番外編 〜調教・4〜
〜澄華〜

「澄華、今日もよく我慢したね」
「ううっ……」
 早くに帰ってきた夫は子供を寝かしつけて子供部屋から戻ってきた。
 わたしは彼が帰ってきた時から口を塞がれ、半裸の格好でベッドの上に縛りつけられたままたまま。うねうねと動くローターを後ろに入れられ、かなりの時間そのままで放置されていた。
「ご褒美をあげるよ」
 甘美な囁き、慣れた手つきでわたしを拘束していたモノから解き放つ。
「んんっ!!」
 与えられる欲しかったモノに歓喜の涙を流し、腰を揺らして喜ぶ。それが今のわたし……
 人を見下し、自分がすべての世界はもうない。
 わたしには彼が……ご主人様がいなければ生きてはいけない。そう躾られてしまった。
 だけどあまりにも彼は手馴れていた。虐め方も道具の使い方も……そういう相手はわたしがはじめてではないことはわかっていた。わたしより以前に、こんなふうに隷属させたことがあることを……
 時々、パーティで見知らぬ女性とアイコンタクトのような挨拶を交わす彼を見たことがある。あれはもしかしてわたしより前の奴隷なのだろうか?
 わたしが動揺しているのを知っていて、彼はにっこりと笑って聞きたい? と囁く。
 聞けないことを知っていて……そんなことをすればわたしは嫉妬で狂ってしまうだろう。
 もう、彼以外にわたしのご主人様はいない。そしてわたしの他に誰かがいるなんて耐えられなかった。
「ああもう、そんな顔しないで。不満なの? まだ入り口までしか入れてないから。
「んっ……ううっ」
 そう、もっと奥まで欲しいの……早く、お願い!!
「澄華、そんなに欲しいの? 凄くうねってるよ? もしかして誰のでもよかった?」
「んんっ、んーっ!」
 そんなはずはない! 必死で首を振って否定する。そんな、他の人のモノなんて……
「だけど澄華はおもちゃでも喜んでるでしょう?」
 それはあなたが、ご主人様がくださったものだからよ。
「どうする? コレが他の人のモノだったら」
 そんなこと言われても想像できない。わたしは……実際のところ彼とその弟しか知らない。他に比べ様はない。だけどわたしは彼を選んだ。激しいだけの政弥さんより、優しいけど本当に気持ちよくしてくれる雄弥さんを……そう何度も言ったのに。どうして、そんなイジワルなことばかり言うの?
 いっときでも他の男に抱かれたわたしへの罰なの?
「あうっ……ぐっぅ……」
「他の人のモノでもこんなに締め付けてしまうんだ?」
 違う!! 今わたしのナカをかき混ぜているのは紛れもなく雄弥さんのモノだ。
 欲しくて欲しくて、ようやく与えられたソレを離せなくて、求め締め付けてしまうことを止められない。ナカを緩めようとしてもうまくいかない。やっと与えられたばかりなのだから。
「本当にイケナイ人だね。抜いてしまおうか?」
「んんっ!」
 イヤイヤと激しく首を振る。今抜かれたら……耐えられない。
「へえ、抜いてほしくないんだ? やっぱり誰のでもいいんだね? こんなふうに締め付けてしまうなんて……淫乱な奥さんだ、ねっ!」
「ひっ……んっ!!」
 最奥をぐんと突かれて、悲鳴のような声を喉の奥であげる。
 違う、そんなことはない! あなただから……お願い、信じて!!
「ダメだよ、誰にもあげない」
 うわずるようなかすれた声、いつも優しくて冷静なだけの彼ではなかった。
「君は僕のモノだから――――政弥にも、もうあげないよ」
「……っく!!」
 奥深く貫かれ、後孔で蠢くローターと擦れて酷く揺れた。
「ほら、反応した……あいつがいいの? それとも本当に誰でもいいの?」
 違う! 違う! もう……あなたしか、雄弥さんしかいないの!! ご主人様だけなの!
 いくら言っても聞いてはもらえない。そのたびにこうやって彼から垣間見える嫉妬の炎に焼き焦がされるだけ。
 今までに経験したことがないほどの快感を与えられ、すでに隷属させられたというのに……どうして信じてくれないの?
 最初にお仕置きを受けた時、狂うほどの快感と苦しみを与えられた。それから逃れるには彼に従うしかなかった。だけどそれは心地よいことだった……今まで気を張り、自分が優れていなければならなかったという愚かな自尊心も、羞恥心もすべて捨て去るほどの快楽。そして安心感……
 狂おしく壊したいほど愛されているのだと、知らされたから。
 だけど、時々不安になるのは他の女の存在……そして、わたし自身ももしかして本当に気持ちよければ誰でも良くなってしまったのでは? と疑うほど激しい快楽を求めてしまうこのカラダ。
 まさか……と何度も打ち消すけれども、交互に押し寄せてくるその疑いも、いつもわからなくなるほど昇らされて意識を白濁させられる――――そんな日々が続いていた。


「あっ……」
 彼と出かけた宮之原系列のパーティ会場。そこですれ違いざまに顔を合わせた女性が、彼の顔を見るなり顔色を変えた。
「やあ、ひさしぶり。元気だった?」
「は、はい」
 誰だろう? どこかの奥様だったらすぐにわかるはずと考えて直ぐに浮かび上がる疑惑。
 もしかして、以前に……彼が隷属させていた女?
 雄弥さんはニコニコ笑っているけれども、相手の女性はすぐに真っ赤になり俯いた。その表情で、過去にふたりの間にあったことは憶測できた。
「おい、何をしている」
「はい、今行きます。それでは……」
 深々とお辞儀をして彼女は立ち去った。呼んだのは彼女の今のご主人様だろうか? どう見ても夫婦には見えない。
「どうしかた? 澄華」
「……いえ、なんでも」
 聞けない。彼女が昔付き合っていた人なのか、それとも奴隷として隷属させている相手だったのかどうかなんて。
「なんでもない、という顔じゃないね。疑っているんだろう? 彼女とのこと」
「……はい」
「正直に言うよ、彼女とは少しだけね。だけど付き合っていたわけじゃない。単にそういう集まりで、人に頼まれて躾たことがあるだけだよ」
 やっぱり……それが結婚前なのか、それとも最近のことなのか、それには答えてくれなかった。
『どうして今まで黙っていたの? こういうこと……わたしにはしなかったのはなぜ?』
 以前そう聞いたことがあった。こういった性癖があることは、結婚してからもずっと知らされていなかった。
『君と政弥のことを思うと、僕も多少は荒れていたよ』
 それは結婚前? それとも結婚してからも? 今のような激しい情欲はどこで果たしていたの?
 疑問に思っても答えてはくれない。実際わたしも結婚してからもいいように政弥さんを翻弄して楽しんでいたから……彼が気付いていたとしたら、結婚してからもだと思う。
 だって、荒れていたと言うけれども彼はいつだって優しくて穏やかで、表面上はまったく変わりがなかった。だから、どのぐらいの強さで愛されているか全然実感が持てなかった。比べるとどうしても……政弥さんの愛情表現は激しくセックスも嵐のようで、雄弥さんはひたすら優しいだけだったから。
 ふたりの対照的な従兄弟から想いを寄せられ、その両方を手に入れて喜んでいた愚かなわたし。
 迷っているときに、彼らの母親からもしかしたら政弥さんとは血の繋がりがあるかもしれないと聞かされ、結局のところわたしは安定した愛情を与えてくれる雄弥さんを夫に選んだのだ。
 彼の優しいセックスにいつの間にかわたしは慣らされていた。穏やかなようで長く続く快感、優しく包み込むようでいつまでも終わらない、とろけるような愛される営みに激しさを求めたわたしは愚かだった。幸せな結婚を装いながらも、身体の未練を政弥さんに残し、手に入れてはいけないと思えば思うほど余計に欲しくなっていた。甘美な禁断の果実のように乞い誘う、政弥さんのわたしを求めるあの目。必死で自分を抑えその熱情を他の女で満たそうとして満たされない狂おしい彼の想いを目にするたび、身体が快感に震えた。そんなわたしを雄弥さんはずっと知らん顔して見逃してくれていた。行動に移すまでは……
 だけどそのことを知った彼は態度を激変させた。
 わたしを地の底まで貶め、そして救い上げ愛してくれた。最大級の快感と支配される喜びをわたしに与えて――――彼の、雄弥さんの激しい愛情表現と本性は、わたしを追い詰め高ぶらせ、逃げないとわかるまで服従させることだった。
 今では心も身体も彼に隷属しきっていた。堕ちてどこへもいけない閉塞感、諦めてすべての快楽を身体に受け止める。獣のように叫び喘ぎ、体液を撒き散らかして絶頂を迎える快感にすでに逆らえなくなっていた。彼のいうことはすべて聞いてしまう。彼がいないと……もう生きていけないほどに。
 だけど、そんな相手がわたし以外に他にもいた……その事実がずっとわたしの心に影を落としていた。

「まだ心配なの? 君と結婚してからは他の女性を抱いたりしていないよ。そういった店に行ったことや、そこで奴隷たちを可愛がったことは認めるよ。だけど道具を使ったり他の男にヤラせてただけだから」
「……っ」
 でも、あなたが他の女に触れた、それだけでわたしは悲しいほど辛くなる……わたしだけだと思いたい。そうでなければ、あんなに屈辱的な行為を受け入れることは出来なかった。それほど強く想ってくれている、そう思えるからこそだから……
「僕が信じられない? それじゃ証拠を見せようか」
「え、証拠?」
「ほら、あそこにいるのは最近成長著しいIT会社の社長と社長秘書なんだが……彼はその手の店でよく顔を合わせていたんだよ。特にあの秘書、今じゃ奥方を連れているが、あれはその当時店にいた奴隷だよ。彼も彼女を見つけてからはまったく他の奴隷に手を出さなくなったんだ。互いに他には変えられないパートナーを見つけたってことなんだ。当時から僕が実際に女の子に手を出さなかったことは彼もよく知っているからね」
 軽く手を挙げるとその男はニッコリと笑って近づいてきた。
「やあ前田くん、久しぶりだね」
「藤澤さん、ずいぶんと顔を見ないと思ったら綺麗な奥さんを連れておいでだ」
「君もね。うちも……なんだ」
「え? でも彼女は……そうだったんですか、奥様を」
 それだけでわたしたちの関係がすべてわかったかのような答だった。
「君こそ幸せそうじゃないか。彼女も」
「ええ、ずいぶんとよくなったでしょう?」
 少し後ろに控えた可愛らしい感じの女性が顔を上げてようやくといった風情で会釈する。何処かつらそうで……顔が赤くて息が荒く、身体がわずかに緊張して震えている。
 そうこれは……発情させられているの? わたしにはそれがわかる。こういったパーティで、何度かされたことがあるから。今日はどちらかというと主催者側になるのでなにも施されていないけれど、たまにふたりで出かけるときにはローターを仕込まれたりしていた。今日のわたしはショーツを履かせてもらえないだけだから幾分かましだ。それでもたまに人目のない所でいじわるをされて……今も密かにソコを濡らしていた。
 早く帰りたい、帰ってご主人様にかわいがってもらいたい……そう発情しそうになる気持ちを抑えて、藤澤建設の次期社長の妻らしく振舞っていたのに。
「どうです、久しぶりに一緒に……上に部屋を取ってるんですよ」
「いいですね、行きましょうか?」
 その言葉に目の前の彼女の顔が見る見る間に青ざめていく。なに、なんなの?
「澄華、おいで」
 腕を引かれてパーティ会場から抜け出し、エレベーターに押し込まれる。
「雄弥さん、どこへ?」
「部屋を取ってると言ったでしょう? そこですよ」
 振り向くと前田と呼ばれた男性もニヤニヤと笑いながらその腕に妻である女性を抱え込んでいる。
「え、でも……」
 まさかと思う。今まで見られそうになっても実際に二人の間に第三者が割って入ったことはない。
 スワッピング……4Pなどと下劣な言葉が脳裏をよぎる。色々と虐められてきたけれども、それだけは強要されたことはなかった。向こうの彼女はどうなんだろう? 慣れているの? もしかして……雄弥さんは彼女を抱きたくなったから、その為にわたしをこの人に抱かせるつもりじゃ……
「いや……雄弥さん」
「大丈夫、僕を信じなさい。僕が今まで本当に君が嫌がることをしたことがあるかい?」
「それは……」
 なかった。どれほど恥ずかしい格好をさせられようと、淫らに求めさせられようと、身体に深い傷を与えられたことはないし、本当に人目に晒されたこともない。与えられたのは強い快感とこの人でなければという依存心、愛されているという束縛感と執着心。
「いいね?」
「……はい」
 Noとは言えなかった。わたしは彼にすべて従うと誓った。義弟の想い人である女性を父に犯させようとしたその罪を償うとき、プライドも羞恥心もすべて捨てて彼に懇願したのだから。
 愛の近いよりも強い隷属の誓を……


「君はそこで見ていなさい」
 セミスイートの部屋はリビングと寝室が仕切られてはいなかった。そこへ持ってきた椅子に腰かけらされると、わたしは彼のネクタイで腕を縛られ、ベルトで椅子に固定させられた。ハンカチを口に押し込まれ、身動きも声をあげることも許されない。
 だけど彼もその男もわたしに見向きもせずにベッドへ向かった。
「美和子、全部脱いで藤澤さんたちに見ていただくんだ。いいね?」
 美和子と呼ばれた女性は恥ずかしげにゆっくりとドレスを床に落とすと、下には紐で結ばれたショーツだけだった。
「どうぞ見てやってください。彼女も見られるのは久しぶりだからきっとすごく恥ずかしがっていると思います」
 彼女の胸の先にはピアスが飾られ、その2つは細いチェーンでつながっていた。
「これも取るんだ」
 そう言って男が最後の一枚であるショーツの紐を解くと、そこからブーンという微かな電子音が……
「おや、バイブですか?」
「ええ、前はディルドータイプ、後ろはアナル用のローターですよ。これが前のバイブのリモコンです。使ってみられますか?」
「いいんですか? では」
 雄弥さんがリモコンを受け取った瞬間、彼女が大きく仰け反った。
「ひっ……あぁぁっ……!」
「いい声で鳴きますね」
 いや、他の女を褒めないで!
「以前は抜け殻のようだったのが嘘みたいでしょう? ほんとうに彼女は健気でね、わたしは可愛くてしょうがないんですよ」
「わかります。うちも以前は強気だったんですが、いまではすごく従順で……愛しくてたまらないんですよ」
 ちらりとわたしの方を見て、優しく顎を撫でられそれだけでわたしはゾクリとした快感に身体を震わせた。お願い、わたしだけにして……
「奥さんはこういったプレイははじめてなのですか?」
「ええ、結婚してかなりたってから教育したので、まだ日が浅いんですよ。他の男に触らせるのも癪ですし、まだ誰とも絡ませたことはなかったんです」
「そうですか。うちはその点経験は多いですが、そのせいでかなり傷ついてますので、今では夫婦生活に刺激を与える程度にしかやってませんよ」
「うちもあまりかわいそうなことはするつもりはありませんよ。肉体的よりも精神的に隷属してくれればいいのですから」
「それではこのぐらいがちょうどいいかもですね」
 なんのことかよくわからなかったけど、あまりハードなことをする気はないということだろうか?
「藤澤さん、リモコンもっと強くしても大丈夫ですよ。さっきまでは入れているだけで動かしてませんでしたから」
「では、お言葉に甘えて」
「ああっ……やっ……ダメっ、ひいっ!!」
 Maxにしたのか、彼女は大きくのけぞり崩れ落ちるようにベッドへうつ伏せになるとビクビクと身体を震わせ、耐え難い快感の刺激から逃れようと必死で腰を捩り、膝をこすり合わせていた。
 おそらくかなり長い間刺激されていたのだろう。それが自分のご主人様以外の意志で刺激を与えられ、気持よくてもイッてはいけないと耐えるほどその負荷が大きくなり、自分で自分を責めるかのごとく忍耐地獄へ陥る。なのに果ててしまったらご主人様への申し訳なさと、その為に与えられるもっと大きな罰を期待してしまうのだ。
 その刺激と快楽を想像するだけでわたしまで濡れてしまうのがわかる……そう、本当に同類なのだ、この女は。同じように躾られ、隷属し愛されている。でも、彼の手でイッテもいいのはわたしだけ! お願いもう……止めて!!
「美和子、我慢できなかったのか?」
「ごめんなさい……わたし、ご主人様でない人の手で……」
「そうだよ、罰をあたえないといけないね」
「お願いです……ご主人様の、あなたの……を」
 男はその隣に腰掛け、優しく髪を梳いてやっている。彼女は身体をすり寄せて甘い吐息を漏らし乞い求める。バイブの刺激はまだ続いているのだろう。
 ああ、わたしも快感を与えられた時はああやって彼を求めてしまう。たとえそこに誰かがいても。気持よくて、それでもホンモノが欲しくて……機械じゃなく熱く硬い彼のモノで激しく感じさせられたくて。
「どうした、澄華。そんなにうっとりした顔をして……もしかして、君もして欲しくなったのかな、彼に」
「んっ、んんっ!」
 違うと言いたかった。求めたのは雄弥さんのモノだけだと。それなのに耳元で囁かれた瞬間、期待してしまった、わたしにも触れてくれないかと。
「美和子はイケナイ子だね。もう欲しがってしまうのか? もう少し嗜み深くならないと、ほら、彼の奥さんのように、ね?」
 わたしは何もされていない……なのにカラダは熱くなっていた。

「でも、もう……コレはいやです。はやく……取ってください。ご主人様のが……欲しいんです」
「まだダメだよ。ほら、罰としてわたし僕のモノを鎮めるんだ」
 男はカチャカチャとベルトを外し、中から猛った男性器を取り出し自分の妻の口元に与えた。彼女はソレを咥え込み、音を立てて啜る
「美味しそうに食べてるね。だけど後ろが丸見えだよ。ヒクヒクして……ローターを2つも咥え込んでいるのに、まだ物欲しそうだ」
 雄弥さんはそう言って彼女の後ろの口から顔を見せているアナルビーズをいきなり出し入れしはじめた。
「んんっ!!」
 いや、他の女を触らないで! わたし以外に……わたしだけに……してほしいのに! だけどそれを声に出すことは出来ない。
「ああっ!! イく……イッちゃう……」
 後ろと前の刺激に耐え切れなくなった彼女は、口から彼のものを離しビクビクと終わらない快感に身体を震わせ続けていた。
『彼女気持ちよさそうだったね。君は……どうなの? 澄華』
 いつの間には二人のそばを離れた彼が、わたしの後ろに立って耳元で囁く。今のでまた……ドレスを濡らしてしまったわ、きっと。
「ダメじゃないか、美和子。また他の男にイカされたりして」
 彼はバシンと彼女の尻をぶった。
「ひいっ……あなた、ご主人様……許して……あああっ!」
 ぶたれたことで快感が長引いたのか、彼女は男に縋りついて悶えている。
「どうして欲しいのかちゃんと言いなさい。今日はお仲間もいらっしゃるからね。先輩らしくいい見本を見せてあげるんだ。きちんとおねだりすれば欲しい物がもらえるんだってことを教えてあげないと……ね」
 再び尻を打たれて彼女は悲鳴のような声を上げて懇願する。
「あなた……ご主人様! 早く、ご主人様のモノを入れてください! お願いです、コレを取って、ご主人様のモノで……奥まで、もっとイカせてください!」
 腰を振ってまるでペットのようにおねだりをする。清楚な顔を涙と涎でぐちゃぐちゃにして……そんな彼女を男は愛おしそうに見つめながらニッコリと笑い命令する。
「わかったよ、それじゃ自分で2つとも出してごらん。それをふたりに見てもらうんだ」
「わ、わかりました……っく、ああぁっ!!!」
 ズルリと彼女はソコから体内にあったモノをひねり出した。
『すごいね……今度澄華にもやってもらおうかな、アレ』
「んんっ、ん」
 なんでもします……だから、お願い。必死で見上げて目で訴える。
「おいで、美和子ご褒美だよ。自分で入れてごらん」
 はあはあと息を荒げ、ぐったりとシーツに顔を埋める彼女に命令する。ふらつきながらも彼女は従順に男を跨いだ。そしてコチラを向いたまま勃立した彼のソレを、自分に宛てがいゆっくりと腰を落とし美味しそうに飲み込んでいく。
「ああっ……っん!」
「気持ちいいのか? その嬉しそうな顔をおふたりによく見てもらいなさい、もちろんつながっているところも、だ」
 ああ、本当に嬉しそうだ。わたしも……欲しい。そう思ってしまった。なにもされていないはずの身体は熱くなり、下着をつけていないソコは濡れて、おそらくドレスに大きなシミで汚してしまっているだろう。
「あなた……いいの、すごく……いい」
 うねうねと腰を蠢かしたっぷりとナカで味わい自分の気持ちのいいところに擦りつけている。なんて快感に素直なの。うっとりと艶っぽい表情がやけに綺麗だった。
 人が……私達が見ているのに。
 彼女と彼もまた強い絆で結びついているからこそ、人前でもこうやって求められるのだろう。愛されているから許される、愛しているから求め従わせたい。夫婦であって主人と奴隷の関係はこうやって成り立つ。
「君も欲しいの?」
 優しく囁かれコクコクと頷く。
「僕のが欲しいのかな? それとも彼にされたい?」
 違うと激しく頭を振る。
「本当かな?」
 口元を塞ぐものを外され、喘ぐように彼の名を呼んだ。
「雄弥さんのが、ご主人様が欲しいんです! 早く……っ」
「わかったよ、僕がいいんだね? 可愛い澄華」
 ペロリと口元をなぞり、腕以外の拘束を解かれ彼の手は首の後のリボンに掛かる。ドレスはボルダーネックで、その結びを解きファスナーを下ろすとドレスはスルリと床に落ちた。
「いやっ……」
 脚を閉じようとするけれども、片方の足を持ち上げられてしまう。ガーターベルトとストッキング以外何も身に着けていない恥ずかしいいまのわたしの格好。見られてしまう……目の前のふたりにも!!
「前田くん、見てやってくれるかい? 妻はかなり我慢していたようだよ」
「おや、すごく濡れてますね。彼女に舐めさせましょうか? それとも交代しますか?」
 何を言ってるの?? そんなのいや!
「いやです、そんなこと……」
 震える声で必死に拒否を訴える。これが聞いてもらえなければどうなるのだろう? 彼はもっと聞き分けのいい女の人を隷属させるのだろうか? 目の前のこの可愛い人を抱いてみたいと思っているの?
「ダメみたいですね。そちらも」
 男の奥さんも涙を浮かべてフルフルと頭を振っていた。そう、彼女もいやなのだ。愛する人以外の手なんて、やっぱりいやよね?
「しかたない。では……よかったらソレでも使いますか?」
 彼は指射された先にあるディルドーに手を伸ばし、器用にかぶせてあったゴムを剥ぐといきなりわたしに宛てがい振動を与えた。
「ああっ!!!」
 片足を持ち上げられたままでは耐え切れなくて、わたしは彼に縋り付き、はしたなくも腰を押し付けようとしていた。もっと強い刺激が欲しくて……その快感を完全に自分のものにしたくて。
「ダメだよ」
 すぐさま取り上げられても、身体は震えたままだった。
「あなたぁ……」
 お願い、やめないで……わたしは今にも果ててしまいそうな震える身体を彼に預ける。
「我慢できないのかい? しょうがない。それじゃあ、ベッドへ行くんだ」
 命令され、わたしは引きずられるようにして繋がったままのふたりの隣へ座らされた。
「まずはご奉仕だよ、わかるね?」
 手の拘束を解かれていたので、ベッドに腰かけたまま夫のベルトを外しズボンを床に落とした。そして下着を引落とすとすでに猛りきったソレを舌で舐め上げるとゆっくりと口に含んで扱きはじめた。
「美和子、見てごらん。あんなに上品そうな奥様がおまえと同じ事をしているよ?」
「あっん、あっ、あっ……ん」
 ゆっくり下から突き上げられて、彼女は甘い声を上げながら腰を振っている。胸を揉みしだかれ、時々胸をつなぐ鎖を引っ張られては『ひいっ』と甲高い声で戦慄きながら。
「澄華も早く欲しい?」
 思わず隣に見とれていると優しく顎を撫でられ問われる。そう、もう……欲しくて欲しくて気が狂いそうだった。下半身が期待と羞恥で甘くしびれて熱を持っている。彼女と同じように激しく突き上げられたい衝動。
 彼女はベッドにうつ伏せるように押し倒され、後ろから激しく貫かれていた。その喘ぎ声とぶつかり合う婬水の音が間近で響くほど近く、わたしも仰向けに寝かされた。ちょうどふたりの繋がっているところが真上に見える角度で……。
 こんな近くで見るのははじめてだった。きっと彼女にも見られている。ぬらぬらと濡れそぼったわたしのナカへずぶずぶとめり込んでいく彼のモノが。
「ほうら、見られているよ。美和子さんに……同じことをされているんだ、今君が見ているのと」
「ああっ……っん!!」
 見られている羞恥心と、やっと与えられた彼のモノに狂喜した。わたしも彼女のように腰を蠢かしソレを味わおうとしたけれども、その動きを彼に止められてしまう。
「いや……どうして」
「だめだよ、まだ」
 美和子さんはさっきから獣のような声を上げて、後ろから与えられる快感に狂ったように喘いでいる。わたしも、わたしももっと欲しいのに!
「ちゃんと見てもらわないとね」
「ああ、すまない……夢中になってしまった」
 男が腰の動きを止めると、彼女は涙ながら震えて訴える。
「いや……いや……」
「だめだよ、彼女たちを見ててあげないと」
「……は、はい」
「それじゃ、どうして欲しいか言ってみなさい。澄華」
「わ、わたしにも……下さい。ご主人様の、奥まで……ああっ!!!」
 深く……突き刺さる。子宮の口をこじ開けるかの勢いで。
「奥様……綺麗」
 真上からの声に目を開けると、こんどは彼女が甲高い声を上げて喘いだ。
「ああっ! ひっ……」
 アナルビーズを引きぬかれ、その瞬間奥まで貫かれて達していたのだ。白目を向いたようになり、ゆっくりとわたしの隣に崩れ落ちてくる。
「ああ……気を失ってしまったようだ。今度はそちらの番ですよ」
 男にそう言われ、雄弥さんがゴソゴソと動いたかと思うと、後ろの蕾に何かがあてがわれた。
「ソレは大きすぎませんか?」
「ゴムとローションを使ったので、大丈夫でしょう」
 ヌルヌルと後ろに液体が注ぎ込まれ、そのまま指で拡張されていた。
「澄華、我慢出来ますよね?」
 はいと、返事をする前にその大きなディルドーは後ろに侵入を果たした。
「ひいっ……ああっ……」
 痛い、でも教えられてしまった快感がそれを上回る。
「スイッチをどうぞ、見てるだけではお暇でしょう?」
「すみませんね、けどそろそろうちのも目を覚ましてきたようです。アソコがひくひくし始めてますから」
 ぶんっと、落ち着いた声のままスイッチを入れられ、その刺激に耐え切れずにわたしは大きな声を上げた。
「やっ……あなた! いやっ、ダメ、こんなの……やぁ……」
「何が嫌なの?」
「あなた以外の……人の手で……」
「さっきはうちのがイカされましたからね、今度はわたしの番でいいでしょう?」
 抑揚のない男の声にゾクリと身体が震え、その瞬間後ろの刺激は最大になった。
「いやあぁっ! あなたのじゃなきゃ……ご主人様のがいいのっ!」
「わかった、望みどおりにしてあげるよ」
 後ろの刺激に負けないほど激しい突き上げが始まり、隣でも目覚めた彼女の甘い喘ぎ声が再開された。
「イイッ……あっ、ご主人様、イキます、もう……」
「ダメだ、まだまだだよ……ほら、おとなりの奥さんは頑張ってるじゃないか」
「あん、あっ……ひっ、あっぐっ」
 後ろと前の刺激に必死で耐えようとしてももうなすすべもないほど身体は痺れて快感からは逃れられない。いつイッたのか、どこまでイッたのかまったくわからないまま……
「澄華、いけない子だね……っ、ちゃんと許可を取る前にイッてしまったんだね?」
「ああぁ、ま、また……もっと、ずっと……イッてるの、また来ちゃう……ああ、あなたぁ!!」
 もう涙も涎もぐちゃぐちゃで体中がじんじん痺れて頂点が何処にあるのかわからないままわたしは体液をまき散らしていた。
「ああ、派手にイッてしまわれたよ、さあ美和子、おまえもイッていいよ」
「あああああああっ!!!!!!」
 深々と突き刺された彼女もわたしの隣で激しく震えて果てを迎えていた。


 その後も交換されることもなく、軽く後戯を終えた後、彼女たちは部屋から出て行った。別の部屋を取ったそうだ。
「さあ、今夜は帰らないと言ってあるからね。今度は後ろをかわいがってあげよう」
「……んあっ、あなた……うれ……しい」
「可愛い澄華、恥ずかしかったかい?」
「……はい」
「けれども恥ずかしがる君がきゅうきゅうと締め付けてくるからたまらなかったよ」
「あなた……他の女はもう、」
「わかってるよ、僕は他の女を抱いたりしない。君も誰にも抱かせない。だけど……前はこういうことを平気でしていた。ただの奴隷ならもっと酷い目に合わせた。だけど彼も僕も大切なパートナーを見つけたんだ。だから、もう昔みたいな無茶はしないよ。独占欲だってあるしね。誰にも澄華を触らせたくない。だけど触らせて僕がいいと泣き喚く君を見てみたいとも思う。そんなことをすれば狂いそうなほど嫉妬してしまうくせに、ゾクゾクするんだよ。けれどこうやって互いに見せ合うぐらいなら、恥ずかしいで済むだろう? お互い様だしね」
 そういう意味では安心していた気がする。向こうの夫婦も同じように愛しあっているのがわかったから。
「さあ、朝までまだ時間がある。もっと欲しいなら欲しいと言いなさい。僕のがいいのか? それともこっちのおもちゃのほうがいいのかな?」
 先ほどのおもちゃのゴムを付け替えて差し出してくる。
「……いやです、あなたの……ご主人様のをください」
「あげるよ、たっぷりと……ご褒美」
「ああっ……んっ、あなた……ご主人様ぁ……」
 その夜は、他の女にはもう触れないと甘く繰り返されながら、見られながら果てたことを責められた。泣いても縋っても許してもらえないほど前も後ろも激しく……
 おそらく、彼がやってきたのはもっと酷い行為だったに違いない。わたしにはコレ以上はするつもりはないみたいだけど、もし彼が望むのなら……わたしはすべての行為に応えてしまうかもしれない。
 誰にも渡したくないから……彼を、わたしのご主人様を。
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4Pどうしようかなと思いつつ、なんとか思いとどまりました(笑)そのうち書くかもしれませんが、陵辱か愛されかどちらかで(笑)←それもかなりの違い!
お嫌いな方はごめんなさい。
そして特別出演の前田夫妻は「凍える月」というお話に出てくる夫婦です。詳しくはサーパラにてPC専用電子書籍として販売中です。近々パブーでも販売できるかもです。(携帯対応してます)もし興味がおありになれば読んでやってくださいm(_^. .^_)m
続編の震える月もはやく形にしたいんですが……意匠製作中のままです(汗)
2013.4更新

 

 

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