「ハウスメイド」出版記念
出版なので出産?
 
 
「ただいま」
と声をかけてもいつもの出迎えはない。
 
「……帰ったぞ」
「あ、お帰りなさ〜い」
 
リビングに入るとようやく聞きたかったその声。
 
「今日も遅かったのね。ご飯にしますか?それとも先にお風呂?」
 
おまえがイイって言いたいけどそれも言えない。
 
「駄目だよ茉悠子さん、お腹が張るって言ってただろう?座ってなさい、政弥の食事の用意ぐらいわたしがしますから」
 
ソファに座ったままの俺の奥さんは現在妊娠9ヶ月目、臨月間近ってやつだから。
 
「そ、そうですか?でも……」
 
甘い声で俺の妻に手を貸してるのは、本日の残業の原因を作った親父だ。そもそもコイツが仕事を押しつけて帰らなければ俺はもっと早くに帰れたんだ!俺が帰るとさすがに茉悠子が親父に甘えることは少ない。それがわかってるから仕事を俺に押しつけても俺より先に帰ろうとするのだ、この親父は……
 
「食事の時ぐらい、一緒にいたほうが美味しいですから」
 
お袋に似た雰囲気を持つこの嫁に親父はメロメロだ。ただでさえ子供好きで子煩悩だった親父は仕事放ったらかしてでも、孫を可愛がりそうで怖い。
 
「そうですか?しかたありませんね、では、そろそろわたしも部屋に戻るとしましょう」
 
「はい、お義父さま、お休みなさいませ」
 
親父が部屋に入るのを見届けると、よっこいしょとオバサンのようなかけ声をかけて、デカイ腹を抱えて立ち上がろうとしていた。
 
「おい、急に立ちあがるな」
 
バランスを崩しそうで怖いので、立ち上がる彼女を支えるために慌てて側に駆け寄った。
 
「ありがとう、政弥さん。今夜の食事は疲れてるだろうと思ってさっぱり系を用意したんだけど、それでよかった?」
「ああ、遅くなったから、あっさりがいいな。それにおまえが作るものだったら何でも美味いだろうからな。」
 
元ハウスメイドだった彼女の作る食事はいつも美味い。妊娠してからも身体がしんどいだろうから無理しなくていいと言っても必ず食事の用意をしながら待っていてくれるのだ。まあ、さすがに12時を回りそうな時は前もって食事はいらないとか、先に寝てていいと連絡することにしている。妊婦って言うのは眠いモノらしく、ただでさえよく寝る彼女は益々しっかり寝るようになってしまった。
そうなると夜に手が出しにくくなる。妊婦であっても、まあ普通に夫婦の営みはあるからな、うちの場合。だから、つい朝の寝ぼけ眼の奥さんに不埒な真似をしてしまうのだ。今朝も……ついな。
 
「なあ、あれから身体は大丈夫だったか?その、俺今朝も暴走しちまったから……」
 
途中までは優しくしてたんだが、溜まっていたのがわるかった。つい我慢出来なくてイロイロとやってしまった。
 
 
まあ、以前は腹のデカイ女に欲情なんてしないと思ってた。それがどうだ、自分の妻となれば腹がデカかろうが関係なくヤリたいと思ってしまう無節操な俺が居た。途中切迫流産らしきものになりかかるまで俺は妊娠中の彼女に無理を強いていたのがバレて医者と親父に咎められた。それから負担かけない体位とか方法をもっと勉強して、茉悠子も……俺を他の方法で慰める方法も覚えてくれた。コレはラッキーだったんだがな。
そのおかげで俺は世に言う妻の妊娠中に浮気する夫なんてものにならずに済んだ。もちろんそのつもりも毛頭無かったが、疑われないほど奥さんで性欲を解消してたわけだ。それでも生半可じゃない俺の求め方を知ってる茉悠子は少々不安だったみたいだった。日に日にデカくなる腹では無理も出来ず、多少我慢と欲求不満はあるとしても、自分の子供が生まれてくるんだから我慢出来るってもんだ。
 
それに、コイツは妊娠中に旦那に浮気されてるから……
 
妊娠中のセックスにも意外と前向きだった。それはたぶん同じ失敗を繰り返したくないという思いからだろう。それがわかっているからこそ尚更外で浮気なんてとんでもない。ただひたすら妻の身体を求める浅ましい夫に成り下がっても、俺は彼女の身体を抱き続けたんだ。まあ、ちょっとは怖いさ。無理させるのも、お腹の中の子供のこと考えるとだな、優しいセックスっていうやつを俺は覚えたつもりだ。労るような愛撫と密着感をゆっくりと味わい、最後は彼女の中で……俺はそれだけでも十分満足してるつもりだったのに。
茉悠子は真剣な顔で『満足してる?もし、出来てないなら……その、』と恐ろしいことを言いかけたことがあった。
まあ俺も必死で回数抑えてたし、アイツの身体の負担にならないようにしてたのを遠慮してると言うよりも不満に思ってると取ったらしい。
 
そんなことあり得ないのに?
 
もう、コイツ以外抱く気はないと、何度も言い聞かせたし実感させたのに。優しいけど淡泊なセックスがお気に召さなかったらしい。勿論挿入回数は減らしてるし、結合時間も出来るだけ短く、つまり不本意だが早漏を心がけてさえいる。これで出産後解禁になったら俺は茉悠子を壊してしまうんじゃないかなと思うほどだ。
とにかく不満に思うなら、遠慮せずにと性欲だけはきちんとぶつけることにした。
昨夜も遅くに帰ったから、先に茉悠子は眠ってしまっていて、そのまま休んだら朝俺の方が我慢出来なくなってたってわけで、朝食の準備はイイからと妻と甘い時間を……まあ、軽くヤッたわけだ。それを親父のヤツ調子悪いんだろうと心配して自分だけ早く帰りやがって、残りの仕事は俺と兄貴に振り分けやがった。現在そんなにいそぐ仕事を抱えてない兄貴はさっさと定時で帰りやがったが、俺は今手がけてる開発プロジェクトから手が離せなかったので今日もこんな時間だ。
 
「大丈夫、よ。でもそろそろやめておいた方がいいんだけど、政弥さんは我慢出来るの?」
 
不安そうな目で見上げてくる懐いた野良猫の目は俺を煽るだけ、理性の箍をはずすスイッチになる。

「そんな目で見たら我慢出来なくなるってわかってて言ってるのか?やっぱオマエが喰いたいって思うだろ」
 
デカイ腹を圧迫しないように優しく抱き寄せてその唇を貪る。腹も減ってるが俺の場合すぐにこっちの欲望が先にでてしまうのだから質が悪い。
 
「んぁ……」
 
唇を離してその顔を覗き込むとのぼせて艶っぽく欲情した女の顔があった。
ここのところ穏やかな母親の顔ばかりしている彼女に少々不満を持っていたのは確かだ。その顔をしてる間は俺の方を見ないし、呼ぶ時も『パパですよ〜』って、俺はオマエのパパじゃねえと言いたくなる時もある。たまには女の顔をさせたくなるってもんだ。
俺のモノだと主張するためにもやっぱ抱きたいんだよな……今も、これからも。
 
 
『子供が生まれるともうそっちばっかで旦那なんて構ってくれませんよ〜』
妻帯者がそう言ってるのを思い出す。それは困るからな!子供産んでも、母親になっても、茉悠子は俺のだから!いかなる方法をとっても、産後俺との時間だけは確保しておかねばならない。産褥期間はセックスも出来ないらしいから、その間は出来るだけ休ませてやって、OKがでたら思う存分……ってヤバイ勃ってきた。
 
「なあ、いそいで飯食って風呂入ってくるから……起きて待ってられるか?」
「う、うん……待ってる」
 
真っ赤な顔して食事の用意をして、俺はさっさと済ませると風呂に向かった。
今朝シタとこだから繋がるつもりはなかったけど、ちょっとえっちな甘い時間を過ごしたいという夫の希望に答えてくれる。
こんな時、彼女は俺のモノを銜えて、恥ずかしそうにしゃぶりながら奉仕してくれる。まだあまり慣れない様だけれども、最近は俺の弱いところを突いてくれる。風呂場で一度抜いてきてるというのに、その顔を見てるだけで込み上げてくるモノがある。茉悠子にはこんなこと一生無理だと思っていたのに、なかなかの進歩だ。産後はぜひこれをメイド服着せてやってもらいたいなどと思ってるうちに彼女の口中に耐えきれず放出してしまった。脳内でメイド服着てたっていうのはナイショだ。
涙目でそれを飲み込みながら、小さな声で『わたしも、欲しいの』なんて嬉しいことを言ってくれちゃって、その後は舌と指でこっちが奉仕していい声で鳴かせたのは言うまでもない。
 
 
出産予定日が早くなったら、俺のせいなのは間違いないだろう。
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