クリスマス企画第一弾

Last of chance

〜クリスマスを過ぎても〜
12月24日

あったかいなぁ...
あたしは何か暖かい物に包まれてるような至極の幸福感に包まれていた。

「おい...」
ん、誰か呼んでる?ああ、シーツがぱりっとしてて気持ちいい...ん、幸せ...
「おい、杉原...」
「ん...」
なんで起こすの?すっごく幸せなのに?
「杉原...杉原 朱音!」
「はぁい...何ですかぁ...」
「起きろ、もう朝だ。」
「はい?」
朝?
朝って、いつの朝?
「えっ!?」
飛び起きて確かめる。よかったドレスは脱いでる...レンタルだもん皺にしたりシミなんか付けられないわよ。って、し、下着姿??急いでシーツを持ち上げる。
「あのっ、あたし...」
見えない、視界がぼやけて、見えない。
「ほい、眼鏡。」
手渡されてさっとそれをかける。
「本宮課長...」
目の前にはぱりっとスーツ姿の課長が居て...
「あのっ、あのっ!?」
必死でシーツで身体を隠すけれども肩の部分が丸見え??
あれ?あのドレス、そもそも自分で脱いだんだろうか、それとも...
「落ち着け、杉原。おまえは昨日飲みに飲んで、意識を失ったんだ。仕方がないので俺が取っていた部屋で休ませてたんだが、どうやら俺も寝てしまったみたいで...」
「で?」
「朝だ。今日はプレゼンの日だ!」
「うわぁ...な、何時ですか??」
「まだ六時だ。なんとでもなる。」
「あの、あたし、あのっ、シャ、シャワー借ります!」
化粧、そのままできっと酷い顔してるはずだわ。鏡見るのが怖いくらい...
課長が背中向けてくれてる間にバスルームに飛び込む。中にはアメニティグッズが揃ってるので、急いで化粧を落として鏡を覗き込む。
うわぁ...ひどい顔。昨日の飲みすぎが祟ったのか、浮腫んで見られたものじゃない。その上耳まで真っ赤だ。体中がまだドキドキ言ってる。
バスルームにお湯をためながら顔を暖めたり冷やしたり。
プレゼンまでになんとかしなきゃだし...
あれ、あたしここで寝ちゃったって言うことは、課長どこで寝たんだろう??
あたしが寝てたの、ダブルぐらいの広さあったし...?
そう考え始めるとゆっくり湯船につかっていられなかった。

「あのっ、課長...」
部屋に戻ると課長はソファでゆっくりと紫煙をくゆらしていた。いつの間にかバスルームに昨日着てきたフォーマルスーツが置いてあったのでそれを着た。よくわからないけど、これしか着るものはなかったのだけれども...
「杉原、用意できたか?じゃあ、朝食に行こうか。」
「あっ、あのっ!課長は昨夜どこで...」
「ソファに行こうと思ったんだが、あまりに寒かったのでね、杉原の隣で休ませてもらったが?」
「そ、そうですか...」
あまりにもすんなり言われたので思わず納得してしまったけど...って、隣??やけに暖かかった気がするけど、まさかね。また冗談のつもりなのかな?だって一緒の布団で寝てもなにもなかったんだったら...うう、これって喜ばしいことなんだろうか?
あたしはどう対処していいのかわからなくてあたふたしてしまっていた。そんなあたしをおかしそうに見てる課長。もう、人が悪い!
ああ、駄目だ...慣れた女の振りぐらいしたいとこだけど、ぜんぜん余裕ない。
二晩一緒にいてなにもない男女。うーん、課長って夫の鏡かも?
でもね、正直、ちょっと自信なくしちゃう。ううん、かなり...
はあ...女として魅力ないって思いっきり証明しちゃったみたいなものね。なんか思いっきり脱力...いいけどね、この方が。
もしかして、あたし課長と男女の壁を越えた上司と部下になれるのかな?それも凄い気がするけど、あたしは出世したいわけじゃないから、ま、いっか。
「杉原、エレベータ来たぞ。」
「あ、はいっ?っ...え?」
昨日のように、腰に腕を回されてそのままエレベーターに乗り込んだ。
「昨夜はよく寝てたな。おかげで俺は眠れなかったぞ。」
「あ、あのっ...あたしもしかしていびきとかかいてました?それとも寝相悪かったとか...??」
あたしって、酔って寝ると時々ひどいらしいの...寝相とか、もしかしたらいびきも?
不安で見上げると、課長は少し困ったような表情で笑うとあたしからスッと離れた。
「いや、どちらもなかったよ。」
その妙な表情。でも読めないんだよね、本宮課長の表情って...
「え?じゃあ、なんで?」
「杉原、おまえな...ま、しっかり朝食食べて、プレゼン成功させよう。」
本宮課長が、また見たこともないような微笑を落としてから、先にエレベーターを降りていった。



「よくやったな。」
「本宮課長のおかげです。でなかったらここまでまとまってませんでした。」
あたしは腰を折り曲げて課長に礼を告げていた。たぶん、勝とだたったら、ここまで完璧に出来上がらなかっただろうと思う。
「杉原もお疲れさん。いい企画だったと思うよ。おまえの力だ。」
「本宮課長...」
なんだかうれしかった。仕事で上司にここまで認めてもらえるなんて...男性社員と違って、あまり褒められることなんてない。男性社員や先輩に企画もってかれたコトだってある。
あたしには仕事しかないなって思ってたから、だからこそ、嬉しかった...
「あ、ありがとう...ございますっ!」
「泣くなよ、褒めてるんだぞ?」
あたし泣いてた...滅多に泣いたことなんてなかった。悔しくても、悲しくても泣けなかった、今まで...8年思い続けた人に恋人を紹介されて、結婚すると告げられても、笑っていられたのに...
「だって、課長、ずるいです...そんな褒め方。滅多に褒めないくせに...」
「そう、か?泣かれると辛いな...俺が泣かしたことになるんだろうけど、うれし涙だよな?」
「はい、なんかすっごく素敵なクリスマスプレゼントもらった気分です。」
「安くつくクリスマスだな。こんなのでいいのか?」
「はいっ、今のあたしは、仕事が総てですからっ!」
また苦笑されてしまった。あたしってそんなに変なこといってるかなぁ?
「じゃあ、もうひとつご褒美だ。食事に連れて行ってやるから支度しろ。」
「はい?」
「打ち上げだ。二人でな。」


連れてきてもらったのは、住宅街にある小さなフレンチのレストランだった。
田舎風フランス料理ってなってたけど、日本の食材をうまく取り入れた創作料理のようだった。
こんな時期にどうやってと思ったけれども、課長の友人がオーナーシェフだからと説明して貰った。挨拶に来たその人は幼馴染みだと料理通りの優しい髭の顔で笑っていた。無理を言って予約を入れたらしかった。そんな無理をするなら奥さんを連れて来てあげればいいのに...
『今日はイブですよ?家族が待ってらっしゃるんじゃないんですか?』
そう聞いても、『誰も待っていない』ってまた引きずられるようにしてココに連れてこられた。課長ってココってところでは有無を言わさず強引なんだよね...
きっと、がんばったあたしにご褒美のつもりだろう。せっかくだからと、あたしに気を使わせないようにしてるんだろうけど、クリスマスイブだよ?周りは恋人同士ばかりで...そりゃ、寂しいクリスマスを予定していたあたしからするとすごく嬉しかったけれども...
でも、誰とでもよかったわけじゃないの。課長と過ごせるのがすごく嬉しい。だって、こんなにも安心して居られるなんて...決してあたしに手を出してこないだろうという安心感と、尊敬する上司って信用が、いつもなら壁を作りまくるあたしの癖を隠してしまっていた。
でもこれ以上は、駄目。期待しちゃいけない。目の前にいる人はあたしの尊敬する課長さんで、彼にはちゃんと奥さんが居るんだから...

「ごちそうさまでした。」
「意外とうまかっただろ?」
「はい、知りませんでした、こんなとこがあったなんて...」
店の方を振り返る。住宅街に、質素だけれども暖かいクリスマスの飾り付けが私たちを見送ってくれていた。素敵な思い出ができちゃった。もうコレで十分...これ以上は贅沢だから、早く課長を家族の元に返してあげなきゃね。
「ああ、あいつと奥さんの優しい雰囲気がそのまま店に出てたな...それでも前に来た時はこんなに楽しめなかったよ。今夜はワインもうまかったしな。」
「本宮課長、帰りは大丈夫ですか?さっきかなりワイン飲んでらっしゃいましたけど、いいんですか??」
「ああ、クリスマスぐらい飲ませてくれよ。今夜は車も会社に置いてきたしな。」
たしかにここは会社から近かったけれども、帰りはどうする気なんだろう?
「じゃあどうやって帰るんですか?あの、今からご自宅ですか?」
課長の自宅までの電車はとうに終電の時間が過ぎている。
「無理だよ、この時間じゃ...杉原は今夜は予定はないって言ってたな。もう一軒付き合わないか?」
この人は何言ってんだか。さらに飲んでどうするの?それともこの間みたいに部屋でも取ってるって言うんだろうか?でも直前で予約なんて取れやしないはず...。イブに部屋が空いてるホテルなんて聞いたことがないよ。それともビジネスぐらいならあるんだろうか?あまりそういった事情に詳しくないのでわからないけれども。

結局強引に押し切られてバーで飲んだ。気持ちよく酔っていたかったけれども、前回の失態があるのであまりペースをあげずに飲んでいた。それに...やっぱり気になるじゃない?課長の奥さんとか、待ってるんじゃないかなって。
バーを出てほろ酔い気分の課長が気持ちよさそうに夜空を見上げた。
「本宮課長、ホントにいいんですか、帰らなくても?」
「杉原、おまえはそんなに俺を帰したいか?」
「だって...」
あたしは立ち止まる。どこに向かって歩いてるかもわからなかった。
「おまえは...俺と居たいとは思わないのか?」
「.......」
突然真顔で聞かれても、どう答えろって言うの?
そりゃ、もう少しだけ一緒にいたいって思ってる...今夜あの部屋に帰って、一人寂しくクリスマスを過ごすのも嫌。このまま本宮課長と一緒に...なんて、そんなこと考えるのは馬鹿げてるって、何度も思ったけれども...
判っていた。一緒にいたいって、心が、身体が、そう訴えていることに。だけど、素直にはなれない。課長には奥さんが居るんだから。なのに、なぜ?課長はこんなことを言うの?あたしになにを言わせたいの?なぜ...
「俺は、今夜は杉原朱音、おまえと居たいと思っている。」
駄目、駄目、絶対駄目!あたしは近づく課長の視線から逃げるように身体を背ける。その肩を強く掴まれて揺さぶられる。
「どうして俺の視線から逃げるんだ?おまえだって判ってたはずだ。俺がおまえを欲しいって、そう言う目で見ていたことに気がついてるんだろう?なのになぜ気がつかない振りをするんだ?おまえだって、その目がちゃんと答えてるじゃないか?」
.........少しだけ、そうかもしれないって、思っていた。
だけど、不倫なんてする勇気はあたしにはない。あたしにはそんな魅力だってないはずだよ?
なのになぜ...本宮課長の視線はこんなにも熱いの?
あたし...男の人からこんな目で求められたことなんてない。
だってなにも知らないもの!恥ずかしいぐらいなんにも知らない。このままオールドミスで会社に一生捧げることになるんだって、ずっと思ってたんだもの。
「朱音、俺をちゃんと見てみろ!」
恐る恐る視線を上げる。真剣な目をした男がそこにいた。あたしみたいな女でも欲しいって言ってくれる男がそこにいた。
その男がどんな男なのかなんて、もうどうでもいい。
その男に妻が居て、すぐにあたしから離れていく男でも構わない。きっと物珍しい、不慣れな部下をつまみ食いのつもりでも、遊びでも、酔った今だけの戯れ言でも...それでもいい
今、あたしを真剣に欲しいと言ってくれるなら...
あたしも、彼が欲しい...
本宮課長、本宮俊貴という男
尊敬できる上司
頼りになる男の人
きれいな寝顔をした男
きれいな手をした男
あたしに決してその気も起こさない、上司と部下だけの関係だと思っていた男
いつの間にか一緒にいるのが楽しくなってしまった男
今現在、あたしの胸を苦しくさせている男
一晩だけ...
思い出、貰ってもいいかな?
今夜だけ、クリスマスイブの思い出を...
「あたしも...本宮課長と、一緒に...居たいです。」


「朱音...」
生まれて初めて抱きしめられる。男の腕に...たとえその腕が他の人のものでも構わない。家に帰れば、綺麗な奥様を抱きしめるこの腕であっても、今だけはあたしを捉えて離さないこの腕を自分の物だと思ってもいいのなら...
「課長...」
「今だけでも課長はやめてくれ...俊貴でいい、朱音。」
「そんな...呼べません、課長のこと、あっ...」
あごをくいとつかまれる。
「言うんだ。」
「あのっ...俊貴...さん」
「そんな、泣きそうな顔でオレを誘わないでくれ...弱いんだよ、おまえのその顔には。」
「と...っ、んっ」
ふさがれた唇、何度も角度を変えて重なってくる。あたしはどうしていいか判らなくて...
「震えてるのか?朱音、俺が怖いか?」
「ち、違います...そうじゃなくて...」
再び重なって、暖かい舌先があたしの唇を優しく舐めていく何度もノックされた。口を開けっていうことなんだろうと思って、そっと唇を開くとすぐさま課長のが入り込んできた。
「んんっ...」
キスって唇を合わすだけじゃないって聞いてたけれども、こんな...
なんで、口の中までこんなに...
おかしくなる、色んなところを舐められ、必死で応えるけれども既にもうされるがまま状態で、身体が支えられなくて課長の首にしがみつく。腰が砕けて落ちそうになるのを引き上げられて課長の腰に押しつけられる。
あ...
熱くて硬い塊があたしの腹部を押し上げて来る。
もしかして、これって...?
唇を離すとお互いの荒い息が混じり合う。課長の視線が熱かった。苦しそうにゆがめられた表情はいつもの余裕のある課長じゃなくなっていた。
「この3日間、俺が平気でおまえと夜を過ごしたと思っていたのか?」
「えっ?だって、課長あたしのことは男扱いで...」
「プレゼン前に手は出せないだろ?結構辛かったんだから責任取れよ?」
「責任って...」
「最初の日は俺もマジで眠かったから失敗だった。風呂を借りて眠気を覚まそうとしたけれども、上がってきたらおまえビール置いてただろ?喉が渇いてて、おまけにこっちは女の部屋に上がり込んで警戒されてないかと緊張しまくってるし、その前の日は他の仕事のトラブルでまともに寝てなかったって言うのに...すっかり寝てしまって、目が覚めるともう朝だし、おまえは部屋の鍵も掛けずに寝てるんだぞ?けれども、あんまりにも無防備な杉原を見て戸惑ってしまった。俺のこと疑ってもいなかったんだよな?男がよこしまな気持ちもなく女の部屋に上がるはずがないって言うのに。チャンスだと思ってた披露宴の二次会の時は、おまえの方がしっかり酔って寝てしまうから...俺は全然寝れなかったんだぞ?ドレス皺になるだろうからって脱がせて、でも手出せなくて...マジで寝てるとこ襲ってやろうかと思ったぞ?」
「嘘っ...」
夜中寒かったから抱きしめさせてもらったと付け加えられたけど...
課長もやっぱり男の人だったってこと?奥さんが居てもそんなこと考えちゃうんだ...
でも、いい。今日は、あたしもそのほうがいい。
「行くぞ。」
そう言うと、あたしの肩を抱いて課長は歩き始めた。
ぐるぐると歩き回る。どうやら入れるところを探してるらしかったけれども、満室の看板を見ては課長は舌を打つ。なんだか課長が焦ってるようだった。まあ、あるわけないよね?イブだし。
いつのまにか会社の近くまで帰ってきていたらしく、近くに社の看板が見えた。


課長の車に戻っていた。あたしの部屋にでもと思ったけれども、課長のキスはまだ少しお酒の味がするほどで、運転は無理っぽかった。
広い駐車場の端の方に止められた課長の車他にはほとんど他の車の影はない。週末なので車を置いて帰る社員もいないようだった。
「朱音...いいか?」
再びキスを求められて、助手席のシートに縫いつけられていた。さっきよりも熱を帯びた課長のキスはどんどん深くなる。シートが倒され、狭いシートに課長の身体が重なってくる。すごい密着感だった。
「んんっ...」
服の上からあちこちに触れる課長の手...あのきれいな手が自分を求めてくれていると思うだけでも高ぶっていく。キスが唇を解き放ち耳元に移るとあたしは身体を震わせた。
「あっぁん..」
自分でもそんなところが弱いなんて知らなかった。何度も耳の辺りから首筋を攻められると身体から力が抜けていく。
快感を知らないわけじゃない...
たとえ経験はなくても、自分を慰めることぐらい知ってはいた。体中がぞくぞくと彼の愛撫に答え始める。
「朱音、可愛いよ、そんな顔するんだな。もっともっと見せてくれ、本当の朱音を...」
あたしは喘ぎ声で返事をする。もうなにを言葉にしたらいいのかもわからない。
スーツの前をはだけて、胸の蕾を丹念に嬲られ、そっとつままれたときには大きく喘いでしまった。自分で軽く触れるのとは快感の度合いが格段の違いがある。胸を攻め立てながら課長の手が太ももの辺りを彷徨いはじめる。スカートをまくり上げながら下着のラインをなぞりながらもストッキングのうえから、そっとあたしの秘部に触れる。何度も何度も遠慮がちな動きからゆっくりと焦らすような動きにであたしは思わず腰を動かしてしまう。そのまま下着の中に滑り込んだ課長の指が、あたしの濡れた泉を見つけ、そっと触れながらもかき混ぜる。
「あっ、あ...やぁんっ...」
「濡れてる...朱音、もういいか??」
もういいかって、車の中でこのまま?...まさか?
「あっ...かちょ...俊貴さん、あのっ、こ、ココで...?」
「悪い、どこも空いてなかったからな。だが、もう、我慢できそうにないんだ。俺がこんなにも余裕がないなんて、な...それに朱音ももうこんなに濡れてるじゃないか?」
濡れてるけど...でも...
水音をたててかき回される。まだ浅いところだからいいけど、それよりも奥は、怖い...
「あっん、で、でも...」
怖い...こんな狭いところで?どうすればいいんだろう...まさか今更初めてだなんて言えないし...
「もう待たない。我慢しない...俺はもう...」
自分自身をこすりつけてくる雄の行動にまであたしは興奮してしまう。あたしも、もう...逆らえない。太ももを動かしてそれに応える。課長はそれをOKの合図ととったのか、ボックスの下に入り込んであたしのショーツをストッキングごとずり降ろした。
「あっ、やぁっ...」
いきなり押し開かれたそこを課長が暗がりの中でじっと見つめる。課長の吐息を感じてまた震える。
「ひゃぁ...んっ」
暖かい温もりをそこに感じた。ぴちゃぴちゃと音を立てるそれは車内に淫猥に響き、自分が初めてだなんて事実すら打ち消しそうになる。
「うぐっ...」
「きついな...こんなに濡れてるのに。」
課長の指がゆっくりと押し入ってくる。自分で慰めたことはあっても、何かを挿入したことなんかない。怖くて、それは出来なかったから...
与えられる快感に身体が上り詰めていく。自分で慰めたことのある部分をきつく吸われた瞬間、身体がびくんと麻痺するようにはじけていった。
「朱音...イッたのか?」
いつの間にか目の前に課長の顔があった。かちゃかちゃとベルトの外される音、開いたまんまのあたしの中心に何かがあてがわれる。
「可愛い...もう、待てない。このまま入るよ...」
このままって?
「あぐっ!んっ」
裂けるような痛みが下半身を貫く。一気に奥まで課長のものが入り込んできた。
「き、キツイ...朱音、力を抜いて...」
「やっ...あっ...」
「駄目だ、そんなに...ううっ」
彼の腰が激しく動き始める。あたしの身体も激しく揺れる。車ごと犯されているような激しさだった。
「やっ、う、動かないでぇ...」
涙がにじむ。我慢できない痛みではないけれども、今はその衝撃が大きすぎた。
「うっ、止まらないんだっ...こんなに焦らしたのはおまえだろう?それにこんなにきつく締められたら、もう...」
「あぐっ...んっ、ああぁっ...」
痛みが徐々に薄れていく。その代わりに沸き上がってくる快感に身体が踊る。
「ああ、朱音っ、うっ...もう...」
「ああっ!」
不意に引き抜かれてなま暖かいモノがお腹の上に吐き出された。


放心状態のあたしは指一本動かせずに、車のシートに沈んでいた。
「...朱音?これ、まさか...」
後始末をしていた課長が気づいたようだった。赤く濡れたその部分を凝視する。あたしの初めての印。まさかって、そうだよね、普通思わないよね...
「あの、ご、ごめんなさい...あたし...」
「まさか...いや、そうなんだよな...」
「ごめんなさい...」
「謝らなくていい!それならそうと言ってくれれば...いや、言えなかったんだよな、朱音は...」
ぎゅっと抱きしめられた。そうして優しく髪と額、まぶたと順に優しくキスをして、最後に本当に優しいキスが唇を塞いだ。
「知っていたらこんなところではしなかった...もっと優しくしてやれたのに...」
優しく髪を梳かれる。そっと衣服を直され、あたしは目を閉じた。
コレでいいんだ。一晩だけのことだし、課長は十分優しかったと思う。そりゃ激しかったけれども、それはそれで思い出になると思った。あんまり優しすぎる思い出だったら、また勘違いして求めてしまうから...これっきりにしないと。不倫なんてしたいわけじゃない。たまたま抱かれてもいいって思ったのがこの人だっただけなのだから。この先続ける気はないし、きっと課長だって驚いてると同時に面倒だって思ってるはずだ。よく言うじゃない?処女は面倒だって。
「いいんです。これで...」
いい思い出になる。あたしもこれで重い足かせを引きずって動かなくてもいい。これからはもっとフットワーク軽く仕事も人生も楽しめばいいのだ。
課長に、俊貴さんにこんなあたしを抱いてくれたことをお礼言わなくっちゃ。それから、さようならって、奥さんのところに帰ってあげてくださいって。
あたしはもう何ともないです。今夜のことは胸の中にしまって、誰にもいいませんって...
あたしはあなたの部下に戻ります、と。
そう告げようとしたのに、あまりの身体のだるさに、目を閉じたまま眠ってしまっていた。

         

クリスマスイブ、さて後残すはクリスマスだけ...
とうとう不倫しちゃった朱音。どうするんでしょうか?