2005クリスマス企画
クリスマスを過ぎても・1 year later
〜今年のクリスマスは〜
11月・朱音
結婚宣言して1ヶ月。
周りの視線は相変わらず痛い…
バツイチとはいえ、出世頭でイイオトコでは3本指に入ってた本宮課長がいきなり同じ課の女子社員、それも目立たない、地味でオールドミス候補と言われてたあたしと入籍したってことがかなり気にくわなかったようで…
結婚を意識してる女性達からの攻撃は主に化粧室、給湯室だった。
「一体何を武器に結婚を迫ったんだか。あの貧弱な身体じゃ、本宮課長だってなかなかその気にならなかっただろうにね。」
「よく相手にして貰えたわよね。酔ってるとこに付け入ったんじゃないの?いいわよね、同じ課だなんて。あたし達だって同じ課だったら…負けはしなかったのに。」
総務の子かな?それと受付の関さんだわ。綺麗って言うより可愛いので評判だったはず...
「ほんと、だったら結婚だって、子供できたとかいって脅したんじゃないの?」
「ありえる〜〜〜」
ってトイレの中に居るんですけど?そんなこと言われてるのか、あたしって。
その後しばらくでれなかったのは言うまでもなくって...意外な本宮課長人気はあちこちにあって、聞こえてきた声に驚くほどだったけど、ここまで言われるなんて意外だった。そのまま聞き耳をたててしまった。今までのあたしは仕事さえ出来ればって思ってたので、何言われても平気だったんだけど、課長のこと考えると知らんぷりも出来ない。だから最近エステ行ったり化粧法も変えたりしてるんだけど...
「あたしさー、企画部に何度も移動願いだしたんだけど通らなくってさぁ。だって本宮課長ってとりつくしまないって感じでしょ?仕事が出来ないと認めて貰えないって聞いてたから、同じ課でお近づきを狙って結構頑張って企画書出したのに相手にもされなかったわ。」
「へえ、直美が企画課希望してたなんて初めて知ったわ。営業の男どもが泣くわよぉ。ねえ、ねえ、じゃあ、あの杉原って人そんなに仕事出来るの??」
営業の沢田直美さんかな、すごく仕事できるって同じ課の友人が言ってたのを思いだす。
「さあ出来るっぽいけど...あのさ、総務の浅野さんと結婚した同僚の富野さん居るじゃない?彼がよく杉原さんと企画やプレゼン組んでたらしいのよ。彼の仕事がよかったんじゃないの?」
「だからあたしも富野さん狙いだって思ってたのよ...意外だったわ。まさか彼女が本宮課長狙ってたなんて...」
肝心の企画はあたしだったし課長狙いなんてしたこと無かったんだけど...そう言う風に見られてたんだ。
「あたし総務の木村さんと仲いいんだけど、彼女が浅野さんから聞いたんだけど、富野さんと杉原さんって大学からの友人だったんだって。周りは付き合ってるんじゃないかって疑ってたそうだけど、全然そうじゃないって富野さんから言われて、猛アタックかけたらしいわ。彼女可愛いじゃない?ちょっと誘ったら直ぐに乗ってきたって。」
「まあね、あの杉原さんとじゃ比べられないわよね〜浅野さん、まだ若いし。」
もうすぐ30で悪かったです。聞いてるとどんどん卑屈になっていく。
「でもさあ、見てると腐れ縁だとか言いながらも、彼女気取りですっごくうざかったんだって。」
「ふうん、でも富野さんって優しそうだから、杉原さんのことすげなくできなかったんじゃない?」
「でもさぁ、浅野さんと付き合いだしてもそのこと杉原さんにも言ってなかったみたいで、浅野さんイライラしてたわ。ようやく結婚の報告ではっきり言ったんだけど、その時のビックリした顔見てやっと気が晴れたそうよ。」
彼女面なんかした覚えないのに、えらい言われ様だわね。あたしは呆れながらもそこから動けなかった。
「あら、でも富野さんと本宮課長じゃレベルが違うじゃない...なんなら富野さんとまとまってくれればよかったのに...」
「ココだけの話しだけど、浅野さん育児拒否起こしてるらしいよ。富野さんて意外と優柔不断で、家のことも何にも出来なくて、育児もだっこするしかできなくて役に立たないんだって。最近は仕事も重要な企画回して貰えないらしくって残業もせずに帰って来るから生活も厳しいって。貯金も結婚式でほとんど使っちゃったんだって〜浅野さんも結構派手だったじゃない?服装とか持ち物とか...貯金ナイからキツイって言ってるそうよ。」
「へえ〜幸せそうに退職したって言うのに、イイオトコ捕まえ損なうと悲惨ね。」
「そうそう、はずれクジだったって嘆いてるそうよ。」
酷い...勝だっていいとこいっぱいあるのに。そりゃ最近元気ないし、すごく悩んでるのは聞いてるけど、優しい奴なんだよ?まあ、判断力は鈍いのは認めるけど、気も余り回らないし、不器用だけど、イイヤツなんだって!あたしが...あたしが10年、思ってきたヤツなんだから...もう、今はただの友人だけどね。
「ああ、もう今時永久雇用なんて安心してられないから、よっぽど仕事が出来る人じゃないとダメね。お金持ってて、おまけに家事や育児手伝ってくれたら申し分ないわよね〜」
「そうそう、それと見た目もイイオトコで、あちのほうもすごかったら最高なんだけどなぁ...」
「やだなぁ、そんな男滅多にいないわよ〜」
あ、それって...
「だから、本宮課長なんじゃない!バツイチでありながら最後の大物独身貴族よ〜条件合ってると思うんだけど?」
思った通り課長の名前が出た。
「そうよね、あれだけ綺麗な顔ならえっちはまあ、普通でもいいしね〜」
いえ、すごいです...あたし、身体もちませんから!生理とか出張の時ほっとしてる時あるものね...仕事モードの時とは完全に別人だもの。
「うん、でも、雰囲気怖いよ、あの人。」
あたしもそう思ってました。すごく自分に厳しい人なのよね。ちゃらちゃらしてるの嫌うし。
「でも普通に男性社員と飲んでるときとか笑ってる顔怖くなかったよ?前にうちの課と合同慰労会やったときに見たの、それからずーっと目付けてるのよ〜でも、あたしだけじゃないから焦ってたんだけど、まさか同じ課のお局候補に持ってかれるなんてなんか悔しい!!」
前に営業と一緒に飲んだときか...やっぱ課長はモテてたんだ。
「いいじゃない、直美は営業でイイの見つけなさいよ〜」
「そうね、頑張るわ。」
そう言い残して声が遠ざかっていった。
「やっと出られる...」
午後からは課長と打ち合わせが入ってる。今度プレゼン組む細野くんも一緒なんだけど、遅れちゃったかな?
急ぎ足で会議室に向かった。
「遅い。」
「すみません。」
急いで資料を広げてプレゼンの報告の準備をしようとして気がつく。
「あら、細野くんは?」
「肝心のパワーポイント用のファイルを自宅に置き忘れてきたらしい。さっき気がついて、急いで取りに帰った。あいつは、ああいう作業には長けてるのに、あの抜けてるのなんとかならんか??」
「ほ、細野くんらしいですね。」
あたしは思わず笑いながら課長の方を見た。
さっきのあの二人の言ってたように、一見してみると取り付きがたい厳しいイメージだ。今だって細野くんの失態に眉を寄せて怖い顔をしてる。でもあたしは知ってる。あの目が熱くあたしを求めることも、あの唇が意地悪くあたしを煽ることも。今書類をめくっているあの繊細な指先がどれだけ優しく婬らにあたしの身体を愛撫するか...
一瞬にして身体が熱くなり始めるのに驚いてしまった。会社なのに、会議室なのに。
「コーヒーでも入れてきますね。」
二人っきりで居るのがいけないのだと、あたしは部屋の外に出ようとした。
「朱音、なんでそんな顔するんだ?」
背を向けたあたしの身体を一瞬にしてその腕の中に包み込む。
「か、課長...」
「今は俊貴だ。」
耳元にかかる声にあたしはすぐさま身体から力を奪い取られる。
「珍しく遅れてくるし、そんない色っぽい目で見るなよ。僕だけだからいいけれども、ココに細野が居たらどうするつもりだ?あんなパソオタクその気にさせたいのか?」
「そんな、違います!」
「じゃあ、僕をその気にさせたかったの?いけない子だなぁ、お仕置きしなきゃいけないかな?今、ココで...」
そんな恐ろしいことを言い出す課長。あの子達は知らないんだよね、こんな課長の姿。すごく嬉しそうなんだから...
「課長、細野くんすぐ戻ってきますよ??」
「噂になっても、もう僕らは夫婦なんだから、不倫でも何でもないよ?けど今度の人事で僕か朱音のどちらかが動かなければいけないだろうから、こうやって二人で仕事できるのは後わずかだ。朱音が企画の仕事好きなのに申し訳ないが、今僕がこの部署動くわけにはいかないからね。」
「わかってます。だから、課長はあたしにやりがいのある仕事を任せくれてるんでしょ?だから頑張りたい、後少しでも...」
「ああ、このプレゼンが終わったら結婚式だからな。」
(朱音、アレもう終わった?)
囁くような小さな声で彼が聞いてきた。
そう、あたしはこの間からアレ、生理だったんだけど、さっきトイレでもう終わったなぁって思ってたトコロだったのよね。
勿論、アノ最中は無かったわけで、課長...俊貴さんが、今朝あたしを抱きしめる腕がすごく熱かったのもわかってる。
「た、たぶん...」
(そう、じゃあ、今晩の分、味見させてもらうよ)
「えっ??」
そう囁いたとたんあたしのブラウスのボタンをはずしはじめる。
「課、課長??」
(俊貴だと言ってるだろう。)
甘いその声は肌を伝わって届く。首筋を舐めあげるその舌先は、開いた胸の先に何度も絡み付く。
「やっ、ああ...と、俊貴さん...」
(声を出してはいけないと言ってるだろう?誰かに聞かれたらどうするんだ?)
聞かれていけないのならこんなことしなければいいのに、それが言えない。彼がイジワルモードに入ったら止めようがないのだから。それはもう何度も身体にわからされてしまっている。
初めてのあの時、彼もまさかと思っていたのだろう、勢いよく貫かれてあたしの身体は痛みで軋んだ。
その後、あたしに痛い思いさせたとすごく気にして、やり直しだと言って何度もあたしをイカせて、快感というモノを身体に覚え込まされた。課長の手にかかればあたしなんて赤子も同然、簡単だっただろうなって思う。
それからというモノの、慣らされ、開かされていく身体、翻弄されて、彼の言うまま求めて、はしたなく喘いで、なにも考えられなくさせられる。いつも冷静にあたしが堕ちて行くのを見ている俊貴さんはあんなにも冷静なのに...
なぜ、あたしだけこんなにも乱れてしまうんだろう?自分がこんなにも理性を捨てられるなんて思ってもいなかった。こんなにも身体も心も女で、さっき聞いたみたいにこの人を欲しがる人もたくさんいて...
イヤ!俊貴さんは、あたしの、あたしだけなのっ!
他の誰かに目移りしても、いつか捨てられても、勝のように諦めたり出来ない、きっと。
この身体のすべてこの人のものだから...
(こんなに濡らして...ココじゃ出来ないのわかっているのに?帰ったらいっぱいあげるから、我慢しないとそろそろ細野が帰ってくるよ。)
あたしの中から抜き出された指をハンカチで拭くと彼が優しく微笑んでみせた。
「意地悪...」
「しょうがないだろう?(拭いてあげようか?それともお手洗いに行ってくる?)」
また囁かれて、仕方なくまた個室に駆け込んだ。
もう戸籍の上では彼の妻である。杉原でなく、本宮朱音。この身体のすべて彼のもの...
(俊貴さん...)
おそらく今夜も愛されるだろう。
身体が反応しはじめる...
(本当に意地悪だわ。)
急いでもう一度身支度をして、コーヒーを用意して会議室に戻ると細野くんが戻ってきていた。
「すみませぇ〜ん、杉原さん、も、持ってきましたから!!課長ったら取ってこないと毎日残業させるって言うんですよ?もう、ひどいですよねぇ。」
オタクな細野くんはファイルを呼び出すと素早い操作でプレゼン用の画面を映し出していく。
(もうへいきなのか?)
暗くした部屋の中、耳元でぼそりと彼の声が響く。
(も、もう、大丈夫だから...ね、それ以上もう、近づかないで!)
必死に声を絞って彼の身体を押しやった。
(わかったよ、じゃあ、今晩覚悟しておきなさい。)
にやりと課長が笑ったのが見えなくてもわかった。
明日もまだ仕事なのに...あたしはがっくりと肩を落とし、大きなため息をついた。
本当にこれでよかったのかしら?彼女たちが言うように『申し分なく、最高』なんだろうか?
でもそれ以上に、そんな彼を繋ぎ止めておけるほどの自信が自分にはないのに...
少し悩んでしまう自分が居た。
入籍後の朱音サイドのお話です。 |