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先生とあたし

1.変化

高校生って、子供でなくて大人でもなくて...
でも先生からすればただの生徒で。
あたしもただの生徒の一人で、憧れとかそんなんじゃなくて、純粋に尊敬してたのに...
先生もただの男だったの?



真面目なだけが取り柄のあたしはいつもの眼鏡に三つ編み、規定の制服でクラスメイトにも馬鹿にされてる感じ。
だけど、深山先生はいつも褒めてくれた。
数学のテストで満点とったときも
『よく頑張ったな。』
って...

「こうも続けて満点とるとは、何かご褒美かなにかいるか?」
そう言われても何にも出てこなかった。
だってご褒美が欲しくて頑張ったんじゃないし、自分の為だけど、先生に認めてもらいたかったから。
それだけだった。
先生は今時珍しい縁付の眼鏡で、スーツもいつもきっちりと着こなして一分の隙も見あたらないその物腰は武道を極めているからだそうだ。
だけど、眼鏡を取ったからといってトクベツハンサムでもない。ただ怖いくらいに切れ長の瞳と薄い唇が冷ややかなだけ。
でもあたしは知ってるの。
先生の笑顔がとっても優しいこと。
誰にでも笑いかけたりしないけど、無愛想で余計なこと話さないけど、その笑顔がすごく優しいって。

だからご褒美にお願いしたの。
「先生の笑顔を下さい。」
って
先生すごく吃驚した顔してた。
「あたしの姉がココの卒業生なんです。先生が担任していたって聞いてます。城野結衣子って言うんですけど覚えてませんか?」
「城野、の?」
「はい!先生の写真見せてもらったんです。文化祭や体育祭にみんなでわらってる写真とか、あと一枚、すごく優しく微笑んでるのがあって...先生あんまり笑わないから、一度でいいからあんな笑顔みたいなぁって。」
「......」
「先生?」
「まさかとは思ったが、城野の妹だったとはな。」
「お姉ちゃんの事覚えてるんですね?」
「忘れるものか...笑顔の似合う明るい生徒だったよ。あまりにもおまえとは違いすぎるから、真面目で野暮ったい恰好した城野が結衣子の妹だなんて、思いたくなかったからな。」
低い声だった。先生の声は普段から低いけど、もっともっと低くて怖い...
「あ、あたしは...」
「何が目的だ?私を笑いに来たのか?生徒に夢中になってさっさと捨てられた無様な高校教師を!」
「え?おねえちゃんと、先生が??」
しらなかった。そんなことお姉ちゃん一言も言わなかった。だって大学に通い始めて派手に遊ぶようになって、カレシも出来て...
「大学生になった結衣子は遊びたい盛りで、行動を縛る私がさぞかし鬱陶しかったんだろう。酒を飲むな、合コンに行くな。いくら言っても聞いてくれなかった。卒業後半年で別れを告げられたよ。それ以来、生徒を信じることも、笑うことも出来なくなってしまった。だけど、おまえは、真面目で、いつも一生懸命で、不器用で、まるで自分を見てるようでハラハラしたけれども、その分気になって...可愛かったのに...」
「先生、あたしは、」
「姉妹で私を馬鹿にするのか?私を笑うつもりなのか?」
「知らなかったの、あたし、先生とお姉ちゃんが、そんな...」
「ちょうどココだった。結衣子が私に告白してきたのも、キスしたのも、卒業式の前に、初めてアイツを抱いたのも...」
「せんっ...んんっ」
いきなり覆い被さってきた先生の腕の力は強くって、一方的にあたしの唇を塞いだ。
ここは数学教員の教務室。今は他に誰もいない。
必死で藻掻くあたしを床に引き倒し、両腕を頭の上でまとめられて、逃げられ無くされた。
空いた手で胸をまさぐられ、ブラウスの下からその手が入り込んで胸の先をきつくつまんだ。
「姉貴と同じところが感じるのか? 」
「いやっ、先生...あ、あたしはお姉ちゃんじゃない...ううっ」
嗚咽で詰まる声が必死で訴えるけど、先生はあの冷たい眼をあたしに向けるだけ。いつも撫でつけられた前髪がはらりと落ちてきてあたしの首筋を掠めた。
「だけど、じゃあ、なんでだ?ココも、ココも、こんなに...」
いくら真面目でも、エッチなことぐらい知ってる。耳年増だし、本だって色々読んでる。女でも興奮することだってあるんだって...
先生の指がスカートの中、下着の上を何度も往復して、くちゅりと濡れた染みを作り出すのをその指で確かめていた。
「やぁああっ、先生、あたし...そこは...まだっ...」
自分で慰める時だって、まだ怖くて何も入れたことのないその中に、ぷつりと引きつれた痛みと共に先生の指が入り込む。いくら濡れはじめてても、何も許したことのないそこは違和感と痛みでいっぱいだった。
「初めてなのか...?」
うんうんと何度も首を縦に振る。
「結衣子は...何度も私を誘ってきたけれども...私は、卒業まで手を出さなかった。それは私が教師だからで...結衣子は、慣れていて...」
「せん、せ...?」


「すまない...」
指を引き抜かれ、身体の上から先生の体温が消えた。
あんなにも表情は冷たいのに...熱い、熱い身体だったのに、居なくなると寂しく思えたのはなぜ?
「おまえは、結衣子とは違う...それはずっと、見てきてわかっていたはずだ。」
乱れた衣服を先生の手がゆっくりと直していく。まるで、子供を着替えさせるような手つきで。
「怖かっただろう?」
あたしは首を振って答えた。
「そんなことないだろう?怖かったはずだ。いきなり教師に襲いかかられて...すまない。学校に訴えてもらっても構わない。わたしは、結衣子をここで抱いたときから、教師の資格なんて無かったんだ。」
静かな声だった。いつもより静かで優しい声。
「そんなこと、ありません!先生は、先生です!あたしの大好きな先生だから、だから、何されても、怖かったけど、だけど...」
泣きじゃくるあたしの顔を先生の腕が引き寄せ胸に押しつけられた。
「馬鹿だな。おまえは被害者なんだから、もっと私を責めていいんだよ。」
「だって、先生も泣いてるから...」
そう言われてようやく気がついたようだった。先生の頬が濡れていることに。
「お姉ちゃんがいっぱい傷つけてごめんなさい。ありきたりが嫌いなおねえちゃんは、きっと、先生との恋っていう禁断のシチュエーションに逆上せてたんだね。でも縛られるのが嫌で逃げ出したんだ。あたしは、逃げないよ?先生。」

そっと手を伸ばして先生の涙を指ですくう。
「城野...おまえは、優しいな。」
ふっと笑ったその微笑みはあたしが欲しかったあの写真のモノと同じだった。
「先生、ありがとう。ご褒美もらったよ?」
あたしも目一杯の微笑みを返した。
「そんなのでいいのか?」
優しい声、視線。あたしの欲しかったもの。
「ん、その代わりココで毎日欲しいの、その笑顔が。あたしにだけ、他の人には見せないで...」
意外と強いのかもしれない。あたしの独占欲。
「構わない。城野の言う通りにするよ...おまえには、敵いそうにないから。」
そう囁いたと、そっと引き寄せられて優しいキスもらった。
「じゃあ、ココにいるときは名前で呼んで?」
「依里子。」
「それから、さっきみたいなキスなら、またしてもイイよ?」
「わかった、じゃあそれ以上は?」
くすっと笑った先生の笑顔は卑怯だ。すごく色っぽいんだもの。
「し、したかったら...してもイイヨ?」
「悪い先生でいいのか?」
「うん、あたしと居るときだけ、なってもいいから...」


その後しばらくは先生の腕の中で何度も頬や髪にキスが降りてきて離してもらえなかった。独占欲の強いのはあたしだけじゃなかったらしい。

暗くなった誰もいない校舎を抜け出して、先生の車に乗り込んで送ってもらったの。
それからは...

ナイショ♪
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