バカップルの日常シリーズ

〜姫と直〜    初えっち編・姫

〜姫・直さんごめんね〜


自分でも信じられなかったこと。
こんなにも直さんのこと好きになれるなんて...
はじめて男の人と付き合った訳じゃあないのよ。高校の時、生徒会の後輩の男の子とも付き合ったこともあったし、同級生とも...でも一緒にいるのが楽しくってトモダチの延長ってかんじだったかな?今思うとね。だってその時は自分もちゃんと恋してるって思えたんだから、それはそれでいい思い出。だってキス以上はしなかったし...


「ん、直さん...」
「姫、好きだよ。」
最近日常的に行なわれるキス。
んと、正直に言って直さんのキスってすごいと思う。こんなキスはしたことなかったって言うのが感想なんだけど、普通のキスのはずなのにあたしもおかしくなっちゃうぐらい優しくって熱いの...だって唇を合わせたり、舌が入ってくるキスも知ってるつもりだったけど、違うんだもん!!意識がどっかにいっちゃうのっ!
噂には聞いてました。直さんがすっごくもてること。
付き合いだしてからも何人もの人に『大丈夫?』ってきかれて、その意味が最初わからなかったんだけど、同じ事務所のトモダチのちよがちゃんと教えてくれた。
「峯田さんははね、仕事も出来るしきちんとした人だから誰も何も言わないけど、あれは相当遊んでた口よ。」
本人の口からも聞いたけど...
でもちよ、あなたが言うなら相当よね。だってちよったら若い男の子を仕込む(うわ〜〜すごい言い方だけど事実だから)のが大好きで、周りにはいつも男の子が群がってて...相当な遊び人はあなたの方でしょ?って言いたくなる。まあこれで某有名国立T大生だったりするからもう驚き!でもさ、ちよと付き合う男の子っていつの間にか仕事(ここの非営利団体の仕事ね)も女性の扱いも、ファッションも立ち振る舞いも完璧イイ男になっていくんだもん。
本気じゃないのが悲しいけどね。
「別名合コンの帝王、ねらった女の子ははずさない、NO.1はお持ち帰りが常識。まあ女の方もほっとかないけどね...そんな人だよ、峯田さん。」

そして先輩宅で開かれたそうめん大会でも...
「知ってると思うけど、峯田さんは今まで色んな女の子に手を出してきた遊び人だから、姫が心配なんだよ。それをわかって付き合うならそれでいいけど、この忠告だけは聞いて欲しいの。」
並み居る先輩方に言われて驚いた。直さんが今まで団体の中で女の子に手を出した事もなかったのに、よりによって、19になったばかりのあたしはに手を出した外道だと、先輩たちは思ったらしくって...
「こんなことで、姫という貴重な人材を失いたくないの。」
とまで言われた。後でちよから先輩たちは本気で引き離す気だったんだって聞いた。でもそのころにはあたしの気持ちは直さんに惹かれていっていたの。あたしの見ている直さんは先輩たちのいう直さんとは少し違っていたから、いつもあたしに精一杯の誠実さと優しさをくれる直さんだったから...
「直さんがどう見られてるかも知ってるし、今までのことだって多少は知ってます。でもずっと今までの直さんのままじゃないと思うんです。私は私の目で見て判断したいんです。それだけ今の直さんを信用してるんです。万が一それでだめになっても、自分で決めた判断だから後悔しません。」
そうはっきりとそういうことが出来た。

「あのときの姫の言葉の意味わかったよ。峯田さん雰囲気変わったよね。もともと出来る人だし、愛想もいいけど、以前よりどんどん取っつきやすくなってきた。これって姫のおかげじゃない?姫とつきあい始めてからぴたっと合コンにも顔出してないみたいだしね〜男の子たちが盛りあがらなくって困ってた。それだけあんたに本気って事なんだろうけどね。」
しばらくしてちよがそういってくれた。
「ちよ...」
「大丈夫なんだね。」
「うん。」
すぐに返事できたよ。だって本当にあたしには優しいし、あたしのこと理解しようとたくさん話し聞いてくれるし、間違ってたらちゃんと納得するように言ってくれる。それに...付き合って3ヶ月、キス以上手出してこないんだもん。
そりゃ肩を抱かれたりぎゅってされたりそんなスキンシップはあるよ?でもそれ以上はなかったから...それを聞いたときのちよや先輩の顔ったら、鳩が豆鉄砲くらったっていうか、すっごく驚いた顔してた。付き合ってすぐ手を出さないって、そんなのありえないって。
でもね、そろそろいいと思うの。そう思い始めたのがこのごろ。
付き合い始めてもうすぐ4ヶ月。スキンシップも気持ちいいし、なにより嫌じゃないなって思うの。もっと分かり合いたい、って言う気持ちが一番かな?全部丸ごとさらけ出しても平気だなって思えたの...こんな気持ちになったのは直さんが初めてだよ。


「姫、あさってうちにおいでよ。」
そのお誘いはとっても自然だったの。いつもとおなじなんだけど、その日は4ヶ月目の記念日だったから...なんかちょっとちがうかなって思った。
あたしはうんと返事した。あたしの気持ち伝わってたのかな?そろそろいいかなぁなんて密かに思ってたこと。直さんにしてはずいぶん我慢してくれてると思うの...
最近ね、夜遅く帰るのが寂しかったの。離れたくないなって思ってたから。帰り際送ってくれた車から降りるときも、直さんの腕も、目も離したくない、帰したくないって言ってくれてるみたいであたしも切なかったの。
「さてと、用意できたし、出かけるかな。」
そう自分に声をかけて立ち上がったその時だった。
携帯が鳴った。友人から...
「どうしたの?」
『ひ、姫ぇ...ううっ、うえっん...』
電話口ですすり泣く声が聞こえる。
「大丈夫、ねえ?」
それは友人から失恋したっていうSOSだった。彼女のアパートはここから歩いてもすぐの所。
「あたし、いこうか?そっち...」
『姫...もうあたし、だめだよ...立ち直れない...』
直さん、ごめんね、でも、あたし友達放っておけないの!
そう電話口で告げたとき...
『そっか...いっといでよ、姫。今の彼女には姫が必要なんだろ?オレはいつでもいいから。』
直さん、感謝!あたしは友人のうちに向かってかけだした。


〜直樹〜
今日は姫が来る。
そう思うだけで朝からそわそわしてた。いや、そう誘おうって決めたその日から...
4ヶ月目の記念日。そんな小さな事がとても大事に思えてしまう。今までと違う自分。
姫の好きなモノとか用意しておこうかなって思ったりして張り切ってる自分。
あぁ、でも何か余裕ないなって、思う。
そわそわそわそわ...仕事して手も浮ついてる自分がわかる。もちろん周りには気付かせたりしないさ。
そして気合いの入ったその日の午後、仕事が終わって帰る頃に姫が来るはずだったのに...1本の電話。
「ごめん、直さん!友達がね、泣いてるの!ほっとけないの!今から彼女のアパートに行ってくる。ごめんね、約束また今度でいい?」
だめって言えなかった...体から力が抜けて行く虚脱感さえ感じた。
情けない、そんな、今日がだめになったくらいで?オレ、なんちゅう落ち込みようなんだ。
そうなんだ、友達を大事にする子なんだ。
ああ、そういえば遊び回ってたころの女なんて足の引っ張り合いしてたっけ?色目使いを競ったりして、それでも親友なのっていってたっけ?ああ、そんな女に比べたら、姫、許すよ、しょうがないもんな。
けど、期待と不安でふくらんでいたオレのこの気持ち、どこに持って行けばいいの?
くそっ、オレらしくないぜ!
けどな、昔なら女にドタキャン食らったら街に繰り出して代わりの女ゲットしてそれでよかったんだ。でも今はそんなことできねえ。
欲しいのは姫だけだから...
姫、オレまってるから。

男 峯田直樹 26歳、一人寂しい夜は更けていった。