「誰でもいいんだな...だったらオレがやってやるよ」
 
そう言ったとたん椎名の目が大きく見開いていた。
オレ自身もそう口にして驚いてる。
オレが、椎奈を抱く?普段なら冗談だって思ってしまう行為だ。オレは椎奈をそんな目で見たことがない。だけど今は...
もし傷ついた椎奈を立ち直せる方法がそれだとしたら、オレは...抱けるかも、知れない。今日の椎奈はオレの目にも十分女に見える気がする。
「オレにしとけ、そんな訳のわからない奴にさせるんだったら、オレでいいだろ?ま、出来るかどうかは、やって見なきゃわかんないだろうけどな。けど、それで椎奈が次にいけるんなら...相手探しに行くまでもない。オレなら無料だぞ?おまけに慣れてるし、後腐れないようにしてやるから。訳のわからん相手にわざわざ金払ってまでさせてやることはない。」
なんだかバーゲンセールみたいなこと言ってないか?オレ、何ムキになってるんだ?だけど、椎奈が金まで払ってほかの男に身を投げ出すのや、それこそ物欲しそうに見られて、そんなたぐいの女と同等の扱いにされるのは我慢ならなかった。椎奈はもっともっと大切に扱われるのに等しい女だ。オレが唯一認める女。好きな男にしか抱かれたくないと言ったのに、最初にあんな目に遭ってしまって、好きになった相手も受け入れられずに、その男に裏切られてしまったんだ。やっと男とつきあい始めたと思ったらその男にも捨てられたりしたら、その原因がセックスできないことだとしたら、椎奈のやけくそになる気持ちもわかる。だったらオレが出来ることといったら、そんな男たちの手に渡すことなく、椎奈に男を受け入れられるようにしてやることじゃないのか?
それはセックスに見えて治療という行為だったら...オレは椎奈の身体を開かせることが出来るんじゃないだろうか?オレなら出来る...椎奈のことを大切に思っているし、セックスの経験も多い。女をその気にさてイカせるのなんて容易いさ。いろいろと仕込まれもしたし、反対に不感症だって言ってた女が感じるようになったことだってある。
その行為が、たとえ藤枝の身代わりだったとしてもオレは構わない。
「工藤、本気?」
「ああ、おまえが本気でバージン捨てに行くって言うんならな。けど、おまえ、本当は藤枝がよかったんだろ...?」
素直に頷く椎奈だった。そっか、やっぱりまだ藤枝のことを思ってるんだな。けど今更藤枝のとこには戻りたくないだろう...あれほどオススメしておきながらなんだけど、出来ないからって、こんな夜中にさっさとほっぽりだすような、そんな男のところに戻しもたくない。あいつはオレと少し似たことがあると思っていた。だから大丈夫だって思ったんだが、見当違いみたいだ。
その代わりオレは一つだけ条件を出した。これはきっと椎奈も同じことを思ってるだろうこと。
「オレは...親友の椎奈を失いたくない。だから、そうなっても俺たちはトモダチだ、それはかわらない、一生な。」
絶対に譲れない条件。それに椎奈は頷いた。やはりオレと同じ気持ちだったんだな。椎奈だって知らない男よりオレがいいよな?オレなら最初っから発作でないし...かなりマシになったといえ、きっとオレが一番椎奈が安心できる相手のはずだ。
「まかせろ、ちゃんと感じて、次に男に抱かれるときちゃんと身体が反応するぐらいまでにはしてやるよ。」
「ええ??」
その言葉に椎奈が驚く。まさかオレがやるだけで終わるなんて思ってるのか?そんなの意味ないだろ?治療なんだから、治るまで、だ。
「今日一回でっていうのはちょっときついかも知れないけどな。」
ほんとこいつって何も知らないんだろうな。オレは密かに笑ってしまう。
「でで、でも、その気になんかならないでしょ?あ、あたしなんか相手だったら、ねっ?」
焦る椎奈もかわいらしい。酔ってるせいなのか、目の前であたふたする椎奈がいつもの椎奈らしくなくて、すごく女に見える。可愛い、うん、十分だ。
なにせ一回目は女にとって辛いだけの場合が多い。回数重ねてよくなる場合が多い。だけどその痛いの一回きりにしたら、椎奈が次にするのは半世紀後になっちまう。だったら、おれが、オレの持ってるテク全部使って受け入れられる身体作ってやる。そう考えていた。ある意味その部分だけは男の意地だ。
「できるだけ優しくしてやるから...おまえはオレにとって誰よりも大切な親友だからな。」
だけどこれは治療、終わったらまた親友同士に戻るんだ。椎奈なら大丈夫だ。そう言い聞かせながら、椎奈の身体をベッドに引きあげて優しく囁き、ゆっくりと椎奈の額や瞼にキスを落としていく。瞼までが震えてるのがわかる。なんだかこっちまで緊張してしまいそうなほどの怖がりようだ。その緊張を少しでも解くようにキスを贈る。だけど...
「ここは本当に好きな奴にとっとけよな?」
椎奈の唇はすごく魅力的だった。けれど、唇は本当に好きな人に残しておいてやらないといけない気がしたな。まるで昔の遊女相手みたいなやり方だけど。そう言って唇を避けてキスを続ける。けど唇のキスなしって言うのもちょっと無理があったかな?だいたいアレで意識を飛ばせば後が楽なのに...
ブラウスのボタンをはずし胸と肩先を開いて、そこにキスを落とす。後形はつけないように気をつけながら、首筋胸へと滑っていく。椎奈の肌がやたらと熱く感じる。
「あっ...んっ」
首筋をかすめたときに椎奈がびくっと反応した。
「なんだ...結構敏感じゃないか。不感症ってわけじゃないんだな?」
そのまま胸まで降りていく。ピクピクと反応し始める椎奈のからだ。甘い声が唇から漏れる。意外と感じやすいと思った瞬間、自分の下半身に熱が集まっていくのを感じた。
そうだ、オレここ何ヶ月も女抱いてなかったんだ...ちょっとやばいか?
オレはゆっくりと椎奈の衣服を脱がせながら、触れるか触れないかのタッチで感じやすそうな部分を撫でた。それにすら可愛い反応を示す椎奈。オレの方がたまらなくなってくる。
やっぱりオレも酔ってるんだ。なんか、おかしい...こんなに椎奈がよく見えるなんて。
ネクタイを取り、シャツを脱ぎ捨てるとまた椎奈に覆い被さる。下半身の熱を考えると当分脱げそうにない。見たら...引くだろうな、絶対。
椎奈がオレを揺れる視線で見つめていた。何をされるか不安なんだろう。オレは出来うる限り優しい余裕のある声で椎奈にささやく。
「目を閉じて好きな奴を思い浮かべててもいいぜ、大丈夫、ちゃんと気持ちよくしてやるから...」
椎奈はゆっくりと目を閉じてオレのなすがままになっていった。考えてるのは藤枝の顔か?それとも章則?少し意地悪がしたくなる。脇腹や首筋、背中などの感じる部分は集中的に責める。こんなとこが感じるなんて椎奈自身も知らなかっただろう。
そうして全身をまんべんなく愛撫しても、一番敏感な部分には一切触れない。椎奈は指入れられることを極端に恐れているから。だから舌とかでイカせなきゃならない。
「やっ、ん...」
椎奈の息が荒くなっていく。
綺麗な身体だった。学生時代鍛えてただけあってほどよく締まっている。あの頃は日によく焼けて小麦色してた肌も、運動しなくなってから元に戻ったのか、開いた胸は信じられないほど白かった。さくらんぼ色した胸の実に何度も口づける。そのたびに震える身体。愛しさがこみ上げてくる。後で親友に戻るとしても今は...早く椎奈の女の部分を味わいたいと思ってしまう。
「あぁん...はぁはぁ...」
胸の先を軽く噛むと椎奈の声はますます高くなる。その声が、その顔がオレを夢中にさせていく。
だめだ、治療だっていうのに...
セーブが効かなくなっていく予感がする。オレってほんと女なら誰でもいいだった。なんか情けないっていうか、椎奈に対して悪いような気がする。オレはあんまりきれいじゃない...
自分が追いつめられていくのを誤魔化すように椎奈に快感を送り続ける。初めてでも十分感じるように、優しいけどやまない愛撫。
あられもない格好をさせながら隅々までキスを贈る。足の先までも大事に触れる。自分のしてる格好を見ては椎奈は身体をよじって逃げようとするけど俺は離さない。
くすぐったがりの椎奈には辛い所作だったかも知れない。
「く、工藤...あっ、もう...おかしいよ...身体が変になるっ...工藤ぉ...」
とうとう、その最中に椎奈が切ない訴えを声にした。
オレの名を呼ぶ声、なんだかな...その呼び方は普段の椎奈を思い出させちまう。長年そう呼ばせてたんだが。
「圭司って呼べよ、今だけでも、な?椎奈...」
「やぁ...け、圭司...」
オレの愛撫に答えて激しくあえぐ椎奈。すげぇ色っぽい。いつもの椎奈と全然違う。オレの方が溜まらなくなる。
「椎奈って...こんな顔するんだな...」
その顔を見つめながら今まで決して触れなかった部分、椎奈の膝を割る。
「ふぇ...何...やだぁ、そんな...っ!!」
太ももを何度もさすり、唇を流していく。最後にその付け根にたどり着きそっと唇で触れる。一瞬逃げ出すように身体を動かすが、がっちり掴んで動かせない。
椎奈は触ったり指入れたりするのを怖がっているけど、きちんとぬらしておかないと痛くてとても出来ないだろうからね...だけど、少し湿ってる?いや、濡れてるかも知れない。溝に沿ってなんどか舌を往復させるとわずかに彼女の味が染みてくる。ゆっくり、恐怖感を味あわさないように、何度も触れるだけの愛撫。椎奈の腰がうごめくのを見て、オレはその上にひかる敏感な蕾に優しく触れた。びくんと大きく揺れるからだ。何度も優しく舐めては軽く吸い付いた。
「ひゃぁうっ...くぅ...」
甘い椎奈の声。くらくらするほど可愛いらしい。いきそうになってきたのか下肢を震るわせ軽く硬直し始めてる。身体を桜色にして可愛い声で鳴いている。なんだか必死で我慢してるみたいだ。
「一度、イケばいい。そうすると、少しは楽になるし、痛みもましになるだろうからな。」
そう言って蕾を重点的にせめて、最後にきつくそこを吸い上げた。
「ひゃぁっんっ!!」
背中を大きく反らして、椎奈が果てる。しばらくはびくんびくんと身体を硬直させて震える。オレはそんな椎奈が愛しくて、身体ごとしっかりと抱きしめた。
「いったみたいだな...初めて、だろうな...こんなに震えて。」
何度も額や瞼にキスをする。落ち着いて見せてるが、実はもうこっちも焦れていた。早く、この椎奈の中に入り込んでみたい。
「あ、あたし...イッたの?」
目に涙さえ浮かべて、椎奈はオレの腕をきゅっと掴んでいた。なんか...だめだ、オレの中に愛しい気持ちがふくれあがってくる。今まで身体を合わせた女が果てるのを見て、可愛いとも思ったしそそられもした。だけどこんな、こみ上げてくるようなこの感情は何だ?やっぱり、大切な女だからか?だめだ、これは治療なんだ。三度自分に言い聞かせる。
オレにすり寄ってくる可愛い存在。椎奈の頬を何度も優しく触った。
「ああ、おまえのイクとこって、すごく可愛いな...なんか子供に悪い遊び教えたような気分になるよ。」
こいつはほんとに無垢なんだ。教えるがまま覚えていくみたいで、オレみたいなのでほんと、よかったんだろうか?
「なん、で...?」
「おまえほんとになんにも知らない身体だったんだな。誰にも最後まで許せなかったぶん、すごく綺麗なまんまだったんだって思ってさ。ほんとにオレでいいか?」
「圭司さえよければ...このまま、して...」
うっ、そんな言い方しちゃやばいだろ?あれ、椎奈、目閉じるなよ?寝そうなのか?
「おい、椎奈、寝るなよ、これからなんだからな。」
椎奈がくったりと眠りに落ちようとしていた。かなり飲んでるからな。けど...オレはもう止まらない。
「え...?」
「オレも結構辛い...」
オレはようやく自分の下半身につけていたモノを脱ぐ。熱を持っていきり立つ自分自身を解放しても、なるだけ椎奈には見せないようにして、身体を近づける。
「なんで?」
「おまえ、反応よすぎだ。」
そう言って椎奈の膝の間に身体を押し込んでゆっくりと椎奈に自分を擦りつける。オレだって平静でいられるはずがないんだ。あんな可愛いとこ見せられて、身体が椎奈を求めて暴走してしまいそうだ。こんなはずじゃなかったのに...治療、だったはずだ。なのに...
オレの唾液と彼女が潤わせたわずかな湿りとで準備をすませる。避妊具を付けようかどうか悩んだ。ふつうなら絶対つけるべきところだ。その代わりちゃんと指で慣らしてほぐしてから挿入させる。だけど椎奈の場合、今はそれは出来ない。だからおそらく濡れてはいるだろうけれども、不十分な準備のそこに、少しでも抵抗を少なくして入るにはそのままがいいだろう。つけたらたぶん潤おわない彼女の中は引きつれて痛いだろうからな。最初だけ、膜を破ったら、後はすぐにつけてするから。そう思っていた。椎奈の体温もやたら高いし、大丈夫だろう...
椎奈の身体に力が入る。やっぱり怖いだろうな。
「目つぶっててもいいぞ。それが怖かったらオレを見てろ。痛かったらオレにかみついてもいいから、とにかく息を吐くんだ。おまえは息を吸うなよ?いいな。」
発作のことがあるからな、極力気をつけ無いとダメだ。けどさっきイッタしな、大丈夫だろうと俺は思っていた。
「椎奈、力抜いて...」
「や、やだ...怖いよ、工藤、怖いよ...」
「やめて欲しいか?」
それでも怖いと子供のように口にする。呼び方もとっさにまた工藤に戻ってる。仕方ないだろうけど...
「悪いけどオレももうやめられない。怖くないから、オレを信じろ、いいな?」
頷きながらしっかりと開いた目でオレを見つめる椎奈。潤んだ目がオレを求めてるようにも見える。
しっかりと膝を広げ、膝裏に腕を入れるとゆっくりと椎奈の中に入っていく。
狭いな...
震える椎奈の身体をしっかりと抱きしめて最後につっかえてるモノを破り一気に奥まで貫く。
「あああぁっ..ぎゃっ、痛いっ、ぐっううっ...痛っ、あがぁっ...」
すごい声だ。よほど痛いんだろう、けどこっちはもう天国だ。
はぁ、すげ、締まる...処女ってこんなにきつかったっけ?早めに抜かなきゃやばいけど、すぐに動くと痛いだろう。オレはしばらく動かないでじっとしていてやった。
「ひっ、け、けいじっ...ひっ!」
椎奈がオレを呼ぶ。激しく喘いで...動きたい。いっそのこと激しくこすりあげて昇りつめたい欲求に駆られる。
「あっあっ...ひっ」
様子が変だった。呼吸がやたらと荒い。椎奈のそこがきつくオレを締め付ける。うわぁ、たたまんねぇ!!
「う、動くな...し、椎奈...くっ」
少しでも椎奈が動くと暴発しそうだった。すごい締め付け。ただでさえオレ溜まってるのに...やばい。急いで引き抜こうとするけれども、おい...
「圭司...っひっ...」
これは...発作か?きつくて抜けないぞ?おい...
「椎奈、だめだ、息を吸うな、吐けよ!うっ、そんなに、締めるなっ!おいっ...くうっっ」
「ひっ、ひっ、やっ...ひっ、もっ...ひっ」
焦るが椎奈はイキそうな表情で身体を反らす。やばい、やばい、やばい!!
「だめだっ、椎奈っ抜けない、くっ!!くそっ」
キスはやめておこうと思ったけれども非常事態だ。オレは椎奈に覆い被さり、唇をこじ開け、鼻をつまんで息を送り繰り込む
「んんっっ!!」
椎奈が苦しげに呻く。椎奈がまた身体をきつく震わせた。
だめだ、堪えきれないっ!!
突然腰から上に上がっていく快感からオレは逃げられなかった。
 
我慢しきれなかったモノがどくどくと椎奈の中に流れ込んでいく。
だめだと思っても止まるものじゃない。椎奈は、無意識にオレのモノをきつくきつく締め付けて、キスの反動で身体をくねらせて...
「うっ、くうっ!」
オレは眩暈するほどの快感で身体を震わせて椎奈の上にぐったりと身体を落とした。結局椎奈にイカされてしまったんだ...
「ご、めん...」
だけど、オレはとんでもない失敗をしてしまったんだ。
「まさか、イカされてしまうなんて...初めてでろくに濡れてないのに、ゴムはかわいそうだと思ったんだ、けど...だから吸うなって、いった、だろ...っ」
苦しげにそう伝えると、すぐにまた息を吹き込んだ。椎奈が元に戻るまで何度も...
椎奈のからだがゆるむ頃、椎奈は深い眠りに落ちていた。オレのモノを身体の中に残したまま...オレも動けないほどの脱力感でそのまま眠りに落ちてしまった。
 
 
不覚だった。中出ししてそのまま寝てしまうなんて。オレって最低かも...けどあの快感の後、酔いも助けて睡魔が襲ってきたんだ。椎奈なんか気絶に近い症状だったし...
目が覚めて、まずやばいと思った。椎奈から抜け出ていたものの、行為の後そのまんまの格好...そっと暖めたタオルで椎奈をぬぐってやるが、一向に目を覚まさない。手早く処理して、バスタブに湯を入れる。普段はシャワーばっかりだが、椎奈は風呂に入れてやらないとな。
だけど、何であんなによかったんだろう?
オレたちはこれが終わったらまた親友同士に戻るんだぞ?
だけど今目の前に居るこの女が無性に愛しい。身体を繋げるとここまで気持ちが変わるモノなのか?今までこんな感情味わったことない。
いや、きっと、大事な親友だから、大事な気持ちがほかの女と違うからだろう。それに今だけだ、きっと今だけ、こんな感情は...
再びベッドに戻って椎奈の横に滑り込むと子供みたいにすりすりと寄ってくる。椎奈は暖かかった。オレはそっと腕の中に閉じこめた。大事な宝物のように。
 
「ん...」
「目、覚めたか?」
目を開けた椎奈は慣れないのか驚いてあたりをきょろきょろ見回している。
「く、工藤...」
名前で呼んでくれるのは、してる間だけのようだな。もうしばらくは甘い関係でいたいと思う自分が居る。だから、そう呼ばれるとさっさと親友同士に戻らないといけない気がするじゃないか?
椎奈も昨夜の行為を思い出したのか、オレの顔を見ては真っ赤になってる。オレもまた昨日の自分の失態を思い出して妙に恥ずかしくなる。こんな失敗今まで一度もしたこなかったんだからな。千里に上に乗られて好きにされたことはあったけど、ちゃんと下から突き上げてイカせたのは間違いなかった。どんなことをされてもそこそこコントロール出来てたはずなんだ。だけどあれは、昨夜のは...俺はつい怒った口調で椎奈に言った。
「おまえ、あれはないだろ?あんな時に痙攣起こすなよ...いくらオレでもあの締め付けに持たなかっただろ?ただでさえ...」
溜まってたのに...そんなことは言えなかった。だけど...
「いや、だから、その、おまえの中にだな...くそっ、ごめん!」
その様子を見てか椎奈はくすりと笑ってオレを見ていた。こいつのすべてを許すような笑顔。オレは何度その笑顔に救われたか...
だめだ、椎奈がめちゃくちゃかわいく見える。まだ酔ってるんだろうか、オレは...
その後椎奈を風呂に入れてオレは簡単にシャワーを浴びてベッドに戻った。
椎奈は俺が中に出したことの重大さに気がついてるんだろうか?心配になって聞いてみたら、どうやらもうすぐ生理がくるらしい。体温も高かったから大丈夫か...
 
椎奈はバスルームからなかなか出てこなかった。まあ、女ってそう言うもんだろう。けど今日はやたらと出てくるのが待ち遠しかった。昨夜のことを思い出せば思い出すほどあの快感は唐突で深く、オレを煽り続ける。下半身にまだ熱が残ってるようだった。
まだだ...まだちゃんと椎奈にセックスの良さを教えていない。昨日はオレが一方的にイカされただけだ。押さえきれない身体の熱、これからの時間を考えて逆上せたようになる。まるでセックスを覚えたてのガキみたいだな。一人そう愚痴てみる。
「大丈夫か?」
バスタオルを巻いて出てきた椎奈を見て胸が鳴った。さっきまで見てた裸なのに、今から自分がしようとしてることを考えるとしょうがないんだけど。
「なあ、椎奈。」
「なに?」
ベッドの隣に座らせて彼女の方を見る。なんだか目が赤いのは気のせいか?
「オレとしちゃすごく不本意なんだけど...こんな結果。おまえにイカされてこれで終わりって言うのはな...それに結局おまえ発作おこしちまって...次ぎに発作起こさずえっちする自信あるか?」
真剣に聞いてみせる。椎奈はもちろん下を向いたまま首を振る。
「だろ?まだ気持ちよさとかわかってないだろ、やっぱり...」
「な、にいってるの、工藤...?」
「おまえ、今日は休みだっていってたよな?だったら時間はたっぷりあるな。」
オレは椎奈の腕を引いて再びベッドに組み敷く。まだ濡れたままの髪、オレと同じシャンプー使ったんだよな?だけどなんだか違う、すこし甘い香りがする。
「ちょ、ちょっと、まって!」
「またない。」
髪にキスして、額にキスして瞼に、それから今度は唇に重ねる。
甘い唇、キスだけは少し慣れてるらしくオレを受け入れるために少し開かれる。すぐさま舌を絡めてきつく吸い上げる。
もう止まらない。この唇、結局味わってしまった。一度も2度も同じだ...だけど、人工呼吸じゃないキスはこれが始めてかも知れない。このキスはオレが椎奈を求めてるキスだってこいつは気づくだろうか?
「椎奈っ...」
何度も角度を変えて深く絡める。もう一度、今度はちゃんと、最後までゆっくり味わいたい。その思いでいっぱいになっていく。今日だけのこんな関係なら、だったらなおさら...
「ううっん...」
椎奈の唇の隙間からくぐもった声が漏れる。再び愛撫を開始する。
昨夜よりはもっと、もっと感じさせてやりたい。そしてもっと、深く、長く繋がりたい。
オレはもうおかしくなり始めてる。これはもう治療なんかじゃない、オレの欲望だ。
だけど椎奈にそれを悟られちゃいけない。そんなことすればもう二度と椎奈には触れられないだろうから...許されるのが今日一日だけなら、この一日が終わるまで、ずっとずっとこうしていたい。
 
 
椎奈の身体のあちこちを柔らかく触れながら、耳たぶを甘噛みして、首筋を舐める。
「やぁ...んっ」
「椎奈、ほんと感じやすい?そう言えばおまえってやたらくすぐったがりだったっけ?」
反らした背中に指を這わせる。腰のあたりまで降ろして何度も往復させる。そこを責めると反応しっぱなしだった。
「やぁ、だめっ...もう、十分だから...く、工藤...」
だめだ、照れる...いつもみたいに呼ばれるとかえってどきっとする。
「圭司って呼べよ...でないとほんとに親友とヤッてる気分になる...」
「もう、いいよ、あたし...これ以上は...」
「オレの気が済まないの。イカされたまんまじゃかっこわるいだろ?それに、痛いだけじゃなくて、もっと気持ちいいって教えてやるよ。」
「嘘っ、やだ、初めてだったのに...そんなの無理だよっ!」
半泣きの椎奈の顔は嫌がって瞳を潤わせているのか、それとも感じてそうなのか...その答えは身体に聞いてやる。
「大丈夫、おまえ感度いいから次からすごくよくなるって。」
「いやぁ...あっ!」
バスタオルを抜き取って椎奈を見下ろす。
「なに...見ないでよ、あたし綺麗じゃないから...」
そうだった。椎奈って女としての自信はこれっぽっちも持ってない。だから女を武器にしたりしないんだけど、けどどうしてこの身体が綺麗じゃないって?
「いや、綺麗だよ...この筋肉の付き方とかな。けど高校の時に比べると筋肉落ちたんだな、凄く女らしい体型になってるよ。」
こんなに女だなんて、昨日はゆっくり見る余裕オレにもなかったな。
「見ないで、ほんとに...工藤の知ってる女の人たちみたいに綺麗じゃない...」
「何言ってるんだ?椎奈は十分綺麗だぞ。これなら、これからも他の男達が放っておかないさ。」
今のオレには誰よりも綺麗に見えるのに?
「嘘っ!」
「嘘じゃない。おまえにお世辞言ってどうするんだ?」
ったく、やっぱり身体にわからせなきゃダメか?岡本も、章則も藤枝だっておまえを欲しがったはずなのに、何でそんなに自信が無いんだ?オレをこんなに狂わせるほどなのに?
「ああぁっ!やぁっ、圭司っ!!」
女みたいに拗ねるその表情が可愛くて、オレは再び身体を重ねる。こうなったらもう、徹底的に感じさせて、言葉を贈って、自信をつけさせるしかない。
それから何度も椎奈に快感を送り込んでいく。思わずこっちが溺れそうになるほど、椎奈の身体は甘く反応し続けた。覚えたばかりの快感を飲み込んで何度も頂点を上っていく。そこから降りてくる前に、再び繋がる。そのときは最初からキスをして離さなかった。オレたちの呼吸は混ざり合い、甘く溶けて、今度の繋がりはゆっくり、ゆっくり、なじませるように、長く長く椎奈の中を味わった。椎奈が感じる部分を突き上げながら、敏感な蕾に手をやると椎奈の中はオレを離さなくなる。
「椎奈、おまえは可愛いよ...ここもここも感じやすくって、すごくいい...自信を持つんだ、おまえを欲しがる男はやまほど居るよ。その中から一番好きな男を捜せばいいんだ。」
そう何度も囁いたが椎奈は意識が飛びかけてるのか、涙を流してその快感から逃げようともがき、逃げ切れずに捕らわれ、いい声で鳴き続けた。
今度はしっかりオレのペースで、ちゃんと避妊もしながら、オレは薄いゴムの壁を隔てて椎奈の中にすべてを解き放った。
椎奈はオレに何度もイカされて、昼過ぎにはぐったりとしてしまっていた。
ちょっとやりすぎたかもだな。椎奈も女にしては体力がある方なのに、しまいには指一本動かす気力もなくなるほどだったと思う。オレも、脳天がしびれて、最後に椎奈とともに頂点を迎えたときは目の前が真っ白になってしまった。
こんなすごいの、オレだって初めてだった。
 
「椎奈...腹空かないか?」
「ん...もう、動けない...」
仕方なしに宅配ピザを注文して、床においた。
ここまでやっといてどんな顔していいかわからなくなる。それは椎奈も同じか...
「おい、ピザ来たぞ。少しは食べなきゃ身体持たないぞ?」
ようやくベッドから這いだそうとして、椎奈は着るものがないのに気づいたらしく、シーツを身体に巻いたままきょろきょろしている。そばに落ちていたオレのYシャツを渡すと大人しくそれを着込んだ。
「冷めるぞ...」
けだるい動作でオレのそばに座り込む。今にもくったりと倒れ込みそうなほどの弱り方だ。二人で18インチを平らげると少し元気が出てたのか、椎奈がコーヒーでも入れようかと立ち上がった。
「えっと、何がどこにあるのかな?砂糖とミルクは?」
オレはそばまで行ってコーヒー豆とサイフォンの場所を示す。
「おまえブラック飲めないもんな。」
「飲めるけど、美味しくないもん...」
オレは冷蔵庫から牛乳をボンと取り出して目の前に置く。
「あたしカフェオレにするわ。鍋は?工藤。」
場所を教えると、取り出して火にかける。その所作をずっと後ろから見ていた。
エロイな...
オレのYシャツしか着てない椎奈。いつもひっつめてる髪はルーズに落ちている。化粧のとれた素顔の椎奈は高校時代と変わらないようにも思う。けど、違う。今目の前に居る椎奈は...
「きゃっ」
オレは無意識に椎奈を後ろから抱きしめていた。ミルクパンの火を止めた。
「やだ、なにするの?」
「椎奈の教育」
「も、もういい...もいう十分だってばっ!やっ、これじゃ、あたし、おかしくなっちゃう...工藤...」
「名前で呼べよ...今だけなんだから、椎奈...」
「...圭司...」
ほんとに狂いかけてる...今は椎奈が欲しくて溜まらない。この後オレの手を離れていくって思うとなおさら離したくなくなる。すごい独占欲がわき出て、オレは無節操に椎奈の身体に手を出している。オレは立ったまま椎奈の下着の中に指を滑り込ませた。すでに熱くぬかるんでる気がする。
ここはもう大丈夫だろうか?そのままそっと指を侵入させる。
「ああぁ...っ」
水音とともにオレの指先は飲み込まれる。昨日まで男を知らなかった椎奈。男とのセックスに恐怖感を持っていたその彼女が今恐れていた男の指を受け入れて甘い声を漏らす。
「もう、大丈夫だな、椎奈...」
オレはおゆっくりとその中を味わうように指を出し入れする。椎奈はちゃんと感じてる、怖がってない、だったらオレのやったことは間違いではなかったってことだ。
「うっ...」
「椎奈?」
急に涙を浮かべて嗚咽を漏らす椎奈。何で泣くんだ?オレは指をそっと引き抜いた。
「ごめ...ん、もう大丈夫だよ...あたしは、もう、怖くないよ。男の人も、セックスも、全部...圭司にいっぱい勇気と優しさもらったから...」
オレは椎奈をぎゅっと抱きしめた。この椎奈をいずれほかの男が抱くのか?
「次はほんとに好きな奴と、出来るか?」
「...うん、出来るよ...」
そうだよな、オレは親友で、今回のは治療だったんだ。もう何度もそう言い聞かせてるのに、オレは、オレの身体は...
「そっか...な、椎奈?」
「ん?」
「もう一回、もう一度だけ、抱かせてくれ...それで親友同士に戻ろう。」
まだ椎奈を欲しがってしょうがないオレの身体。拒否されると思ったけど、椎奈が頷いたのを見て、オレはそのまま抱き上げてベッドに戻った。
何度も交わってぐしゃぐしゃになったシーツの上にまた椎奈を降ろして椎奈の中を何度も指でかき混ぜた。その上の蕾を指の腹でこすると椎奈が軽く背をそらせる。ひくひくとうごめくそこから指を引き抜くと再びその中に入り込んだ。一つになってはぁと大きく息を吐き出す。
椎奈の中がこんなにいいなんて...ずっとそばに置いて、交わりたい。そんな考えをふと抱く自分が居た。
いや、自分は藤枝や章則の代わりでしかないんだ。だから今だけ...そう自分に言い聞かせながらゆっくりと動き始める。
「やぁっ、ああっ..んっ、圭司...圭司っ!」
「こんな、いいなんて...椎奈っ」
次第に動きが速くなっていく自分に酔いながら、オレは何度も椎奈の名前を呼んだ。
「椎奈、椎奈っ!」
「あっ、ふっう...け、いじ...」
いつの間にか椎奈は泣いていた。泣きながらオレの首に腕を絡め、オレに身体を擦りつけて何度もキスをねだった。オレは次第に苦しそうに喘ぐ椎奈のためにその唇をふさぎ、強く抱きしめたまま椎奈を突き上げた。
「あうぐっ...」
オレに声を塞がれたまま椎奈は身体を痙攣させてイッた。おれもほぼ同時に椎奈の中で果てた。薄い壁を隔ててることが寂しかった。
 
オレは椎奈の温もりを腕の中に感じながら眠っていた。
この新たにわいてきた感情を、どう処分しようか考えながら...目覚めたとき椎奈になんて言おうかなんて思っていた。
だけど目覚めたとき隣に椎奈の温もりはなかった。
ただシーツに椎奈の香りと初めての証だけ残して...
 
携帯のメールに入っていた文面をみてオレたちは親友に戻った。
 
<ありがとう、やけ酒に付き合ってくれて。もう立ち直ったよ。あたしは大丈夫だから。またみんなで飲もうね〜  親友の椎奈より>
 
オレは、返信できなかった。
しばらくは会うのも怖かった。会えばまた椎奈を求めてしまいそうになる。だけど椎奈は親友に戻ることを望んでいるんだ。だったらオレがこの身体の疼きにさえ蓋をすればすむことだ。
椎奈の身体に惚れてしまったのか、それとも...
いや、もう考えるのはよそう。
椎奈は親友、それでいいんだ。
 
 
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〜あとがき〜
工藤編、終わりました〜
次回より最終編、この後の二人はどうなるのか?最終編より3人称に挑戦です。二人の心の行方を描ききれるかどうか...とりあえずお待ちくださいませ♪
 

 

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