12
「あっ、やぁ...ひ、広海っ...」
「おい、声がでかいと隣に聞こえるぞ?」
「んっ...」
部屋に入るなり引き寄せられたあたしはカレの腕の中で翻弄され続ける。
未だにベッドにまでたどり着けない。
脱ぎ散らかした服が点々とドアのところから続いている。
「竜姫...スカートなんか履かなかっただろうな?」
「あっ、は、はいてないよ...」
ようやくたどり着いたベッドの縁に取りすがるけど広海は容易にその腕を緩めてはくれない。床に膝立ちでシーツに取りすがるけれども、後ろから覆い被さったカレのあたしの身体への愛撫は続く。胸の先を強く摘まれ、背中を唇が這っていく。
ようやくベッドに這い上がるとそのままさらけ出された秘所に吸い付かれて、高みへと運ばれていく。
「あっ、あっ...くっんっ」
意識が飛びかけるとすぐさまソコに圧倒的な存在を感じる。
「やぁ、だめ、イッたばっかりは...」
問答無用に押し込まれる、その熱情。
いつもより荒っぽくって、熱くって強引で...そして、それに逆らえないあたし。
「竜姫...はなれてたのなんてほんのわずかなのに、こんなに我慢がきかないなんてな...」
後ろから打ち付けられてあたしは身体の奥まで歓喜の声を上げてしまう。必死で堪える声...だって、隣に聞こえたら明日の朝は間違いなく恥ずかしい。
でも、打ち付けられるその音も聞こえてるんじゃないかって思うともっと恥ずかしくって...
「竜姫、そんな、身を捩るたびに締め付けんなよ。我慢できなくなるだろ?」
「だ、だって...」
「この恰好いやか?」
あたしは恥ずかしさのあまりに頷くと広海は四つんばいのあたしを抱き上げて起こすと、そのままあたしを乗せて突き上げてきた。
「うぐっ...んっ!」
きしむベッドの縁に腰掛けた広海、深く突き上げられて、その上で何度も身体を反らせて踊ってしまうあたし...思わずふと今、あの子も、来栖さんの彼女の紗弓さんもこうやって愛されているんだろうかって思ってしまった。
向きを直されてやっと広海の顔が見える。あたしは自分からキスして、ゆっくりと動いた。
「広海っ、もう、どこへも...行かないで...置き手紙なんて...イヤ!」
「ああ、悪かった...ごめん」
苦しげな声を残して、ゆっくりと口づける。少しだけ目線が高くなったことで生まれた余裕に思わず自ら動きを続ける。
「あっ、ああん、いっ...だ、めっ...んっ!」
しばらくはおもしろそうに見てた広海もあんまりあたしが動くから表情が変わってくる。
「このままイカされるのもいいけど、くっ、本意じゃないな...」
そのまま背中からシーツに落とされ、視点が逆転する。
やだ、こんな体勢...逆さまのように、身体は宙に浮いてるような...
側にあったタオルを声が出ないように噛んでろと言われて、口の中に突っ込まれると、後はもう、悲鳴しかでなかった。
声にならない声がタオルの布地に消されていく。
限界まで来てたわたしはもう、揺さぶられるだけ揺さぶられて、その間ずっと意識は飛びっぱなしで...広海が小さなうめき声を上げて果てるまで、イキっぱなしだった...
「竜姫...明日早いけど、もう一回だけな?」
あたしの意識が戻ったのを確認すると、ゴムを変えると再びのしかかってくる自分の彼氏にため息をつきながらも、ゆっくりと腕を伸ばした。
「その前に抱きしめて、ね?」
優しく笑った広海は何度も優しいキスをしながらぎゅうってあたしを抱きしめてくれた。
「取りあえずは、これで撮影終了っと。」
「おー!おつかれ!やったな、いいの撮れてる気するよ。オレたちも、久我!」
「コイツで行けるとこまで行けよな。」
翌朝、昼前には全部の撮影が終了する。
仲間達の声が代わる代わる広海を励ます。みんなほとんどの事情を知っていて協力してくれたんだ。今回の作品も出品はする物の大学の名前ではなく、久我広海の名前ですると承知してくれている。みんなの気持ちがすっごく嬉しかった。
「ね、あれ使うの?」
あれって言うのは、今朝撮った秘密のフィルム。
今朝早くに広海が起き出して撮った1シーン。
だって、昨夜はやっぱり広海に翻弄されたけど、いつものように際限なく、2回で終わったので、そのまま朝まで心地よく眠ることができた。でも身体はちょっと辛いけどね。
今朝は空が薄明るくなると、早々に広海が起き出した。
カレの腕の中、触れあう素肌の温もりが気持ちよくって、シーツも気持ちよくって、離れたくなかったんだけど、起き出したカレが服を身につけたあと、機材を肩に背負いかけたので、あたしも急いで服を着て後を追ったら、行き先はなんと来栖くんの部屋だったのだ。
まあ、同室だったから鍵持ってたんだろうけど、いいの?って...思いながらも逆らわない。広海に絶対気配悟られるなと言われて、部屋の中に入る。
朝の光が入りかけた部屋に、可愛いカノジョを腕に抱いた無防備な来栖遼哉が眠っていた。
昨日までの、演技の上だとしても手負いの獣のような目を時折見せる彼と同じ人物とは思えないほど安心しきった幸せそうな寝顔。薄茶の色素の薄い髪が透けて長いまつげも、鼻筋の通った輪郭も、すべてが夢の世界のような儚さを感じさせるシーツの中の来栖くん。カレの腕の中のお姫様は、その白い肩をさらけ出しながら眠っている。その寝顔も二人並ぶとまるで同じ夢でも見てるように安らかだった。
けれどもよく見ると、入り口から点々と脱ぎ捨てられた服、下着...昨夜の名残の乱れたシーツ、全部自分たちの昨夜の出来事をトレースしてるようで思いっきり恥ずかしくなった。そしてそっとのぞき込むと紗弓さんの身体の見えない部分に無数に散らされた独占欲の赤い花々。同じようなところにあたしも付けられていたので、思わずカーッと赤くなる。
それを見てまたにやりと笑う広海...
どうやらベッドで眠るこの男は、自分の隣にいる男に負けず劣らずの独占欲の持ち主らしいことがわかった。
そしてその現場を滞りなくフィルムに収めた広海は戻るぞと合図をして部屋を出た。
「竜姫、いいのが撮れただろ?遼哉のやつ、あんな表情、絶対彼女の前じゃなきゃしないと思ってたんだ。」
当たっただろ?って笑ってるけど...これって、知ったら彼は怒るわよね?まあ、今朝は何もないから、あの二人はお昼までゆっくり出来るので起きてはこないと思うけど。
この二人が明け方まで体力の続く限り繋がってたっていうのは周りの部屋の苦情からも明白だったもの...
そりゃあたしも、朝部屋に戻ってからもう一回、撮影終わって出発までの間にまたもう一回...
襲われましたけど...広海に。
イイ男が二人駅のフォームで向かい合っていた。それだけで絵になりそうだった。
「いいのが撮れたよ。試写会にはまた招待させて貰うけど...」
にやりと笑って来栖くんと握手を交わす広海。うん、絵になる...
「またこっちに出てこいって言うのかよ?」
「ああ、無理っぽいな?そのうちビデオテープにでも落として送ってやるよ。その代わり門外不出だぞ?」
「あたりまえだ。この時点でそうして貰いたいほどなんだからな!」
悔しそうな顔で紗弓さんをちらりと見る。来栖さんは自分よりも紗弓さんを他の男の目に触れさせるのが嫌らしい。
「いいよな、おまえの夢ってでっかくって...はずかしげもなくあんなに熱いことを口に出来るって羨ましいな。」
「そうか?おまえもちっとは目覚めたんじゃないか?」
「......いや、今はまだ。」
ぼそりと来栖くんが広海を見てちょっと悔しそうな笑顔を見せた。そう言えばどうやって口説いたのかちゃんと聞いてないなぁ。でもこの二人の間にはなにか通ずる物があったみたいだ。
「そっか...お互い頑張ろうぜ?ちゃんといい女、手に入れてるんだから、後は自分が頑張るしかねえもんな。」
その言葉にあたしと紗弓さんは思わず顔を見合わせた。
でもこのフィルムがほんとうに広海の命運を分けるだけじゃなくって、来栖くんの人生まで変えてしまうなんて、その時は思わなかったの...
-Fin-
諸事情により、連載はココまでです。 書く気になるには、ちょっと時間かかりそうです。 長くも詳しくも書けませんが、 遼哉がこれからどう変化してもいいと思われる方が増えたらまた書きます… 文句言われたら書けませんもの(涙) すみません…m(__)m |