2014クリスマス企画

去年のクリスマス〜2014

1  去年のクリスマスは……?(予告編)

2014年12月19日〜パーティ前日

〜俊貴〜

 今年もいつものようにクリスマスシーズンがやってきた。私と朱音にとっては10年目の結婚記念日を迎える。そしてクリスマス当日は、長男聖貴の誕生を祝う日でもあった。その前にいつも行われる恒例のクリスマスパーティも、ここ数年来は社長である亮輔の手配で行われる大規模なものとなっていた。
「本宮部長、明日は1時間前に迎えに行きますね」
「ああ、すまないな。富野」
 今年も平日にクリスマスがあるため、前倒して20日の土曜日に恒例のクリスマスパーティーが開かれることになっていた。取引先も来るので、すでに社内行事的なものになりつつある。
 富野は昨年から秘書課に移り、社長とその妻であり筆頭秘書に復帰した楓のサポート件、子守を続けていた。今年もはやくからパーティの準備に追われていたようだが、さすがに奴も当日は妻や子どもたちを連れて参加する。その日はうちも一緒に車で迎えに来てもらうことになっていた。
 これも例年通りのことだった。うちにまで気を使わなくてもいいのに
『俺がこうやって働けるのは本宮さんのお陰ですから!』
 と言って聞かない。どうやら未だに恩を感じているらしい。まあ、過去に色々あったのは事実だ。(☆過去のクリスマス参照)
『社長の犬というよりおまえの犬だよな、あいつは』
 羽山が呆れてそう言うが、富野は元々人懐っこくて恩を忘れない奴だ。だから……妻の朱音も長く友人として付き合ってこれたのだろう。彼女が一時期こいつに想いを寄せていたことを思うと少々腹ただしいが、富野が馬鹿なお陰で彼女を妻に迎えることができた。かと言ってそのことに感謝するつもりは毛頭ないが。この10年の間、これまで尽くしてもらっている以上の迷惑を被ってきたのだから。
「今年もおまえは飲めないんじゃないのか? たまには私が車を出すから、飲んでもいいんだぞ」
「いえいえ、いいんですって! オレ、当日は現場責任を任されてるんです。だから呑んでなんかいられませんし、本宮さんに送り迎えなんかさせたら妻に叱られますから! 今年は社長に言ってゲームコーナーも作ってもらいましたので、子供達も飽きさせませんからね。 あ、聖貴くんたちの世話は任せてくださいね。夜はうちに泊まることになってますから」
「いたれりつくせりで申し訳ないな。だが、おまえは本当に子供の扱いが上手いから、安心して任せられるよ」
「そう言ってもらえると嬉しいです。本宮部長もたまには夫婦ふたりでゆっくりしてください」
 こういうところはそつがないというか、助かる。こいつの好意で今年はパーティの後、そのまま富野の家に子どもたちが泊まることになっていた。昨年はうちの両親に預かってもらったが、毎年……というわけにもいかない。だが年に一度、夫婦水入らずの夜は妻の朱音とたっぷり楽しむことができるのだ。

 ――――さて、今年はどうしてやろう?

 子供が大きくなってくると、手は離れてもなかなか夫婦の時間を楽しむことが難しくなってくる。
 早いもので、聖貴は今年から小学生だ。少しでも家族で過ごしたくて、休日はできるだけ揃って出かけるようにした。どこか特別な所でなくてもいいからと、近くの公園や川辺に散歩に行ったり、庭でキャッチボールしたりサッカーしたり。聖貴が自転車の補助輪が取れる前は、毎週末その練習に出かけていたものだ。とにかく家族と過ごすのが楽しかった。普段は私の帰りが遅いので、子供達とゆっくり顔を合わすことが出来ないから余計にそう感じた。
 それは夫婦の営みも同じで、朱音も聖貴の登校時間に合わせて朝も早い。平日は無茶なことができないので、休日の前夜は起き上がれないほどたっぷり可愛がることにしている。
「パーティの準備はもう済んでるのか?」
「もちろんですよ。それが僕の仕事ですから」
 富野はお調子者だが使える時は使える。その持ち前の明るさで子どもたちにも大人気だ。社長夫人の楓からはパーティの準備や手配など、ことのごとく任されているらしい。昨年、子供がいて大変そうだったので、富野を使ってはどうかと社長の亮輔に進言しそれが功を奏した。その結果富野は秘書課に移動し社長付きとなった。ある意味出世することになったわけだ。
「それが終わったらねずみーですよ! 部長、楽しみっすよね!」
「おいおい、仕事挟んでいるのを忘れるなよ。前日は社長のお供で会議だろ?」
「あ、そうでした。楽しみのあまり、つい……えへへ」
 今年は24日に有給を取って、23―24日は3家族合同でねずみーランドへ行くことになっていた。
 これもねずみー好きの富野一家のたっての希望でうちが一緒に行くことになり、それに社長が乗っかり……さすがに羽山のところは子供達だけ参加するとのことだった。3家族分のクリスマスお泊り旅行の手配を富野がやり、支払いは社長の亮輔が持つことになった。
 毎年恒例のクリスマスパーティがいつのまにかビジネス色が濃くなり、会社の内外に亮輔を中心にした風間ファミリーが出来るのはいいが、私達のアットホームなクリスマスパーティをなくしてしまったと奴が気にして、その詫びだそうだ。仕事上の付き合いも大切だから、私達はそれでも構わないというのに……気を使わせてしまったが、それも富野が立ち回った結果だ。
「部屋割りは各家族一部屋づつなんですけど、社長のところは麻衣ちゃんも参加することになってるので彼女だけ別に部屋取ったんです。やっぱいくらなんでも社長のとこと一緒だと、良くないかなと思いまして」
 それは、夜のことを言ってるのか? 社長のいとこである麻衣ちゃんが参加することは前に朱音から聞いていたが、亮輔たち夫婦も相変わらずお盛んで、そんな部屋に若い彼女を置いておけないのはわかる。うちだってそうだからな……子どもたちが寝静まったあとはじっくり楽しませてもらうつもりだ。そのため部屋にベッドルームが二つあるコネクティングルームにしてもらったのだから。
「まあ、そうなるだろうな」
「で、行くと思いますか? 麻衣ちゃんの部屋に……大地くん」
 彼女と羽山の長男大地くんがこの春から付き合いはじめたことは、大学に合格した大地くんから報告をもらっていた。正月明けに温泉旅行で悩みを聞いてもらったおかげだと感謝されたが、そんな大したことを話した記憶はない。ただ、自分の親では照れくさい話でも、私には話しやすかったのだろう。人生の先輩として助言できたのならよかった。自分も若かりし頃、会社の先輩やバイト先の雇い主と親しくなってから悩み話を聞いてもらったことがあったから。その後も何度か相談を受けていたが、どうしようもないときに聞いてくる感じだ。
『彼女が怖がっているので、なかなかえっちがきない』と……
 内容があまりにもプライベートなことなので、こいつにも亮輔にも話してはいない。もちろん親である羽山にもだ。ふたりが今どういう関係なのかは、おそらく私がいちばん理解しているだろう。
「おまえなぁ……」
「だってね、彼女とねずみーですよ? 別行動してもいいって言ってるのに、麻衣ちゃんは子どもたちと一緒にいます、なんて言って可愛んだけど。やっぱ夜はふたりっきりでしょう? 羽山さんのところは仕事で不参加だから、大地くんと源太くんは二人部屋なんですよ。うひひ」
 なんだその出歯亀的な笑いは。さすがに羽山たちが今回行かないのは、子供達と何度か行ったことがあるからだと言ってはいるが、社長と私がいない上に、羽山まで仕事を休むわけにはいかなくて、あいつは自ら仕事に残ってくれたのだ。そのぶん子供達を頼むということだ。高校生と大学生では大人扱いになるから気を使ったのかもしれない。子供達も親と行く年齢ではないらしく、大地くんは麻衣ちゃんと一緒にいたいから行くのだろうし、弟くんも親と残るよりはネズミーのほうがいいらしい。
 年令によって楽しめるものが違うので、当日は乗り物や目的別で別れて回ることになっていた。聖貴や美奈ちゃんは乗り物に乗りたがるので、アトラクション好きな富野夫婦が見てくれることになっている。聖貴も小学生になって少しは乗れる乗り物も増えたはずだ。美奈ちゃんなんてもう小学校3年生のお姉さんだ。いまどきの小学生ってこんなふうなのか? と驚くほどおしゃれだ。聖貴なんてまだまだ子供過ぎて……本当に小学校でちゃんとやれているのか心配だ。愛音も美奈ちゃんの弟の亜貴といると年上に見えるから、女の子のほうが成長が早いのかもしれない。
 その愛音と亜貴はうちの夫婦と亮輔のところと二家族で一緒に色々とアトラクションを見て回るつもりだった。乗れないものが多いし、亮輔のところの麻莉亜ちゃんはまだベビーカーだからあまり無理できない。
 大学生の大地くんや高校生の源太くんたちは子供達と一緒では物足りないだろうから、麻衣ちゃんも一緒にアトラクションを回ると思っていた。結局彼らは麻衣ちゃんと一緒に、富野たちと回るらしい。
 夜は……さてどうするつもりか。応援してやりたいと思うが、やはりここは麻衣ちゃん次第だろう。
「なんか青春っすよね! あのふたり見てると……」
「まあ、な」
 相談を聞いているから、最後までいってないのは知ってはいるが、それなりに関係は進んでいるはずだった。だが、悩んでいるからこそ青春といえるのかもしれない。
 若いっていいよなとは思う。自分が一度結婚に失敗して、朱音の時も私が暴走してしまった。わたしがはじめてだった彼女に申し訳ないことをしてしまったと、今でも思っている。だからこそ、彼らにはうまくいってほしかった。大人が若輩者にアドバイスをするのは、自らが後悔していて、同じ轍を踏まぬようにとの老婆心なのだから。
 まあ、彼女の方も時々朱音のところに遊びに来ているようだから、それなりに相談しているようなので、そのうちうまくいくだろうと思っていた。

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2015.12.17up(2015.12.18修正)

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続きはNEXTからは読めません。2015年のクリスマスに戻ってください。ややこしくてすみません〜(汗)