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わたしは次の土曜日、甲斐くんに抱かれるつもりで補習の後資料室の前まで行った。

いつでもそこの鍵が空いてるわけじゃない。だから中に入ろうかどうか迷ってだけど、中から甲斐くんが出てきて驚いた。
「え、鍵、空いてたの?」
「あのあと、ココに戻って、窓の鍵壊しといたんだ。今日は先に来て窓から入って空けておいた」
そ、そんなことしていいのだろうか?だけどそう言う顔は相変わらず無表情で、待ってたって言う割には嬉しそうでもない。
「こいよ、今日は嫌がるなよ」
そう言われてぐいっと部屋の中に押し込まれた。



「んっ、あっ……」
前と同じ場所。
本棚の間の狭い場所に横たえられて、わたしは恥ずかしい場所を晒していた。
「まだ痛むか?」
指が壁を擦りあげてくる。舌先は突起を捕らえて離さない。
「もう……痛くない」
前みたいに一度いかされてから、甲斐くんは準備してわたしの中に入り込んでくる。
「んんっ……はぁ、んっ」
圧迫感は変わらない。わたしの中いっぱいに押し込まれたソレに動けなくされて、わたしは身体を震わせていた。
「なんだ、もう、イキそうなのか?早いな……」
「あっん!」
ぐいっと押し込まれる、だめ、奥、苦しい……
「もっとキツイの教えてやるよ」
初心者のわたしにイロイロと試してくるのでさっきから翻弄されっぱなしだった。
「ほら、上に、乗って……動けるか?」
わたしはフルフルと首を振る。
揺れてわたしに絡み付く長い髪は、抱かれる前に彼の手によって外された。眼鏡をわたしから抜き取り、三つ編みを解きブラウスのボタンを外し、開いた胸元にゆっくりと触唇を落とす。それはまるで儀式のような一瞬だった。
けれども、そのあとは前より性急で、目が回りそうだった。
「じゃあ、下から突いてやる、我慢しろよ」
そういっていきなり深く腰を突き上げてきた。
「うぐっ!っはぁ、やぁ……!!ゆ、ゆるして……」
深すぎて耐えられなかった。逃げられなくて、怖くなって泣きそうになる。くしゃりと歪んだわたしの表情に気付いたのか、ゆっくりとわたしの腰を持ち上げると一旦それを引き抜いて身体を離した。
「まだ無理か……しょうがないな、じゃあ、こうだ」
再び寝かされ、大きく足を広げられ、片足を抱え込まれて、そのまま横向きに攻められる。
「ひっ、うっ……ん、や、これも……くるし……」
角度が変わるとこうも違うものなのだろうか?経験した事の無い感覚に翻弄されながら、わたしはひたすら喘ぎ続ける。
この間の激しさなんて序の口だっったんだ……
後ろからも獣のように突かれて、同時に突起と胸を攻められ、何度も気を失いそうになって、息切れしたわたしたちは最後にまた向かい合った。

「すげ……いい」
ゆっくりと入ってきた彼に口づけられ、両足を抱え込んだままキツく抱きしめられていた。
ぎちぎちと密着した状態で突き上げられる。
「イキそうなんだな?すげ、締まる……くっ」
感じて、意識が飛びそうになるから、怖くて思わず目の前の彼に縋り付く。だけど、指先まで痺れていく感覚はどんどんつよくなって、大きな波に攫われるような快感が爆発しそうになる。そうして、密着した彼の身体が突起を潰す様に擦りつけて突き上げられ、わたしはまたイッてしまった。その後にどくどくと熱い脈打つ彼のモノを感じて、わたしは痺れた身体で縋り付き、歓喜の悲鳴を甲斐くんの口の中に注いでいた。



「大丈夫か?」
まだわたしの中に居るままの甲斐くんが聞いてきた。まだ頭がぼーっとして、指先まで痺れて動けない。
「おまえ、イッタ後すごいのな、滅茶苦茶震えて、余韻強いんだ」
「あっ……」
喉がひりついて、声が出ない。当然動けないから、まるで人形のように虚ろに目を開けて彼の方を見た。
「まだ、居たいんだけどな……」
小さくそう言った後、甲斐くんはわたしの中から抜け出て、持ち込んだカバンの中からポケットティシュとタオルを取りだしてわたしのそこを綺麗にしてくれた。そのあと後ろ向いてごそごそと自分の処理を済ませた。

「ほら」
彼が持ってきたミネラルウオーターをごくごくと喉を鳴らして後、そのペットボトルをわたしに渡した。一瞬戸惑ったけれども、喉がひり付くのでそれを一気に飲み干した。
「なあ、腹減らねえか?なんか食いに行く?」
「え?」
それはまるで付き合ってる彼女に言うようなセリフで、わたしは驚いていた。
「でも……わたしなんかと、歩いてるだけでなんか言われるわよ?」
「いやなのか?おまえは……」
いや、それはわたしじゃなくて甲斐くんの方がって言いたかった。
「あのさ、それより動けそうにないんだけど……わたし」
「そうなのか?」
「うん、なんでだろう、手とか痺れて動かないし、足もなんだか……」
「良すぎて腰が抜けた?」
「そ、それは」
本当だから違うっていえない。わたしの身体ってほんと、イヤらしいんだ。二回目なのに、こんなに感じて、ううん一度目でも感じてた。こんなに気持ちのいいこと、誰もが夢中になる気持ちがわかる気がした。それに、行為の最中の甲斐くんの表情なんか、すごく艶っぽくって、普段見れるものじゃなくて、ドキドキしっぱなしだった。
「しょうがねえな」
「あ……」
黙って甲斐くんはわたしの手足をさすってくれた。しばらくそうされてるとすごく楽になる。わたしはそんな彼をまるで下僕に世話を任せたお嬢様のように、させるがまま任せて見ていた。
きっと……手間のかかる<せふれ>だなって思ってるよね。
だったら抱かなきゃいいのにって、彼に見えないように隠れて、こっそりとわたしは笑った。


「なあ、委員長」
先にわたしが出ようとすると、甲斐くんが呼び止める。
「おまえ抱くの、やっぱり好きだ」
「あ……そう」
なんて応えていいのか判らず、返事だけして部屋を出た。

部屋を出てから、すごいコトしてたんだって、後から思って真っ赤になる。
最中の甲斐くんの行為は最初は優しいし、近くで見ても綺麗な顔してて、いつも夢じゃないかなって思う。
キスもセックスも、他に知らないけど十分すぎるほど上手いと思うし、声も好きだし、最中はその顔も声も、凄く艶めかしくて、こっちがドキドキして切なくなるほどだった。
でも、愛し合ってしてる行為じゃない……だから快感だけ貪る行為にわたしは溺れた。

こんなんじゃ成績も上がるはずはない。でも、やめられなかった……
終わったあと、ああやってさすってくれる手が好き。
わたしがあの後、あんな風にならなかったら、さっさと放っておかれるかも知れないけど、わたしは動けないほど酷いので、それだけで、すごく優しくされてる気がした。
嬉しかった。そのことが……そう、誰だって優しくされたら嬉しいじゃない?そんなことは口には出さないけれども、嬉しくて、切ない。
だめだめ、本気になっちゃ……彼女居るはずだし、こっちはただのセフレなんだから。

それなのにどんどん惹かれている。
身体だけじゃ済みそうにない、こんな気持ち……身体と一緒に心までが依存してしまう。一人で居る時が多いから、暖かい人肌が恋しくなる夜もあった。ついつい教室にいる彼の方を見てしまう。気付かれる前に視線を外して本を読んだ振りをする。彼はいつだってたくさんに友人達に囲まれて騒がしいほど楽しそうだから。
ブレーキをかける心とは正反対に、身体の方は抱かれれば暴走してしまう。彼の思うままに踊らされ、身体を震わせ彼を求め、締め付け昇り詰める。
いつの間にか彼の上で腰を振るのも平気になる。誘われればあの部屋に行ってこっそり抱き合った。早朝、だったり、放課後だったり……
慣れてくる身体と平行して膨れあがる彼への気持ち、依存心。
もしかしたら、こんなに抱いてくれるって事は?なんてあり得ない期待をしてみたり、女の感情って本当にやっかいだ。カノジョが居るのはえっちのあと携帯をチェックする彼がかけてる電話がカノジョ相手だって判ってるし、誘われない日はカノジョとのデートだって事もわかってる。相手はスゴく可愛い他校の女の子だって。きっとわたしは彼女と会うまでの繋ぎでしかないって判ってる。カノジョを抱くように抱かれてるだけ。きっと毎日抱けないから、代わりなだけなんだ。なのに抱かれれば抱かれるほど期待してしまう。それほど彼の抱き方は優しかったし、激しかった。
普通なら期待してしまううだろうけれども、彼からは何の言葉がなくても……そんな関係だって何度も思い知らされる。
身体だけだって判ってる。わたしも気持ちいいからそれでイイじゃない?そう思うしかなかった。
でも、もうすぐ12月、補習は11月いっぱいで、12月からはもうない。
3年生は1月は卒業試験が終われば後は自由登校で学校に来ることはなくなる。
そして、卒業式が終わっても、わたし達にはセンター試験が待ってる。
いつまでも続けられるものじゃない。後少しだけだ、とそう思って自分を納得させてた。



そのあと、何度か抱かれた資料室は、12月に入る頃に鍵は直されてしまい、もうそこに入れなくなってしまった。
いい機会だと思った。
「そろそろ、いい頃じゃない?お互いに受験あるし」
わたしの声は冷めた風に聞こえたかも知れないけど、内心震えていた。
だってそろそろ限界だった。あそこで資料室で抱かれることに……

教え込まれたこの身体は、どんな行為にも、どんな体位にも柔軟に応じてしまうようになっていた。一度覚えた身体は貪欲で、いつでも彼を求めた。
甲斐くんも、わたしを前にして飽きることをしらない様で、何度も誘ってきた。だけど一回でわたしの身体が痺れてダメになった時は、まだ猛って苦しそうな自分をわたしに触らせて自分で果てたりもする。
場所も時間も限界があった。
わたしの声も抑制出来なくて、つい大きくなるから、最近は甲斐くんの用意したタオルを噛まされる事も多かった。
ほんとうに、どこがいいんだろう?って思う。
こんな身体の……顔さえ目を瞑ればいいのだろうか?その割りにはキスとかしてくるけど、口中も性感帯だとしたらそれもしょうがないかな?その気が無くても、キスと首筋に触れられただけで落ちてしまう自分の身体が恨めしいけど。
だけど、自分の中に沸き上がってきつつあるこの気持ちを、いつまでも隠し通せないだろうと思い始めていたから、資料室に入れなくなったのはいい機会だと思っていた。

「…………」
「いいでしょ?わたしの一人ぐらい。こんな気持ちいいことばっかりしてたら、受験ダメになっちゃうわ」
「他でヤレって?」
ちょっとむっとした顔。そんなに<せふれ>の一人が減るのが惜しいんだろうか?
「そうだよ、カノジョとか居るでしょう?」
「ああ、そうだな、一昨日もシタし、明日も呼び出してスルよ」
なんだ、してるんだ……やっぱりね、その日は声がかからないとおもった。じゃあ、もういいじゃない??他にいるんなら、わたしなんかイラナイでしょ?
「けどな、おまえだけじゃ足りないし、カノジョだけでも足りないんだ。」
「そんなっ!」
「わかった、終わりにしたいんなら、終業式の後付き合えよ。それで……最後にしてやるから」
頷くしかなかった。
コレで最後、わたしも覚悟決めなきゃいけないんだね。
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