5.ダイエットの基本 1


「はあ? 痩せなかったら会社辞めんの、チャーコ?」
「イヤ、だからそのぐらいの覚悟で頑張ろうかと……」
 その日の夜、早速幼馴染みの風間一子ことイッコを馴染みの居酒屋<あずまや>に呼び出して相談していた。ダイエットの相談で居酒屋っていうは変かもしれないけど、ここは同じく幼馴染みで腐れ縁の東浩太の両親が経営してる店で、最近はコータとお兄さんの亮太さんのふたりでやっている。
「チャーコ、無理すんなって。ダイエットとかいってさ、おまえがうまいそうに食ってるとこが見れなくなったら俺が寂しいだろ?」
 そう言うヤツとわたしは保育園からの長い付き合いでだ。どっちかっていうと兄弟か従兄弟みたいな感じかな? 実際親同士が従兄弟だから、また従兄弟になるんだけどね。だからついつい軽口が飛び交う。だからついつい居心地のいいここに随分長く通っている。待ち合わせから食事や飲み会まで全部ここでやっちゃうからね。
 だけど今回はそんなことも言ってられない。いくらコータの美味しい料理が食べられなくなったとして、ここはぜひとも頑張らなければならない。
「もう、コータは黙っててよ! これは乙女心と仕事のプライド両方かけた真剣な戦いなんだからね!」
 今度ばかりは生半可な決意じゃない。
「そうだよ、コータ。チャーコの気持ち考えてあげてよ? 仕事大好きなこの子がそれかけるってよっぽどのことなんだよ」
 イッコもその気持をわかってくれたのか加勢してくれる。普段はコータに言い返したりしない子なんだけどね。
「はいはい、わかったよ。チャーコもあんまり無理すんなよ? なんか俺にできることがあったら声かけろよな」
 コータはそう言ってカウンターの端に座るわたしたちの前から離れていく。ふたりでゆっくり話ししろということだろう。
 ちなみにイッコは小学校から一緒で、今はくすりやさんに勤めている。ドラッグストアじゃなくて相談専門のくすりさんで、薬剤師じゃないけど登録販売業の資格を取っている。そこの先生にいろいろと教わってるから専門知識も豊富で、おまけに自らのダイエットに成功した人なんだ。ただ、かなりお金もかけたらしいんだけど……でもそれは変なお薬とかダイエット食品じゃなくて、身体を健康にして痩せやすくするという、その人に合わせての体質改善のお薬だったらしく、その後のリバウンドも全くなく以前より健康で美肌になったと喜んでいる。やっぱり太るには色々と悪いところがあるからで、今は調子良くなった身体を維持するためにジムに通ったりウォーキングをしたり、食生活にもすごく気をつけているらしい。
 イッコが痩せた時、わたしも思わず同じ方法を! と、飛びつきたかったけれど、その当時兄が結婚して実家に同居を始めたので、邪魔にならないよう家を出て一人暮らしを始めたばかりだった。そんなわたしにその出費はちょっと無理だったから、その時はあまり詳しく聞いてなかったんだけど。
「とにかく生半可な気持ちじゃ続かないから、そのぐらいの気持ちでやるのはいいけどさ。大事なのは体重を減らすんじゃなくって体質改善だよ?」
「わ、わかってる……」
 痩せたいとか口にする度、それは言われていた。やみくもに体重を減らすことに躍起になって体調を崩して入院したり、リバウンドして以前より最悪なことになった人が多いのはよく聞く。無理は病の元、元気でなくては何事も成功しないのだ。仕事も恋もダイエットも!!
「とにかく一緒にがんばろ? 応援するから!」
「うん、ありがとう、イッコ」
 本当に彼女はすごく時間をかけてキレイに痩せた。もともと引っ込み思案で接客業なんて大丈夫? ってタイプだったけど、資格を取ったあたりからすごく自信をつけてきた。仕事にもダイエットにも成功して、やっと恋にも積極的になれそうだと言うその気持ちはよくわかる。イッコの場合は太っているではなくちょっとぽっちゃり程度だったけど、それでもスタイルの良い自分とそうでない自分じゃ随分と自信が違ってくる。わたしたちの望みは、細いとかスタイルがよくなくてもいい。せめて自分の基準値にはいる程度でいいから痩せたいんだ……わたしだって告白とか無理でも、せめて誰かを好きになったり恋していることを自分に許せるぐらいにはなりたいもの。
「とにかく太るっていうのはもちろん生まれつきの体質もあるけど、長年の生活習慣も大きく影響してるのよ。まずは自分が太ってる原因を見極めて、生活改善とか体質改善をして、それからその人に合ったダイエットをやらなきゃだめなんだ」
「わたしの場合はもともと太りやすいのかなぁ……母以外の家族はみなぽっちゃりしてるし」
「チャーコのとこのお母さん骨格も細いもんね。チャーコは運動して太ってない時でも筋肉質で骨つきもしっかりしてたよね」
 母は小柄でそんなに太っていない。父はがっしりと骨太で……わたしはモロに父親似だ。
「うん、これって骨太だよね?」
「現役時代は体脂肪率って、20%〜25%以内だったんでしょ?」
「そ、ほとんど筋肉だったよ。でも今より均整とれてないっていうか、体重よりも太って見えたんじゃないかな?」
「今はその筋肉が脂肪になってるんだろうね……もう一回当時の体型に戻りたい?」
「そりゃ、体重はね。でもあの体型じゃ……だめだと思う」
 体重ははるかに今より20kgは軽い。でも、あのムチムチガチガチの体型に戻りたいわけではない。当時はそうでないと運動できなかったから仕方ないけど、今はあんなに激しく動くわけでもないから。
「そうだね、チャーコは痩せても骨格がしっかりしてる分、モデルさん並みのスタイルは目指せないと思うんだ。骨は削れないからね。落とすトコ落として筋肉の付け方に気をつけて、バランスのとれた体型を目指さないとね」
「そこまで痩せなくてもイイよ。ほんと、標準でいいんだ……」
「今はその標準っていうのが難しいよね。痩せすぎてるのが標準だってみんな思い込んでるからね。下手したら骨や筋肉削らないとあそこまで痩せられないもの。骨盤矯正や骨格矯正はやったほうがいいと思う人もいるけど。でもチャーコはまず余分な脂肪を落として体重を絞らなきゃいけないけど、姿勢もちょっと矯正したほうがいいと思うよ。うちの先生そういうのも厳しいんだ」
「姿勢かぁ……確かに良くないかも」
 体型気にしてたらちょっと猫背っぽくなったかもしれない。歩き方だって自信がなくてぽてぽてで……
「正しい姿勢だときちんと筋肉つきやすくなるからね。身体が歪むとつかなくていいとこについたりするし。だから綺麗に歩くっていうのもすごく大事なことなんだって」
 そういえばイッコも歩き方とか座り方とか綺麗になったなぁ……背筋きちっと伸びてて、足もきちんと揃えてるし。
 おもわず真似してみて思った……筋肉使うんだ。こんな普通に座るだけでも。ということは、わたしよっぽど使ってないから無駄な肉がつくの??
「たとえば脚を細くしたいとか、ウエストやお腹を凹ませたいとか部分的に痩せたい人はエクササイズが一番なのよね。そういう人がサプリメントや食事を減らすだけで体重を落としても仕方ないのよ。食べずに落とすと、脂肪じゃなくて蛋白質とか身体を構成する大事なものまで減らしちゃうからね。そんなことしたらダメだってわかるでしょ? あんまり食べない人が食べるもの減らしたって痩せたい場所が痩せるわけじゃなくて、栄養不足になるだけなのよね」
 確かに……わたしからすれば羨ましい話だけどね。でもそういう人多いよ? 実際にどうみても太ってない人がわたしの前で『痩せたい!』って言ってるもの。そりゃ基準がモデルとかだったら日本国中の女の子がダイエットしなきゃだけど、わたしからすれば平均的な体型の人はそこまで痩せなくても、運動して細くしたい場所を引き締めるだけでいいと思う。それこそ姿勢を正せば十分綺麗に見えると思う。
 なのに痩せてる人が太ってる人の前で『痩せたい』って口にするのってすっごく残酷だよね……わたしたちは通常の生活を送るために、異常に増えた体重を落とす=痩せたいだから。だけど彼女たちは理想の体型になるために、『脚を細くしたい』とか『もっとお腹を引き締めたい』という痩せたいなのだ。わたしの場合はもっと切実だもの……体重もだけど、全体的に一回りも二回りも贅肉を落とさないと、このままじゃ健康にもよくないし、生活や仕事にも支障が出る。体脂肪率が物語ってるけど、かなりの脂肪量が蓄積されてるはずだから。

「チャーコはなんだかんだ言って結構食べてるよね? 食べてないつもりでも高カロリーなものを夜遅く食べたり、外食の時はきっちりと完食するでしょ? そのうえ運動しないし」
「うぐっ……」
 突き刺さる……そのとおりだったから。この間、腹がたって悔しくてデザート山ほどカゴの中にいれた自分にはほとほと呆れた。急いで全部棚に返したけど、その夜は食べたくて食べたくて気がおかしくなりそうだった。そのことを話すとイッコはため息混じりに教えてくれた。
「それって、ストレスを満足させるために身体が食べさせようとしてるのよね。甘いもの食べるとすっごく幸せになるでしょう?」
「うん、食べてるとね、ほっとするし心が和らぐ感じ?」
「それは甘いモノを食べるといい気分になることを身体が知ってるからなのよ。疲れたりイライラするとその神経を癒すために食べろって命令してくるのよ。ある意味……中毒ね。脳内麻薬ってわかる?」
「脳内麻薬?」
「そう、βエンドルフィンといって、マラソンで限界超えたあたりですっと身体が軽くなったりする時に出るの。ランナーズハイってあるでしょ? あの時に出てるホルモンのことなんだけど。それって『可愛い』とか『素敵』とか『美味しい』『キレイ』そういう気持がいいときにも出るのよ。一緒に女性ホルモンとかも出やすくしてくれるし、自律神経のバランスもよくなるから、身体が喜ぶのよ。だから疲れた身体と心は、楽にさせようと食べろって命令するの。でもね、その命令通り食べ続けると、必要以上にカロリーを摂取しすぎて結局太ってしまうという悪循環が起こるわ。身体を元気にしておけばそんなムチャな命令はされないし、余分に食べることなんてないからね。そこを利用してダイエットを成功させるんだけど……チャーコは最近疲れやすくなった?」
「そう、そうなの!すぐにしんどくなるし……だけど食べると楽になるから、つい毎晩食べ過ぎて……」
「その悪循環を止めないとダメなのよね。でも、そんな体なのに無理に食べるのやめたらどうなると思う?」
「ん……我慢できなくなって、余計に食べちゃう?」
「そ。それがリバウンドに繋がるの。今までいっぱい失敗したのそこじゃない?」
 思い当たることは山ほど!!
「だからまず体質改善しなきゃいけないっていうのはそこなの。とにかく我慢しすぎちゃダメだから。身体を楽にして『我慢も無理もしてない』って身体にそう思わせなきゃ成功しないわ」
「そんなの無理だよ……我慢しなかったら食べちゃうし」
「我慢しないで、食べたいものを食べて痩せるのよ。食べて痩せる、食べるものもうまくごまかすんだけど。そのためにまずは痩せやすい身体にしないとね」
 食べて痩せる? 痩せやすい身体? それが出来ればたしかに怖くないと思える。なんか痩せないとダメだってすっごく悲観的になってたけど、ちょっと楽しくなってきた。
「痩せやすい体づくりをしてからダイエットをはじめれば失敗しないからね。ただし焦らないことが大切よ。身体や生活習慣を変えるって時間がかかるからね。すぐに体質改善なんて出来ないのに、痩せないからと焦って約束事が守れなくなったら失敗して、またスタート地点に戻らなきゃならなくなるからね」
 生活習慣の改善と体質改善。この2つが大事だと、イッコはメモ用紙に書いてくれた。
「これが出来れば、あとは痩せる原理はすごく簡単なのよ」
「簡単? まさか……」
 そんなはずはない……痩せるためにこんなに苦労してるのに、簡単だなんて!
「じゃあ、大事なことを言うね? 食べて取った摂取カロリーよりも動いて消費するカロリーが上回れば痩せるし、同じなら維持、そして……食べたほうが上回れば太るってこと」
「あ、なるほど……確かにそうだよね」
 昔は食べた分だけ動いてたってことだ。食べた以上に動いていればよかったのに、今は食べる量が上回ってるから太っちゃったんだ……食べてるものを思い浮かべても、やたらカロリーの高いものが多いし。
「痩せやすい人と痩せにくい人は、つまりはカロリーを消費しやすい人としにくい人になるわけよ。もちろん筋肉量とも関係するから、運動してる時は少々食べても太らなかったでしょう?」
「うん。そのぶん筋肉がついて重くなったけどね」
 イッコはそれは仕方ないと笑う。現役時代のわたしの筋肉量を彼女は知ってるから。現役時代は痩せないけど太りもしない。そのかわり、ムチムチですごかった……
「食べて運動してばかりだと筋肉マッチョになるから、ガンガン運動して筋肉付けるばかりがいいとも限らないのよね。そうすると瞬発力の筋肉がついてバランスが悪くなるから。チャーコの場合は一旦ある程度体重落としてから、持久力の筋肉を付けながらゆっくりとした運動で体重を落としたほうがいいかもね。そのためにも最初は痩せやすい身体づくりのためにサプリメントを使うけど、やっぱり基本は食事と運動だから。それなしに何かを飲むだけとか食べるだけで痩せるなんて、絶対にありえないから」
 確かにそれで何度も失敗した。誰々が痩せたというサプリメントを数えきれないほど試して飲んで……
「落とせばいいのは体組織じゃなくて脂肪なんだからね。ちゃんと食事せずに体に必要な栄養素を取らずに痩せると、脂肪と一緒に筋肉や身体の組織まで落ちていくから……要するに身体に栄養が回らない不健康な身体になってしまうの。疲れやすくなって、しんどいのに運動しても体壊すだけよ」
「確かに……」
 運動して筋肉つけるためには食事が大切だっていうのはよくわかっている。現役時代も体づくりに必要だった栄養とバランス。
「だから一番怖いのは食べずに痩せようとすること。食べずに一気に痩せたらさ、大変なんだよ? 病気の後とか直った後に体重が前より増えたり、きついダイエットすると酷いリバウンドするでしょ? 急に体重が減るとね、身体が『異常事態だ!』って修復しようとするの。食べたものすべてを吸収しようとするのよ。無理すればするほど、疲れれば疲れるほどカロリーを取り込もうとするから。身体は天然の生命維持装置を持ってるんだもの。それが勝手に動いて『食べろ、食べろ』って命令して、お腹空いてなくても食べさせて、その食べた物全部吸収しちゃうんだからね。覚えがあるでしょ? 我慢するとそれに余計拍車がかかって食べても食べても止まらなくなったこと」
「うん……ある」
 確かにそのとおりだった。狂ったように身体が食べろって命令して……その時はお腹空いてるって言うよりもめまいしてフラフラで……何とかしなきゃとおもいっきり食べて、そのあと見事に体重が増えた。
「だから我慢するやりかたは絶対にダメ。それにね、いくら食べるものを減らしても、身体はすぐになれちゃうのよ。少ない摂取カロリーを続けたら今度は痩せにくい体になるの。ダイエット初めてすぐに体重落ちても途中で止まるでしょ?」
「うん。わたしの場合食べるの少し我慢したら2,3kgなんて直ぐなんだけど……しばらくしたら止まっちゃう」
「つまりこんどはその少ないカロリーでも動けるようにと身体が省エネになろうとするの。基礎代謝量っていうのは何もしなくても1日生きていくために必要なカロリーなんだけど、それを下げてくるわけ。筋肉の少ない人は燃やす力も弱いし、基礎体温も低いから……そうね、例えるなら車かな? エコカーみたいにエンジンは少々大きくても少ない燃費で走れるようになったり、遅くてもゆっくりでも少ないガソリンで長く走れる軽四のようなもの。それとは正反対にダンプはガンガン走るけどそのぶん燃料もたくさん使うでしょ? 運動してた頃のチャーコはそっちになるかもね」
「ダンプかぁ……じゃあイッコは軽四?」
 ほんと、昔はいくら食べても太らなかったからね。そのぶん筋肉はすごかったけれど。それとは反対にイッコは背も低いし、あんまり運動を好んでやらなかった。
「そうだね、わたしはそっちだったかも。運動神経はあまりよくなかったし、しようと思っても運動するとすぐ疲れて……結局あまり動かなかった。だからそんなに食べないのに痩せなくて……ほんと、じっとしててもカロリーを消費しない冷えやすい身体だったわね」
 同じぽっちゃりでも太り方が違う場合もあるんだね。
「でもね、動くと血流が良くなって冷え性にもいいし、痩せやすくなるからいいのはわかってるけど、やりすぎて疲れ果てちゃうとかえって良くないんだよね。その回復するときにせっかく減った体重を戻しちゃう場合もあるから。運動ばかりして放っておくのもよくないの。筋肉痛や血行不良起こしたりするし、疲労物質貯めたまま身体が冷えるとよくないの。だからわたしみたいに低体温の人は痩せにくかったわ。基礎代謝量も低いし、食事をいくら減らしても、そのカロリーで生きていけるように身体が消費カロリーをコントロールしてしまう。つまりはすっごく痩せにくかったわけ」
「でもイッコは見事に痩せたよね」
「身体を変えたからね。今じゃ冷えも酷くないし、運動だって適度にやれば疲れないもの」
「それをせずに食べるのを我慢して痩せようとばかりすると……」
「痩せにくい身体を作ってたようなものね。そして限界超えた時に食べろっていう命令に負けてリバウンドすることになるよね」
「うう、それ何度もやった……」
「ちょっとだけ落とすためなら食べるの我慢したり、ダイエット食品だけでやってもいいのよ。短い期間なら我慢できるだろうし、そのあとも健康と落とした体重を維持するようにすれば。でもね、ひと月に痩せていいのは2〜3kgなのよ。それ以上だと身体異常事態って判断しちゃうわけ。その計算でいくと、目標体重が大きい人は長く続けないとダメだから、ダイエット食品だけとかじゃ失敗するでしょ?」
「ええっ? そうなの??」
 1ヶ月に少しづつじゃ、一体どれくらいかかるというのだろう? そんなに長くダイエットなんてきっと続かないよ……でも、一気に痩せようとして……我慢の限界を超えたあたりで失敗しつくした数々のダイエットの記憶がある。そっか、ひと月にそれ以上痩せると失敗するんだ?
「健康だと身体を騙して痩せたかったら、ゆっくり痩せないと。摂取カロリーを下げた食事で身体を満足させ、毎日元気で過ごすことが必要よ。それと運動してカロリー消費して、あまり筋肉を作りすぎず、代謝のいい脂肪の燃えやすい身体づくりね。そのためにはまず運動の前に疲れにくい身体にしておかないとダメよ。運動すれば当然疲れるし、摂取カロリーが減れば身体が反乱起こすしね。身体に必要な栄養をきちん採って、食べながら痩せなきゃだめなの、わかる?」
「で、出来るかなぁ……」
「できるよ? そのために、きちんと決めたことが出来たらいいの。でもキツいダイエットスケジュールを組んだら無理があるから、緩くても続けられる方法で考えようね。低カロリーの食事で美味しく、筋肉をあまりつけずに運動して代謝を上げて、疲れをきちんととって元気にダイエットしなくっちゃ! もちろん気力と根気も必要だけど、我慢させちゃダメだから。自分を満足させながら楽しく痩せなきゃ! 身体が元気じゃないと健康的に痩せないから、まずは我慢しないことなんだよ」
「我慢か……わたしの場合甘いもの辞めるだけでもすごく我慢だよ?」
「変えていくのよ。我慢するんじゃなくてちゃんと変わりのものを用意するの。ルールを作ってそれを守らせるの。生活習慣も、食べ方も、眠り方も、運動の仕方も、全部」
「ぜ、全部??」
「そうよ、今やってることがどれも良くなければ変えるしかないでしょ? だから最低限変えられないものを言って。チャーコの場合はまず『仕事』?」
「うん、絶対に……仕事に穴は開けたくない」
 だって、悔しいから! 責任もあるし、いままで精一杯やってきたわたしの証だから……
「それじゃ、元気に仕事しながら、身体を満足させて痩せなきゃね」
「うん!」
「そのためには……約束して。焦らない、急がない、揺るがないで。体質を変えるのって時間が掛かるから」
「わかった……すぐに痩せなくても焦らない」
「それと、最低限自分で決めた法則はどんなことがあっても守ること。だけど、無理やり守らせちゃだめだから。ちゃんと代わりのものを用意しておくの。でないと我慢の反動はすぐにでるからね? その時に間違った方向に自分を許さないように」
「うう、わたしって自分に甘いかも……」
 いままで自分に甘くした結果がコレだもんね。
「そういう人はご褒美を用意しておくといいのよ。そうすれば続くよ? とにかく長く続けることが大事だからね。それもチャーコの体質にあったやり方で」
 わたしにあったやり方……そんなのあるのだろうか??

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