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 美雪 Side 3

 
「あれ?まだ誰も着いてない?」
待ち合わせのホテルの駐車場、誰も居ない。
「オレは眠い…早くチェックインして寝たい」
「あ、でも勝手にダメですよね?」
「一部屋ぐらい大丈夫だろ?」
「一部屋?」
「ああ、オレと冴島とで、一部屋。どうせ来たらすぐにチェックインするんだろ?先にしてても構わないだろうから。」
すたすたとフロントに向かって、さっさとチェックインを済ませてきたようだった。
「行くぞ。」
「え?あたしも??」
「ここで待ってても仕方ないだろう?他のメンバーは途中で休憩しまくって、まだ当分つかないってさ。」
「そんな…」
だって、男の人と同じ部屋にはいるなんて考えられない。
常識はずれだってお母さんに怒られるわ!バレたら二度とスキーに行っちゃダメって言われる…
何もないとしても、それはダメだって思った。
たとえ好きな人でも。
「あの、二部屋取ってはダメですか?女子の部屋もどうせいるだろうし…」
ドアの手前であたしは踏ん張ってしまった。
「そんなに、嫌か?俺と居るのが。」
あたしの手を掴んでたのがすーって落ちる。
「いえ、そうじゃなくて、その、常識的に考えても、一緒に入らない方が…」
しばらくは下を向いて考え込んでいたようだった。
「手、だされると思ってるの?」
「まさか、沢田さんはモテますから、わたしなんかそんなことないって思ってます。その、常識的なことだけで…」
「じゃあ、いいじゃないか。車の中と変わらない。」
そう言うものでもないと思うけど…
「わかりました。じゃあ…」
わたしはその背中について部屋に入った。
 
 
「シャワー浴びてくる、君も適当に休んでればいいよ。ああ、携帯に誰かから連絡入ってくるかも知れないから適当にでといて。」
「え?」
「別に取られて困るような電話はない。冴島の携帯は誰も知らないんだろ?」
「いえ、渚が…三井さんが知ってます。」
「そう、じゃあどっちでもいいからでて?頼んだよ。」
そう言ってバスルームに向かった沢田さん。
はあ、どうしよう?
この部屋に泊まるわけでもないから、荷物も出せないし…ベッドにも入れないし。ソファはあるけど一人がけが二つ。
わたしはそっとベッドカバーの上に身体を横たえた。
 
 
あったかい…
「え?」
急いで目を覚ます。あたしなにしてたんだっけ??
「ああ、起きたのか?」
「は、はい!」
椅子に腰掛けて窓の外を見てる沢田さん。わたしは…
なんでベッドの中に入ってるの??
「寒そうにしてたから」
わたしの視線を見て察したのか、そう答えてくれたけれども…
「あの、みんなは??」
「ああ、荷物置いて早速滑りに行ったよ。」
「ええ??」
そんな…わたしったらまだ誰とも挨拶すらしてないのに。
「じゃあ、俺たちも滑りに行こうか?」
「そ、そうですね…」
「オレはもう用意出来てるから、下でまってるな。」
部屋に残されたあたしは急いで用意する。女の準備は時間がかかるのに…
日焼け止め、スポーツファンデを重ねて、耐水用のアイブロー。アイメークは元々しないから。後は口紅とグロス。スキーウエアを上に着て、帽子とゴーグルに手袋。板と靴は下に置いてきている。
 
「お待たせしました。」
「いや、まってない。行こうか。」
って一緒に滑るの??
予想を裏切ってのランデブー滑降。沢田さんは上手だった。急斜面も難なく滑り降りていく。このスキー場は林間コースとかを使うとあまりスノボーの人ともぶつかったりしない。
上手くリードされて、苦手なコブも要領を教えてもらうとなんとか滑れるようになってきていた。
「暗くなる前にホテルに戻ろうか?」
そう言われて麓へと降りていく。
スキーってそんなにしゃべらなくても楽しめるからいいなぁ。ただ、リフトではべったり一緒になちゃうから色々話した。スキーのこと、趣味のことなんか。
車では運転してる人の邪魔は出来ないって思ってから無口だったし。
 
「あの、わたしはどの部屋に行けばいいのでしょう?」
まだ誰も帰ってきてないようだったので、そう聞いた。
「ここだよ。」
「ええ??だって、他の人が来たら…」
「ここには誰も来ないんだ。」
「はぁ?」
「ここはオレと冴島だけ。」
「なんでですか?」
「俺が連れてきたから、違うところに。」
 
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素材:FINON