バカップルの日常シリーズ

〜姫と直〜    エースの直さん

オレは会社じゃエースの峯田と言われてる。
会議でも打開策を打ち出していいとこを上手く持って行く。
今は一会社員でも、いずれはオヤジの会社を継がねばならぬ身だ。吸収出来ることは吸収してやるさ。それに何事もやるならTOPでありたいからね。

「峯田さん、お昼ご一緒しませんか?」
フロアでも美人と評判の岸田さんが近づいてくる。う〜ん、2年前だったら食指動いてたんだけどね〜お昼一緒して、晩ご飯の約束して、即ベッドってタイプの女。
「いや、悪いけど得意先とあう約束になってるんだ。」
「そう、残念ね。じゃあ、またね?」
意味深な艶のある微笑みを残して立ち去る。甘い外国製のコロンがきつい。
自分に自信あるんだろうなぁ。断られるはずないってさ。でも悪いけどもう興味はない。オレには可愛い姫がいるんだ。
それにに気を抜いてなんかいられない。彼女を自分の方に向かせておくためには、相当努力しなきゃならないほど、今までのオレではだめだったりする。毎日前向いてるからね、オレの姫は...


「峯田くん、すまないが今から九州まで飛んでくれないか?」
どうやらそっちでトラブったらしい。ちっ、今夜は姫のとこに行く予定だったのに。まあ、しかたない...
「はい、かまいませんよ。では準備して即、出ますね。」
こんな事しょっちゅうだ。
若いから機動力もあるし、実績もあるから解決させるのも早いしね。
<姫、ごめんよ。これから九州に出張なんだ。帰るのは明日になりそうだ。>
新幹線の中からメールする。
速攻片づけて、泊まりでと申し出てくれるのをとんぼ返りする。会社には直帰すると連絡して、オレが向かうのは姫のアパートだ。突然行ってびっくりさせてやろうと思ってた。
『姫、予定よりも早く帰れたんだけど...』
実はアパートの前から電話する。もう真夜中近いけど...
『え?ほんと?でも帰るの明日って聞いてたからちよ呼んじゃったよ...』
『ぐっ、ちよか...でもオレ今姫のアパートの前なんだけど...』
ばたん!と音を立ててドアが開いた。
「直さん!!お帰り!!」
姫の満面の笑顔がオレを迎えてくれる。ああ、もう今日はコレで満足して帰ろう。たまにはちよとゆっくりするといいさ。
「峯田さん、あたし帰るからいいよ。」
「いや、いいよ、オレもどうせ戻らないと明日も会社だし...」
実は会社が気を遣って午前中は休みにしてくれたんだけどね。
「ちょうど子犬くん呼び出せたから行ってくるわ。」
「子犬くんて、おまえ...」
子犬くんとはちよの年下の彼氏の総称だ。
ちよはオレに似ている。特に昔の、姫に出会う前のオレに...片思いの相手には思われず、そのくせやたらと若い男の子にもてやがる。もっともオレが16ぐらいだったらくらっとしてしまうほどのいい女だ。だけど本気にならない相手に恋を演じるのって、その時はいいけど、むなしいものだからな...それはオレが一番よく知ってる。ちよにも、姫のような男(そんなのいないかもだけど)が現れればって密かに願っている。
「じゃあね、ごゆっくり〜」
颯爽と歩き去る後ろ姿をしばし見つめていた。
「でもね、今度の子犬くんかなりいい子みたいだよ。」
「そうなのか?」
姫が並んでちよを見送った。
「ちよ、その話しに来てたんだ。」
「そっか、悪かったな...」
「ううん、早く帰ってきてくれて嬉しいよ?」
「姫...」
きょとんと見上げてくる姫の瞳。30cmの身長差が今日は恨めしい。早く姫にもっと近づきたい。その場で抱きしめたくなる気持を押さえて、ドアの内側に姫を押し込め、荷物を足下に落として抱きしめてキスをした。
「ふうっ、な、直さん...?」
「ごめん、とまんない...」
そのまま姫の裾口から手を忍ばせキスは首筋に移っていく。
「やぁん、直さん、こ、こんなとこで...!?」
「ここで姫が欲しいよ。」
嫌がる割に腰砕けになっていく姫...オレってほんとうに節操なしかも。
「あふん...」
「大きな声出したら外に聞こえるよ?」
「うぐっ...」
潤んだ目でオレを見上げてくる。その目がなおさらオレを煽ってるって知ってるんだろうか?
「ほら、いやだって割には姫のここも、ここも感じやすくなってるよ?ほら、もうこんなに...」
「いやぁん、そ、そこは...あんっ!」
耳元で囁く声に乱れていく姫の声...
「好きだよ、姫。早く会いたかったんだ。」


「んんっ!」
姫が声を堪えてイッた。
未だにアパートの玄関で靴も履いたまま、服も着たまま繋がっている。
たった一日でも離れていたくない。
こんなにも夢中で...どうすればこの腕の中から出さずにすむんだろう?
姫を突き上げる度にオレを求めてくれるようで嬉しい。だからといってこんなところでシテしまうなんて、まったくもってオレって...
「姫、姫っ!」
これで会社じゃエースだ、なんだっていってたって関係ないね。
姫の前じゃオレはただの男に成り下がるんだから...



「姫、離さないから、いつだって...」
「もう、直さん...だからって、こんなとこでスルことないじゃないのぉ!」
ちょっと拗ねた表情、コトのあとで上気した頬で久々に怒り出す。
あれ?コレですむと思ってるのかな?さっきまで散々オレの言葉に恥ずかしがりながらも感じてたのに?オレ、まだだし...ここじゃ準備でき無くってね。だからいまからが本番。
「お風呂行こうか?洗ってやるよ、姫。それから今度はベッドでじっくりな?」
「な、直さん??うーっ、もう、ばかえっち!!」

その声だけはアパートの廊下まで響いたと思う。