3 離陸。 | ||
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「南ちゃんは何でAV女優になったの?」 練習用のスタジオで、先程から和馬はユキを怒鳴り散らしていた。 歌う時のマイクの持ち方から、立ち方、歩き方までうるさくチェックしている。 今日は四人で簡単な音合わせに入るはずだった。けれどユキはタブ譜も読めず、それどころではない様子だった。そんな二人を放って、スタジオの外に出た三人。 社とコウはさっきから南を前に鼻の下を伸ばしていた。 「…私とユキは、東京に出て来て、最初は寝るとこもなかったの」 南は、一つ年下のユキが中学を卒業するまで、定時制の高校に通いながら、昼は食品加工工場で働いていた。 「私はユキを何とか有名にしたかった。それで───…お給料全部持って、去年の春、家出したんだ」 三人は和馬とユキの邪魔にならないよう、スタジオの通路横にある狭い休憩所でたむろしていた。そこにはイスもテーブルも無く、灰皿と、自販機が置いてあるスペースだった。 「それで?」 コウと社は身を乗り出して訊いてくる。 「ユキは歌が上手くて、いつも音楽の成績だけは良かったの。だから音楽事務所とか、色々回った。」 「ヘェ………」 「でも全然相手にしてもらえなかった。…そしたらある事務所の人が、ボーカルトレーニングに通え、って勧めてくれた」 南は自販機で買ったペットボトルの蓋を開けた。 「いくらかかりますか、って訊いたら───すごく高かった!」 そう言って笑ってみせる。 「…それで、いきなりAV…?」 「嘘みたいでしょ?でもホントだよ。その日、新宿でスカウトされたの」 「AVに?!」 「タレントやらない?って」 「…そーだよ、南ちゃんならタレントで十分いけるよ」 「でも、そういうプロダクションも、最初は研修とかで、所属するのにお金が要るんだよね」 南はPタイルの床に腰を下ろしたまま、ジーンズの裾を少し触った。 「あたし今すぐお金が要るの、それもまとまったお金!って言ったら、その人達AVを紹介してくれた。」 「……………」 コウは半ば口を開けたまま呆然としていた。社が同じ表情のまま、呟く。 「そんな簡単なもんな訳?」 「そう、カンタンだよ?」 南は再び顔を上げると、白い歯を見せて笑った。 「撮影なんて一日で終わるしね、お金もすぐ貰えるし───…」 「そうなんだ………。」 「それが妙に人気出ちゃって、今に至ってるんだ」 「なるほどな…」 「弟のためかぁ…」 急に空気がしんみりと気まずくなる。 「───で、でもよかったじゃん、それでAJEのボイストレーナーに付けてさ、そのトレーナーがオレらの事務所に顔繋いでくれたんだから」 「そうそう、こんなに上手い事行くなんてスゴイぜ?何しろオレ達、この一年間ボーカルを探し続けてたんだから」 「そうだったんだ」 ぎこちない空気を掻き消すように、三人はそれぞれ笑ってみせた。 「───なぁ、南ちゃん、やっぱAVって、マジ撮りしてる訳?」 「マジ撮りってなに?」 「その…、本番ハメ撮りってヤツ」 社が好奇心と遠慮の混じった、低い声を出す。 「───うん、そう、けっこう色々あって大変なんだよ?」 「ど、どんな風に?」 二人は妙に落ち着かなかった。それに対して南は平然と、人懐っこい笑顔一つ崩さない。 「例えば───…顔にね、こう、自分の髪がかかるとダメなのね、判る?」 「あ、あぁ、なるほど、」 「だからこうして、何度も髪をかき上げなきゃならなかったり───…、」 「うん」 「他には───そう、撮影の前日には、ノーブラノーパンで」 「え?!」 「下着の跡が付いてると格好悪いから」 「ヘェ、苦労があるんだ…」 「色々考えながら演技しなくちゃいけないから、頭使うし、けっこう大変」 「…あれってやっぱ演技なんだよなぁ」 社が小さく肩を落とした。 「当たり前じゃん」 「そっか…南ちゃん、大人しい清純派じゃなかったんだ…」 ギャハハ、と大声を出して笑い、彼女は社の太い腕をバシリ、と一発叩いた。 「そんな子いるわけないよ、今時、しかもAVに」 「そーだよなぁ…」 「それが現実ってもんだよなぁ」 「おい、中入れ」 いきなり和馬がスタジオのドアから顔を覗かせた。 「音、合わせるから」 その仕事モードな命令口調に、二人はのろのろと、授業の開始チャイムに反応するように腰を上げる。 「アクビ、悪いけど今日はこれで帰ってくれ。───それとな、事務所寄って、黒川さんと話ししろ」 言うだけ言って、和馬はドアを閉めた。 静けさの戻った白々とした蛍光灯の下で。南は立ち上がり、一人ため息をついた。 「工場の仕事なんだけど───…今月一杯で辞めて貰って、」 「───え?ユキが、ですか?」 「当面の生活費は支払うから、こちらのスケジュールで動いて貰いたいんだ」 黒川は爽やかな笑顔で、必要事項だけを淡々と話した。 「スタジオ近くのマンションを一部屋用意したから、今住んでる処も、今月末で引き払って、こっちに移ってくれるかな」 「あ、─────はい!判りました」 「…これから忙しくなるよ」 黒川はねぎらうように柔らかな口調だった。 「ユキ?!どうしたのその髪」 6畳一間の部屋の、少ない荷物を片付けていた手を止めて、南は戸口に立っている彼を見上げた。 ユキの髪は、プラチナに近い金髪に変わっていた。 元々柔らかな猫毛の髪質に、軽くパーマがかけられている。 「…何だか知らない人みたい………」 思わず南は、そう呟いていた。 戸口で所在なげにたたずむユキは、まるで映画のスクリーンから抜け出して来た登場人物のように見えた。 「気に入らない…?」 ユキに釘付けのままの南に、彼は少し頭を掻いて、目を伏せた。 「どうしたの、その服」 「和馬がもう要らないから、ってくれた」 黒いベルベットのジャケットに黒いフェイクレザーのパンツを身につけている。 南はようやく、ムリに笑顔を作った。 「すごくいいよ、ちょっと───驚いただけ。だってホント、あまりにも見違えたから」 「…これでもう、マネキンに見えないって。」 その言葉に、今度は南も思わず微笑んだ。 「うん、すごく変わった。ドキドキするくらい」 「─────手伝うよ、片付けるの」 「うん、ありがとね」 明日には、ここを発つ。南はサビついた重い鉄窓を開けた。首を伸ばすと、月が見えた。 「…ここに、一年も居なかったね」 「………ホントだ」 「これから、人生が変わる」 南の呟きには、一つの決意が込められていた。 「うん。」 ユキは自分の持ち物を片付け始めた。 ───こんな、オンボロのアパートでさえ、借りる時には至難の業だった。 お金を持っていても、二人は余りにも子供だったから。 …アダルトビデオの製作会社が法人の連帯保証人になってくれたけれど、それでも結局二人のことは、後見人である学園長に連絡されてしまった。 …けれども学園長をもってしても、二人を連れ戻すことは不可能だった。 …後見人の志賀は知っていた、南の意志の強さと、破天荒なまでの行動力を。 そして二人を引き離すことは出来ないということも。 「………布団どうする?」ユキが窓辺に立つ南を見る。 「…運べないね、あたし達二人じゃ」 「今度の部屋、ベッドが一つならあるって。家具付きの部屋なんだって。黒川さんが言ってた」 「………そう、じゃあ───…、ベッド買えばいいか、もう一つ」 南は肌寒さに自らの身体を抱き、少しさすった。 そしてもう一度、闇夜に浮かぶ月の光を見上げると、気が済んだように重い窓枠に手をかけた。 「ベッドって高いんじゃないの?」 「バカねぇユキ、今なら一万円でも売ってるよ?」 「そっか」 「…持って行くもの、全部そこのバッグに入れてね」 「分かった」 ユキは数冊のノートを取り出した。南はパラパラとそのノートをめくっている彼の隣りに腰を降ろした。 「学園出る時、荷物それだけだったね」 「───うん」 懐かしいような甘酸っぱさが、ふいに二人の胸の上、込み上げる。 …ユキにとっては、そのノートが唯一、自分の内面にある想いの出口になっていた。 ─────まだ寒い春の日、学園を後にしたあの夜の事を、きっと二人は一生忘れる事はないだろう。胸には大きな期待と不安を抱え、未知の真っ黒な大海に向けて、二人は小さな舟で漕ぎ出したのだ。 翌日二人は一年近く住み慣れた場所を後にして、2階に住むおばあさんに礼を言う。 「…テレビ観てね、歌番組。ユキが出るから。きっと観てね!」 おばあさんは、いつまでも玄関口で二人に手を振っていた。 「うわぁ!キレイ!!」 新しい二人の城は、随分とグレードアップした築浅のマンションだった。 エレベーターを上がった、8階。フローリング貼りの、2DK。 間仕切りの引き戸を全部開ければ、十分な広さがある。 「スゴイ!前のアパートの時も、自分達の家が出来たんだーって思ったけど、今度はお風呂も洗面所もトイレもキッチンもある!すごい出世だね!」 二人の引越し荷物は、洋服や少しの食器など、たったバッグ二つ分に過ぎなかった。 「エアコンも付いてる………」 ユキがサイドボードにあったリモコンを手に取り、スイッチを入れた。 「スゴイ…すごいよね………!」 南は飛び跳ねるように部屋のあちこちを見て回り、目を輝かせて「スゴイ」を連発した。 そして窓を開け、月を見上げる。 「──────…。」 「…何?」隣りにユキが並んだ。 「昨日見た月より…空がよく見える分、月が喜んでる気がする」 上弦の月は白く、寒い冬の夜を照らし続けていた─────二人を見守るように。 灯かりを消した真っ暗な室内で、二人はベッドの中に居た。 「早く寝なさいよ」 「何だか…目が冴えてて、───南が寝ろよ」 上掛けの中で身じろぐと、相手の身体に当たってしまう。 「ベッド、狭いな…」 「ユキが大きくなったんだってば」 「南もな」 「……………………」 「明日、ベッド買いに行こう。どこに売ってるの、ベッドって…南知ってる?」 「いいから早く寝なさいってば」 「南が寝たら寝る」 「ダメ、ユキが先に寝て───痛、イタタタ…」 「南?」 「ユキ、あたしの髪、背中で踏んでる」 南は上半身を少し浮かすと、自らの髪を手で引っ張って取り戻した。 ふいに青白い闇の中、見上げたユキと目が合う。 そのまま気恥ずかしさに、ぎこちなく寝返りを打ったのは二人同時だった。 「…こうやって、一緒に寝たことあったよね、昔」 「───小学校の時だ、夏の夜───カミナリがすごくて」 「…そう、ユキ、カミナリ怖かったんだよね」 「……………。」 「あたしが抱っこして添い寝してあげた」 「………うん───歌も歌ってくれたよ」 「そうだったっけ?何の歌?子守唄?」 「星に願いを」 「よく覚えてるね…」 「南、もう寝たら?」 「何か、───…落ち着かないよ、引っ越したばかりだからかな、それと───…。」 隣りに居るユキが、まるで自分の知らない別人に思えて。 「その金髪のせいかも。違う誰かと居るみたい。」 「……………」 言ってしまってから、ユキを傷つけた気がして、南は少し慌てた。 「ねぇ歌、歌ってよ、そしたら眠れるかも」 「え、………嫌だよ」 「いいじゃん、昔歌ってあげたでしょ、─────星に願いを」 都会の夜に、静かなアカペラが流れ始めた。 少し掠れた声は、囁くように小さくて。 黙って聴いていた南は、瞳が微かに揺れるのを隠すようにして目を閉じた。 ───今日は二人の、二度目の旅立ちの日だというのに。どこかで得体の知れない不安を敏感に察知している自分が居る。何も悪い事など起こってはいない。全てが滑るように順調なはずで。 ─────なのに、どことなく浮かない、ブルーな自分が居るのだ。 「…南、寝た?」 呟くような低い声に、彼女はわざともう聞こえないフリをした。 …そんな風に眠りについたものだから、南は気がつけば暗い夢の淵に流されていた。 ─────それは彼女の17年の人生の中で、最も思い出したくない悪夢のような思い出だった。 …あれは10歳の時。ユキが里親の元へ引き取られる事が決まった日。 あまりのショックに、後頭部を誰かに殴りつけられたような鈍い衝撃が走り───…時間と共に、今度は息が出来ないほど、胸が苦しくなった。 その夜、南は呼吸困難に陥り、原因不明の呼吸器系の発作で、生まれて初めて救急車に乗せられた。 ─────そして。4〜5日の入院の後、戻って来た学園のどこにも、ユキの姿はなかった。 「!!」 息を飲み、南は飛び起きた。 心臓が口から飛び出しそうなほど、激しく脈打っている。 パジャマ代わりにしているトレーナーは、全身に張り付くほどにぐっしょりと濡れていた。 「……………………。」 外は、白んでいた。 見慣れぬオフホワイトのクロスを貼った天井に、ここは病院なのかと錯覚し、…けれどすぐに気がついた。そう、ここは昨日越して来たばかりの部屋だ。 おそるおそる身体を起こし、隣りを見た。 ─────ユキが、そこに居た。 南は初めて大きく呼吸し、ため息とともに額の汗を手の甲で払った。 ユキは背を向けるように、その長身を折り曲げて眠っていた。とても静かで、ピクリともしない。そんな横顔を見下ろしながら、南は神様の子だ、と思った。 ─────おそらく、東洋系以外に、白い血も混じったユキの顔立ちは、彼が幼い頃から、良くも悪くも彼を目立たせた。 赤城学園では、時折子供達の間で「めんだん」と呼ばれる行事があった。 これは子供と、里親希望の大人を引き合わせる個人面談の事で、この日ばかりはいつもイタズラばかりしている子供達も、一番可愛く見える服を着せてもらい、お行儀よくイスに座るのだ。 ユキはそんな大人達を驚かせるほど、可愛い男の子だった。 「まぁ!天使みたい」 「何て可愛いの」 ユキを初めて見る大人達は、彼を覗き込み、見開いた目を輝かせる。 ─────そして、いつも決まってそれは始めのうちだけだった。 …何故ならユキはいつも一言もしゃべらず、笑顔も見せず、 ただそこに血の通わない人形のように。伏せ目がちに座り込んでいるだけだったから。 「………大人しい子ねぇ」 「女の子だったらよかったのに」 ユキを欲しがる大人の、断り文句はいつも大抵決まっていた。 …一方、南も第一印象の良さでは学園内でも群を抜いていた。 人見知りしない南は、いつもハッとするような極上の笑顔を浮かべて真っ直ぐな瞳を見上げ、大人達にごあいさつした。 普段は男の子以上に落ち着きがなく、始終走り回り、膝をケガしている南も、綺麗な色のワンピース姿で現れるとまるでフランス人形のようだ、ともてはやされた。 「見て、長いまつ毛してるのねぇ」 「綺麗な子だな」 南を、まるで高級なペットでも選ぶ時のように、皆近寄ってはしげしげと見つめた。 南も、注目を集め、賞賛されるのは嫌いではなかった。───けれど、彼女には、 絶対にどこの里親にも引き取られまい、という強い意志があった─────ユキと一緒でなければ。 相手が女の子一人しか望んでないと判った途端、南はワザと嫌われるような事を口にした。 「南ちゃん、何して遊ぶのが好き?」 「探検ごっこ!」 「探検ってどんなことするの?」 「どこかへ虫を探しに行くの。イモ虫とか、幼虫。それを手でちぎったら、そのままウニョウニョ動くの。それを見るのが好き」 ─────こうして二人は、里親が決まる事もなく、学園に残り続けた。 …けれどそれでも。ユキが9歳の時、どうしてもユキを引き取るのだ、と申し出る夫婦があったのだ。 南はユキの居所を調べ、一人学園を抜け出した。 そして数日後、彼女は無一文ながら、何とユキの貰われた先にたどり着いたのだった。 その旅は幼い子供一人ではとても危険な旅だった。…南はヒッチハイクで車を乗り継ぎ、ユキの元までたどり着いたのだ。─────彼女がラッキーの持ち主でなければ、とんでもない事に巻き込まれていたかも知れない。 一方、ユキの里親となった両親は、彼の扱いにほとほと困り果てていた。 全く口を利かないばかりか、うつむいたまま、意志表示も感情表現もしない。 その上、出された食事にはほとんど手を付けず、幼いユキの身体は衰弱していった。 ………こうして約一週間後、ユキの居るおうちに辿り着いた南を見るなり、ユキは駆け出していた。 そして南に隠れるようにして泣きじゃくった。 ─────二人は再び、引き離された。 大人達にとっても、本意ではなかったけれど、それは仕方のない判断だった。 けれども何度も南はユキの元へと姿を消した。そのたび学園は大騒ぎになった。 何度も捜索願いが出され、南は連れ戻された。 ─────里親がユキを諦めるまで、それは続く勢いだった。 小さくて泣き虫だったユキと、それをかばっていじめっ子に向かって行く果敢な南。 二人は、この広い広い世界でたった二人きりの、家族だったのだ。 「……………。」 南は愛し気にユキの眠る横顔を見下ろした。 母親が小さい子供にそうするように、優しくそっとその柔らかな髪を撫でる。 南にとって、ユキほど大切なものはなかった。ほんの3、4歳の頃から、自分は彼にとっての父親であり、母親であろう、と。そう心に言い聞かせて来た。 いつもいじめられて泣く小さなユキを助けに駆けつけた。 幼稚園の時、大きくなったら何になりたい?と保母さんに尋ねられ。南は「ウルトラマンになってユキを助ける!」と叫んだ。それを何故大人達が笑ったのか、その頃はまるで解からなかった。 ─────ユキの白に近い金色した髪は、猫の背中を撫でた時のように心地よい手触りだった。 見下ろす彼女の長い髪が肩から滑り落ちて、ユキの頬に当たった。 慌てて南はその髪を払いのけた。ユキを起こさないように。 …こんな風に、改めて彼の顔を眺めた事など、今までになかったけれど。 じっと身じろぎ一つせず動かないユキは、和馬の言った通り、まるで紳士服売り場のマネキン人形だ。 南のイメージの中のユキは、今も泣いてる子供だった。 …けれどいつの間に彼は、こんなにも大人びた顔立ちになっていたのだろう。 最後に彼の涙を見たのは、ひょっとしたらあの───9歳の時、捜し出した彼と、里親のおうちの玄関で。再会した時かもしれなかった。 南は再びベッドに横たわった。そして目を覚まさないユキを、背中からそっと抱いてみた。 微かにパーマ液の匂いが掠める。 「……………。」 彼の肩は、南が腕を回しても抱けないほど、広くなっていた。 その背中に、そっと耳をそばだてて。ユキの心臓の音を確かめた。 その音は静かで、南の耳の鼓膜に規則正しく響いて来る。 その振動と、彼の体温に安心した途端、南は再び眠りに落ちていた。 |
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