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先生とあたし
15.卒業 〜裏バージョン〜
「せんせ?」
いつもの数学教官室に顔を出したのは依里子だった。
久しぶりの登校、3年は1月の半ばを過ぎるとほとんど来なくなる。
2月27日、明日は卒業式で、予行演習のために大抵の3年生は登校していた。
「どうなんだ、自信の程は?」
「はい、って言いたいけど、時間がたつほどだんだんと自信なくなってきちゃって。」
「そうか。」
前期と後期に別れてはいるが、依里子の志望校は成績さえ良ければ前期だけで合格が決まる。一番近い国立大が彼女の志望校だった。その選択が私と離れたくないためだと言うのも判っている。
正月明けに彼女から聞いた姉の結衣子が家を出て婚約者と暮らすという話し。ほっとしたというのが事実だった。彼女も本当の相手を見つけられたのだろう。以前に逢ったとき、あの目はまるで私を許さないといった視線だった。依里子の態度を見ていても、結衣子のことが絶えず引っかかっているのも判る。結衣子が依里子に何か言ったのか、その事をとても嬉しそうに話す姿に、何かが吹っ切れたのだと安堵した。
側まで来た依里子が少し離れたところで立ち止まったので、制服の裾を少しだけ引いて近くに寄せようとした。
「せんせ?」
「明日でコレを着るのも最期かな?」
「せんせいが着て欲しいんなら着ますけど?」
悪戯っぽく笑う彼女をそっと引き寄せる。
後は結果を待つだけで、不安だろうけど、もう今のところしなければならないことがなくなって、余裕を見せる依里子はそのまま私の膝の上に腰を降ろした。
「せんせ、明日、卒業式の後、御祝いしてください。」
「え?」
戸惑う私を無視して依里子は私の首に腕を回して、耳元でそう囁く。
『もう先生の生徒じゃなくなりますから』
甘い誘惑の艶を含んだ声。この体勢で、そんな風に誘われたらタマラナイのに。
「ま、まだ、結果が出てないんじゃないのか?」
そうだ、明日卒業してしまえば先生と生徒ではなくなる。だけど...
「だめだったら、後期も受けますけど、最悪の時は私立受かってますから。結果なんて、待ってても同じだもの。それより、今のあたしにはせんせの生徒じゃなくなるって事の方が大事なの。それに、ダメだったら、その時は面倒見てくれるって、せんせい言ったよね?」
「それは...」
確かに以前言ったし、こっちはいつだって彼女を向かえ入れる準備は出来ている。いい年した社会人なのだから。
だけど彼女は今からまだまだ勉強して、就職して、未来があるから、やはり結果は大事なはずだ。
「卒業式のあと、亜美ちゃん達とお泊りパーティするって親には言ってあるの...」
ぎゅっとしがみついてくるその腕は、少しだけ不安で震えていた。
こんなこと、彼女に言わせるなんて、私は何を怖がっているんだろう?もう、怖がることも、恐れるモノも何もない。この後何を言われようと、彼女を守り抜くし、幸せにすると何度も心の中で誓ったじゃないか?
「わかった、御祝いしよう。」
にっこり笑う彼女に、軽くキスをして彼女の身体を立たせた。
仰げば尊しの中、依里子達卒業生は卒業を迎えた。担任のない私は、先生達の送る側の席で彼女を見送った。
さすがに最期の日は、何人か私の元へやって来ては、言葉が欲しいと言ってサイン帳を差し出してくる。
「先生に憧れてました。いつも大人で、落ち着いてらして、わたしの大切な思い出です。」
比較的質問に訪れていた女子生徒の一人にそう告げられた。
毎年、一人かふたりはいるのだ。この学校、独身で若い男性は少ないから。ただし年齢と共に減ってきた。体育の植山先生なんかはまだ大学出たてで女生徒が群がっていたな。私も教師に成り立ての頃はああだったと懐かしく思う。その中に結衣子も居た...
「卒業おめでとう。君の気持ちは嬉しいよ。きっと大学に行ったら素敵な人が待っているよ。頑張りなさい、恋も勉強も。」
「はい、ありがとうございました!」
用意しておいた言葉に、満足した女生徒は立ち去っていく。返事が欲しいのではなく、告げることが目的の彼女たちのセレモニーのようなものだ。狭い学校の中で見つけた憧れを恋にすり替えることも多くある。だったら、依里子は?彼女も本当にすり替えていないと言えるのだろうか?
「ふう…」
ため息ついて腰掛けたときにドアの外に気配を感じた。たぶん、依里子だろう。
「せんせ、もう大丈夫ですか?」
これで一通り終わっただろう頃に依里子がやって来た。
「ああ、もうそんな物好きは来ないだろう。」
「あら、ココにいますよ?」
にっこり笑った彼女は私の前で手を後ろに組んで姿勢を正した。
「深山先生、ずっと好きでした。先生のおかげで数学も好きになりました。大学だって、先生のおかげで受験がんばれました。ありがとうございました。」
ぺこりと頭を下げた。
好きだった...?終わりなのか?結衣子のように...高校時代のいい思い出にしてしまうつもりなのか?私は、一瞬にして頭を真っ白にしてしまった。
「依里子...」
卒業おめでとう、そう告げればいい。だけど…
「せんせ?」
「そ、卒業おめでとう。大学に行ったら、君も...」
素敵な人が待っている、私以外の男性に、依里子が恋してその身体を預けるのか?そんな...
「せんせ、怒りますよ?」
むっとした顔の彼女が、私の頬を両側からパシンと挟んだ。
「いや、だけど...」
「続きがあるんです!もう...んと、これからもずっと好きです。生徒じゃなくて、一人の女として見てくださいね?彰俊さん」
ちゅっと、彼女の唇が触れる。
「よ、りこ...」
卒業を待ちながら、怖がっていたのは私だったのか。結衣子のように、離れていくことを恐れていた。
もう、以前の自分には戻れない。結衣子の時のように、しょうがないでは済ませられない。依里子が欲しいと強請る自分がいる。手離せないと駄々を捏ねる自分がいる。彼女無しに、これからの自分の人生が考えられなくなっている事実に、とっくに気が付いていたくせに。
「いつもなら、せんせいのほうが強引なくらいなのに...学校ではしないは卒業まででしょう?それも今日までなの?彰俊さん、っあ!」
引き寄せ激しくその唇を貪った。誰に見られたっていい。誰に知られたっていい。
彼女を、依里子を愛しているから...
大事だから、今まで、自分を抑えてきた。
「先生は、すぐには帰れないんだ...もうしばらく、待っていられるか?」
ここで、この部屋で。
「待っています。」
私はしばらく彼女を抱きしめて、惜しみなくキスを贈った後、帰り支度のために職員室へ向かった。
「深山先生、先生は担任もなかったでしょうから、今日の卒業式は気楽だったんじゃありませんか?」
英語科の増田という女教師が声をかけてくる。いつもなんだかんだと構ってこられるのが厭で逃げていた。数学教官室に逃げ込んでいた理由の大半は彼女にもあった。30後半で独身、マジで独身男性教諭が少ない中、狙われてるらしく、同じ数学教師の先輩からもあの部屋を独占することを黙認してもらっていたのも彼女のことを皆が知っているからだった。
「いえ、どの生徒も卒業となると感慨深いですよ。」
特に今年は、そうだったといえるから素直にそう答えた。
「よかったら、この後、数人の担任のなかった教師連で飲みに行こうかと話してるんですけど、行きませんか?」
「いえ、今日は。」
「まあ、どなたかと、約束でもあるんですか?」
いつもなら、そんな素振りもなく誤魔化していた。だけど今日からは...
「ええ、彼女と約束があるんです。」
「あ、あら...そうなの?」
それじゃ仕方ないわと、曖昧な笑みを浮かべて増田は離れていった。今日から彼女持ちという区分で見て貰える訳だ。コレは嬉しいな。ターゲットから離してもらえると、もう数学教官室に逃げ込む必要がなくなる。あそこに居る理由も、もう今日でなくなる。
それじゃと挨拶を残して、私は数学教科室に戻った。愛しいカノジョが待つ部屋へと。
「待たせたね、帰ろうか?」
微笑んで立ち上がる依里子に頬を寄せる。そして、今日は堂々と駐車場まで連れて行った。
「いいの?こんなに大胆で...」
「構わないさ。今知れたところで、まだ清い関係だって言い張るしな?」
その言葉に依里子は笑いを堪えきれなかったようだ。
「ふふ、でも、それも今夜まででしょう?」
言葉尻が甘い彼女の問いかけに、身体が熱くなり始める。
「ああ。」
車をスタートさせた後、ギアに置いていた手を依里子の手に重ねた。
長かった...彼女を欲しがるこの身体を押さえ、閉じこめてきた1年半。
今夜、私は彼女を抱くだろう。痛みで打ち震える依里子に、甘い言葉を囁きながらも、その欲望を止めることはもう出来ない。
本当に、今まで我慢してきた自分を褒めてやりたい。
だが、優しく出来るだろうか?心の中では無茶苦茶に抱こうとしている自分がいる。今までなら絶対抱かないという気構えで触れていた。だけど今夜ははなから抱くつもりでいるのだから、どれだけセーブが効くかなんて、まったく自信がない。
「依里子、その、私の部屋でいいのか?それとも、どこか綺麗なホテルでも...」
彼女が望むなら、一流ホテルのスイートでも構わないとすら思っていた。それが卒業祝いになってもいいと。
「先生の部屋がいい...先生の匂いのする、あの部屋が一番落ち着くの。」
「わかった。」
彼女とて、気分と盛り上がりで、豪華な部屋での思い出を欲しがってる訳じゃないのは判っていた。だから敢えて部屋の予約もしなかった。彼女が欲しいのは、本当の繋がり、証、卒業したという、もう教師と生徒ではないその事実が欲しいのだ。
その後、ふたりは無言だった。
卒業祝いだというのに、飲み物や、ケーキ、花束すら買うことを忘れ、自分の部屋に向かった。
車を駐車場に止めて、部屋の鍵を開けるまでのもどかしさ。
私は何を焦っているんだ?目の前の彼女は逃げやしないというのに...
「依里子っ」
部屋に入ってすぐさま抱き寄せた。
「せんせ...」
「もう先生じゃないだろう?」
「あ、彰俊さん」
呼び直させて、再び抱きしめた。そして唇を塞ぎながらベッドへ進む。
「ゆっくりできそうにないんだ、すまない...」
正直にそう告げた。今まで、あり得ないほどの我慢をしてきたんだ。今日はもうセーブなんてきかない。
まるで高校生にでもなった気分だ。彼女はいまだ制服のままだし。
私は自分のネクタイをむしり取り、上着を床に落とす。それと同時に依里子も自分の制服の上着を脱いだ。
ブラウスのボタンを外し、唇を彼女の首筋に落とすと、益々依里子の感度が上がっていく。これはいつも通り。だけどせわしなく動く手が、彼女から衣服を奪おうと焦っているような動きを見せていた。
「いいです、ゆっくりしなくても...な、なんか、あたしも、すごく落ち着かなくって、焦ってるみたいな気持ちで、変なんです。」
依里子がそんなコトを口にするなんて珍しい。いつもはその身体の全てを任せて来るだけなのに。
「変なのはどこなんだ?」
その言葉で少しだけ息を整えて、焦らすような動きに変える。ボタンを外したブラウスを、脱がしもせず、ただ開く。素肌を隠す下着に手をかけ、フロントホックという前あきの下着を解放してやると、既に立ち上がりはじめた胸の先の蕾が、赤揺れて私を誘っている。
「あの、やぁ...っん」
もじもじと脚をすりあわせるのを無視してその蕾にしゃぶり付く。舌で絡め、甘噛みすると彼女の背が反り返る。
ココまで十分に慣らしてきたのだ、今日のために。依里子の感じるところも、弱いところも、よくわかっている。まだ知らないのは、彼女の中の温もりだけだ。
「どこが変なんだ?いつも通りだぞ、いい反応してるし...」
持ち上げるように胸を揉みし抱きながら唇で愛撫する。
「せ、んせ...」
切なげな瞳が強請る。もそもそと動く脚が微妙に私の股間を刺激してくる。
「なんて誘い方をするんだ?初めてなのに...ん?」
そう問いかけると真っ赤になる。可愛い、何も知らなかった彼女に教えたのは私だ。この先に待っている快感を教え込んだ。欲しがるように、時間をかけてそう身体に教え込んだ。最初の痛みを怖がらないように、準備して、逃げられないようにしたのは自分だ。
だけど、逢えなかった期間の禁欲生活は、思ったよりもお互いを追い込んでいた。自分のモノは痛いほど勃ち上がっているし、たぶん、依里子も...
「ここか?」
スカートの下から滑り込ませた指先に、彼女の下着が触れる。ストッキングやタイツなど履かない生の素肌が艶めかしかった。その縁のラインをゆっくりとなぞり、下着の上からなま暖かく湿ってた部分に触れる。
「欲しい?」
「はい...」
下着の横から、濡れた蜜壺の中に指を沈める。何度も慣らして、ようやく指一本埋め込むことを許すようになった。
「はぁ、う、ん...」
まだキツイその中に、今夜は自分を納めることが出来るのだと思うと、益々高ぶってしまう。
その指の感触に翻弄されて、夢見るような依里子の表情に悦に入る。
きっと、夢のようなロストバージンを想像してるだろうけれども、コレばかりは変わってやれない。その瞬間は相当痛いはずだ。好きな男に抱かれることで、なんとか耐えられる痛みだと聞いたことがある。昔の、彼女に、だが。
けれども反対に、男には最高に気持ちのいい瞬間なのだ。
「あ、あっ...やぁ、せん、せ!ひゃっ...ん」
なんとか、少しでも痛みを和らげてやりたくて、一度いかせた。指と舌を使って、突起を責めて、あっけないほど早くに昇り詰めさせた。
ひくひくとその余韻で戦慄く彼女の中に指を残したまま、動かすと再び、じゅくじゅくと溢れてくる。指を引き抜き、ぎゅっと彼女を抱きしめた。
「依里子、全部脱がせるよ?」
着たままでも良かったけれども、素肌で触れあう方が一体感があるだろうと思った。乱れた制服姿は十分そそってくれるが、今はまず初めてをいかに痛くないようにするかだ。これまでの我慢に比べれば、後少しの我慢を耐えようと思った。依里子に痛いだけの思い出にして欲しくなかったから。
「せ、んせい...」
「違うだろう?」
「彰俊さん...あの、」
「待ってなさい、今つけるから。」
脱がされて、横たわったままでは不安なのだろう。軽くキスをして、後ろを向いて避妊具をつける。準備が済んだあと、依里子の脚を割り、己の猛ったモノを宛い、そっと身体を彼女の上に身体を預けた。
「あ、あったかい...」
「重くないか?」
「ううん、そんなに...あっ...」
「いいか?」
依里子の入り口に擦りつける。入りたいと主張しまくってる己のモノを。
「んっ」
くちゅくちゅと入り口を突きながらキスを彼女の顔中に贈る。
愛しい、溜まらなく愛しい存在。一つになって、溶けてしまいたい。
「愛してるよ、依里子。」
耳元で囁き、首筋に舌を這わせ、胸の先を摘み、その隙に侵入を試みる。
「んんっ!!」
ずるっと、最初の滑りで入り込んだのは先だけだ。それだけでも少し辛そうに顔を歪める。
「依里子...」
唇をあわせて、舌先で翻弄する。口を開けた状態のために、少し下の口も緩む。その瞬間を狙って少しずつ、少しずつねじ込んでいく。見た目以上に理性のいる行為だった。身体は今すぐにでも奥まで突き破りたいのだ。だけど、漏れ聞こえるうめき声に少しだけ躊躇する。
「んっ...くぅ...んっ...せっんせ、まだ?」
苦しいのだろう。痛みで、震えているようだった。
「先生と、また言ったね?」
「あ...あきとし、さん...」
「そうだ、そう呼ぶんだ、これから、ずっと!」
ずん、と、最期の引っかかりを押し破って奥まで押し込んだ。
「ひっ!」
彼女の喉が仰け反る。食いしばる歯に、突っ張る手足、痛いのだろうけれど、これ以上前にも後ろにも進めない。
キツイ...予想以上に。
動けなかった。
動けばそのキツさに果ててしまいそうだし、何よりも彼女が痛みに耐えているのに、欲望に負けて腰を振りたくなる。
身体を重ね、唇を貪り、その痛みを逃してやる。何度もキスをしたあと、ゆっくり唇を離す頃には、かなり力も抜けてきていた。
「あたし、せ...彰俊さんのものに、なれた?」
「ああ、依里子は私のモノだよ。そして私は、依里子のモノだ...」
ほら、こんなに気持ちよく包まれている。持って行かれそうなほどキツくって、このままココで溶けてしまいたいほどだ。
「だけど、動いていいか?限界なんだ、もう、じっとしていられない。」
這い上がってくる快感を逃す術を失って、身体が震えだしそうだった。
何年ぶりかのセックスは、思った以上に身体にくる。
「せんせの、彰俊さんの、好きにして、ください。」
掠れた声でそう答える声を聞いてからは、箍が飛んだかのように夢中になった。
全くと言っていいほど彼女をいたわってやれなかった。気持ちよくて、一つになれたことが嬉しくて、ひたすら腰を振った。痛いだけだろう彼女の中のいいところを探りながら、そして見つけたあとは...
「やぁあっん!!!ひっ、はぁあっ、あんっ」
指で教えていた、ソコを突き上げて擦って、益々締め付けられて、耐えきれなかった。
「せんせ、なんか、変になっる...そこ、やっ、だめっ...んっ」
「ああ、もうっ、依里子っ!...くっ」
最期は酷いことをしたと思う。我慢してた全部を吐き出した。出しながら、腰を止めることも出来なかった。こっちが、気が遠くなりそうなほど身体が震えた。狭い入り口と奥で扱き立てられて、終わらない射精を続けているような気分だった。
「すまない、痛かっただろう?」
フルフルと首を振ってしがみついてくる。
まだ抜け出せずにいる。そっと抱きしめたあと、身体を離して処理を済ませる。避妊具に付いた赤い液体、彼女を拭いてやるとソコから漏れてくるようだった。
シーツには赤い染み。
バスタオルでも敷いてやるべきだったのに、余裕をなくしてた自分だった。
濡れたタオルでも持ってきてやりたかったが、こっちも余韻ひとしきりで、動きたくないのが現状だ。そのままベッドに横たわり、彼女を引き寄せる。
離したくない、帰したくない。
このままずっと、側に置いておきたい。抱けば尚更その気持ちが強くなる。
今までは、居座られてはセーブが効かないからと、夜まで居させたことはない。だけど、自分のモノにしてしまえば、もっと欲しくなる。判っていたことだった。
「依里子...このまま、ここで暮らさないか?」
「え?」
「大学、ここから通えばいい...」
「それは、」
無理だと判っていて口にしてしまった自分を恥じた。
「すまない、無理だよな。」
「あの、彰俊さん...今、結構、素ですか?」
ああ、そう言われてみれば、もう教師だとか、年上だとか、全部うっちゃった状態で考えていた。
「だめか?」
我が儘かもしれない自分がいた。こんなにも壁を一つ乗り越えると、そこには自分の本音があった。
離れたくない、離したくない。ずっと側に置いておきたい。そして毎晩繋がり、この暖かい素肌を抱いて眠りたい。
「通いだし...でも、週末とか泊まりに来てもいいですか?」
「ああ、頼む、私が乾く前に、来てくれ。」
「せ...彰俊さん、なんだかすごく素直?」
くすっと笑う依里子がまるで年上のような表情を見せた。
「今までは、先生だったからな。依里子を腕に抱いていても、いけないことをしてる時も。だけど、これからは男として、恋人として、だから。」
「うれしい...いっぱい聞きたいです。彰俊さんの素直な気持ち。」
「ほんとか?私は、意外と我が儘な暴君かも知れないよ?」
「ふふふ、どんな?」
「一回じゃ我慢出来ないと、もう一度依里子を襲いかねないほどの、ね?」
堅さを取り戻しかけた下腹部を押しつける。
「え?そんな...終わったんじゃ?」
「まさか、あれで。けど、厭ならしない。痛いだろうし...」
「痛いけど、でも、最期すごく気持ちよかったの、だから...」
しがみついてくる彼女の身体を抱きしめる。
「じゃあ、ゆっくりな?」
先生と生徒の関係はもう終わったんだ。男と女、遠慮していたら終わってしまう。
だから、依里子。私がただの男でも愛して欲しい。生徒ではない、女としてのおまえを愛するから。
再び繋がって、ゆっくりと動き出す。
先生ぶった説教もたまにはするかもだけど、今は男として、彼女を抱こう。
「あっん、はぁ...」
甘い声が聞こえると嬉しくなる。
「ここがいいのか?はじめてでこんなに感じてくれて、嬉しいね。教えがいのある、いい生徒だったよ。依里子は...」
初めてなのに何度もは可哀想だけれども、今日だけは、身体の許す限り抱かせて欲しい。
明日までは、自分のものになった依里子を実感していたいんだ。
これからもずっと、自分のモノだという確信が持てるまで...
これからの日々を怖がっているのは私の方だから。
きっと、それは、彼女が本当の意味で私のモノになるまで続くのだろう。
たぶん、彼女の家を訪ねる日は、そう遠くないだろう。
−Fin−
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