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先生とあたし

3.戸惑い
「先生ココがわからないんですが。」
「ああ、ここはだな、」

あれ以来、何度もこうやって質問にくるけど、先生は全く手を出してこない。
教師と生徒、外で滅多に逢えるわけでもなく...

「先生?」
あたしは先生の手が止まったので顔を先生の方に向けた。
「あ、だから、ココは、この公式を当てはめて...」
すぐに目をそらして元に戻る。
何だか、そんな仕草までもが拒否されているようで寂しい。
すごく悲しい...あたしには思われてる自信も何もないのだから。

あたしの指先は、今にも触れそうな先生の指先を追っては留まる。

「そんな目で見るな...」
「えっ?」
「抑えが効かなくなる。私はもう、前と同じ間違いを犯したくない。だからココで依里子に手を出すつもりは、無いんだ。」
大切にしたいから。そう何度も繰り返す先生の唇。
「卒業まであと1年半もあるのに?あたしは先生に触れても貰えないの?それが大事にすることなの?」
「依里子?」
「学校がだめなら、先生の部屋に行きたい...」
思わずそんな大胆な言葉が飛び出す。
「いいのか、その意味をわかっているのか?」
「だって、学校じゃダメなんでしょう?どこかに一緒にも出掛けられないなら、せめて、先生の部屋で、」
「依里子...」
「もっと色々話したいし、手を繋いだりしたいもの!」
「手?それだけか?」
「それは...キ、キスも...この間みたいなの、して欲しい。先生は?したくないの??」
キスと言葉にだすだけで、唇が熱くなってくる気がした。
先生の視線も、あたしの唇に注がれているようで...
「私も、したいよ。出来るなら、今、ここで依里子を抱きしめてキスしたい。」
「ほんとに?」
「ああ、キス、したい...」
少し掠れた声が色を含んで、その視線があたしの身体の中を見透かすほど真っ直ぐで、艶っぽくて...指先が震えた。
「今は、して、もらえないの...?」
あたしは精一杯声を絞り出してそう聞いた。だって、今して貰えない、そのことがすごく残念で。
「ああ、くそっ!」
その熱に捕らえられる。
抱きしめられた強さに身体が溶ける。すぐさま顎を掴まれ上向けられて唇に湿った温もりを感じて...

キス・キス・キス

そのキスは唇に留まらない。髪にも、耳にも、首筋にも...

「止まらなくなるのがわかってたんだ。依里子相手だと、どんなに自分を押さえても、私は先生で居られなくなる...それはこの間のキスでわかっていたんだ。」
「ほんとに?」
「ああ、それだけ依里子を好きだってことだ。頼むから、理性を失う前に先生に戻させてくれ。」
大きなため息とともにその腕を解かれる。
「でも、時々、そうやって理性どこかに無くしちゃってくださいね?」
あたしの言葉に苦笑した先生の手が優しく頬を撫でた。



たまに、そんなトコ見せてくれないと、本当に自信なくしちゃうもの。
先生の気持ち。
見えなくなる前に、ね?

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