バカップルの日常シリーズ
〜姫と直〜 出逢い編 オレの想い |
「清宮、オレと付き合わない?」 好きなんだと、オレは思い切って告白した。 それも7つも年下の18の女の子にだ。この間まで女子高校生だったりするんだぞ? いっとくがオレにそっちの趣味はない。今まで付き合って来たのは年上の美人系、気の強い、いい女タイプが好みだ。どちらかっていうと一癖もふた癖もあるような超いい女を、落とすのがたのしかったりする。しかし目の前にいるのは、見た目おとなしいお嬢様な綿菓子みたいに見える女の子だ。長い髪は腰までまっすぐで、染めたりなんかしてないだろうけど、ちょっと茶色がかっていて...背も180以上あるオレからすれば30センチは小さい。 好みのタイプとはまったく違うと言っていい。 なのにこんなにも惹かれてしまってるオレ...それに、相手はオレをただの先輩程度にしか思っていないのも知ってる。それなのに...いつもなら駆け引きのようにお互い探り合って、OKの確信がでたとこで告白する策略家のオレにしてはずいぶんと焦った告白だった。 だめもとでもいいから、ただ、オレの気持ちを知って欲しかった。 そのくらい、オレはヤバイほど本気だった。 オレは普段は普通の会社員だ。学生時代に非営利団体で鍛えられたのが役に立ってるかな?なんでも仕事はこなす、まあ会社では仕事の出来るオレはエースでプリンスと呼ばれている。あっちのプリンスじゃねえよ、白馬に乗ってるほうだぜ。ちゃんと会社にはオレ専用の馬場が...っとこれは冗談だけど。何でも物怖じせずやってしまうオレはかなりの自信家に見えるらしい。実際そうだけどね。 「峯田君の、そのさわやかな笑顔は最強ね!」 実務交渉を担当する理由がそれ。この笑顔で数々の難関苦行を乗り越えてきたのさ。 まあ、女にもモテたよ。おっと、いまでもだ、もちろんね。 清宮 姫に最初に会ったのはオレが今でもかかわってる団体(宗教じゃねえぜ、非営利団体ってやつだ。)に入ってきた新人で、高校出たばっかりの学生だった。見た目の可愛さと違って、中身は結構しっかりしてるって言うか頭の切れる子で、すぐに上の事務局に上がってきたんだ。で、挨拶して、話する程度だったんだけど... 可愛くて思慮深くて慎ましいイメージの彼女は同じ学生仲間からも人気があった。けど、オレにしちゃ、仕事の出来るおもしろくて有望な後輩でしかなかった。面白いっていうのは、育ちがいいのか、お嬢様独特の天然が入ってたからね。それと仕事の出来るとこはもうすっげえギャップで... あの日... オレは仕事で結構へこむことがあった。疲れていたけれど、他に人がなくて団体の事務所に詰めていた。普段自信家で何でもこなすぶん、うまくいかないそのいらつきは結構激しいものがある。オレは目に見えないものに対して、やたらいらいらしてたと思う。夕方、事務所にはもうオレと清宮しか残ってなかったんだけど、それでも開けてれば参加してる学生たちがやってくる。こんな状態でいい対応できる自信はなかった。 「あの、今日はもう定時も過ぎたので閉めてしまっていいですか?」 「あ、ああ...」 あいまいに返事すると彼女は内側から鍵をかけた。え?普通帰る用意して、出るとき外から鍵かけねえ? 「今日の峯田さん、すっごくイライラいらいらしてるみたいですので...事務所でそんなオーラ出してらっしゃったら、なれない学生たちはしり込みしてしまうと思います。」 そんなにひどいか?いや、ひどいよな、今日のオレ。 年下の女の子にいきなり見透かされたのにも、焦ったけど... 「オレだって人間だからね、イライラすることもへこむこともあるんだよ。」 そういって椅子に深くもたれた。 「それは判りますけど、事務所でそれをしちゃいけないと思います。峯田さんの立場でそれは許されないんじゃないんですか?」 俺の立場、OBとして企業や役所関係との交渉、それから学生たちのアドバイザー...だからいくらオレの都合がどうであれ学生たちにいらつきをぶつけるわけには行かない。 うう、この子見かけと違って、めちゃくちゃはっきりいうじゃないか... でも図星...やっちゃいけない態度、反省。オレってその辺早いんだよな。 「もう閉めちゃいましたんで、ここはもう事務所じゃないですから思いっきりへこんでてくださいね。わたしも読みたい本がありますので残ってますから...なにかありましたら、声かけてください。」 「あ、ああ...」 オレはあんぐりしてたかもしれない。目の前では清宮が本を開いて静かに読み始めた。ちょっとして熱いお茶を一杯入れてくれた。 なんか...すっげえ嬉しかったっていうか、気が楽になった。 オレまじでへこんでて、一人になるのもいやだったんだよな。だからといってもしつこく聞かれたくもないときで... 彼女は男がへこんでたら、尻を叩くタイプでもないし、ただただ甘やかしてくれる女でもない。そんな女はいくらでもいたけど、こんな風に突き放したままでもなくむやみに甘やかすわけでもなくて、ちゃんとなにが正しいか間違ってるかが言えて、なおかつ思いやれる心のもちぬしなんだ。 オレ見つけちまった。オレの心にすうって添える人を! それからはもう止まらなかった。 彼女の言葉や行動の端々に隠された、見た目とは違う厳しさや、その中にある優しさを見つけるたびにどんどん惹かれていっちゃって、膨らんだ気持ちは、もう戻れないとこまで来てしまっていた。 オレいくつだよ?ほんとに、まじでこんな思いするなんてさ...可愛い、色っぽい恋愛だけの対象だったらいくらでもいる。でも心で、人間として惚れられる女には早々お目にはかかれない。いやまあ、それだけだったら、友人としてでいいんだけど...その、天然の部分とのギャップがね、可愛いんだ。もう、見てるだけで愛しくなるくらい。早く自分のものにしたいなんて思ってしまう。いやオレもまだ若いし、しっかりえっちだから欲望はいくらでもわいてくるけど。おまけに彼女は競争率激しいんだから。オレにかなう男なんてそうそういないけどさ、彼女もそういうとこだけ鈍感で、男からアプローチされてても気がついてないで、ただの好意だと思ってニコニコしてる。ああ、急がないと誰かに横から掻っ攫われてしまいそうで不安だよっ!あぁ、もう、とにかく清宮じゃなくっちゃ、姫じゃなくっちゃだめなんだよ! で、告白した。 「気にはなってるけど、好きじゃないから峯田さんの気持ちには答えられないです。」 返ってきた答えはきっぱりとしたものだった。やっぱり... 覚悟はしてた。嫌われてはないけど、簡単にOKもらえるほど傾かれてもいないなって思ってたから。でも、振られても自分があきらめきれないのは判りきってたから、なんとか意識だけでもしてもらおうと必死でアプローチした。 「誰か好きな人いるの?」 「いないですけど...峯田さんみたいに素敵な人にそういってもらえて嬉しいんですけど、付き合うっていうところまでの気持ちにはなれなくて...」 「でも...気にはしてくれてるんでしょ?嫌われてないよね?」 「はい、でも峯田さんが私を想ってくださるほどの気持ちは私にはありません。だから対等にお付き合いはできないと思って...」 「それはわかってるよ。わかってる上でつきあってほしいって思ってるんだけどね。まず付き合ってみて、ゆっくりでいいから一緒に足並みそろえてやっていけないかな?あわせるから、オレ...」 「そ、それなら...」 「いいの?」 「はい、よろしくお願いします。」 ぺこりと清宮がお辞儀する。 やった...まさか一回でOKしてもらえるなんて思ってなかったぜ? 「じゃあ、清宮...こちらこそ、よろしくな。」 その日からオレたちははじまった。 それはそっちの話を見てくれよな?めちゃくちゃ甘いからさ♪ |