創子 |
「いや、まあ、悔しいけどあっちが正論やからなぁ。よっしゃ!こうなったら11月の学園祭にはなんとしても舞台やるからな!手の空いてる先輩方に手伝どうて貰うて、キャストは公募するからな。」 |
星那 |
「公募?」 |
創子 |
「そうや、舞台に出てくれる人を応募するんや!部員は規約じゃ掛け持ちやと人数に入らへんけど、舞台にはようさん人がいるからなぁ。女の子は何とか友人どもを口説き落とすとして、問題は男性やね…やっぱ演目は<ロミオとジュリエット>しかなわ!前にやっとるから舞台装置も衣装もそろてるし、おまけにあの作品は歴代主演カップルが結ばれてるから評判いいんよね!もちろんジュリエットは星那やから!あんたの相手役を中心に募集するからな!」 |
星那 |
「え?でも、創子ちゃんがロミオでしょ?」 |
創子 |
「なんでや!あたしとあんたが抱きおうたっておもしろないやろ?それより星那はこないだのベル役が可愛い、健気やゆうて、無茶苦茶評判よかったやろ!結構男性ファンついてるねんで!星那がジュリエットやったら絶対応募が多いと思うねん。」 |
星那 |
「え〜やだよ!あたしがロミオやりたいぐらいなんだから!」 |
創子 |
「あんた自分が判ってないなぁ…普段の星那は元気で男の子みたいやけど、カツラ付けて化粧してドレス着たら、めちゃくちゃお姫様顔やんか?ロミオは公募、あたしは何役だってやるからさ、演出も何とかしてみせる。だから星那、あんたは餌になるんや!」 |
星那 |
「え、餌っ!?あたしは餌ですか?」 |
創子 |
「そう、餌や。男性共演者を作るためのな!その代わり、星那は舞台が終わった後、出演者の中から誰か一人を選んで付き合うって言うんや。そういう条件やったらぜったいたくさんの出演希望者が集まるはずや!」 |
星那 |
「ちょっと、冗談はやめてよ、創子ちゃん。」 |
創子 |
「星那ごめん、もうそれでポスター刷って貼ってきた…」 |
星那 |
「なによ、え?そのポスターって…出演者求む!ジュリエットはあなたのものに?なによこれ、ひ、ひどいっ!あたしの意志は?どうなるのよ…」 |
創子 |
「それは無視。けどずっと付き合わへんかていいし、ちょっとつきおうて別れたらええやん。星那、今カレシおらへんねんし、応募者の中から好みのタイプ選んだらええんやから、な?」 |
星那 |
「そ、そんなぁ…ひどいっ!」 |
★ ドアを叩く音 |
尊晃 |
「ちょっといいかな?」 |
星那 |
「あ、あの声は…生徒会長?」 |
尊晃 |
「さっき廊下を見たらこんな物が貼ってあったんですがね、何なのかな?これは…まるでジュリエットを餌に出演者を募集するかのごとく煽ったポスターじゃないか?演劇部はそんなまねしないと参加者すら募れないのか?」 |
創子 |
「あちゃ〜、えらいのに見つかってしもた…」(小声) |
星那 |
「う、うるさいわね!なによ!文句言いに来たの?」 |
尊晃 |
「いや…どっちかって言うと、いい話を持ってきたつもりだったけど?その調子じゃ要らないのかな?」 |
星那 |
「な、なによそのいい話って…」 |
尊晃 |
「実は僕が演劇部を潰したい訳じゃないって言うのを証明しに来たんだけど…」 |
星那 |
「もったいぶらないで、さっさと言いなさいよ!」 |
尊晃 |
「そんなに興奮しないで…、ジュリエットのイメージ壊しちゃいますよ?」 |
星那 |
「うるさーいっ!あんなのイメージされてたまるもんですか!」 |
尊晃 |
「実はね、生徒会と演劇部の合同企画として<ロミオとジュリエット>の上演を提案しに来たんだ。でもそれは、広瀬さんが僕のお願いを聞いてくれたらなんですよ。聞いてくれるなら、僕が演劇部に入部してもいいですよ。」 |
星那・創子 |
「「ええーっ!!」」 |
創子 |
「それは願ったりかなったり、是非ともや!生徒会長殿!」 |
星那 |
「創子ちゃんっ!!まってそのお願いって何よ…」 |
尊晃 |
「美女と野獣のベル役をやってから、男性に人気上昇中の広瀬星那さんに僕のカノジョ役をやって欲しいんだよ。」 |
星那 |
「はぁ?カノジョ?」 |
尊晃 |
「ああ、ったく頼みもしないのにうるさいんだよ、女どもが…だから彼女たちが逆らいようのない女の子にカノジョ役を頼みたいんだ。」 |
星那 |
「なんであたしなのよ?」 |
尊晃 |
「広瀬さん、ベル役やってから男性の人気すごいんだよ。キミに張り合おうって子が出てこなかったら、しめたもんなんだけどね。広瀬さんだって、あれ以来男子に言い寄られて困ってたんじゃないの?だったら一石二鳥じゃないか。生徒会の協力で演目はできる、部費は安泰。どう?こんなにおいしい話はないと思うけどなぁ。」 |
星那 |
「うーっ、や、やだっ!」 |
創子 |
「よっしゃ、やらせる!星那にカノジョ役!星那は演技派やからね、きっちり完璧に一条生徒会長のカノジョ役をやらせたるわ。その代わり、今の話し本当やね?ほな、この予算申請書の承諾印お願いできるんやね?」 |
尊晃 |
「ああ、もちろんだ。」 |
星那 |
「ちょっとまって、あたしの意志は?」 |
尊晃・創子 |
「ない!」「ありません。」 |
星那 |
「そ、そんなの、やだ〜〜〜!」 |