2012クリスマス企画

Wonderful Christmas

 4

12月24日

〜羽山〜

 夫婦も20年近く連れ添うと、恋愛感情というより家族愛になりがちだ。子供も中学や高校生になれば、子育ての悩みも深刻化するし、親がどう接するかがとても大事になってくる。とまあ、クリスマスイブに教育論を語ってもしょうがないが、子供達はサンタを信じているわけでもなく、クリスマスをどう過ごすかがまた問題だ。クリスマスプレゼントも、ゲームソフトを強請られるのがアホらしくて、冬物の服や靴・時計など身に付けるものに切り替えた。すぐにお年玉でゲームソフトを買えるんだからそれは問題なかった。だがクリスマスイブに家族揃ってクリスマスらしい料理を食べるのが例年だったのが、子供たちは成長とともに友人たちと過ごすようになっていき、親としては寂しい思いをしていた。
 それが何年か前から、同期の本宮の家のクリスマスパーティに呼ばれ、そこに社長である後輩の蔵木亮輔が参加し、これまた同期の楓を連れてきて……結局くっついちまった。去年はそのふたりの結婚式、そして今年は生まれた娘を囲んでのクリスマスパーティだった。なんだかどんどん豪華になっていく気がするな。
 そこに今年はなんとうちの息子たちまで参加した……うちだけ子供が大きいからと夫婦参加だったのに、結局家族ぐるみの付き合いになって、気恥ずかしいというかなんというか……子供関係のPTAやスポーツクラブの付き合いはこなしてきたものの、これはあまりなかったことだった。おまけに、晩婚というか再婚の本宮は妻にべったりだし、亮輔と楓は新婚さんだ。まあ、つい当てられてというわけではないが、ここ数年妻との仲も良好というか再燃している。
「ねえ、ちょっと……いくらなんでも、昼間に?」
「あいつらがいないのは昼間だけだろ」
 いくらクリスマスだからといって、さすがに中学生は夜遅くまで帰ってこないなんてことはない。夕方のご飯時になれば帰ってくるだろう。高校生の兄の方はさすがに少し遅くなるだろうが……ケーキは残しておいてくれというぐらいだからまだまだ子供だ。つまりだ、夫婦の時間なんて昼間しかないってことで、昨日今日と昼間から妻を楽しもうとしている。
「昨日の入浴剤はなかなかよかったな。また使おうか?」
 富野がくれた入浴剤はお湯がトロトロになるもので、香りもなかなか濃厚で楽しめた。あの肌を流れる感触は結構よかった。昼間から一緒に風呂に入って、妻の身体に触れていると興奮してきて、思わず浴槽の中でやってしまった。自分で調べてまた買うか、富野に頼むかだな。だが富野はあんなものいったい何処で手に入れたんだ? 通販とかだろうか……あいつそういうのに詳しそうだしな。結構使えるんだ、あいつの情報網とかネット知識とか。俺たちは世代的にもちょっとずれてるからな。
「あれはあなたが買ったの?」
「いや、富野にもらったんだ。たぶん本宮のとこも亮輔のとこも貰ってるはずだ」
 そう、あいつらも使ってるはずだ。自分の奥さんと一緒に、な。
「そ、そう……」
 ふだん楓や朱音さんから色々聞かされてるんだろう。あそこはほんと妻への執着心も激しそうだし、熱烈妻LOVEなのを隠そうともしないからな。ま、お陰様でこっちもその影響を受けて今まで受け身だった妻も最近はなかなか積極的になって嬉しいものだ。
 もちろん俺も歳の割にはしょっちゅう手を出している。この歳になればご無沙汰してるなんて話も聞くが、うちは前々から週に1回はあったほうだ。それがここ数年週に2,3回に増えた。亮輔は、うちと比べてもったいないことしたとか言ってたよな? あれって結婚が遅かったことなのか、それとも俺と瞳が今までやってきた回数と比べて言ってるのか? 月一の倦怠夫婦と一緒にするならすぐにでも追いつきそうだが、これでも週1はちゃんとお互いを満足させあってたんだ。疲れているからと、自分だけ満足するようなやり方を避けると、どうしても休みの前になるから週1が多かった。もちろん、祭日は数に入れてないがな。
「それじゃ、部屋に行こうか? それともリビングでもいいか?」
「部屋がいいわ……ここじゃ落ち着かないし」
 うちのリビングは庭に面してるからな。ヘタしたら声が漏れてやってるとこ見られるかもしれない。もし、急に息子たちが帰ってきたら言い訳もできないしな。
「わかった。それじゃ楓達から貰ったクリスマスプレゼントも着て見せてくれよ」
「え? どうしてそれを……」
 楓から、瞳が3人の妻たちから下着とナイティとかいうものをプレゼントされたことを聞いていた。『アレ着た瞳ちゃんを楽しみにしてなさい』と。いつ身に付けてくれるのかと楽しみに待っていたんだが、どうやらかなり恥ずかしいらしくまったく着る素振りを見せなかった。
「俺へのクリスマスプレゼントにもなるんだろ。まだもらってないし?」
 妻へのクリスマスプレゼントは先渡ししていた。パーティに持って行った新しいバックだ。うちは毎年瞳が欲しい物を自分用に、それから俺用になにか見繕ってくれる。なかなか一緒に買物とか行けないし、一緒に行くのは女友達のほうが楽しいだろう? 家族で買い物に出かけるときはやはり子供のものが中心になるしな。
「あ、あなたのはパーティにしていったネクタイよ」
 アレがそうだったのか? 俺だけゆっくり寝てたので、着替えるとき急いだから妻が出したものをそのまま着たからなぁ……そういえば『これね』といって箱から出してたっけ?
「それと新しいキーケース。くたびれかけてたでしょ? 今晩にでも渡すつもりだったのよ」
「それじゃ、キーケースは明日の朝でいいよ。あれは鍵を付け替えるのが面倒だからな。今はおまえを堪能したいな」
「……わかったわ。じゃあ、先に部屋に戻るから少しだけあとで入ってきて」
 真っ赤な顔をして部屋に駆け込む妻の顔にドキリとする。こっちまでドキドキしてきたぞ? あまり変わったプレイなどしたことがない。コスプレだってやったことないさ。新婚当初はまだ賃貸マンションで、帰って来てすぐに台所に立つ新妻に襲いかかったこともあったが、子供ができてマイホームを購入してからはもっぱらベッドで普通に、だ。
「用意できたのか? 瞳」
「……入って、いいわよ」
 ドアをそっとあけると、そこには背中むけて恥ずかしそうにこちらに顔だけ向けている妻の姿があった。寝室のカーテン越しに差し込む逆光で淡いパープルの薄い布地が透け、体の線すべてがくっきりと映っていた。
「すごいな……前からも見せてくれよ」
「あっ……ん」
 見られることで恥ずかしくてたまらない彼女は、わたしが肩を掴んだだけで甘い声を漏らした。
 男は視覚に弱い、あと声な。これは……即いけそうだな。
 それとなく雰囲気で繋がることもあれば、互いにその気になって本気でやるときもある。今回は後者になりそうだ……男はいつだって本気だが、女は受け身な分だけ、その時の気分で反応が全く違う。それがなかなかわからなくて、一時期倦怠期に入りかけた時もあった。だが、きちんと話し合い互いの思い込みであったことを理解し合うことができた。夫婦でもしてもらって当たり前、言わなくてもわかるなんてことはない。
 あとは刺激だな。それには新婚や、そうでないのにラブラブな友人夫婦たちが起爆剤になって十分役に立ってくれている。
「瞳……」
 ゆっくりと肩から腕、そして腰から背中へと手のひらを這わせる。
「んっ」
 ぎゅっと引き寄せてその唇を飲み込む。たっぷりと口内を味わい尽くしたあと、首筋に舌を這わせる頃には必死でわたしの首ったけにしがみつく妻。
「こんな薄い布じゃなにも隠せないな」
 そう言って尖り始めた胸の先を捏ねて摘み、下の茂みのあたりもゆっくりと指でなぞると、はっきりと敏感な蕾もすぐに探し当てられた。
「やっ……もう」
 立っていられないのか? 亀裂の辺りを指で何度か往復させるとたっぷりと濡れているのがわかる。だけど、今日はすぐに合体するつもりはなかった。
 いやというほど泣かせたい……
 亮輔に影響されたか? どちらにしろ今日は妻を狂わせて懇願させて色々やってみるつもりだった。
「せっかくだから脱がさず最後まで楽しもうな?」
 ビクリとはねたその体は拒否なのか、それとも期待に震えたのか……そのあとの妻の甘い声でどちらが正解かはすぐにわかった。


〜大地〜

「くそっ、あいつら……」
 待ち合わせる人の多い駅前で、オレはどうしていいかわからないまま彼女を待っていた。
 相手は一昨日のクリスマスパーティで会った麻衣さんだ。昨日ダチとのクリスマスパーティの間、ずっと麻衣さんとメールのやりとりをしていた。正確には一昨日の夜から……
<男の子とこうやってメールしたりするのもはじめてなんだよ>
 今時の絵文字やわけのわかんねぇ文字を使ったりもしない。真面目で素直な文面がすごく可愛く感じた。年上だけど男を知らない……ということは誰とも比べられることがないという事実は、自分にかなり自信をもたらせていたと思うんだ。結構大胆になりながらも年下の謙虚さを忘れず、少しづつお互いを知ろうと歩み寄っていたところだったんだ。
 それが……
<明日、ですか? あいてますけど……>
 カラオケボックスで俺が気持ちよく歌ってる間に、悪友共が勝手にメール返信していた。
<明日会えませんか?>って……なにすんだよ! 彼女とは、その……急ぐつもりはないんだ。いくら男とあんまり喋ったことないっていっても、20歳の女子大生が17の高校生なんか相手にすっかよ。それも……うちの親父の勤める会社の社長の親戚の子だぞ? 下手なことできねえじゃんか。
 なのにいきなりOK貰ってしまって……あいつらには遠目で顔見せて、うまくいったら女子大生と合コンさせてやるってことで話はついた。うまくいくとは思わないけどさ……

「待ちましたか?」
「あ、いえ……そんなには」
 今日の麻衣さんはタプっとしたセーターコート、ロングスカートにブーツだ。耳まで隠れたファーの帽子が可愛い。
「あ、ごめん、メールだ」
 画面を覗くと<激マブ! 大学生には見えねえけど、超イケる! しっかり落としてこいよ!>って、あいつら……
「どうしたの?」
「いや、なんでも……えっと、どっか行きたいとこ、ありますか?」
「実は……今日出かけると言ったら、伯父さまがこれをくださったんです」
 差し出してきたのは昔からある遊園地の無料招待券だった。たぶん電車で乗り換え1回で行けるはずだ。
「へえ、いいね。麻衣さん、寒いのは平気?」
「大丈夫、暖かくしてきたから。大地くんは……行きたくない?」
「行きたいです、もちろん」
「じゃあ、行こうよ」
 ニコッと笑って再び駅の構内に向かう。そっか、これならあいつらもついて来れないよな? ついて来ても撒けばいいし。
 よし! とりあえずこれはデートってことで……一日一緒にいれば、オレのドキドキするのが今までの彼女と同じかそうでないかわかるだろう。たいてい一日一緒にいれば、いろんな面が見えてくる。我儘すぎたり、だらしなかったり、あわないなと思ったら急速に想いは萎える。
「麻衣さんはどんな乗り物が好きなんですか?」
「……実は、田舎にいたので、あまり遊園地とか来たことなくて」
「え、そうなの?」
 ここには小さい時から何度も連れてきてもらっていた。もしかしてうちも会社から券をもらっていたかのかもしれない。
「うん、だからどれが面白いか教えて。さすがにこの年になって友達に遊園地に行こうって言えなくて……今日はすっごく楽しみなの」
「それじゃ、初心者用のおとなしいのから、ちょっとスリルのあるのまで全部行きますか?」
「ほんと? 嬉しい!! ありがとう、大地くん!」
 か、可愛い……少し首を傾げて無防備に微笑む彼女。やっべ、思わずぎゅって抱きしめたくなるほどの可愛さだ。
 マジになるかも、オレ……
「わたし一人っ子だから、弟と一緒に来てるみたいだわ。あ、源太くんも一緒に来ればよかったのにね」
 あ、そう……そっちかよ。なんだぁ……一気に声のトーンがダウンする。
「あ……あいつは、別口で今日はクリスマスパーティだって」
「そうなんだ、残念。それじゃ楽しかったら今度美奈ちゃんや聖貴くんたちも連れてきてあげましょうよ。伯父さんは株主だとかで無料招待券まだたくさんあるんですって」
「そうだね、それもいいかも。あはは」
 虚しく笑い声が自分の中でこだまする。
 やっぱ高校生なんて、恋愛の対象じゃないんだ。わかってたさ、わかってたけど……
 虚しい想いを胸にオレは遊園地の門をくぐった。


〜瞳〜

「……ただいま」
「お帰り、大地。遅かったわね……あら、どうしたの? 顔真っ赤よ」
「なんでもない。飯いらないから」
 源太は7時過ぎに帰って晩御飯をしっかり食べていたけれども、10時過ぎに帰宅した長男はなんだか様子がおかしかった。だけど、今は問いただす気力も体力もない……
「大丈夫か?」
「どうかしら……なんだかおかしな様子よね、大地」
「違う、おまえだよ」
 リビングのソファに夫婦並んで座ってお茶を飲んでいた。
『かなり鳴かせたし、無理させたよな。まともに立ち上がれないんだろう?』
 耳元で夫が囁く。
 それは、確かに……次男のご飯も作りおきの料理にデリバリーで取ったピザやフライドチキンを並べただけだった。
「それはあなたが……」
 昼間の夫の愛撫はすごくしつこくて……訳がわからないまま泣かされ続けた。しまいには自分から欲しいとお願いして、彼の上で自ら動き、我慢できずに果てたときは太ももまでしびれていた。だけどそこで終わったわけでなく……夫はまだそこからわたしを責め抜いた。一度イッた身体は敏感で、そのあとも何度も頂点を迎えてしまった。予告どおりプレゼントされたベビードールを脱がせることなく、最後までわたしを……
「あとで部屋まで運んでやるよ」
「もう、ぎっくり腰になっても知らないわよ」
 長男の葛藤も知らず、わたしたちは甘いクリスマスを続けていた。

〜朱音〜

「もうこんな時間か……朱音、そろそろ準備しないと」
 そうは言われても起き上がれないものは起き上がれない。おまけに今立ち上がると間違いなく……その出てくるはずだ。夫が昨夜から散々注いできたものが。
「ん……無理……」
 夕方には子供達が帰って来る予定だけど、もしかしたら早めになるかもしれない。前にもそういうことがあったから、彼はそれを心配しているのだろう。
 とにかく昨夜は散々バスルームでも責め立てられたのに、ベッドに戻るとさらに緩急を付けられて……終わらない快感に身を震わせながら、子供たちがいないという安堵感ではしたなく声を高めて喘いでしまった。
『イイ声だ……普段聞けないのが残念だが、我慢している朱音もかわいいよ』
 そんなふうに言われたら余計に感じてしまう。
『子供がいたら長くは繋がれないからね。今日は思いっきり好きにさせてもらうよ?』
 今年も何度かあった子供がいない日……すごく寂しいんだけど、普段我慢して出来ない分をヤルんだと言っておもいっきりされてしまうから、あっという間に時間は過ぎてしまう。昨日だって何度も揺さぶられている間に夜中になってたし、疲れ果てて目を閉じたかと思うと一瞬で朝になってたし……
『まだだ、ゆっくり感じるんだ』
 繋がってる間は始終そんな感じで、ずっと気持ちよくって。イキそうになると動きが緩められて……最後にはわたしのほうが我慢できなくなってしまい、自ら求め動いてしまった記憶が蘇る。お互いに何処をどうすれば互いが限界を迎えるかわかっているから。だからこそ、そこを微妙に引き伸ばして長い間睦み合うのが子供のいない時の定番になっていた。もちろん時間が少なくて子供がいないときは激しい行為を、それもベッドルーム以外でされたりするのだけれど……
『いや、いやぁ……んっ、もう、もう……ダメ』
 気持ちいいのに苦しくて、長いこと揺さぶられていると脳まで溶けそうになってしまう。
『わたしもだ……朱音、朱音!!』
 最後は信じられないほど激しく再奥まで突かれ、逃れられない快感の波に囚われ押し流されその頂点で、わたしも自分でも信じられないような声をあげ、腰をくねり彼のモノを締め付けながら果ててしまう。
『くうっ……』
『あぁ、あなたっ!!』
 最近目を瞑らなくなったわたしは、俊貴さんが果てる瞬間の表情に感じて、更に意識を飛ばしてしまい、そのまま目を閉じたのが昨夜。
『今日はこれ着て過ごそうか』
 目覚めてふたりでシャワーを浴びたあと、出されたのは洋服でもパジャマでもなかった。
『楓が羽山んとこにベビードールを送ったらしいね。朱音も持っているんだから着なきゃな。子供達が帰ってくるまでこれを着て過ごそう。わたしもこの格好でいるから……』
 そういう俊貴さんは今年わたしがプレゼントした肌触りのいいバスローブを着ていた。
『これだったら何処ででもできそうだな』
 そう言われた瞬間、思わず身体が震えた。この恥ずかしい格好をさせられた時、玄関先やリビング、キッチン、それから窓際で……何度感じてしまったことだろうか。いじわるモードの彼はわたしを窓や鏡の前に連れ出して繋がっているところを見せたりする。恥ずかしくてたまらないのに、またビデオを撮ろうとか言い出すし……あんな恥ずかしいことは絶対無理と言い続けている。そのためにもちゃんと目を開けて彼だけを見ているというのに。

「取り敢えずもう一度風呂にでも入るか? 大丈夫、中ではしないから」
 昨日聞いたようなことを言われても説得力はない。結局はされてしまうのだろうけど……このままじゃ動けないのでお願いする。
「それじゃ、連れて行ってくれる?」
「もちろんだとも」
嬉しそうにわたしを抱え上げてバスルームへ向かう。彼が密かにジムに通っているのは知っている。瞳さんのご主人も影響を受けてたまに行っているらしい。わたしも最近は軽いエクササイズを家事の合間にやるようにしていた。そうしないと身体が付いていかないから……
「明日、言いそびれる前に言っておくよ。Merry Christmas、朱音」
「Merry Christmas、俊貴さん」
 明るい日中のバスルームの湯気の中で微笑み合い、軽くキスを交わした。
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年越してしまいましたが……なんとかクリスマスらぶらぶは終了です〜〜
25日はおまけ的なものです。大地のその後と聖貴のつぶやき、面倒でない方だけどうぞ!