HOMETOP>NEXT>BACK

番外編

朱理&隆仁 その4
朱里その4

「わるいな、どうやら我慢できそうにない」
「きゃっ……た、隆仁さん、んっ??」
 今日は珍しく彼が大学まで迎えに来てくれたんだけど、どうやら機嫌が悪そうだなと思っていたら……車を降りてからも強引に彼の家まで腕を引っ張られ、玄関のドアを開けた途端に抱き上げてキスされた。
「なっ……どうしたの?」
「先週、史仁を迎えに行かせたのが噂になってた……」
「ああ、あれ? そうなのよ、隆仁さんは車から降りないけど、彼はドア開けてくれるからね。目立ったんじゃない?」
 普段は車のウインドウにもスモークがかかっていて、中に乗っている人を見たくてしょうがなかった誰かがしっかりチェックして、写メまで撮られて出まわっていたらしい。
「今日俺が車から降りたら、『この間の男の人と違う』と『あっちのほうがお似合い』だとか言いやがって……あんなガキのどこがいいんだよ!」
 この人……自分の息子と比べられて怒ってるわけ?
「おまえは……俺のだから」
 ぼそりと小さな声。やだ、顔逸らして照れてるの? いつもはそれ以上のこと言ったりさせたりするくせに? 呆れた……そういう子供っぽいところは相変わらずだ。
「そうよ、わたしはあなたのものよ。まだ……我慢する気?」
 駄々っ子に言い聞かせるように首に回した手に力をいれて、わたしからキスした。
「おい……止まんなくなるだろ?」
 くそっ、と顔をそむけてそのまま寝室のドアを足で開け、わたしを抱きかかえたままベッドに座った。
 わたしの誕生日の夜以来、この部屋には入ったことがなかった。彼の家にはしょっちゅう来ていたけど、決してこの部屋にだけは連れ込まれなかったリビングのソファの上で愛撫されることがあっても……
 そう、この半年の間、この男はわたしを最後まで抱かなかった。店への出入りは禁止されたけど、デートは色々と出掛けて普通に過ごした。食事や観劇、海や山に行ったり……意外とアウトドアが好きなのには驚いたけど。店のホストたちを連れてバーベーキューしたりして若者に合わせてはしゃいだかと思うと、正式な場では完璧なエスコートをしてみせた。エスコートの完璧さに客層の広さを匂わせたけど、今はお客様を含めてわたし以外に女の人はいないのは確かだと思うのよね。だって、すっごく辛そうだったもの。でもそれじゃ、あの噂で聞く獣のような性欲はいったいどこに行ったのかって、もっぱらの話だ。わたしも大丈夫かなって、不安だったのだけど……
「誘うなよ、そんな顔して」
 そう言って何度押し倒されたことか。車の中、店の片隅、海の中、岩陰、路地裏……どこでだって死角を見つけてわたしを引き寄せる。だけど、外だから最後までしないつもりなのもわかってる。さすがにわたしのはじめてを立ったままで、奪うつもりはないらしい。
「やぁっ……んっ、ダメ、そこ……」
 下着の隙間から忍び込んでくる彼の指先に何度翻弄されたことか。ぐったりとイカされるまで攻め立てられ、自分はそのまま我慢するか、わたしに見えないように自分でしちゃうか、だもの。少しでも甘い空気が流れると、お互いに我慢できなくなることはすぐに分かったし、半年ぐらいはそのままでも何とかなったけど、それ以上は……それこそわたしだって限界だった。
 お店の子たちだけじゃ口が軽いと言っても、みんな忙しいんだし。自分が仕事でわたしとの約束に間に合わなければ、史仁やわたしの従兄弟で彼の店で学生時代ホストのバイトをしていたリュウ兄にしょっちゅう代役を頼んでる。史仁は大学入ってからもふらふらと適当に遊んでたみたいだけど、どうやら本命の子と再会したみたいで、自分の部屋に引き込んでるらしい。そうなると何を言っても出てこないから、バイトの現場に来させるのが大変だって、叔母様が言っていた
 わたしもだんだんと行為に慣れて、身体を預けるようになってからは、もう歯止めが効かないところまで来てるみたいだった。最近は外に遊びに出かけることも少なくなって、彼の家に連れて行かれることが多くなった。史仁が一人暮らしをはじめたのもあると思う。それまでも別々に暮らしてるぐらい互いに関心はなかったくせに、誰も居ない部屋に一人帰るのが寂しくなったらしい。
 ほんとに、この男は……見かけばっかりオトナで、中身は史仁以上に子供なんじゃないかしら?
「もっ……ダメ……おかしく、なる」
 今までこの男は、寂しさを人肌に求めてたのかもしれない。いとおしげにわたしに触れたかと思うと、執拗に責め立てたり……何度も言葉で求めさせられた。
「朱里、もっとだ、もっと俺を欲しがってくれ」
 経験のないことなんて全く意味を成さないほど、体ごと求められて奪われていく。
「おねがい、もっと……苦しいの、隆仁さん……」
 身体はとっくに沸騰してしまっていた。教えられた快感をなぞり、昇らされても物足りなく感じてしまう。我慢してるのがわかるし、わたしだけわからなくされても……ひとりじゃいやだった。一緒に気持ちよくなりたかった。どんなにわたしのことを大事に思ってくれていたとしても、全然嬉しくない。それはもう、この半年でイヤというほど証明されたから。今は激しく奪われたい……どのくらい強く思っているかを身体で解らせて欲しい。どんなに痛くても、身体はこんなにも彼を求めているのだから。
「くそっ、限界だ!」
 いつもなら脱がさない下着まで脱がせて、彼は自分のベルトに手をかけた。今まで……どんなに辛そうでも、彼は自分の欲望をわたしの前では果たさなかったのに。
「いいか、もう後戻り出来ると思うなよ? 俺は何があってもおまえを離さないし、壊すほど抱くかもしれない。それでもいいんだな?」
「いいわ……そんなのとっくに覚悟してるわよ」
「今まで、酷いことばかりやってきた俺でも?」
 それは過去のことを言ってるの?
「いまのあなたが誠実であればいいわ。だって……それがわたしに出会うために必要だったのかもしれないし、わたし以外にあなたを改心させる事を出来る女がいなかったってことでしょう?」
「あ、ああ……」
「ならいいわ、おねがい……来て、わたしをあなたのものにして? 離れたくないのはわたしも同じよ」
「朱理っ、そんなに煽るなよ。今からじっくり可愛がってやるんだからな? 焦らせて痛い思いさせたくないんだ。だからそのあとたっぷりと……この半年分の俺の思いをわからせてやるから。しばらくは鳴いてろ」
「えっ? あっ……ひゃっん、やっん、だめ、あっ……あん、っん……」
 そこからは想像を絶する愛撫と、感じすぎておかしくなったそこになにやら塗り込められて……
「ひっ……くう……」
 わたしは痛みと共に彼の質量感に圧倒された。
「わかるか? 朱理……俺が」
「……んっ、わかる……なんか、すごい……くるし」
「ああ、痛かっただろ? しばらくは動かずにいてやるから、俺を感じて慣れろ。コレも全部おまえのもんだよ」
 きっと、たくさんの女性を善がらせて夢中にさせてきたのだろう。何人かの彼の客に言われた……
『彼っていいでしょう? 激しくてすごくて……うまいから』
 これだけ長く側にいれば、当然身体の関係があると思われたのだろう。だけど彼は最後までわたしを抱かずに何度もわたしを高めるだけで……それが不安だといえば不安だった。彼は本気の証拠だと言ったけど、本当に我慢してくれているかどうかも不安だった。
「わたしだけ……よね?」
 思わず聞いてしまう。
「ああ、おまえだけだ。これから先も……責任とれよ? 俺は生半可じゃ収まらないから」
 その言葉を証明するかのように、彼はわたしの中でゆっくりと動き、わたしは思わず変な声を上げてしまう。
「あっ……やっ、なに……それ」
「ここか? わかった……ゆっくり擦ってやるからな」
「あぁっ……ダメ、やっ……ひぃっ!」
 前の突起と同時に擦られ、わたしは思わず脚を彼の腰に絡めてしまう。
「おいおい、それはないだろ? ただでさえ、キツイんだから」
「ほんとに?」
「ああ、すごくイイ……たまんないよ、おまえのナカ。ガキみたいに瞬殺されそうだ。まあ、そこはオトナの意地ってものがあるけどな」
「あっ……やっ、やっ!」
 そこから緩急つけて揺すられ、はじめてなのに信じられないくらい感じて、その慣れない彼の質感を快感として教えこまれてしまった。
「ヤバイな……こんなの離せるかよ!」
 わたしを抱え込んで深いキスを浴びせながら彼の腰の動きが早くなる。密着してるぶん一緒に動く形だったけど。
「ちょっと無理させるけど、わるい……朱理」
 そのあとシーツに押し付けられて、脚を高々と持ち上げられ感じるところを何度も擦り上げられた。
「やぁ、だめ、やあっ……ひっ、い、いやぁあああああああ」
 イヤじゃない、だけどまだそうとしか言えなかった。
「違うだろ、イイだろ? イケよ……もっと、もっとイッちまえ」
 むき出しの感覚と感情をさらけ出したまま、わたしは悲鳴のような喘ぎ声を上げ続けていた。わたしの声が枯れても、彼はわたしの上からどこうとしなかった。


隆仁その4

 ああ、もう我慢の限界だった!
 この半年の間、最後まではやらずに必死で我慢したけど、手は出した。そりゃ出すなって方が無理だろ? 若いピチピチした女の身体、それもおもいっきり惚れまくってる彼女の身体がそこにあるんだぜ? 触れもせずおとなしくしてるなんて俺には到底ムリな話だ。だいたい……セックス以外に愛を表現する方法なんて知らなかった俺だ。デートなんて、客に対するエスコート以外でまともにしたこともない。どう付き合えばいいんだ? 悩みまくってユウにまで相談しまくったさ。そしたら最高のおもてなしをするのが一番なんて抜かしやがるから。結局最上級のデートや、若者がよくやるイベントなんかにも挑戦してみた。そしてふたりきりになったときは……たっぷりと彼女の身体を味わったさ。最後までやらなくても十分感じさせることができたし、この調子じゃ本番でもたっぷり感じてくれそうで、いい慣らしになった思う。
 思うに、俺の相手をさせるのに、いきなりじゃかわいそうだと思うんだよな。愛撫や言葉を優しくすることは出来ても、最後はなぁ……俺結構鳴かせるのスキだから、かなり酷いことしそうで自分が怖かった。
 俺の手で感じて快感に溺れる朱理はたまらなく可愛かった。普段は強気で女王様然としているのに、感じてしがみつきながら泣きじゃくるトコなんかもう……たまんねえよな? こんな顔、誰にも見せたくない。他の男と話もさせたくない。そう思っていても俺も一応オーナーだし? 仕事はあるわけだ。セックス関係は全部パスさせてもらったけど、上客のエスコートの仕事やなにかで、デートの約束に間に合わなくなる時がある。そんな時は朱理の従兄弟でうちの元ホストのリュウ、水嶋に頼むんだが、彼も今氷室コーポレーションに働く真っ当な社会人だ。頼めない時は息子の史仁だが、それでもダメな時はユウだ。さすがにアイツは他の二人が都合の効かない時間帯にフリーだったりするが、できるだけアイツには頼みたくなかった。
 だけどまさか息子と彼女の仲に嫉妬しなきゃならないって、俺もどうかしてた。だけど、嫌だったんだ……俺以外の男と『お似合いだ』だとか言われたことが。
 で、ぶち切れて部屋の寝室に朱理を連れ込んだってわけだ。
 最初の夜以来、この部屋には入れてない。次に連れ込むときは最後までする時だと誓っていたからな。まさかそれが……約束に1年も満たない半年になるとは。それでもよく我慢したと思う。半年も触れるだけで済ませたんだ。この俺が他の女も抱かずに、それをオカズに何度抜いたか。ったく、30後半のおっさんが何やってる、だよ。
 だけどそれも今夜が限界。デートの食事はパス。食べるのは朱理だ。
 理性ぶち切ってくれる表情と言葉に俺はもう、どうしていいかわからなくなるほど興奮していた。だけど、そのままじゃ彼女に痛い思いをさせてしまう。だから……たっぷり愛撫して、潤滑ジェルを使って少しでも痛みを加減しようとした。
 だけど……入り込んだ彼女のはじめてはキツクて、柔らかく締めつけてきて、すぐにでも暴発しそうだった。これで避妊具つけてなかったら瞬殺だったと思う。若造みたいに一発抜いておけばよかったと思ってもそれは後の祭り。
 しばらくは慣らすために動かないようにしていたが、ゆっくりと動き擦りあげると、ちゃんと感じる場所で声を上げる彼女。こんなとこまで優秀じゃなくていいのに。さっさと出して最初はおしまいにしてやるつもりだった。しょっぱなから何度もやれば彼女に負担をかけるから、あとで抜くのを手伝ってもらえばいいと思っていたのに……
「ここか? わかった……ゆっくり擦ってやるからな」
 彼女が上げた甘い声にあわせて腰を揺さぶると、一人前に感じ始めるんだ。あとは……しっかりとイクまでかわいがったさ。最高に可愛らしくていやらしい声を上げて、泣きながら絶頂に喘ぐ朱理は最高だった。俺は待ちに待ちかねた射精の瞬間を迎え……久々に大量の精を吐き出して最後まで絞り取られる快感を味わわせてもらった。
 はじめてでこれか? いままで慣らしてたとはいえ、これじゃ……俺を止められないだろうが!
 その後、朱理のお腹に新しい命が芽生えるまで、おれは徹底的に彼女を抱き続けた。我慢した半年分だと思っていたが、半年たっても一向に収まらず、年も忘れてひたすら……大学卒業して、教師として頑張る彼女を応援したかったのに、俺は劣情を抑えきれなかった。新しい世界で羽ばたく彼女を見守れず、俺の腕の中に抱き落としてしまったんだ。
「やぁあ……だめ、あっ……こんな」
 避妊してるつもりでも、家中のあちこちで抱きまくればルーズにもなるよな? 俺はベッドだけでなく、いつでも欲しがってることを、どこででも彼女に伝え続けた。心の底では自分のものにしたい気持ちのほうが強かったんだと思う。だから……避妊が曖昧になったことを詫びるつもりはない。朱理も嫌がらなかった。


「あーあ、女子高生だった朱理を女子大生の間に喰って、女教師になった今孕ませちまうなんて、鬼畜すぎませんか? タカさん」
 リュウが責めるような視線で睨んでくるが無視だ。もっとキツイ視線をたっぷりと彼女の親から浴びてきたところだ。
「朱理さんもまだ教職2年目でしょう? 本当によかったんですか?」
 ユウまでもが……瑠璃子には彼女の両親に挨拶行く前に散々詰られたさ。
「オレ、この歳で兄貴になるの? かんべんしてくれよ、親父。けど、朱理はおめでとう。こんな親父だけどよろしくな」
 史仁のヤツは俺と朱理とじゃ態度が違いやがる。まあ、自分の子供といってもおかしくない兄弟ができるんだからしかたがないか。
 息子には、この間ようやく母親のことを話せた。母親が俺達の事を忘れて今じゃ幸せに暮らしている事を知らなかったのはあいつだけだったからな……アイツもやっと本気で女に惚れることができるようになったから話せた。それまでのヤツは、女と寝ることで寂しさを埋めているだけだった。そうさせちまったのは俺のせいだとわかってはいる。大学卒業と同時に別れて、そのあとは……俺があいつの母親に去られたあとのようで。まるで自分を見てるようで辛かった。そんなに惚れてるなら離さなきゃいいのに……だけど俺も失敗した手前偉そうなことは言えなかったからな。
「幸せにしてやれよ? 泣かしたら承知しないからな」
「ああ、わかってるって」
 もう、二度と同じ失敗はしない。だからこそ、こんな普通じゃ認めて貰えそうにない恋に本気出したんだ。何に変えてもそれは約束するさ。

 だから……
「ねえ……出来たみたい」
 そう言って陽性の妊娠判定薬を見せられた時も、俺は素直に喜んだんだ。
「ほんとか? 産んで……くれるのか?」
「もちろん、いいんでしょ?」
「当たり前だ!! 一緒に育てよう、な」
「ええ」
 ニッコリと笑う俺の聖母。二度と失敗はしない、離しはしないと誓ったんだ。
「結婚するか……親父さんたち許してくれないかもしれないが」
 ふたりの交際は彼女が二十になった時に申告した。反対されても離れないという断固とした態度でだ。瑠璃子やリュウにも手間かけさせたけど、大事にしていることはきちんと伝えていた。指輪も、全部用意して……卒業と同時に一緒に暮らしていたのだから。
「でも仕事は年度末まで続けるわよ?」
「ああ、構わないよ。身体さえ気をつけてくれるんなら」
「この子が生まれるまでに……あのふたりもやり直せてたらいいんだけど」
「あのふたり? ああ、志奈子ちゃんと史仁のことか?」
「そうよ、だって……想い合ってるのに別れてしまって。どうやら居場所わかったらしいんだけど、ちゃんと逢いに行くのかしら?」
「なんだ、もう史仁の母親気分か?」
「だって志奈子ちゃん本当にいい子だったのよ? 史仁にはもったいないぐらい! あいつもまったく子供なんだから」
「俺の育て方が悪かったからな……」
「そうよ、ひどすぎたわ! 反省してるの? この子にはそんなことさせませんからね。でも……あなたは、今はちゃんと史仁を見てるわ。父親として」
「そうか……おまえとリュウのおかげだな。史仁が頼れる所をちゃんと作ってくれてたから」
「父親がどうしようもなかったからね。だけど、あなたもちゃんと彼を愛してたから今ままで手放さなかったんでしょう?」
 何度かそんな話があった。だけど俺は……妻だけでなく子供まで手放す気にはなれなかった。忙しさと子育てをわかってなくて、仕事優先できちんとと向き合えなかったのは申し訳なかったが。
「頑張りましょう、こんどはふたりで」
「ああ、頼むよ。俺の奥さん」
 こめかみにキスを送る。そう、俺もひとりじゃないんだから……
 来年には新しい命が芽生える。新たな家族を作るんだ。だから史仁、おまえも……手に入れろ。俺のように失敗するな。
 そう心から祈りながら、少し体温の高くなった彼女を抱き寄せる。
「で、いつからやっていいんだ?」
「な、なに?」
「セックスだよ。子供いるなら無理できないだろ? どのぐらいいいんだ?」
「もう、馬鹿っ! そんなの診察に行かないとわかんないわよ!!」
「そうなのか?」
 前の時は……それとなく避けられ出したあとに、できてるって聞かされたんだっけ。
「無理させないようにやるから」
「スルのが前提なのね……」
「もちろん。抱かずにいられるはずがないだろ? こんなに愛しい女を」
 耳元で囁いて耳たぶにキスを落とすと真っ赤な顔した朱理が照れて俺の胸を叩く。たまにマジで囁くとコレだ。普段は自分からでも平気で煽ってくるくせに。
「とりあえず優しくするから……お祝いの、な?」
 それはもちろん、愛の契ってやつだ。今夜は早めに寝かしてやるし、愛撫も当分ソフトでいくから安心しろ。
「俺の……」
 朱理、愛しい妻……この狂おしいほどの幸福感を、いつか息子も味わう日が来ることを祈る。
 何モノにも代え難い愛しい存在に恵まれるようにと……
BACK   HOME   TOP   NEXT

気に入ったら押してやってください。投票していただけると励みになります。

 
ネット小説ランキング>【年齢制限】部門>せ・ふ・れに投票

 

Photo material By