2008クリスマス企画
12月23日 〜朱音〜
「ん……もう、朝?」
重い体を持ち上げる。ベビーベッドの中の聖貴はまだよく眠ってるようだ。
たぶん、最後は意識を飛ばしていたんだ思う。俊貴さんがわたしに着せてくれたパジャマは彼ので、未だに腰に回した腕は外して貰えないようだった。
「予定、総狂いだわ……」
今年は俊貴さんが、25日のクリスマスに有休をとったので、23日の祝日はいっそのこと一緒にクリスマスパーティをやりましょうと美奈ちゃんや麻里ちゃんと盛り上がっていたのに……準備は間に合うのだろうか?
昨年から彼女達にとっても、クリスマスは特別なモノになったらしく、『こうやって祝い感謝する気持ちが大切なんですね』と麻里ちゃんがしみじみと口にするのを聞いて嬉しかった。イロイロと確執はあったものの、美奈ちゃんも懐いてくれてるし、いまや勝は俊貴さんの部下でわたしは上司の家族ってことにもなるし?出産の時、麻里ちゃんに助けられてから彼女の見方も変わったと思う。けれども、何より彼女が一番変わった。勝の実家に戻り、姑と喧嘩しながらもうまくやっているらしい話は美奈ちゃんから電話でもよく聞く。そしてクリスマスに授かったらしい男の子、亜貴くんにはうちの旦那様の名前の一文字を取って付けるほどの心酔振りだというし。
『オレはさぁ、本宮課長のことは尊敬してるんだぜ?上司としても、男としてもああならなきゃって思わせるぐらい凄い人だしさ。なのにオレにはいつも厳しいんだよなぁ……もしかしてオレって愛されてない?つーか、嫌われてる?』
そう嘆く勝だけど、俊貴さんも口ほど嫌ってないと思うのよね。わたし同様、憎めないって思ってるのだろう。ただ、持ち込んでくるトラブルが半端じゃないから避けてるだけのような気もする。
だって、俊貴さんはまだ帰ってない時間帯だから気が付いてないかもしれないけれど、姑と喧嘩したといっては麻里ちゃんはここに家出してくるし、何かあったら美奈ちゃんはうちに電話してくるしで……相変わらずイロイロと騒動持ち込まれているから。美奈ちゃんはうちの聖貴と結婚するって言い出すし……
まあ、それはお互いの意志に任せればいいと思うけれども。
「なんだ、朱音もう起きるのか?」
「うん、そろそろ聖貴も起きるだろうし、用意しなきゃ……」
「まだいいだろう?昨日ほとんど準備は済ませたと言ってたじゃないか。聖貴が起きたらミルクは俺がやっっておくから、朱音はもう少し休んでいなさい」
そういってまたベッドに引きずり込まれ顔が近づいてくる。
「でも、うっん……」
朝からこんな官能的なキスは困る。昨日散々弄られて、快感を与え続けられたカラダに残ったくすぶりが再び燃え上がってしまいそうになる。
「昨夜はかなり無理させたからあまり無理強いはしたくないがな……昨日もそんな顔して途中からかなり俺を煽ったのを覚えてないのか?」
「そんなの、知らないっ……」
昨夜……時間がある時はいつも焦らされて、ゆっくりと快感を与え続けられた。どうにかして欲しいと懇願する頃にはもう意識は飛びかけている。そんな時に自分が何を口走ってるか、どんな顔をしてるかなんて、怖くて思い出したくもない。
「そうか?俺を欲しいと言っておねだりする朱音は可愛かったぞ。聖貴が起きるんじゃないかって思うほどいい声で鳴いてたしな?」
「んんっ、もう、意地悪……」
「なんなら、もう一回?できるぞ、ほら」
下半身が押しつけられ、熱くなった彼のソレがわたしを求めているのがわかる。
「でも……」
「大丈夫、ゆっくりしてやる」
昨夜の名残を残したわたしのソコを優しく開き続ける。愛液で濡れるまでゆっくりと、ソレで擦り上げられて熱を呼び覚ますやり方に、わたしはすぐに白旗をあげるしかなかった。
「またこんなに濡らして……朱音、もうしばらくここから出してやれんな」
「あっ……」
ズッ、っと入り込んでくる熱い塊。その圧迫感に翻弄される。奥まで沈められたソレは、再びじっくりと中を掻き出しながら出入りを繰り返す。
「はあっ……んっ」
密着した形で擦りあげられ、次第に深く深くわたしを攻め上げはじめられると、もう自分自身がコントロールできなくなる。
「だ、め……もう、動けなくなる」
「いざとなったら座ってればいい。準備も給仕も、全部俺がやるから、な?」
俊貴さんはにっこりと笑ったあと、わたしの脚を抱え上げると激しく腰を使い始めた。深い繋がりで彼が果てる頃にはわたしはもうぐったりするほど体力を消耗していたのだった。
「うん、これ美味しい〜〜〜」
「すごいね、このケーキあかねちゃんが作ったんでしょ?けーきやさんのみたい♪ママにはできないだろうけどね〜」
「なに言ってるの!クッキーちゃんと一緒に作ったでしょ!」
「はんぶんこがしちゃったけどねー、みながつくったのはせいこうしたんだよ?ちゃんとあかねちゃんにいわれたとおり、やきあがるまでみてたんだからー」
「えらかったね、美奈ちゃん」
麻里ちゃんとぽんぽん言い合う姿はそれでも楽しそうで、思わず女の子もいいなぁと思ってしまった。俊貴さんはもうしばらくは聖貴だけでいいって言ってるけど、早く女の子が欲しいなぁって思ってしまった。
「あう、まんま、まんまー」
「そう、聖貴もおいしいのね?」
「ぁうぁー、ぶぶっ」
訳のわからないリアクションで歓びを表現している息子も、この雰囲気がえらく気に入ってるようだった。普段から騒がしいのも平気な子で、日頃から美奈ちゃんにも構いまくられて、まるで次男の様な性格になりつつある。要するにたくましい……図太い性格をしてるのは間違いないようだ。
お正月に俊貴さんの実家には帰れなかった分お盆にゆっくり帰っ時に、お義母さんが『俊貴とよく似てるわよ〜この起きないトコとか、図太いとことか』って、はっきりと言われてしまった。ついでにとアルバムを見せて貰ったら、本当に俊貴さんの赤ちゃんの頃とそっくりで……その後幼稚園、小学校と子供時代の彼の写真を見て、これからがちょっと楽しみなのはナイショだ。だって子供にしてはちょっと大人びて見えるタイプだったけれども、妙に整った顔が、可愛いと言うよりちょっとかっこよかったんだもの。これじゃクラスでもモテただろうなって思う。眼鏡かけ始めたのは小学校の高学年からで、運動も勉強もよくできた委員長・生徒会長タイプだったらしいから。
そんなできた人が自分と結婚したなんて未だに信じられない部分もある。一度は結婚して失敗したとしても、そのやり直しにわたしみたいなのを選ぶなんて……あの4年前のクリスマスの夜の偶然がなければ、決してありえなかったと思う。
「朱音、飲み物はこれでいいのか?」
「うん、あと美奈ちゃんにジュースね」
わたしと麻里ちゃんに紅茶を、自分たちはビールを台所で飲んでるみたいだった。麻里ちゃんが車の免許持ってるから勝は帰り運転せずに済むらしい。
「おい、富野!冷蔵庫にあるジュース取ってくれ」
「はーい!コップはこっちのプラスチックの借りていいっすか?美奈ぁーきいろとおれんじどっちの色のコップがいいんだぁ?」
「おれんじー」
意外と息のあった連係プレイを見せる勝と俊貴さんだった。
わたしは聖貴を抱っこして食べさせながらずっと座ったままだった。だって本当に動けるような状態じゃ無くされたんだから!聖貴が起きてもミルクをやりに行けなくて俊貴さんがやってくれて、そのあと遊んでくれながら簡単な朝食を用意して、聖貴にも簡単な離乳食を食べさせてくれたみたい。わたしがようやく動けるようになったのはお昼前で、急いで自分の準備をして、今日出す料理の確認する頃には飾り付けも、お皿やコップ出しも全部できていた。
「だぁー」
紅葉のような小さな手をパンパンとわたしの手に打ち付けて遊ぶ可愛い我が子。赤ちゃん独特のミルクの匂いに吸い付くようなぽにょぽにょの肌。
これを幸せと言わずになんというのだろう?
30手前まで男性ともまともに付き合わず、気楽な片想いに逃げていた。仕事ができればそれでいいと、寂しい気持ちを隠して、突っ張ってきた今まで。こうやって少しずつ甘えることも覚え、かわいい赤ちゃんにまで恵まれた幸せ。
クリスマスなんてだいっ嫌いだったのに……
ただ愛されることにも、愛することにも傲ってはいけないと、毎年この時期が来ると気を引き締める。最初の頃と同じ気持ち、ううん、それ以上の気持ちが維持出来てるかどうかって。目の前には最悪の見本を見せつつも収まるところに収まった信じられない夫婦もいることだしね?
「なに?朱音さん。」
亜貴くんにミルクをあげていた麻里ちゃんが不思議そうな顔して聞いてくる。
「ううん、なんでもない。やっぱりそうやってるとお母さんだよね」
「もう、なに言ってるんですかぁ!そりゃまあ、美奈の時にはかなりズルしちゃいましたけどね。こうやって素直に子供の事可愛いって思えるのも、全部朱音さん達のおかげですよ。一杯迷惑かけちゃったけど、その都度イロイロ教えられちゃいました。最初は反発もしてたけど、もう馬鹿らしくなるほど朱音さんてお人好しだし?でも……朱音さん達みたいに大事にやっていきたいなぁって、昨日も勝さんと話したんですよ」
「そうなんだ。ある意味……あなた達って本音さらけ出してぶつかり合ってきたから、これからはお互いをちゃんと見ていけば怖いものないかもしれないわね。うちは……まだお互いに遠慮みたいなのあるもの。麻里ちゃんとこみたいな本音ぶつけ合ってお互いを晒しまくるような喧嘩したことないし?」
「そんなのしない方がいいに決まってるじゃないですか!解り合ってるんでしょ?朱音さんたちは。それに……」
麻里ちゃんが小さく招き手をして耳元に口を寄せてきた。
『お互いさらけ出し合ってするのは喧嘩だけじゃないですよ。アレも……えっちもそうでしょ?』
「え??」
くすくす笑う麻里ちゃんに今度は不思議そうに見上げる美奈ちゃん。
「やだ、朱音さん真っ赤になっちゃって」
「ちょっと麻里ちゃん……」
「そういうコトです。それはちゃんとやってんでしょ?っていうか、愛されてる証拠、そこに見えてますよ?」」
「あ、こ、これはっ……」
首筋の後ろを示されて焦った。だってそこは昨夜強く吸われた場所で、たぶん付いてるんだと思う、キスマークが。さっきまで目立たないように髪を下ろしていたのに、聖貴が引っ張るから耳にかけたから見えてしまったのだろう。
「まだらぶらぶじゃないですかぁ。なんか課長さんのえっちってすごそうなんですけど?」
「ま、麻里ちゃん……」
「全て許せてるんなら間違いないですよ」
たしかに最初は上手く伝え合えなかったことも、子供ができるとある意味怖いものが無くなったっていうか、さらけ出しすぎてる気がするほどだ。恥ずかしいほど自分の本性をさらけ出すような行為の数々。恥ずかしい部分を見せれば見せるほど相手が愛おしくて、全部許してしまえるほどの安心感に包まれる。
だから、毎晩俊貴さんの腕の中で眠る時が一番無防備なのかもしれない……
「うちもね、ようやくなのよ。元々カラダの相性もいいほうだってわかってたんだけど、他に今まで経験しちゃってたからイロイロ比べちゃうじゃない?それで不満に思っていながら、肝心の不満な部分を伝えずに態度だけ悪くしてたらそりゃこじれるわってコト」
「そっか、で、今は?麻里ちゃん」
にこっと笑って幸せそうな笑顔を見せてくれた。
「えへへ、お騒がせいっぱいしましたけど、落ち着くとこに落ち着いてますよ。もう比べたり、不満を相手のせいにだけしないようにってね。うちは相変わらず本音で言いまくってますけどね。行くとこまで行ったから、怖いもんなしってことで」
「いいなぁ、本音かぁ」
言ってるんだろうか?わたしは……そういえばあんまり覚えてない時って何を言ってるんだろう??
「まあ、不満が溜まってるって顔じゃないですから、朱音さん。」
「そう、かな?今のところそんなに不満はないかな。仕事もう少しだけやりたかったけど、今はこの子のそばに居てやりたいし。敢えて言えば……俊貴さんの本音がききたいかな?」
「ソレも大丈夫なんじゃないですか?課長さん、すっごく充実した顔してますし……どっちかっていうと朱音さんがお疲れでしょ?もしかして」
『課長さんって、そんなに激しいんですか?』
「ま、麻里ちゃん!?」
彼女の耳打ちに、思わず大きな声を上げてしまった。
「ふぇーん!」
途端に聖貴が泣き出し、それにつられて亜貴くんまでも……
「もう、しょうがないわねーまさきくん、みなちゃんのとこきましょうねー」
自分の弟の所でなく聖貴の所に来るというのがさすがで、聖貴も絨毯の上に降ろしてやるとハイハイで美奈ちゃんのそばに寄ってよいしょっと立ち上がる。先月からは伝い歩きもはじめて、今じゃすっかり立ち上がってポーズを決めるのは得意中の得意だ。
「まさきくん、だぁいすき」
ちゅっと聖貴の頬にキス。
「うわぁ、かわいいー」
麻里ちゃんがそう叫ぶ中、向こうから何か光ってるような……
「俊貴さん、勝、それって……」
彼らの手にはそれぞれムービーカメラとデジカメ。どちらも俊貴さんが聖貴が産まれた後に買いそろえた最新式の小型のモノで、いつでもこうやって出てくる。
「名場面はのこしておかないとね」
「そうそう、将来このシーンを聖貴くんに見せて美奈とのコト責任とってもらうんッスよ!」
「富野、おまえなぁ……」
笑い声が響き渡る。楽しいクリスマス会はこうやって盛り上がりを見せた。
「ふー、後かたづけはこんなものかな?」
みんなが帰った後、聖貴をお風呂に入れて片付けを済ませた我が家のリビングは昼間と打って変わって静かにツリーの光だけを部屋の壁と窓のガラスに反射させていた。
「ああ、なんだかんだ言いながら富野も麻里ちゃんも手伝ってくれたからな。クリスマスの飾り付けはもうしばらく置いて置くし……明日の夜がイブなんだからな?」
「そうね。明日はお仕事だから大変ね」
「少し飲み過ぎたからな。富野のヤツ調子に乗って飲むからつい釣られて……」
「明日二人とも大丈夫?」
「そうだな、今夜はおとなしく寝るとしよう。その方がいいんだろ?朱音、少し辛そうだったからな。すまなかった」
ソレは今朝の行為のことを言ってるのだろうか?それとも……
「別に、謝ってもらわなくても大丈夫よ?」
普段はちゃんとセーブしてくれてるのだから。時々、限界までされると辛くなるだけで、それも仕事に行ってるわけでもないので、なんとかなる範囲だと思う。
「そう?じゃあ、イブの夜は覚悟しておくんだな。今、許可したも同じコト言ったんだぞ?」
「え?」
「今日はなんだか盛り上がってただろ?麻里ちゃんと。聞いたよ」
「そう?夫婦で本音が言えるかって話してて……わたしたちお互いに本音って言ってるのかなぁって思って。俊貴さんもちゃんと本音言ってくれてる?」
「なるほどな……それじゃ明日、その答えを教えてやろう」
「明日?」
「ああ、明日の夜だ。楽しみにしてなさい」
彼の謎に満ちた言葉の意味を思い知らされるのは明日の、イブの夜だった。
2008.12.23
クリスマス二日目〜〜〜
なんと富野家と合同のクリスマス会(笑)しかし富野家が出てくると筆が走ります…なんでだ??
まあ、対照的ですからねぇ?
そして続きは…明日の夜、楽しみにしてなさい!です(笑)やっぱ課長も楽しい♪