〜月がほほえむから番外編〜
郁太郎のジレンマ7

なのに…
こんな、また犯すように抱いて…
だけど、サチの身体は嫌がってねえんだ。
それだけはオレにも判った。
だからオレは、思わずサチの身体を抱きしめた。
繋がったまま、優しく抱きしめて、今までサチにしたことのないような優しいキスをした。日向子にしたような優しいキスを、何度も何度も…
「なんでこんなに…するの?どうせなら、昔みたいに無理矢理あたしの身体を貪ればいいじゃない?」
「わかんね…こうしたいんだ。久しぶりのおまえの身体が、こうなんだか愛しくてよ…こんなにキレイで、色っぽくって、柔らかかったか?」
「やだ、比べないで…随分身体の線崩れたんだから…」
「でも、ここも、ここも、すっげ、反応良くなってるし、その割りには、あんま使ってねえみたいで…おまえ、あれから男出来なかったのか?」
「悪かったわね、女の子と同居してたから、そんなわけにも行かなかったのよ…あ、あんたこそ、相変わらず奈々子さん追いかけてるの?」
「菜々子は…死んだよ。」
「えっ…そんな…」
「忘れちゃ居ないけど、菜々子はもういない。おまけにオレはその後初めての恋にまた振られたってわけだ。まあ、おまえみたいないい女粗末にしたバツだな。」
オレはゆっくりと動いてサチを動けなくする。
「いい女って…あんたはいつだってあたしのこと…」
「ほんと、無茶苦茶に扱ってたよなぁ?今考えてみればオレみたいなのに付き合ってくれたのはおまえぐらいだったのに…終わったこと言ってもしょうがねえけど、弾みでこんなことしちまってるけど…ホントそうしてしまうほど、おまえはいい女なんだよ。身体も最高だし…?」
「な、なんだ…やっぱり身体だけじゃない…」
「でもさ、大事に抱くってこう言うことだったんだなぁって思ってよ。」
身体を密着させて、おれはゆっくりと突き上げる。サチがいいところは判ってるから…
「その割りには、無理矢理突っ込んでくるのね?」
「相変わらずこらえ性がないんだ、オレは…なあ、サチ、一回出させてくれ、今夜だけ…昔に戻れよ。もう、無理矢理になんかしねえからよ。」
オレは深く突き上げるサチの身体を折りたたみ、激しく腰をグラインドさせる。予想通りサチは乱れた。その口からは卑猥なセリフが紡ぎ出され、共に昇り詰める。
何年たっても、二人の身体は覚えていたんだ。


「送っていこうか?」
「いい、早く帰るって約束だから。」
「だれと?」
「一緒に住んでる子」
「男?じゃねえよな…女の子って言ってたもんな。」
今更、ちょっとばつが悪くってあんまり聴けない。今どんな仕事してるのか、どこに住んでるのか、好きな男はいるのか…
「じゃあ、あたし、チェックアウトするから。」
「オレ、もうちょっとここにいるわ…オレが支払いしておくから、安心しろ。」
今出て行って、日向子や宗佑と鉢合わせしたくなかった。
「そう、じゃあ、お言葉に甘えて…」
「サチ…今、どこにいるんだ?」
「…どこでもいいでしょ。」
「オレの携帯、ナンバー変わってねえぞ?」
「――かけない…」
「そっか、じゃあ、悪かったな、昔も今も…」
「あの時そう言ってくれれば…」
「え?」
「ううん、なんでもない。じゃあね。」

サチは出て行った。
昔の女房を抱いておきながら、どうするつもりかなんて考えてもいなかったオレだ。
ただ、あの時点では、サチも口ではいやがっては居てもオレを求めてたのは判ってる。
けど、それ以上は…捨てられた側としては、許可がいるよな?
昼を回ってから、オレは自宅に戻った。

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