月がほほえむから
〜番外編〜

君は僕のお日様だから5


腕の中で眠る愛しい存在に安堵する自分。
昨夜は初めての彼女に、随分無茶をしてしまったと思う。30過ぎた男が...本当に見境がなかったとすら思う。前回の愛撫が効いているのか、反応のいい体に溺れたのは事実だ。実際、あんなに締め付けられたら、いくら慣れていても堪えようがないと、自分を慰めてみる。
まったく、これでは郁太郎と変わりがないではないか?
おまけに...一度で収まりきらない身体を無理矢理落ち着かせて、あとは平静を保って、彼女を抱きしめて朝まで眠った...

暖かい温もりだった。
何年振りかに抱いた身体は、いくら抱きしめても壊れないほどのみずみずしい弾力を持っていた。
一度抱いてしまえば...
日向子さんだって痛みを感じなくなってくれば、受け入れやすくなるだろう。
そうなれば歯止めが利かないのはこっちの方だ。
これからの彼女は忙しい毎日を過ごすだろう。修習期間にはいるまでの準備、期間に入ってしまえば身動きできなくなるのは間違いない。
ココに帰ってきてもいいことを身体で証明したわけだけれども、実際、現実に証明してもいいとすら思っている。こうなった以上、住み込みじゃなく同棲になるんだろうし、圭太の手前けじめは付けたい。
いや...本音を言うと、婚姻という鎖で繋いでおきたいのは僕の方だ。誰にも渡さなくて済む。歳の離れた若い恋人が自分から離れないか心配でしょうがない。修習に行き始めても、こんなおじさんが迎えになんて行きにくいが、正式な夫だったら堂々と出来るだろうし、何より男よけになるだろうなんて考える自分の器量の狭さに驚かされる。日向子さんを信じてるはずなのに...
それに、夫婦になったから、同じ部屋で毎日...圭太も居るだろうけど、まあ、その、そう言うことだ。
色々と考えているとまた眠れなくなる。
すぐ側の無邪気な寝顔...ぐっすりと安心しきった表情を見ていると愛おしくて、キスを落とさずにいられない。その髪に唇を押し当てて幸せを実感する。
朝まで...僕だけの日向子さんだから。


朝、早速圭太が飛び込んでくる。
もっとも鍵をかけているから入れないけれども...
物音で目を覚ました彼女が恥ずかしげに俯く。おはようの言葉とキスを贈る。
まだ何も着てない二人の体温は熱いほどで、朝の元気な所を見せるわけに行かず、僕は彼女から見えないように下着を着ける。
圭太がうるさいので、パジャマを着て外に出て、『日向子さんが風邪を引いてるので看病していた。』と嘘をついて黙らせた。
このぐらいの嘘は許して欲しい。今の日向子さんは人前に出れないから...
夕方までゆっくりするように伝えてある。どうせ学校から帰ってきたら彼女は圭太に独占されてしまうだろうから、それまではゆっくりと休めばいいと思っていた。
そのうちおふくろにもちゃんと言わなければと思っていたら、気がついてるらしくニヤニヤと笑顔を寄越して来る。結局一緒になることを報告すると、すぐに行動を起こしたのはおふくろの方だった。やれ挨拶だの式だのって、何から何まで手配して、郁太郎より先に教会で挙式することになってしまった。わざわざ関西から椎奈ちゃんが日向子さんのドレスを持って駆けつけてくるし、まったくもっておふくろの行動力には驚かされる。
日向子さんは入籍と同時に事務手続きを済ませて田辺から永井に変わり、予定通り通う準備をしている。実習先も実家でなく、都内を申請していたのが通っていたらしく、コチラも通えそうだとみんなで喜んでいる。大げさに喜んだのは圭太だけれども、実際一番喜んでいるのは僕に違いないだろう。

なぜなら...

「んっ...あっんっ」
ようやくほぐれた彼女の中に入り込む。暖かく包み込んでくれる彼女の中...激しく腰を動かしたい衝動に襲われるが、我慢をしている。まだ慣れない彼女はぎこちなくて、それが余計に僕を煽るのだけれども、無茶は出来ない...まだ。
「日向子さん...大丈夫?辛くはないですか?」
「だ、だいじょうぶです、だいぶ...慣れました...でもこういうことって、その、こんなに、ずっとするもんなんですか?」
されるがままの彼女だけれども、さすがに毎晩はまずかったかな?
あれ以来気をつかった母が圭太と寝てくれているので、毎晩のように彼女の部屋で、鍵をかけて朝まで過ごしていた。
「まあ...だから言ったでしょう?こうなるって...同じ屋根の下っていうのは、我慢が効かないモノなんです。最近は、日向子さんを抱きしめていないと眠れなくって...修習に行ってる間は、加減しますから。」
そう、やはり加減はしている。大きな声は出せないし、夜通しやると翌朝が辛いからね、彼女も僕も。
だから、式のあとホテルで式を挙げたあと、ホテルで家族同士で簡単な食事会すませた後、ちょっとイイ部屋に一泊した。

「そ、宗佑さん...あのっ」
「なんですか?」
「ま、まだ、お風呂...」
「ああ、後でいいでしょう?今は、やっと二人っきりになれたんですから。」
僕はホテルの部屋に入るなり、彼女を抱きしめキスを降らせていた。
「あのっ...でも!」
「うちじゃ声出せないでしょう?だから、今日ぐらいは日向子さんをおもいっきり鳴かせてみたいんですけど、駄目ですか?」
最近、ようやくセックスに関することも会話するようになってきたあたり、夫婦らしくなっているとは思わないだろうか?日向子さんも、疑問に思ってることは素直に聞いてくるし、僕の質問にもきちんと答えてくれる。何よりも反応も十分だから、僕は満足してるんだけれども、自宅の壁の薄いのだけはどうしようもない。だから今夜を、僕としてはすごく楽しみにしていたわけで...
まあ、僕もそこらのエロイオヤジ達と変わらないと言われればそこまでなんだけれども、気分的には若返ったたようで、事実日向子さんとを抱いていると自分の年齢を忘れてしまうほど夢中になってしまってる。ちょっと、恥ずかしいかな?けれどもすぐに忙しくなる彼女のことを思うと今のうちにと思うし、それに僕も...

「ああぁん、やぁんっ...っくぅ...ちゃう...あんっ...いっちゃうっ!ふあぁぁっ!」
軽くイッタ彼女に優しくキスを落とす。
ドアから点々と脱ぎ散らかした服、ソファの上の下着姿の日向子さんは、彼女が今まで着たこともないようなエレガントで可愛らしい白とブルーの総レースの下着セットなんて身につけてるものだから、思わず『僕のために着てくれたの?』って聞くと、日向子さんは恥ずかしそうに、『椎奈さんが花嫁用にってプレゼントしてくださったの、だから...』と真っ赤になって隠そうとする仕草が、また僕を煽ってこの始末。確かに、ガーターや、それに吊されたストッキング、レースと透けた柄のキャミソールなどは、綺麗なだけでなく、男心は十分にそそってくれる。少し大人に見える彼女もやけに新鮮で、すぐに脱がすのがもったいなくて、つけたまま半脱ぎの状態で愛撫を与えて、指と舌で彼女を昇らせてしまった。
「日向子さん、もう...入らせてください...」
ぐったりなった所を悪いけれども、我慢できずにいきり立った己をそのまま何も付けずに彼女の中に突き立てる。
「はぅっ...んっ...」
「ああ、日向子さん...」
先ほどの快感で打ち震えるその中の反応は、はっきり言って生ではキツイ。
だけども安全日に近いことと、今日ぐらいはと言った男の勝手な都合だが、日向子さんはその辺りまだあまりよくわかってないのでそのまま...これでもすごく計算してるんだからね。
「くっ...あまり持ちそうにないので、日向子さん、少し我慢してくださいね。」
ざわつく彼女の中の快感に耐えきれずに腰を激しく打ち付ける。最初は我慢できそうにないので、早々に白旗を揚げるために...
「ひゃんっ、あ、あ、そ、宗佑さんっ?」
いつもと違う感覚に彼女も気がついたのかもしれない。
「だ、大丈夫...外に出しますから...っく..」
「きゃっ!!」
彼女の白い腹部に欲望の証を放つ。珍しく目を開けていた日向子さんがぼうっと見ているのが判ったので、そそくさと後始末をして、耳元に愛してますと囁きを残してバスルームを準備した。
二人で湯船の中でまったりした後、再びベッドで...
今度はゴムを付けてゆっくり繋がって、いつもより長く、強弱を付けて明け方近くまで彼女を喘がせていた。喉が枯れて、掠れた声を上げ続ける日向子さんを、最後に思いっきり鳴かせて、満足げに眠りについたが、朝、再び攻めあげたのは言うまでもない。

昼前まで起きあがれなかった彼女のために、朝食を部屋に運んで貰って、ゆっくり支度してホテルを出て家に戻ったのはもう3時を回っていた。
今夜は親しい人を呼んで店での宴会なので休みを取っている。平日だから圭太は学校で、もうすぐ帰って来るだろう。
僕たちは着替えをすませると仕込みをはじめてるおふくろの手伝いをするために厨房に入る。かしこまった招待状など出していない。本当に日向子さんのお披露目だけなので、電話や口頭で伝えてある。何人来るか想像できないのだが、気持ちだけはと、大量に料理をこしらえているのだ。


簡単な披露宴で、そのまま泊まってた椎奈ちゃんが日向子さんを飾ってくれた。
椅子を寄せておかないといけないほどの参加者に驚いてしまう。色んな関係者が立食式で歩き回っているのが現状。親戚や年寄りは自宅の方に上がり込んでどんちゃんをはじめてるし...僕の方の親戚に、ご近所さん、常連さん、もちろん郁太郎一家(入籍済み)に僕の友人。それから日向子さんの大学の友人、高校時代の友人も来れる人は来てくれたようだ。そして彼女の母親。彼女のほうはあまり親戚は付き合いがないので、母親以外の親族の出席はなかった。それから、菜々子の両親...日向子さんが呼ぼうと言い出した。圭太くんのおじいちゃんとおばあちゃんだからと。喜んで参加した彼らは、日向子さんに何かあったら、圭太を連れて避難してくるようにと何度も伝えていた。
それって...僕が彼女に何かひどいことをするってことなのだろうか?菜々子が亡くなった後、少し荒れてたのを見られてるしなぁ...向こうの親父さんの一言で奮起したが、あの時圭太を託して貰っていなければ、自分がどうなっていたか、想像するのも怖かった。

「永井、おめでとう!」
懐かしい顔ぶれの中に、前の会社の先輩で今は起業してばりばりのベンチャー企業の社長でもある南先輩が声をかけてくれた。隣には若い女性...奥さんだそうだ。それも日向子と同い年。
「なあ、オレは未だにおまえを諦めてないんだぜ?」
「先輩...」
「7年のブランクはキツイかもしれないが、おまえ、もう一度こっちの世界に帰ってこないか?」
先輩が起業するときに手伝って欲しいと言われたが、まだ圭太が手のかかる歳で、僕はそれを断った。もちろん、店のこともあるが...心が動かなかったと言えば嘘になる。やめて初めて気がついた。前の仕事が好きだったことに。
「でも、先輩...」
「その気になったら、連絡してくれ。今日はその話は抜きでお祝いに来たんだ。だが、ついな...」

未来を見つめる日向子さんが眩しく、その彼女に見合った自分になりたいとも思う。それがこの店で出来ないわけじゃない。だけど...
「宗佑、この店は、いつおまえが抜けても構わないからね。」
「かーさん?」
厨房に料理の追加をとりにいくと、おふくろがそう言ってきた。
「南さんに挨拶されちゃったよ。ここはあたしと板さんで、何とかするし、昼だけの店にしてもいいんだ。日向子ちゃんだって手伝わせられないしね。おまえが前の仕事頑張ってたことも、本当は続けたかったことも判ってるよ。とうさんだって、おまえがこの店継ぐことなんて望んじゃ居なかった。たまたま奈々子さんのことがあったからそうしただけで...おまえ、あれだけ望まれて答えないなんて、男が廃るよ?」
さすが、先輩はぬかりなくおふくろから攻めたのか?じゃあ、日向子さんに話が伝わるのはすぐだろうな...
「ああ、少し考えさせて貰っても...いいかな?」
「おまえの思ったとおりにしな?日向子ちゃんだってそれでいいと言うはずだよ。」
忙しくなる彼女のことを考えると悪い気もするけれども、出来れば僕も一緒に前を向いていたい。いつも前向きな彼女だから、だから...



4月、研修所まで通う日向子さんは大変だけれども、僕も都内の先輩の会社へ通う毎日が続いている。
僕の再就職を喜んでくれた日向子さんは、忙しい合間に圭太とコミュニケーションをとってくれているようだ。僕の方が遅くなるぐらいなので、それはとても助かった。たまに彼女が遅くなるときは、会社で時間を潰して迎えに行く。先輩はいつも僕より遅くまで会社に詰めているからね。大企業と違って、ベンチャーは時間が自由になるようでならない。かなり融通はして貰っているが...
お互いに毎日が忙しいので身体を繋げる行為は週末に限定されてしまうが、寄り添って眠れる環境は悪くはない。彼女の実習先も最初の希望通り都内になっているので、かえって会社に近いほどなので安心だし...

「日向子、もうすぐ着きますよ。」
「あ...ごめんなさい、寝ちゃってた。」
ぼうっと身体を起こす彼女は相変わらず可愛らしい。スーツ姿も様になってきたのに、化粧っ気のないのは喜ばしい。彼女は化粧なんかしなくてもいいんですから。
「疲れてるんでしょう?今夜は一緒にお風呂に入りますか?洗ってあげますよ。」
夜遅く帰るときの利点。誰もが寝てるので、彼女も一緒にお風呂にはいるのをいとわないでいてくれることだ。

「おやすみなさい、宗佑さん...」
連日の過酷なスケジュールの中、必ず僕の胸の中で安らいでくれるのが嬉しい。
もちろん僕も心地よい疲労感の中腕の中の温もりに安らぎを覚えている。
こんど休みの日には圭太と3人出掛ける予定だ。前の晩にまた日向子に無理させてしまうだろうけれども、それはちょっと目を瞑って貰おう。もちろんお弁当作りは手伝うからね。
圭太と僕のために弁護士に方向転換した彼女は、連日大変なようだが、たまには愚痴の一つもコボして欲しいのになかなか口にしない。
だけど先日はつかれてる癖にすり寄ってくるから何かと聞いたら、研修内容で辛い事件を聞いたらしい。どうすればいいか判らなくて抱きしめていたら、『抱いて欲しい』と彼女から初めて求められた。それで少しでも彼女が楽になるならと、その夜は彼女が意識を失う寸前まで攻め立てた。
何度かそんな夜もある。
そうやって自分の中で消化して、翌朝には笑ってくれる彼女...

圭太のためにも、僕のためにも、ずっと笑っていて欲しい。

日向子、
君は僕のお日様だから...

いつも、側にいて僕を照らして欲しい。
その笑顔で、その優しさで...


FIN    

         

宗佑編終了です。
いや〜何が書きたかったんだか(笑)済みません、相変わらずな男性視点で…
長かった月が〜シリーズもこれでいったん終了です。設定に不備が多々ありましたが目を瞑ってやってください(笑)リアリティのあるのも好きなんですが、らぶえっちなので、それなりにということで(爆)
それにしても宗佑さん予想以上にやってくれました。抑圧された大人の色気、出ましたでしょうか?(汗)これからも二人の幸せを祈っています。子作りに失敗するなよと、一言残して、では〜