲み物でも取って参りましょうか?」
さすがに詩織さんの視線に気がついた凌がそう言ってきた。なのにこの女って...
「私も飲み物戴いてくるわ。裕人さんはビールでよかったわね。」
さすがというか、イイ度胸してるわよね。凌の後を追うようにして詩織さんがあたしたちから離れていく。
二人っきりにしないでよっ!なに考えてるのよ、凌!裕人も何ほっとした顔してるの?
「随分若くて綺麗な顔した秘書だね。」
「中身もすごいわよ。」
意味ありげに笑ってみせる。その後すぐに裕人が真面目な顔してあたしの方を正面から見てきた。
「その、すまなかった...ずっと気になっていたんだ。」
「なにを?7年も付き合った女を捨てたことがそんなに良心の呵責に耐えられないことだった?望み通り出世街道まっしぐらでしょう、何を気にすることがあるの?あたしだってここに来られるぐらい仕事してきたわ。別に裕人に謝ってもらうことなんかなにもないけど。」
「あの時は...彼女を選んださ。だけど、俺だって7年間の香澄との思い出を捨てられなかったんだ。妻はあの通り若くてお嬢様で...疲れるんだ。子供もまだいらないと言われて...」
それがどうした?目の前にいるのは30後半のくたびれかけた昔の男。接待のお酒で肝臓でもいかれてるんだろうか、くすんだ肌。少しだけ白いモノが混じりはじめた髪。ちょっと早くない?その髪は。まあ、禿げるよりいいかもしれないけど、毎日凌をみてるから、あまりの違いにちょっとだけがっかりしてしまう。
昔はバリバリ仕事してカッコイイと思ってた男臭さまでがただのおじさんに見えてくる。自分だって同い年なのに...今日のあたしはたぶん30代前半に見えるか見えないかってくらいはいってるんじゃないかな?そんな、ほんの少しの自信が毅然とした態度をあたしに取らせる。見返すためじゃないけど、こう言うときにがつんとやれるようあたしは頑張ってきたはず!
凌はそのことに気がついたの?だから二人っきりにしてくれたのかな?あの邪魔な奥様を連れ出して...
「香澄、時間を作ってくれないか?ゆっくり話がしたいんだ。おまえが、忘れられないんだ...」
(おまえの思いやりも、優しさも、その身体も、セックスも...未だに覚えてるほど、いや忘れられなかった。今でも愛してるんだ、香澄...)
耳元で裕人が囁いた。昔は甘く聞こえたそれも、今では嫌悪感に包まれるだけのモノ。
「あら、あたしは忘れたわよ?だって、裕人のセックスは独りよがりであたしイケたことなかったもの。振りするの疲れたんだよね。」
半分は本当で半分は嘘。
「なっ、あの男か?そんなに若い男がいいのか?あんな若い男がおまえに夢中なはずがないだろう?金目当てだって分からないのか?オレはそれが心配で...」
「ええ、そうかもしれないわ。でもあたし凌に給料以外渡したことないわよ?むしろこのドレスも身につけてるものも全部彼からの贈り物だけど?たとえ金目当てだったとしても、今の凌をあたしは信じるわ。仕事もプライベートちゃんとしてくれてる。あなた見たいに自分のコトだけ考えてる人じゃないわ。それよりも、あなたも自分の奥さん大事にしなきゃ。凌を見る目が違ってたわよ。遊んでるんじゃないの?知らないところで。」
意地悪いけどそう言ってやった。だってあの目は、そうなんだもの。自分が綺麗だから、誰でもなびくって信じてる目。今まで何人もみてきた。でもね、モテることと遊ばれやすいこととを取り違えちゃいけないわ。遊ぶんなら旦那の知らないところで秘密裏にやればいいのに。
馬鹿な女...凌が<カイ>モードに入ったら落とせるだろうけど、たぶんあの子はしない。だって、今のところ、他のだれにも手を出してないもの。出せるほど離れてないし、毎晩身体に思い知らされてるし。
悔しがる裕人にため息をくれてやったときに、後ろにあまやかな気配を感じた。
「社長、どうぞ。」
あたしの好きなシャンパンを持って凌が戻ってきていた。すぐさまあたしをその腕の中に閉じこめてるのは素早い。
「あれ?妻は?」
「さあ、知りませんよ?どこかで気分でも悪くなられたかな?」
ニッコリ笑った凌が怖い。
慌てて走り出した裕人の背に向かって舌を出すあたし。
「何か言われました?すごく厭そうな顔をしてた。」
「すっごく厭なこと。」
「なんて?」
睨んでる。言えって事?
「忘れられなかったんだって、あたしの身体が。で、あんたは金目当てだって。」
むっと、凌の顔から全てが消えた。ヤダ、マジ怖い...
「そ、そっちこそ、詩織さんとなにやってたの?」
「言わなければなりませんか?」
凌の目が細まる。よっぽど言いたくないんだ。都合の悪いことを聞くとこの表情でかわされる。慣れたけど、悔しいから突っ込んでやる。ここは寝室でもなければ誰もいない空間でもない。会場の中にいる限りあたしは社長としての権限を発することが出来るんだから。
「ええ、もちろん。」
そう返すと、凌までため息。
「誘ってくるんですよ。いかにも自分の方が魅力的でしょうって。」
「あら、よかったじゃない。綺麗な人妻から誘われて。昔の勢いでいっちゃえば?」
怒るのわかっててそう言う。あたしはいつもこう。外では言いたい放題。その分後でイヤって言うほど言い聞かされるんだけど。それが悔しくてまたこうやって反骨心丸出しで...
「あんな締まりの悪そうな女イヤですよ。でもね、昔のモードで囁いてちょっと刺激したらその場で腰抜かしちゃいまして。」
ニッコリ笑うな、ちょっと凶悪だわよ、それ。やっぱなんかしたんだ?
「大丈夫ですよ、ちゃんと断っておきました。『俺、遊んでる女嫌いなんですよ。ガバガバだから』って」
「なんでそんなのわかるのよ?」
「さあね。経験?それより...オレは嫉妬してるんですけど?」
「んっあ...」
耳元にキスされて、腰に指を這わされた途端にこっちが落とされた...




(やっ、ここじゃ、イヤ)
凌の手はドレスの隙間からあたしの弱いところ攻めはじめてる。周りにはまだ人がたくさんいる。会場の壁際、カーテンの影。
(じゃあ、テラスにでも行こうか?)
耳をゆっくり舐められて、腰が砕けそうになって、引きずるように連れて行かれたテラスの隅は誰の視線もなく、月明かりが怖いほどだった。
(ねえ、オレにはヤキモチ妬いてくれなかったの?オレはあの男が近づいただけでも煮えたぎるほど悔しかったのに...昔のカレ、香澄の身体をオレ以外に知ってる男なんでしょう?)
(はぁんっ...)
横から入り込んだ指が敏感になった胸の先をつまむ。首筋に舌が這う。ダメだ、それ、弱いの!
(相変わらず敏感)
腰の辺りを撫でられて、びくびくと震えると、凌がにやりと笑った気がした。
(そんなに感じてたら、下着汚しちゃってるんじゃない?)
ドレススリットから凌の手が入り込んでくる。そのためだったの?この空いた胸元も、深いスリットも...
「やっぱり、すごく濡れてる...」
イヤらしい身体だね。と付け加えられた後、下着の隙間から指が入り込んでくる。
「んっ」
(大きい声出しちゃダメだよ。ただでさえ香澄の腰は動いちゃってるんだから。オレだって、ほら...)
熱い強張りを押しつけられる。ぐりぐりしないでっ!後ろから...掻き回しながらなんて反則よっ!
(さすがにココでは、ダメ?)
何度か社長室で行為に及んだことはあるけど、戸外はまだない。
「ダメに決まってるでしょ!」
「じゃあ...」
そう言いながらポケットの中からカードキーを取り出す。
いつの間に??
「上ならいい?部屋とったんだ。」
ちゅって目尻にキスされて驚いた。その後引き抜いた指を舐めるんじゃないわよっ!


もう、馬鹿っ!!スケベ!
好きにすればいいわ...
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