たぶんそう思う...

クリスマスが過ぎればあっという間に年末だった。
さすがにあたしも年末までは残業が続いてたし、まーくんもバイトの居酒屋のお仕事が夜中まであったみたいだ。朝起きてメールを見ると《今帰った》メールが夜中の2時3時になってる。あたしもくたくたで寝ちゃってるし、朝、あたしが出かける頃にはまーくんは深い眠りの中にいる。流石に帰りが遅いとまーくんもこっちに帰ってこない。気、つかってるんだろうな?
『槇乃、あんた会社は28までなんでしょ?今年のお正月は新しい家で家族揃って迎えるんだから、さっさとこっちにいらっしゃいよ。』
そうは仰いますがお母様、その家はもうすでにあたしの家じゃないんだよね。出来立ての時に一度遊びにいって泊まらせてもらったけど、兄貴とことの二世帯住宅で、二階の兄貴とお嫁さんのスペースには入り込みにくいし、1階で親と一緒ってのもね...28日に帰って、いったいいつまで居ればいいの?3日までだと5日間も!正月は兄貴たちもお嫁さんの実家に行くだろうから少しは楽かもだけど、その間ずーっと母親の愚痴聞かされるのもやだよねぇ。おまけに友達はそっちにはいないからどこにもいけないでしょ?こうなったら、ぎりぎりまでこっちに居よう!こっちなら友達もいるし、まーくんだって...そういえばまーくんはどうするんだろう?操さん(まーくんのおかあさんね)たちこっちに帰ってくるんだろうか?それともまーくんが家族のとこへ行くのかな?
 今日はもう28日、あたしは今日で仕事納めだけど、母親には正月友達と遊ぶから、2日の晩に帰るって言っておいた。ちょっと怒ってたけど、それだったら、2、3日の晩泊まって帰ればいいもんね。6日から仕事だから5日はゆっくりしたいし...でもまーくん何時になるんだろう?メールで聞いても仕事中は返事出来ないだろうし、ずっと無理だったら友達誘っちゃうんだからね!いくらなんでも、寂しい年越しなんてしたくないもん...誰かの体温が側にあるってのに慣れちゃったんだからね!それって、まーくんのせいなんだよ?ほぼ毎晩いるんだもん...気分は同棲生活だったんだから。
そうだ、まーくんのバイト先に飲みに行けばいいんだ!
あたしは駅からまっすぐその店に向かった。

「いらっしゃいませっ!」
元気のいい声にまじって『げっ』て聞こえたぞ?そんなに嫌そうにしなくてもいいじゃないの。
「槇乃さん、ひとりで来たの?」
水とお絞りを持ってまーくんが近づいてくる。あたしが腰掛けた席は中央より少し右寄りで、二人掛け用の席はここしか空いてなかった。年末を飲んで過ごそうとする客でにぎわう店内は結構うるさかった。
「そうよ、今日は仕事納めだったし、明日から休みだからゆっくりしようと思って...誰かさんの予定しだいで年末正月と友達誘わなきゃなんないからね。」
「槇乃さん、慎太郎にいちゃんとこの家に行くんじゃなかったの?」
慎太郎っていうのはあたしの兄貴のことね。
「2日の晩から行くって言ってるわよ?まーくんこそ、あっちに行かないの?」
「おふくろ達1日の晩にこっち帰って来るって。そっか、だったら、ちゃんと空けといてよね。」
まーくんは無敵の笑顔でそういった。家族の年末の予定がなかなか決まらなかったそうだ。
「広野く〜ん、オーダー追加お願い!」
「はい!じゃ、槇乃さん、メニューは適当に注文しとくから、俺のおごりね。」
ウインク一つ残して若い女の子達が集まったテーブルに呼ばれて行く。あれ?めったにフロアに出ないって言ってたのに...名前でしっかり呼ばれちゃってるよ?
「やだぁ!あははは!」
一人でちびちび飲んでても寂しいだけだった。向こうのテーブルでは盛り上がってる上にしょっちゅう注文をしてるので絶えずまーくんが呼ばれていた。
(帰えろっかなぁ...)
年末の予定は立ったものの、電話かメールで済ませるべきだった。
「すいません、お勘定...」
レジに支払いに立つと別のバイトの男の子がすぐに飛んできた。まーくんはまだあっちのテーブルに捕まってる。
「えっと、いいんですよ、広野のおごりだから...槇乃さんですよね?」
「はい...でも払います。いくらですか?」
「俺も前の飲み会の時いたんだけど覚えてないかな?」
たしか、ススムとか呼ばれてた子だったかな?確かにいた...っていうかあれってバイト先の仲間っていってたからここにいる人達はたいていいたのかな?
「あぁ、あの時はこっちに引き込んじゃってごめんなさいね。」
あたしの連れもかなり酔ってて無茶してたから...迷惑だったでしょうに。
「いえ、楽しかったですよ。ね、槇乃さん、よかったら厨房の奥に休憩場所があるんですけど、そこで待っててやってくれませんか?将志のやつ、表じゃ愛想笑いしてるけど、裏に回ったらもう荒れちゃってて...あの女子大生軍団、将志目当てで来るもんだから、あいつ参っちゃってるんですよ。」
あたしは財布を開けたまま奥へと連れ込まれた。返事もしてないのに...

「その節はどうも〜」
中に入ると、前に一緒にいたメンバーの子達がかわりばんこに挨拶に来てくれる。
「あれ以来うるさいんですよ、俺の槇乃さんって...」
「そ、そうですか...」
顔が赤くなる。ここでは全然内緒にしてないんだ。なんだか嬉しかった。
「今日は槇乃さんが早く帰ってくるとか、クリスマスだから休みますとか言って、もうあいつがいないとファンが嘆く嘆く...」
「ファンなんているんですか?まー、将志くんは...」
「あいつ目当てがあんまりにうるさいから厨房に入れてたんですけどね、そしたら文句言われて...年末だけはフロアに立ってもらってるんですよ。その代わりに明日っから休みをやるって条件でね。」
「佐野さん、もういらんこと言わないでくださいよ!」
まーくんがやっと顔を出した。厨房の責任者らしい佐野さんは、はいはいと笑いながらまた板場に戻っていった。
「お疲れ、大モテだね?」
そういうととたんに嫌な顔して、あたしの横にどかっと座った。
「急に来るんだもんな...焦ったよ。」
「だって...なかなか顔見る機会がなかったから....」
「槇乃、あと1時間で上がらせてもらうから、ここで待ってられるか?一緒に帰ろう。」
「うん。」

そろそろ終わるっていうので外で待ってた。
「ね、ちょっと、あなた広野くんとどういう関係?」
いきなりあたしの目の前にさっきの女子大生軍団が聞いてきた。店内にいたときのキャピキャピとは打って変わったどすの聞いた声。はいはい、たいていこんなもんだけどね、女の集団なんて。
さて、どういうって言われてもね...お隣さんといえばいいのかな?それとも彼女?うわぁ、怖くていえないよ...なんてね、あたしが引くと思う?
「そういうあなた方は?ただのお客さんでしょう?人のプライベートに口出しするのに自己紹介もないなんて、社会に出てもやっていけないわよ。」
「な、なんですって?」
「聞くんなら先に名乗りなさい。」
「なんなのよ、えらそうに!」
「その人数で囲んどいて、自分達が偉そうじゃないとでも?」
悔しげに顔を真っ赤にして頭から湯気が...あら?怒らせちゃった?だってあたし売られたけんかは必ず買っちゃうんですもの♪
「あんたみたいな年増が広野くんの周りうろつかないでよ!彼だって迷惑よ!」
「それは無理ね、一つ屋根の下で住んでるんですもの〜帰り道も一緒だから待ってるのよ。」
これは嘘じゃない。同じ建物の中に住んでるんだし...
「うそっ!あんたなんか相手にするはずないじゃない!!」
「そんな勝手な思い込みされたほうが迷惑でしょう?もしあたしが彼の身内でもそんな失礼な口聞くっていうの?」
「えっ?」
身内って言葉に反応してる。姉とでも名乗っとけばよかったかな?
「槇乃、もうそれぐらいにしておきなよ。あなたの口に勝てる人なんてそういないんだからさ。」
くすくすと笑いながら店の裏口から出てきたまーくんは、あたしの隣に来るとちゃっかり肩を抱いてきた。もうっ、何主張する気よ?
「俺の年上の彼女なんだ。10年掛けて手に入れたんだから邪魔しないでね。」
にっこりと誰もが逆らえない凄みをたたえて女の子の集団に笑いかけた。
彼女達は小さな声で囁きながらさっさと立ち去って言った。
「相変わらずだよね、その口!この辺りじゃ誰もかなわなかった...けどあんまり無茶しないでよね?」
「わかってるわよ、でもちょっとね...やきもちもあったから...」
小さな声でそういったら、まーくんの顔が一気に明るくなった。ちょっと暗くてよくわかんないんだけどね。
「ほんと?うれしいなぁ、槇乃さんがやきもちやいてくれたなんて...この喜びを表現してもいい??」
「なんっ、えっ?」
路地裏のあたりにずるずると引き込まれる??
「ま、ま、まーくん??んっ!!」
細い建物の間、壁に押し付けられたあたしは、唇をふさがれて身動きも出来ない。
「ん、んんっ...はぁ..」
いきなり深い口づけ、あたしも逆らわずにしっかりと味わいかえしちゃう。だってひさしぶりなんだもの。
「槇乃、3日ぶり...寂しかった?」
「ん...だからこんなとこまで来ちゃったんだからね?」
あたしの甘えた声がまーくんの耳元を掠めている。ま−くんのあたしを抱きしめる腕がまた強くなる。
「俺も、もう限界...店で槇乃見てからはもう...」
お腹の辺りにまーくんの熱い塊が押し付けられてる。え?やだ、こんなとこで??
「槇乃、俺3日も抜いてない、ここでヤラセテ...」
「だめだよ...そんなっ、ま、まーくん?」
コートに隠されて見えないとはいえ、外は師走の寒風が吹いている。建物の隙間のそこはなんとか風もさえぎられて道からも、隠されてはいるけれども...スカートをたくし上げて、タイツの中へと冷たい手が入り込んでくる。
「や、つ、冷たいよぉ...」
「大丈夫俺のは熱いから♪」
一気に下着ごと下ろされて下半身に冷たい空気が入り込む。だめだよ、あたし冷え性なのに...
「ね、後ろ向いて、すぐ済むから...」
「ちょ、ちょっと...」
くるんとひっくり返されても逆らわないわたし...
「もうつけたから入れるよ?だって槇乃ちゃんと濡れてるもん。」
う...しっかりと反応してる自分の身体が恨めしい。こんなシチュエーションに萌えてしまってる。それにまーくんの指がもうすでにあたしのそこを気持ちよくしてるんだもん。あたしだって...感じちゃってるんだから。もう、恨みますエッチな身体...後ろ向いて素肌のお尻をまーくんに差し出す。すぐに自分のものをあてがった彼はゆっくりと腰を押し付けてくる。あたしは深くして欲しくて、思わず腰を突き出してしまう。うう、淫乱だわ。
「槇乃...逢いたかった、逢ってこうして槇乃の中に入りたかった...」
まーくんは身体を密着させるように抱きしめながら、片手はセーターの裾から胸の頂を、もう片手は濡れた敏感な蕾を攻め立ててる。ぐちゅりと音を立ててまーくんのものを飲み込んだあたしは一気に昇り詰め始める。
「あぁ、ああん、まーくん、あたしも...こうして欲しかったのぉ...ああんっ!い、いいのっ!」
びくびくとイキながら、あたしのそこがまーくんをきつく締め付けてるのがわかる。
「だめ、もう、槇乃っ!」
一気に駆け上るまーくんの腰が激しく前後して、ゆすぶられる激しさで頭の中が白く弾けていった。
「ああぁーっ!!んっんっ!」

はあはあと背中に荒い息がかぶさってくる。嵐みたいなえっちだった...
「あ、槇乃...すげ...こんなとこでも感じていけちゃうんだ。槇乃の行く時の締め付けってたまんねぇんだよな。」
しばらくは押し付けたまま首筋なんかにキスを落としてきた。順番反対だよ??
「うう、さぶい!槇乃帰ってもう一回あったまろうな♪お風呂場と、ベッドで。」
「まーくん、何考えてるの?んひゃっ、ん...」
いきなりずりっと引き抜かれて、身体が跳ねてしまった。だめだ...まだ甘い疼きが収まらない。こんなんだからいっつも1回や2回で終わらなくなっちゃうんだ、あたし達って...
ちょっとため息付きながらタイツを下着ごとひきあげる。濡れたまんまだけどいつまでもそうしてはいられないものね。場所が場所だし...けどこんなトコでしちゃうなんてさすがに後から恥ずかしくなちゃう。やっぱ若いんだ、まーくんって...
「俺今日でバイト終わりだから、29.30.31.1まで4日間も槇乃と一緒にいられるんだぜ?予定いっぱい立てような。そのためにもまずやるだけのことはやっとかないと身体に悪いだろ?」
「はぁ?」
はずしたそれをどうしようか悩んでたので、ハンカチを出して広げてそれを包んでバッグにしまった。ちょっと匂いが気になるけど、こんなとこに捨てていけないでしょう?
それを見ていたまーくんが身支度を整えてまた引っ付いてくる。
「まず俺のこの性欲をなんとかしてくんないと、遊びに行った先々でこんなことしちゃったらまずいでしょ?」
「も、もうっ、何考えてんのよぉ!」
ちょっと眩暈が...年末年始なにして過ごす気なの?そりゃ、えっちなしなんて言わないけど、それなりに普通のことしたいじゃないのぉ...コタツでみかん食べたりとか、除夜の鐘聞いて、初詣に行ってとか...
「だって逢えなかった3日間は槇乃さんとヤルことばっか考えてたからさ。だから逢ったとたんにヤリたくなっちゃうんだろ?さ、早く帰ろう、でないと俺玄関でもう一回襲っちまいそう。」
ニヤニヤわらうまーくんの靴を思いっきり踏み付けて先に歩き出す。
「もう、しらない!!ケダモノ!!」
「そんなケダモノと年末年始を過ごすって決めたのは槇乃さんでしょう?覚悟して帰りましょう。」
ちょっと腰に来て、ふらつくあたしを支えながら家路に付く二人でした。

もうちょっと、このところ構わずなケダモノなんとかしてっ!!たぶんむりだろうけど...

         

年末に向かって師走の寒空になにをやってるんですか?あなた達は!!まぁ、何も考えてませんからこの二人は...
(作者が考えてないんでしょう!と突っ込まれる〜)