いつも他の女の子がチョコを彼にあげてるのを見ていた。
たまに義理チョコを要求されて、三宅や清孝らにあげるときに一緒にあげたことがあるくらい。でもチョコなんて嫌いな圭司は、食べないからと言って受け取りもしなかった。それにたくさんもらったりしても、あたしや未来に「食う?」って言って袋ごと渡してきたりするんだから…
まあね、嫌いなの知ってるから、渡す子達が羨ましいくせに、可哀想にって同情する振りしながらもほっとしてた。
当時付き合ってる子が手作りチョコを持ってきたときだって、またあたし達のトコに持ってきたのだ。
「ダメだよ、本命の子から、ちゃんと気持ち受け取ったんなら一口だけでも食べてあげなきゃ!!」
いくらなんでもそれは酷すぎる。もし自分だったらと思って、渡したその子の気持ちを考えると、ついつい口出ししてしまっていた。
「わかったよ、一口だけな。けど、あとは無理だからおまえらで食ってくれよな。」
がさごそと袋を開けて一口放り込むと、「甘い…」と言って顔をしかめた。
本当に嫌いなんだ…でも、やっぱり付き合ってる子のはちゃんと食べるんだと思ったら、自分で言い出したのに思いっきり胸が苦しくなった。
「じゃあ後は食べておいてあげるね」
未来が陽気にそう言うけど、あたしは一口もくちには出来なかった。
その日並んで帰る圭司とその彼女の後ろ姿をみながら京香が言った。
「女はしっかり喰うくせに…」
そう、きっとその日は誰もいない自分の部屋に彼女を連れ込んで…
しばらくは幸せそうなその子が圭司の隣をはなれなかったっけ。
あたしはチョコをあげるどころか気持ちを伝えることすら出来ずに、ただ側にいる子達を羨むだけの、惨めな友人の一人だった。


「ただいま〜愛華って、寝てるのか…ちぇっ」
ソファで眠る娘に、ただいまのキスを落とした後圭司はダイニングに入ってきた。
「ただいま、椎奈。愛華今時分寝て大丈夫なのか?」
「あ、お帰りなさい。たぶん夜中まで元気に起きてるとおもうわ。」
ただいまのキスをしてくるので、急いで持っていた包みを背中に隠した。
結婚して初めてのバレンタイン…ううん、初めて渡すことが出来るかなと思えたバレンタイン用のプレゼントだった。
「ん、何か隠した?」
「ううん、何でもない。直ぐにおみそ汁温めるね。」
目ざとい圭司から隠すようにしてソレを持ってキッチンへ逃げ込もうとしたあたしを、ひょいと捕まえると後ろに隠した包みを取り上げてしまった。
「あ…」
「これ、オレにだろ?バレンタインの。」
「うん…でも、一応こっちにバレンタインの代わりにごちそうは作ってみたんだけど…」
テーブルには圭司の好きなモノが所狭しと並べてある。おばあちゃん子で、家庭の温かさに飢えていた彼はどこにでもあるような家庭料理を好んだ。煮物や、手巻き寿司など…このために椎奈は、今日は仕事(まだパートだけど)にも出ずに一日かかりっきりだった。
「ホントだね、俺の好きなモノばっかりだ。でも、コレもオレのだろ?」
そう、包みの中身は、圭司の嫌いなチョコレイト。嫌いだけど、好きなこのためには一口だけでも食べたのを知ってる。だから、あたしもだめもとで用意したのだ。ブラックチョコに洋酒の入ったあんまり甘くないヤツ。
「けど…圭司甘いもの嫌いでしょ?」
「ああ、だけど誰かさん言ってたよな?受け取るんなら一口でも食べなきゃだめだって、むかーしにね?」
「うっ、それは…そうだけど、いいよ、無理しなくても。」
「そう言えば、椎奈は今までオレにバレンタイン一度もくれなかったよな?」
「え?そんなことないよ、何度か、あげたじゃない…食べてくれなかったけど。」
「あれは、三宅や清孝と同じ義理チョコだっただろう?それに、チロルチョコだったじゃないか。」
「そりゃそうだけど…でも、、」
「コレは食べるから。椎奈がオレにくれた初めてのバレンタインだろ?昔、無理に食べてたのだって椎奈があんまり一生懸命に言うからだったんだぞ?」
「え?あたしが…?」
「ああ、食べなかったら、おまえに軽蔑されると思ったからな。だから喰ったんだ。そのおまえがくれたチョコだったら喜んで食うぜ?まあ、一口が限界だけどな。」
「いいの?本当に?」
「ああ、だから料理は後でゆっくりと食べるから、その前に…」
圭司は包みを開けるとチョコを一つ口に放り込んだ。
「ん?あんまり甘くないか…っていうか、酒か?」
「洋酒入りのブラックチョコなの…」
「まあ、喰えねえこと無いけど、あとは椎奈に喰わしてやる。」
「わかった、じゃあ、また食後にでも…」
「いや、今だ。」
「え?」
いきなりもう一つを口にした彼が近づいてきて、あたしの唇をソレで塞いだ。
「んんっ??」
あたしの中に押し込むときにチョコを潰して洋酒と一緒に流し込んでくる。
「ソレ喰った椎奈をオレが喰えば全部食べたことになるだろう?」
「えっ、そんな…」
「甘いな…椎奈の食べてるチョコなら甘いけど食えるぜ?椎奈ごと喰っちまいたいくらいにな…」
キッチンのカウンターに押しつけられたまま2個目、3個目とチョコと洋酒を流し込まれる。
「ふうっ、ん…」
口中も口の周りも、流れ落ちた顎や首筋もチョコと洋酒のシロップで汚され、どろどろだった。
いつの間にか着ていたセーターの裾をまくり上げられ、ブラも釣りあげられて、胸の先をチョコレート色した圭司の舌が這っていた。
「やぁ…け、圭司、ダメよ、こんなトコで…しょ、食事は?んっ」
「後でって言ったろ?今は椎奈を喰うんだから。」
そういってスカートをまくし上げて厚手のストッキングもパンティも全部下げられてしまった。
「濡れてるし…椎奈、酔ったか?熱いぞ、おまえの中…」
滑り込むようにして差し入れられた彼の指先に翻弄されて、あたしはもうまともに返事も出来なくなっていた。
調理台の上に乗せられ、足を開かされて、身体を屈めた圭司の髪がお腹の下で揺れていた。
「あんっ、こ、ここじゃ…」
「もう遅い、ココで喰うから、椎奈も、夕飯も。椎奈も、ほら?」
「んああぁっ!!」
調理台に乗せられたまま、圭司の舌と指先でイカされてしまった。いつもより性急で激しい愛撫に身体は止まらなかった。
「食べるよ、椎奈…」
片足を持ち上げられ、下から突き上げられた瞬間、あたしは一瞬目眩を覚えた。
「んっ、バレンタイン、オレがチョコ嫌いなのおまえ知ってるから…くっ、何も用意してくれてないって思ってたんだ…なのに用意してたくせに、脅えたような目して持って逃げるの見たら…捕まえて離したくなくなるだろ?今まで、オレ、おまえに辛い思いばっかりさせてきたから、だからオレ、絶対吐いてでも食べるつもりだったんだからな…」
「…ほ、ほんとに?…んっ」
「ああ、オレを狂わすぐらい美味いよ、椎奈…」
そう耳もとで囁きながら舌先で耳朶を舐めとっていく。下から突き上げてくるスピードは激しく、深くあたしの中をえぐり続けていた。
「あっ、もう…また…っああああ!!」
圭司の指先があたしの臀部にめり込むように掴みあげて押し上げては落としたその瞬間あたしは再びイッテしまった。
「くっ…ああぁっ!!」
その締め付けに耐えられなかったのか、何も付けていない圭司があたしの中で大きくふくらんで、そして弾けた。





「椎奈?」
あたしは動けなかった。彼も終わった後も激しく肩で息をしながらまだあたしを離さずに抱きしめたままあちこちにキスをい落としている。
「な、晩ご飯もう少し後でいいから…愛華が寝てる間に、もう一回、いい?」
「え??」
「愛華が寝てるときしか、だろ?だから…」
「だ、だめよ、そんな…無理!」
「ココじゃ辛いだろうから、このままベッドまで連れていくから。」
「でも、ご飯…」
「飯より椎奈を喰うんだ。」


それから、愛華の泣き声で中断させられるまで圭司の食事は続いたそうな…
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