バカップルの日常シリーズ

〜姫と直〜    いっしょに暮らそう&お引っ越し

〜いっしょに暮らそう・直樹〜

『峯田さん?わたくし清宮と申します。姫の母です。』
いきなり電話をもらってしまった!それも姫の母上から...
姫って旧家のお嬢様なんだよね。
世が世なら城代家老のお家柄。都内じゃなくて県外だから、そっちに帰れば結構有名かも...おまけにお兄弟や、従兄弟も全部男ばっかりで、唯一のお姫様って聞いたことある。

『もう、みんなあたしのこと未だに子供扱いなのよ?もう成人してるのに。先月もちょっと帰っただけなのにみんなうちに寄ってくるんだもん、ほとんど宴会状態だったわよ。』
おれは一瞬不安になって聞いた。ちょうどソファに並んで座ってたんで、姫の黒い髪を指に絡ませながら一束すくい上げてキスした後
『オレとこうしてつきあってるって知ってるの?』
それはおれが姫よりも7つも年上で、お互いの部屋も行き来してて、しょっちゅう泊まってる仲ってことな。
『言えるわけないでしょう?おかあさんにはちゃんと言ったけどね...たぶんどんな相手でも反対すると思うよ。従兄弟も全部かな?』
『そ、そっか...』
難関は親父さんだけじゃないのか??けれども姫の母上は賛成してくれていて味方だって聞いていた。

『直樹さんは、娘のこと、どう思ってらっしゃるのかしら?』
実はあのストーカー騒ぎの後すべてが露見したんだよね。実家の方にも確認の電話が警察からはいるし、説明の一環にオレが入らないわけにいかなかったし、何よりも知らん顔したくなかった。姫の家族だぜ?やっぱ好印象与えたくってさ、姫の母上とはその時に話してたんだけど...
オレはすぐさま「1番大切に思ってます」って言ったら、
『それは将来的なことを視野に入れて、娘とだったら添い遂げてもいいという覚悟がおありなのかしら?』
と聞かれてしまった。もちろん、気持ちは決まってるから怯みはしないさ。
「僕は考えてますが彼女はまだ学生ですし、悩ませたくないので胸に秘めてます。」
そう答えた。
『もし、あなたに覚悟がおありなら・・・親としては、あの子の希望があれば一緒に住んでも、いいと思っております。』
なんだって?いっしょに??
オレ、マジで焦ったよ。いきなりだし、姫まだ学生だし...
『昨年は変質者があの子の周りを彷徨いたり、親として居ても立ってもいられない思いもいたしました。本当に離れていると守ってやれないもどかしさを感じました。親の目の届かないところに娘は居るのだという本当の意味を痛感いたしました。一人で居させるというのも何にしても、どの道どこからかの心配があります。もし当人同士の希望があるのであれば、わたくしは貴方という人間を見込んでおりますし、若いのなんのと文句を言わず、許すつもりでおりますから。」
それはあの親父さん達一軍を押さえ込むってことですか?さすがは姫の母上...
姫が『一番強いのはお母さんよ』って言ってたの思い出す。
なんか、これって...一番難しい問題点クリアだよな?

あの事件以降、やっぱりセキュリティの問題で賃貸などでは限界があったのは事実。オレは親の持ち物だけどまあ、高級マンションってヤツに住んでるからね。どっちかって言うと一般人よりもまあ、それなりな人しか入ってないマンションの18階に居座ってる。セキュリティの面ではOKだし、目の届くところに姫が居る方がちゃんと守れる。
けれども、何よりも姫と一緒にいたいよ。これが本音。他の男になんか送らせたくもないんだ。
だから、ちょっとばかし時期尚早だとも思うけど、とりあえず、誘うだけ誘ってみようかなって...


「あのさ、姫?」
「なあに、直さん?」
「いや...何でもないよ。」
何度か口にしかけて思わず口ごもってしまった。
オレは、いいよ。その方が望みだ。姫を手に入れたい。
でも、それってまだ早いんだよね?姫はやっと21だし、まだ今から大学を出て、就職して、まだまだこれからなんだ...
縛るつもりなんてないけど、姫にとってその限定された未来はあまりにも窮屈じゃないだろうか?オレにとっては姫が最後の女で、もう他になんて考えられない。それは、まあ...今までの過去があるからこそ強く思うわけで、姫は果たしてそれでいいのかどうか。
これじゃまるでプロポーズと同じだよ。いや、同じなんだけどね。
何度か口に出していってるから、オレ。いつかはって...
そりゃそうだろ?時間さえあればお互いの部屋に入り浸って、一緒に食事して、一緒にお風呂に入って(これは最近だし時々却下されるけど)同じベッドで愛し合って朝までともに眠る。そのたびにこのまま続けって思うし、いつかは本当に一緒になりたいってオレは切に思うわけ。姫が他の男の腕の中で目覚めるなんて、想像したくもない。
やっぱり...

「姫、一緒に暮らさないか?」

「えっ」
「だめか?」
「だって、そんな...すぐには、返事できないよ。あたし...よく考えてみる。」
意外に真面目な答えだった。即答は無理か...
まあ、そうだよな?
オレはすぐにでもじゃないけど最終目標を頭に入れてるけど、姫は...
それに男と女じゃ言われることも違うし、事務局に内緒に出来ないだろしな。オレとしてはそれも狙いだったんだけれども...待つしかないかな?


それからしばらくして姫がぽつりと言った。
「ココに越してきていい?」
おれは思わず持ってたカップを落としそうになっていた。
「いいの?姫...」
そのいいのの裏には、一緒に住むだけでなく、その後もずっとって考えてくれてる答えのような気がして...
姫のことだから結構考えたと思うんだ。生半可な考え方する子じゃないから、きっと先のことまでちゃんと考えて決心してくれたんだと思う。
オレの手を取ってくれたんだ。
「姫、オレ離せなくなっちゃうけど、いい?」
「うん、直さんと一緒に居たいだけじゃなくて、一緒に歩いていけるようになりたいから...直さんなら、そうさせてくれるんでしょう?」
それはもちろんだ。
姫を女としては自分の元に縛っておきたいけど、人としての姫はどんどん出て行くべきだ。
オレはそんな姫を見守って支えて、サポートしていけるだけの器でありたい。
掃除や洗濯をしてくれる人が欲しい訳じゃない。
一緒に歩んでいける人が欲しかったのはオレも同じだ。
「じゃあ、よろしくね、直さん♪」

オレ、かなり嬉しかったみたいだ。
「かあさん、オレ今度彼女と暮らすことにした。」
そう報告すると
『まあ、よかったわね〜直樹さんがその気になるなんてよほどなのね。』
のんびりした声が受話器から返ってくる。
姫の母上と比べるとずいぶんと呑気なうちの母だ。まあ、息子しか居ないし、あのワンマンなオヤジに付き従いながらマイペースを崩さない強者。
オヤジが『言い忘れてたが、今日から2ヶ月ヨーロッパだ。』って朝食時に言うと『まあ、じゃあ今日は和食の方がよかったかしら?』なんて呑気におっしゃる方だ。問題はそこじゃないだろうって!
息子しかいないからか、娘欲しがってて、姫のこと本気なのを伝えるといつでも連れておいでって言ってくれた。
「それでさ、オレも料理はするけど、姫が来てくれるんならキッチンをもう少し使い勝手よくしたいんだけど...」
「まあ、うちの子が家事も分担できる男に育ってくれて嬉しいわぁ。それならねえ...」
そう言っていろんなメーカー名のあれこれを話し出す。
「か、かあさん?」
「ああ、もう、パンフレット送るから、姫ちゃんと選んでね。決まったら連絡してちょうだいね。出入りの業者にやらせちゃうから。」
なんだかすごく嬉しそうなんだけど?まあ、オヤジがどちらかって言うとなんもしない人だから、少なからずも不満は持ってたってわけだ。
「ああ、なんかたのしいわぁ。まるであなたがお嫁さんもらうみたい。ねえ、私たちそちらのお家に挨拶行かなくてもよろしいのかしら?」
そんなことしたら、姫の親父さん爆死してしまいますよ、かあさん...
「それは、まだいいから...そのうち姫を連れてくから。」
オレが結構遊んでたのは母親も気がついてる。そしてそのうちの誰も家に連れて行ったりしてないしね。
「きっと、気に入るよ。」
姫なら母とも気が合うだろうって、ずっと前からそう思ってたから。



〜お引っ越し・姫〜


言っちゃった...
ココに越してきてもいいかなって。
一緒に住まないって言ってくれた言葉の裏にうちのお母さんの影を感じたんだけどね。
前にちらっと言ってたから。
心配かけてるんだよね。女の子だから一人で住んでること。この間のストーカー事件のコトもあるし、その時に心配かけないようにって、直さんが事務局の理事として、それと彼氏としてうちのお母さんと電話で話したんだよね。
おかあさん、直さんのことすごく気に入ってたもん。まあ、あのさわやかさは電話でも十分伝わってるし、セキュリティシステムを付けてくれたこととか説明してたから、なかなか出来る人ねって。確かに、直さんっておばさま受けもするかも...本人曰く正統派の王子様だものね。でもちよに言わせると直さんあたしとつきあい始めてから落ち着いちゃったし、周りに牽制しまくってるとこなんか無言の圧力で、まるで帝王よって...

前からもどかしくはあったのよね。お互いの家行き来してても、あたしは学生で、直さんは社会人で、事務局の仕事だけは重なるけれどもそれ以外はなかなか重ならなくて。結果あたしが直さんの帰りを部屋で待ってたり、遅くなったあたしを迎えに来てくれてそのままあたしの部屋に来て、直さん寝ずに、その...あたしの相手してくれて、あたしは午後からだとそのまんまばたんきゅなんだけど、直さんは朝早くに会社に出掛けていったり...
どっちも部屋の鍵持ってるのよね。だけどそれはまるで部屋が二つあるだけで、どんどんあたしの生活は直さんと一緒に重なっていくの。
手を伸ばして、隣にいないことがすごく寂しい...
それだけの理由で一緒に住めないこともわかってる。
ちよに相談したらかなり言われたよ。『もしもの時傷つくのも、ずっと言われるのも姫だよ。その覚悟ある?』って
その通りなんだよね。頭の固い人からすると、それは同棲でフシダラなことになっちゃうんだ。でもあたしは...直さんと歩いていきたいってそう思ってしまった。
隣にいつも居て欲しいって望んでしまったの。


引っ越し、決めてからは早かった。
少しずつ荷物持ってきて、とりあえず客間にあんまり使わない物がしまわれていくの。
家具なんて持ち込めないくらい何でもそろってるからね。
えっとね、まず説明しておいたほうがいいかな?
うちのお母さんが惚れ込んだのは直さんにだけでなく、ココのセキュリティシステムなの。
玄関はまずオートロック、訪問先の部屋番号を押すと部屋のモニターインターホンがつながるの。このあたりはまあ、よくある都会のセキュリティなんだけど...オートロックの中には共同スペースがあって、喫煙スペースと、応接スペースがいくつかあるの。オープンになっているのとや、会議室っぽくなっているのがいくつか。フロントがあって、警備員さんのほかに、クロークさんが24時間常駐しているの。ココが最大のポイントかな。
仕事先の人が急遽やってきても、プライベートスペースの家にあげなくてもそこで用が足りるし、クロークさんがコーヒー紅茶程度ならドリンクを出してくれるの。もし取引に切羽詰って自宅まで押しかけてきた相手で危険があっても、ここなら警備員さんやクロークさんがなんとかしてくれるってわけ。まあ、そう言った社会的立場に居る人が多いってわけ。
宅急便などもクロークで預かってもらえるし、要サインの届け物などのときは、業者を装った暴漢であるなど危険を考慮して、クロークさんが一緒に上まで来てくれるので安心なの。
オートロックパスのときに、オートロックオープンボタンと一緒に「クローク要」と「クローク不要」を選んでボタンを押すので、友達とか素性のわかってる人はこちらで判断して「クローク不要」を押せば友達が来た時は部屋までクロークがついてくるということもないってわけ。
これだけの設備だからこそうちのお母さんもGOサイン出したんだと思うの。
あと部屋は3LDKね。といってもLDKは繋がってて、LDが20畳あるかな?キッチンは8畳ぐらいで食料庫付き。ココはほとんどお酒のセラーとして使われてるかな。
LDにはバーカウンターがあって、ダーツなんかが飾ってたったりする。キッチンは最新式。あたしが越してくる前に全部入れ替えちゃったみたい。あたしも直さんも結構料理凝る方だし。でもね、あたしは生ゴミはダストシューターがあるのが一番嬉しかったりするの。
あといろいろあるけどなんか説明してると赤くなっちゃうようなこと思い出すのでこのくらいにしておこうっと。

で、引っ越して来ちゃったんだけど、その日はなんか特別って感じで、もう帰らなくてもいいし、忘れ物したとか言って困らなくても済むんだよね。
「直さん、これからず〜っとこの部屋で、このベッドで、直さんと一緒に寝られるね。」
あたしの部屋が出来ても、そこにベッドがあっても、あたしが眠るのは直さんのベッドで、直さんの側なんだ。
あたしの言葉に直さんもすごく嬉しそうに一緒に笑ってくれて、約束したんだ。
「起きたときまでは言わないけど、眠るときは背中向けないで寝ようね、ずーっとよ。」
って...さすがにちょっと苦笑してたけど、そのあとは...もう、また何も考えられなくさせられちゃった。


〜引っ越し・直樹〜

朝目覚めると、目覚ましの音楽がジャズになってて、思わず姫の部屋にいるのかなって思ってしまったくらい...
見回しても、あちこちに姫の物が置いてあって、今までのオレの部屋でなく、二人の部屋になったんだって何度も実感する。今まで一緒にいるのと変わらないようでずいぶんと違う。
姫と居るベッドの時間も少しくすぐったい。もう帰さなくてもいいんだ、とそう思うだけで愛しくて、昨夜だって...
あんな可愛いこという姫をそのままにしておくはずがないさ。
ゆっくりと、時間をかけて繋がった。
いつもなら遅くまでホームシアターにしてる寝室でDVDを見たりリビングで時間を惜しみつつ、まるで次はいつ会えるかわからない切なさでお互いを求め合ったりもした。
だけど今日からはいつでもここに帰ってきて、同じベッドで眠るんだ。
もう離れなくてもいい。
だけど...
「ああん、直さん...やぁだぁ、そんなっ、んっ...ふみゃっ、やぁん」
か細く喘ぎ続ける姫をゆっくり味わうように身体を揺らす。
かなり時間をかけてから繋がった。その愛撫も、特別どこを責めるとかでもなく、ただ、姫のすべてに唇と指で触れ、姫は夢うつつの中でオレを迎えたはずだ。その後も激しくしないで、ゆっくり、じらしてると言えばそうなるか?まったりと動かしつつ止まってみたり、動かしてみたり...
「はぁん、な、直さん...おかしくなる...こんなの...でも、なんかすごく、しあわせ...」
姫がぎゅうっと抱きついてきたとたんに、一度目の高ぶりが来る。
「姫、一緒にいくか?」
身体を入れ替えて姫をオレの上にのっける。この体勢だと激しく動けない代わりに姫が好きに動けるからね。オレはゆっくりと姫と密着したまま揺さぶりをかける。
姫の腰が切なげに動き出し、オレを煽り求めて締め上げてくる。
「んっ、もうっ...いっ..くっ...んっ」
声こそ大きくないけれども姫のそこはオレを締め付けてぴくぴく震えていた。オレも深く姫を突き上げたまま、姫の中に果てていく。
「あっ、くっ...ひ、め...」
そのまま...終わってもいつもみたいにばたばたしないで、しばらくじっと動かずに姫の中をだきしめたま堪能する。姫も動けない見たいだしね。
「姫...愛してる...」
耳元に囁いて首筋をなで上げる。
「直さん...」
潤んだ瞳のまま見つめる姫にとろけるようなキスを送り、ぎゅってだきしめたあと、そのまま
目を閉じる。

「やだ、直さん...やっん」
「あ、ごめん...」
姫の中を味わってたらまた気持ちよくなってきたみたいで...
「し、しらないんだからぁ...」
「しょうがないだろ?それほど気持ちいいんだからね...大丈夫この調子じゃ背中向けて眠る暇もないはずだよ。」
「だからといって、こ、こんな...んっ」
また動き始めるオレ。
しょうがないだろ?一回でなんて終われそうにないんだから...
「姫、抜かずに2回目してもいい??」
「やんっ、もう...ばかえっち!」


引っ越し早々言われてしまった。
その後その唇は塞いだけどね。
一緒に住むってことはこういうこともしょっちゅうってことで...ま、諦めて。