「椎奈...」
ホテルの部屋であたしは圭司に後ろから抱きしめられていた。
まだ慣れないそんな行為に、あたしは戸惑っていた。
「け、圭司...」
彼のことはずっと好きだったし、最初の夜だって何度も抱かれて、痛み以外の記憶も、ちゃんとある。ただあのときは愛されてるんじゃないって思っていたし、その夜一度きりだと判っていたから...だから、恥ずかしかったけれども、それ以上に何一つ逃さず覚えておこうと全神経をさらけ出していた。
だけど先日...再会して、出会ったとたん激しく求められて、キツク彼に抱かれた。
時間がないと急くように、激しく、深く貫かれた。あの夜のように時間をかけて開かれたのでなく、圭司の熱情に飲み込まれてしまうような夜だった。そのどちらもあたしには凄すぎて、あたしは思い出しただけで飽和状態になってしまう。
「もう待てない...」
腰のあたりに圭司の熱い塊が押しつけられる。
戸惑いは隠せなかった。
抱かれることに慣れないあたしはいつだって圭司に翻弄されてしまう。だって、そうされるまではこういう行為ってベッドに寝かされて目をつぶってれば終わるって思ってたから...だけどもそうじゃないことはこの身体が一番よく知っている。数回のソレで思い知らされていたから。
明日まで二人っきりのこの部屋で、いったい自分が何をされるのか...怖いような、なのに身体は何かを期待して熱を持ち始めている。
部屋の中に視線を泳がせると、壁の鏡にドレス姿のままの自分が写っている。
細い肩ひもだけで支えられた身体の線を出したそのドレスを着た自分に圭司の手が重なり動いてる様は、信じられないほど淫靡に写って見えた。
 
 
「椎奈、離さないから...今夜はもう...覚悟しろよな?オレの親友...いや、今は奥さんだな。」
この部屋に入ったとたんそう言われていた。耳元で圭司が甘く掠れた声で囁く。吐息が熱く、そのまま耳のあたりを彷徨うカレの唇に身体は敏感に反応していく。
そうなんだ、あたしはカレの奥さん...籍は休み明けに入れるつもりだけれども、もう身も心も圭司の妻...だめだ、実感がない。愛華がいれば母親のあたしは父親になろうとしてるカレとうまく合わせられるんだけれども、なにぶん恋人期間だとか、婚約、新婚の一番甘い時間を全部すっ飛ばして親になっちゃってるものだから、どうもこういうのになれない。
「椎奈、早く、すこしでもはやくおまえの全部に触れたい。そして、少しでも長くおまえと繋がっていたい...」
「やだ、圭司...そんなことばっかり...」
圭司は結婚式の間だって、終わってからもそんなことばかり言ってる。あたしにだってその気持ちはよくわかる...実家にいた間、圭司とはキス止まりだったけど、今朝もちょっとやばくって、圭司の熱情は十分にこの身体に伝わってきている。
夫婦って、身体を合わせることも繋がることも当たり前になっていくことなのかな?
だめ、ほんと、慣れないよ...ひたすら恥ずかしくって、考えるだけでも頭が沸騰する。恋人時代を過ごしてないそのギャップは大きい。
でも...覚悟はしている。
だからこそシャワーを浴びたいと言ったのに許してもらえなくて...そのまま圭司のその熱い腕に捕らわれてしまっていた。
何度も繰り返されるキスに煽られてあたしの身体はどんどんとろけていく。何をされても、もう逆らえないほどに...
「お願い...ドレスが皺になる...借り物だし、汗もかいてるから...あっ」
圭司の手がさらりとなでると、肩ひもが滑り落ちあたしの胸元が際どく晒される。脇のファスナーを降ろされ、そこから圭司の手が忍び込んできてあたしの胸をまさぐりはじめていた。ストラップレスのブラはずり下げられたかと思うと、すぐにカレの手で後ろのホックもはずされてしまう。
慣れすぎ...
今までの圭司の女性遍歴を知ってるからこそ嫉妬する相手も限定できなくて、こっちがおたおたしてる間にあたしはカレの思うがままにされてしまってるだけ...
すとんとドレスが床に落ちで綺麗な色の輪を作る。落ちかけたブラを必死で押さえてる間にあたしの背中もすべて晒されるしまつ。
ドレスの下には真っ白な下着セット。以前あたしの発案で貸衣装のところに売り物としておくことにした花嫁さん用の下着は白のレースが豪華でデザインも上品でありながら華やかなもの。ビスチェタイプのコルセットのオールインワンとガーターベルトのセットものなど数種類置いていた。意外と買い上げられる方も多く、専門の業者と契約して最近また種類も増えたみたいだった。その中であたしが中上さんから送られたのは肩ひものドレスに合わせたストラップレスのブラとレースのガーターベルトにガーターストキング、横がリボンになってるショーツだった。
床へと滑り落ちたドレスを拾うために身体を屈めて椅子の背に掛けた。その姿を後ろから圭司にしげしげと眺められていることに正面の鏡で気付かされる。
「なんかすごいソソル格好なんだけど、それ椎奈の趣味?」
「ち、違うわよ!これは、中上さんが...二人でホテルに泊まるって言ったらプレゼントだって...」
あたしは恥ずかしくて身を捩る。
「そういうの見ると、こうしたくなるな。」
後ろから再び抱き寄せられて、あいた背中と首筋に何度もキスされる。
「こういうのはそのまんま出来るようになってるんだろ?」
下に降りてきたその手が何度も薄い布地を目指して往復を始める。たどり着いた先で、ゆっくりと足の付け根の襞の上を擦る。
「やぁ...ん」
何度も上から擦られて熱い潤みが生まれてくるのがわかる。それは自分の身体が喜び始めている証拠。恥ずかしくて溜まらないけれども自分が圭司を求めていることに気付かされる瞬間でもある。
圭司の手が下着の横のひもに掛かるとするりとソレを解く。ゆらりと落ちていく下着。残ったのはガーターベルトとストッキングだけのあたし...そして、晒される自分の身体の一部分に神経が集まる恥ずかしさと熱い期待...
圭司の指がゆっくりとその潤みを絡めてあたしの中に埋め込むのを感じた。
「やぁ...ん、け、圭司っ...お願い、シャワーを...」
背中を舐めあげられながらも圭司の指があたしを責め立てる。あたしは鏡に映る自分を視界の端で判っていながらも、その恥ずかしさから逃げようと訴えていた。鏡の中のあたしは自分でも信じられないほど扇情的で、まるで自分から誘っているかと思うほどの女の顔をしている。寄せられた眉、半開きの唇。そして何よりも奏でる甘い嬌声...
「なぁ、とりあえずこのまま繋がりたい。もう我慢なんて出来ないっ!」
十分な潤いを確認した圭司がかちゃりとベルトをはずしてそのまま繋がろうとし始める。
「えっ、そんな...このまま?」
立ったまま??そんなやり方なんて知らない...そういえばこの間シャワー浴びながら立ったままイロイロされたような...でも...怖くなって身体を引こうとした。
「そこに手をついて...」
圭司に即されて身体を目の前のテーブルに押しつけられる。
「そのままこっちに腰を...」
ぐいっと前屈みにされると圭司の熱いモノがいきなり侵入してきた。
「はうっ...ぐっ」
未だ慣れないその感覚にあたしは身体を固まらせてうめき声を上げる。ソレは熱く堅い情熱のままにあたしを責め立て始める。出入りするたびに響く水音、打ち付けられるカレのモノ...
「ああ、椎奈の中だ...」
「け、圭司ぃ...」
あたしは切なげな声をあげてしまう。こんなしたこともない格好、繋がってるのはそこだけで、顔も見えないし、肌の温もりもなくて少し不安になってしまう。ただ熱いそこと、あたしの腰を掴んで離さないカレの手の強さだけがあたしを繋ぎ止める。
「なぁ、椎奈の家にいる間、触れることも出来なくて...ずっと、椎奈とこうしたくてたまらなかったんだ...」
「あん...はぁん、あぁ...」
しだいに速度を早めていく圭司の腰の動きにあたしは声にならない声をあげ続ける。それだけでも溜まらないのに、カレの右手があたしの敏感な部分に触れて蜜を絡めて擦りあげる。
「あっ、あぁん、いやぁ...圭司っ、あ、あ、あぁ...」
「椎奈、キツいか?おまえ、こんなやり方知らないもんな...けど、その、下着が悪いんだぞ?そんな格好見たらこうしたくなってしまう...」
そ、そんなものなの?あたしにはそんな知識なくって、ただ、雑誌に載ってる花嫁さんの下着特集や業者のお薦めのものから上品なデザインを選んでいただけだった。
「なあ、今のオレには椎奈が足りなさすぎるんだ...早く補充しないとおかしくなってしまうんだ。」
打ち付けられるその動きに変化をつけられて、あたしはもう意識すらはっきりしなくなってしまう。テーブルにしがみつくけれども激しく揺らされて今にも崩れ落ちそうになる。
「あっ、だめ...あたしも、おかしく、なるっ...っ!」
下半身からこみ上げる快感に身体がしびれた。圭司の指がそこをキツク擦りあげるとあたしの身体は大きく反り返り激しい快感が痺れとともに駆け抜けて何度かけいれんのような震えを繰り返した。その瞬間、激しく出し入れさせた圭司は、苦しそうな声をあげると、そのままあたしの奥に熱いモノを解き放った。脈打つモノを感じながら、無意識にそこを収縮させてしまう。
「椎奈...すげ、いい...まだ締めてくるのか...」
もう一度彼のモノをぐぐっと押し込まれて、あたしはもう立っていられなくてそのままどさりとテーブルに倒れ込む。繋がった部分は未だに快感に震えているようだった。
そのまま背中に優しくキスされて、顔を無理矢理向かされて優しくキスされた。自分自身をゆっくりと抜いた圭司は、あたしを抱きかかえるとバスルームに連れて行った。
 
シャワーを浴びせながら体にソープをまぶされる。丁寧に洗う振りをして、隅々まで泡で刺激されて、あたしはまた浴槽のカレの腕の中でぐったりとしてしまった。
「おねがい、圭司...もう...」
ようやくベッドに横たえられてもあたしは指一本動かすのすら億劫になっていた。
「ああ、少し休めよ。食事頼んでおいてやるから。」
ひんやりとした肌触りのよいシーツに包まれて、あたしは軽い眠りに落ちていった。
 
 
〜END〜
その後、熱い朝と、熱い昼が
繰り返されたのは
言うまでもない。
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〜あとがき〜
やってしまいました。エロイです〜〜〜〜(涙)
地下室に送ろうかと思いましたが、やっぱ地下室にはもうちょいハードなモノが送られるかと考え直しました。甘いのは甘いですしね(笑)
でも、思いっきり18禁なので、以下の人は見ないように!!

 

 

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