バカップルの日常シリーズ

〜姫と直〜    出逢い編  姫の想い
「清宮、オレと付き合わない?」
そういわれて、すぐに断ってしまった。
相手はあたしが大学に入ってから参加してる同じ非営利団体のOBで、峯田直樹さん。今年25歳のエリート会社員。180センチはある長身とさわやかな笑顔で、ダントツの人気。仕事も出来てかっこいい部類...けっこう騒いでる子もいたりする。でもあたしはどっちかっていうと年下の男の子や同級生の男の子と友達感覚で付き合うことが多くって、そんな大人の人はあたしなんか相手にしないって思ってたし...
嬉しくないといえばうそになるかなぁ?こんな素敵な人に認めてもらえたって気がして、正直すっごく嬉しかったの。でも、さわやかに軽く告白してくれたけど、真剣だよって目がいってるのよね。
多分今、付き合い始めてもその気持ちの温度差っていうのかな?かなりひらいてる気がして申し訳ないかなっておもったの。峯田さんは社会人だし、ここでもOBで先輩に当たる人で、決していい加減じゃないっていうのもわかるんだけど...
あたしって見かけがおとなしそうに見えるけど、結構はっきり言うほうなんだよね。それは峯田さんも知ってるはず...意見はちゃんと言わなきゃいけないって思ってる。いつもちゃんと優先して聞いてもらえる環境で育ったせいもあるかな?あたしって、男ばっかりの家系に生まれたんだよね。親戚中男の子ばっかりの中、両親やお兄ちゃん、祖父母、叔父叔母、従兄弟、みんなに可愛がられたの。一番小さかったし...背も今でもちっちゃいまんまだから未だに大人扱いしてもらえない。大学に入って上京して一人暮らしするのだって、みんながそれぞれうるさくって、すっごく大変だったんだから!
「あたしには、峯田さんほど想う気持ちはまだないです。だから対等にお付き合いできないと思うんです。気にはなってますけど...」
理由をそう告げた。こんな言い方普通ならわかってもらえないんだろうけど、峯田さんならわかるかなって、思った。でも、ぜんぜんひるまない峯田さん。さすがすごい自信かな?にっこり笑ってこっちを見てる、っていうか30センチの身長差、見下ろされてるんだけど...
「気にはしてくれてるんだ。だったらそれも、わかってる上でつきあってほしいと思う。まず付き合ってみないかな?ゆっくりでいいから一緒に足並みそろえてるまで待つつもりだし、清宮にあわせるよ、オレ...」
そういわれて、少し考えたけど、それなら一緒でもいいかなって...
「それなら...」
って返事しちゃった!だってそのくらい優しい目だったんだもん。


「直さんって...」
「ん、なに?」
「みんなの持ってるイメージと中身、ちょっと違うよね?」
「それは姫もだろ?」
くすくす笑って引き寄せられる。
付き合い始めてしばらくして、峯田さんのことを直さん、あたしのことを姫と呼ぶようになったの。まあ、それなりにデートして、話して、手つないだり...ほんとにあたしのペースに合わせてくれるんで驚きだった。大人の直さんからすればもっと急ぎたかっただろうけど...
「姫がさ、こうやってそばにいてくれるだけで嬉しいんだけどね。ここにいる姫は事務局にいる姫とは違うだろ?少しづつだけどオレに気持ち許してくれてるってわかるからさ。」
あたしの髪にちゅってキスされる。
直さんて、そういうことがすごく自然に出来る人なんだよね。
事務局にいるときは仕事も気配りも出来て、尊敬〜って感じだった。結構俺に任せとけって自信満々なイメージだったんだけど...こうしてプライベートで逢うようになって、完璧にこなしてる直さんばっかりじゃなくって、がんばってる最中の直さんや、悩んでたり、自分を叱咤して追い込んだりしてる、直さん、それから意外とばかなことをしたり、こだわったりしてるとこも見れて、あたしだけが見れる直さんの素顔って感じ?そしたらどんどん惹かれていく自分がいたの。
最近はこうやって力ぬいて、お互いの中身をちゃんと見せられるようになってきたみたい。
「直さんもあたしに気持ち許してくれてる?」
「うん、姫の前ではオレ、一番自分らしくいたいと思うよ。頑張ってるとこ、いいとこも見せたいけど、安心できるとこでもあるから...」
ぎゅうって抱きしめられて、照れてうつむいてるところを、くいって指であごを持ち上げられて目と目が合う。あたしはそっと目を閉じると直さんの唇が静かに重なってくる。ゆっくり何度もついばまれて、またゆっくり重なって、直さんの唇の感触がとっても気持ちよかった...
「姫、好きだよ...」
唇が離れた後もまたぎゅうって抱きしめられてあたしは直さんの腕の中にすっぽりと埋まってしまう。直さんは決してそれ以上のことをしてこなかった。あたしが初めてだってわかってるんだろうなぁ。ゆっくり、抱きしめるのも、キスするのも、あたしがいやならちゃんと拒否できるように、ゆっくりしてくれる。その優しさであたしはまた安心して目を閉じるの。時々薄目をあけて直さんの顔を見てたら、時々すっごくつらそうな顔してるときがある。なんか我慢してるのかな?ってかんじ。でもあたしを包む腕は優しいし、見つめてくれる目も優しい。
いつか、全部預けられる日が来るんだろうなぁって思ってるよ。
「あたしも好きだよ、直さん。」
だんだんと、思う気持ちの歩調が揃い始めてるんだなぁって思った3ヶ月目の夜のことでした。


後日談:ずうっと後になって聞いたら、このあたりからすっごく我慢してたんだって。抱き合ったりキスしたり、カラダが触れ合う機会がすごく増えてきたから...今の直さん見てると、その我慢ってすごかったみたい...
直「すっげぇ、辛かった!!」
そうです。(笑)