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秘密のバレンタイン
その3

「遅いなぁ…」
そのかわいらしい表情を曇らせて、少年、いやもう青年の入り口まで来ているだろう彼が口にした。
目の前には仕事の忙しい彼女の為に作った夕食。
「バレンタインでも仕事あるんだよな…」
ちぇっと口を尖らせて机の上の料理を一つ掴む。
襟の伸びた長袖のTシャツに、フード付きの色あせたトレーナー、ぼろぼろのジーンズを腰履きにした彼はほおづえ付いてため息一つ。大学に入ってから明るく色を抜いた髪、ジャニーズ張りの可愛いらしい顔立ちと明るい性格でどこに行っても人気者の彼にも唯一頭の上がらない存在がある。それがこの部屋の主なのだが…

「ただいまー!」
きっちりしたスーツに身を包んだ女性が帰宅してきた。
コタツの中に潜り込むようにうたた寝した子犬のような彼を見つけて彼女は微笑む。
「ごめんね、遅くなって」
平日はいつも遅くなるけれども、今日ぐらいは早く帰りたかったのだが、仕事のトラブルはそれを許してくれなかった。
「わぁ、美味しそう」
料理を見ると彼がどれだけ一生懸命作ってくれたかわかる。
「愛されてるなぁ…わたし」
歳の差もあるし、時間も合わない二人がどこまで一緒にいられるか、なんて全部彼の努力のおかげだと彼女は感謝する。
「起きたらどうせ寝かせて貰えないんだろうから、今のうちに…」
さっさと食事を済ませてお風呂に入る。
眠ってる子犬の彼はもう試験も終わって春休みだ。バイト三昧だけれども、夜からのバイトなので朝はゆっくり出来るだろうが、自分は朝も早い出勤で、おまけに彼ほど若くもないし体力にも自信がない。
「若い男の子と付き合うのって、確かに体力居るわね」
盛りはじめると際限のないのが玉に瑕の自分の彼氏にため息をつく。

「ずるいなぁ、自分だけご飯食べてお風呂?」
「あ、起きたんだ?」
「起こしてくれればよかったのに〜〜〜〜〜」
ざぶんと湯船に入ってくる彼は可愛い顔をしているけれども遙かに彼女よりも身体は大きい。すっぽりと包まれた彼女はどうしようかと悩む。
「ね、あったまったらさ、そこに横になってよ」
洗い場にウレタンのマットを引いてなにやらしようとはじめる彼氏の行動に怪訝な表情を隠せない彼女。
「な、なに?」
無理矢理引き上げられてそこに俯せに寝かせられると背中に何かが堕ちてきた。
「え、ちょ…」
チョコの香りがバスルームに広がる。
「通販でね、買ったんだ。こうやって、食べさせてもらおうと思ってね」
悪戯っぽい表情で片目を瞑ってみせる彼氏に又ため息。
「わかった…ん、けどなんか違わない?」
「なにが?」
「普通女性の方が、でしょ?」
「そっか…じゃあ、やって?」
素直に自分の元気なそれを彼女に押しつける。彼が背中にたらしたらしいチョコ味のラブシロップを彼のモノにたらりと垂らしていく。
「ん…結構、くるね、この感触」
「我慢出来る?」
ちらと上目遣いで見る彼女の目は既に色っぽく潤んでるようだ。彼も残りのシロップを彼女の胸に垂らしていく。
「そっちこそ、久々に勝負する?」
「い、いいわよ?じゃあ、先行ね」
手と口、胸まで使って刺激をし始める。彼の方は堪ったもんじゃない。ただでさえ寝起きなのだから…
「んっ、ヤバイな、この感触…」
そう言いながらもその指先は彼女の敏感になった胸の先を摘んでいる。
「体勢変えるよ?」
俗に言う69(シックスナイン)の形で互いに快感を送り込み合うが、男の方の頂点がすぐに来てしまう。
「もう、入れさせて…」
「白旗?」
「その代わり、入れた後は負かすから!」
にやっと笑って素早く向き直って彼の愛撫で濡れたそこにゆっくりと猛りきった彼自身を埋め込む。
「あぁぁん」
既に追い込まれていたのか軽く震えた彼女を見てにやりと笑う彼は激しく腰を使い始めた。
「あぁっ、ん、もう、このっ」
昔のように言うことをきかなくなったやんちゃな子犬は知り尽くしたその身体を翻弄させてしまう男になっていた。
頭が上がらないのは普段の生活だけで、セックスになると最近は俄然リードしてしまう。最初だけリードを譲っているだけなのだから。
ロ−ションで敏感になった身体のあちこちをまさぐりながら追い込んでいく彼。
「自分で買ったチョコでもこうやって食べると美味しいんだよな?」
甘いチョコもいいけれども、コレの方が豪華と思った彼。
そのせいで、彼女が買ってきたチョコを貰えないと宣言されたのは翌朝のこと。
さてさてどのカップルでしょう?
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